介護予防・日常生活支援総合事業における通所型サービスCおよび訪問型サービスCは、事業 対象者に対して短期集中型の指導を実施することで機能の維持・改善を図るものである。事業対 象者の選定には基本チェックリストを用いる 【付録:評価 1】→p218 。栄養状態(No.11、12)の2 項目のうち2項目ともに該当した場合に、栄養改善プログラムが必要になる事業対象者となる。
*一般介護予防事業の場合には、必ずしもこのような基準に該当する必要はなく、市町村や医療 機関の判断で栄養指導の必要性があると判断された場合に栄養改善マニュアルを活用する。な お、独自の判断で対象者を限定する場合には、次のような基準も参考になる。愛知県版栄養改 善プログラムに用いられている基準25)では、体重減少と Body Mass Index(BMI)、MNA-SF
(Mini Nutritional Assessment-Short Form)より低栄養者をスクリーニングしている。また、
フレイルやサルコペニアを有する高齢者は、低栄養である可能性が高く、対象者として抽出さ れる必要がある26,27)。また、前述の基本チェックリストにおいて、事業対象者の基準は2項目 ともに該当した場合となっているが、1項目でも該当した場合に要介護リスクが高まることが 分かっている。
実施担当職種
・栄養指導は、主に管理栄養士や栄養士などの専門職が担当する。
対象者の選定(介護予防・生活支援サービス事業の場合)
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実施担当職種
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実施場所
・介護予防・生活支援サービス事業の実施場所は、通所型サービスCの場合は通所介護事業所な どの介護サービス事業所、市町村保健センター、健康増進センター、老人福祉センター、介護 保険施設、公民館などが挙げられ、訪問型サービスCの場合は自宅にてサービスが実施される。
・一般介護予防事業の実施場所は、主に市町村保健センター、健康増進センター、老人福祉セン ター、公民館等である。
・調理実習等を実施する場合には、衛生面に配慮したうえで食堂や健康支援型配食、簡便な調理 設備、調理器具がある集会室や教室などをあらかじめ把握しておく事が重要である。
プログラム実施前アセスメント
(★は1 ~ 3個からなり、優先度を示す)1)リスク把握のための項目(プログラム実施前のみ計測)★★★
① 疾患
栄養介入前に把握すべき疾患は、糖尿病、腎疾患、脂質異常症、高血圧、肥満症、動脈硬化を 起因とする疾患(脳卒中や心疾患)である。糖尿病は血糖コントロールを目的に食事療法を必要 とする疾患であり、罹病期間が長かったり、血糖コントロールが不良な場合(HbA1C≥8.0%)、
さらに合併症・死亡のリスクが増加すると報告されている
28)。そのため、栄養介入を行う際に はこれらの疾病罹患状況およびその程度を十分に把握する必要ある。腎疾患においては、たん ぱく質の老廃物が腎機能に負担をかけることから、病期に応じてたんぱく質摂取を制限(0.6 ~ 1.0g/kg標準体重/日)
29)する必要があり、栄養介入のプログラムにも制約が生じる。脳卒中・
心疾患においては、高血圧、脂質異常症に留意し、塩分(目標量7.5g/日)や脂質(目標量20 ~ 30%エネルギー)の過剰摂取に配慮が必要である
30)。以上のことから、高齢者個々人が有する 疾患特性に応じ、栄養介入の適応を判断しなければならない。
② 服薬
服薬については、摂取する栄養素によって薬効の減弱、または有害事象が生じる可能性があり 注意が必要である。例えば、ビスホスホネート製剤(骨粗鬆治療薬)とカルシウムの同時摂取に より、同製剤の吸収が抑制され、また活性型ビタミンD3(subscript)製剤とカルシウムを服用 することにより、高カルシウム血症を誘導したり、ワルファリン(抗凝固薬)とビタミンKの組 み合わせにより、ワルファリンの効果が減弱してしまうなどのリスクがある
31,32)。有害事象と しては、糖類とステロイドの組み合わせがインスリン抵抗性を増大させ、食後の高血糖を招く とされている
33)。長期の高血糖は血管の脆弱性を高め、様々な合併症(心筋梗塞、脳卒中など)
のリスクとなる
34)。また、たんぱく質源ともなるチーズは、抗パーキンソン薬、消化性潰瘍治 療薬、抗結核薬、抗うつ薬との組み合わせにより、チラミン中毒(顔面紅潮、頭痛など)を引き 起こすことがある。このように、糖類や乳製品、ビタミンなどを栄養介入として選択する場合 は、食品と服薬の組み合わせに注意する必要がある。
③ サプリメント
サプリメントについては、健康食品として自己判断で利用できるものが多く、医療関係者の管
5 実施場所
プログラム実施前アセスメント
(★は1 ~ 3個からなり、優先度を示す)6
理下ではない点に注意が必要である。健康被害の報告は、胃腸障害(下痢・腹痛)やアレルギー
(発疹・発赤)を中心としているが、重症に至るケースもある。例えば、高齢女性がカルシウム サプリメント(1000mg/日)を摂取した場合、心筋梗塞や狭心症などの心血管イベントが増加 すると報告されている
35)。また、医薬品との併用によって薬効が減弱することや、副作用を増 強する問題も指摘されている
36)。製品名や成分、機能表示は多岐にわたるため、リスクの確認 には国立健康・栄養研究所の情報サイト「健康食品の安全性と有効性」を参照されたい。
④ アレルギー
アレルギーについては、 「そば・落花生・乳製品・卵・小麦・えび・かに」の7品目は特に発症 数が多く、場合によっては重篤度が高いアナフィラキシーショックを招く可能性がある
