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6. 考察

6.5 対話に対する協力姿勢

高年齢層群はより協力的なしかたで対話を行う

共同補完は、数は少ないながら高年齢層群に多く見られた。高年齢層群では、片方 が喚語困難状態にあるとき、他方がそれを補うという形で共同補完が起こっていると 考えられる。高齢者は発話速度が遅くなり、ことばを思い出しにくくなるが、それを 補うような形で対話が行われていると考えられる。

相手のことばの全部または一部を使っての繰り返し応答も高年齢層群でやや多く見 られた。繰り返しは個人間の係わり(interpersonal involvement)を作り出す(Tannen,

1989)が、共同補完とあわせて考えると、高齢者の対話への姿勢はより協力的なもの

であるのかもしれない。

共同補完は、知り合い期間の長短と関係があるかもしれない。知り合い期間が長く なれば、共同体的な共通基盤も増える。私的な共通基盤も蓄積されていき、相手の発 話への類推も働きやすくなるだろう。しかし今回得られたデータでは、低年齢層群で 最も多く共同補完が見られたペア(このペアは繰り返し応答もまた最も多かった)の 知り合い期間は、3ヶ月であった。このことから考えると、知り合い期間の長短と対 話の協力姿勢は、関連がないのかもしれない。

6.6 対話の 対話の 対話の 対話の 2 つの型 つの型 つの型 つの型

以上より、高年齢層群の対話は、

・発話番非交換型

・汎用「承認」多用型

・基盤化強化型

・高協力型

であることがわかった。このような対話を、特徴の一つを取って「発話番非交換型」、

その逆の特徴を持つ対話を「発話番交換型」と呼ぶことにしよう。

今回得られたデータを、高年齢層群、低年齢層群という群ではなく、個別に見てみ ると、低年齢層群の中の

Y1

は以下のように発話番非交換型の特徴を示していた。

表 6.3(高年齢層群の平均と

Y1

の比較:「承認」と共同補完・繰り返し応答のみ)

高年齢層群の平均

Y1

承認+始動 10.2(10.3%) 17(18.7%)

承認(汎用) 40.6(42.8%) 38(41.8%)

承認(非汎用) 45(46.9%) 36(39.6%)

※(  )内の%は全

ack

数に占める割合

共同補完 2.6 4

繰り返し応答 4.6 4

Y1

を高年齢層群の平均と比較すると、特に「承認」+「始動」の割合、汎用「承 認」の割合、共同補完、繰り返し応答の点で、類似している。これは高年齢層群の特 徴が、どの年齢に見られる可能性があることを示唆している。

つまり対話には発話番非交換型と発話番交換型の

2

つの型があり、高年齢層群には 発話番非交換型が、低年齢層群には発話番交換型が多く観察されたのである。

6.7 対話の「わかりやすさ」とは 対話の「わかりやすさ」とは 対話の「わかりやすさ」とは 対話の「わかりやすさ」とは

本研究の目的は対話における高齢者の「ものわかり」の悪さを実証的に検証するも のであったが、その奥には、対話の「わかりやすさ」とはどのようなものであるのか、

という疑問があった。一般に対話の「わかりやすさ」について考えてみると、話し手 が聞き手の背景知識やその時の要求に沿って応対をするという場面が思い浮かぶが、

そのとき聞き手は、わからないことを質問してわかりを強めようとするのではないだ ろうか。つまり、問いを発したり、聞き返したり、より証拠性の高い承認を行ったり

して、自分自身のわかり具合を相手に伝えようとするのではないだろうか。そのよう に考えると、汎用「承認」が多い発話番非交換型の対話は、わかりにくいという印象 を与えるものであると言えるだろう。

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