37)。ま た、アレルギーとは別に、食品摂取により下痢などの症状が出現する食物不耐性症もリスクと なる
37)。このように、食品と体質におけるリスク把握も重要である。
⑤ 肥満
一方、高齢者における過栄養や肥満は、生活習慣病やサルコペニア肥満に関連する。高齢者の 肥満は日常生活動作を低下させる要因であり
38)、肥満にサルコペニアが合併したサルコペニア 肥満ではさらに身体機能が低下しやすい。肥満高齢者に対する栄養介入は主に減量が目標とな るが、サルコペニア肥満者に対しては減量目的の低カロリー食かつ筋量維持目的の高たんぱく 質食が望まれる
39)。このように、高齢者の栄養アセスメントでは栄養状態や食事摂取状況、身 体機能評価を包括的に行い、栄養介入実施前にリスクを把握しておくことが求められる。
2)スクリーニングのための項目(プログラム実施前のみ計測、状況によっては事業後も計測)
① 基本チェックリスト★★★ 【付録:評価 1】→p218
基本チェックリスト(KCL)は、近い将来に要介護状態となる可能性の高い高齢者をスクリー ニングすることを目的としているチェックリストである。その中で、栄養状態を評価する項目 は No.11.12(体重減少、低 BMI)であり、2 項目とも該当した場合に低栄養状態が疑われる
40)。 加えて、 「1日3食をきちんと食べていますか」の設問を併せて確認をする事も推奨されている
41)。 一方で、体重減少と低BMIの2項目に該当する者が非常に少ないことが指摘されており、1項 目の該当でも要介護や死亡の発生が高まることが示されている
42)。
※なお、BMIの基準として、高齢者では21.5㎏ /m
2以上を目安とすべきという意見もある。
② Mini Nutritional Assessment R (MNAR) ★★ 【付録:評価 22】→p234
MNARは、栄養状態について問診表を主体としてスクリーニングする指標である。MNARは 18項目あり、6個のスクリーニング項目と12個の評価項目から構成されている。栄養状態は、
各項目におけるポイントの合計で評価され、24点以上は「栄養障害なし」、17 ~ 23.5点は「栄養
障害のリスクあり」、17点未満を「栄養障害あり」と判定される
43)。また、6項目に短縮された
MNAR-SF(Mini Nutritional AssessmentR-Short Form)もあり、この場合、11 点以下で「栄養
障害のリスクあり」と判定される
44)。これらの値は、我が国の高齢者における低アルブミン血
症(3.5g/dL 未満)の推測にも有用とされ、MNAR が 17 点未満で感度が 81.0%、特異度が
86.0%、MNAR-SFが11点以下で感度が86.1%、特異度が84.0%であったと報告されている
45)。
また、MNARおよびMNAR-SFが低値である場合、死亡やADL低下のリスクが高まることが
報告されている
46,47)。
③ Council on Nutrition Appetite Questionnaire(CNAQ) ★★ 【付録:評価 23】→p235 CNAQは、高齢者の食欲を評価するための8項目で構成された質問指標である。各項目は1 ~ 5 点の配点がなされ、合計点数は 8 ~ 40 点となる。得点が 8 ~ 16 点は、食欲不振の危険あり と判定され、栄養カウンセリングを必要とする。17 ~ 28点は、頻繁な再評価が必要と判定さ れる。先行研究では、28点以下の場合6 ヶ月以内に少なくとも5%の体重減少のリスクがある とされている
48)。
④ Simplified Nutritional Appetite Questionnaire(SNAQ) ★★ 【付録:評価 24】→p236 CNAQの質問項目を4項目に短縮したSNAQは、合計点数が4~ 20点であり、14点以下で体 重減少のリスクありと判定される
49)。
⑤ 主観的包括的アセスメント(subjective global assessment SGA) ★ 【付録:評価 25】
→p237SGAは、栄養状態を問診や身体計測によってスクリーニングするための指標である。SGAは 主観的評価 5 項目(体重変化・食物摂取状況・消化器症状・身体機能・疾患と栄養必要量の関係)
と、身体所見(皮下脂肪・筋肉の喪失)から、栄養障害を「栄養良好」、 「栄養不良」、 「高度の栄養 不 良 」 と 主 観 的 に 判 定 す る。 ま た SGA は、 客 観 的 評 価 指 標 で あ る MST(Malnutrition Screening Tool)との関連性が報告されている
50)。
⑥ Nutritional Screening Initiative(NSI) ★ 【付録:評価 26】
→p238NSIは、栄養状態を質問票によってスクリーニングする指標である。NSIは食事や体重などの 栄養に関係する10項目の質問について、 「はい」、 「いいえ」 のいずれかで回答する。評価は、各 項目で重み付けされた配点を合計し、得点が高いほど栄養障害のリスクが高いことを表す。
NSIは3段階の栄養関連リスクに分類され、0 ~ 2点が良好、3 ~ 5点が中等度リスク、6点以 上が高リスクであり
51)、最高点は21点である。NSIが高リスクに該当する高齢者では、ADL 能力低下のリスクが高まることが報告されている
52)。
3)効果判定のための項目(プログラム実施前後で計測)
① 体重★★★
基準値:6 ヶ月間で2 ~ 3kg以上の体重減少は、低栄養のリスクと判定される。
ドキュメント内
目 次
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