さて、次にexの逆関数であるlogxについて考えましょう。x= 0は定義域の外なので、x= 1 を中心とした級数を考えることにします。ただし、見た目を簡単にするために x= 0を中心とし た級数で考えたいので、平行移動して log(1 +x)にしておきます。なお、1以外の正実数aを中 心とした場合については、
log(a+x) = log (
1 + x a )
+ loga
とすることにより1を中心とした場合に帰着できます。詳しくは考えてみて下さい。
結果は次のようになります。
log(1 +x)のx= 0におけるテイラー級数は、−1< x≤1の範囲ではlog(1 +x)に収束し、
それ以外では収束さえしない。
証明. xの範囲ごとに証明して行きましょう。
− 1 < x ≤ 1 のとき
テイラー級数がもとの関数に収束することを示すには、n次の剰余項が n→ ∞のときに0に収 束することを示せばよいのであって、テイラー級数の形は必要ありません。面倒なので、いきなり 剰余項を扱うことにします。
ラグランジュ表示を使うと−1< x <0での収束を示すことができません。(試してみてくださ い。)コーシー表示や積分表示を使うと証明できるのですが、ここでは
log(1 +x) =
∫ x 0
1 1 +tdt であることを使う方法を紹介します。
(1 +x)(1−x+x2+· · ·+ (−1)n−1xn−1) = 1 + (−1)n−1xn ですので、
1
1 +x = 1−x+x2− · · ·+ (−1)n−1xn−1+ (−1)n−1 xn 1 +x となります。これを1からxまで積分して
log(1 +x) =x−x2 2 +x3
3 − · · ·+ (−1)n−1xn
n + (−1)n
∫ x 0
tn 1 +tdt
が得られます。。この多項式部分が log(1 +x)のx= 0を中心としたn次のテイラー近似多項式 と一致しているので、n次の剰余項を
(−1)n
∫ x 0
tn 1 +tdt と表示できることがわかりました。
0≤x≤1のとき、
(−1)n
∫ x 0
tn 1 +tdt
≤
∫ x 0
tndt= xn+1 1 +x
n→∞
−−−−→0
となるので示せました。
−1< x <0 のとき、
(−1)n
∫ x 0
tn 1 +tdt
=
∫ |x| 0
sn
1−sds≤ 1 1 +x
∫ |x| 0
snds= |x|n+1 (n+ 1)(1 +x)
n→∞
−−−−→0
となり、やはり示せました。 □
| x | > 1 のとき
一般に、無限級数∑∞
k=0ak が収束するなら、
nlim→∞|an|= 0 (8)
でなければならないことを思い出して下さい。実際、Sn=∑n
k=0ak, S=∑∞
k=0ak とするとき、
|an|=|Sn−Sn−1|−−−−→ |n→∞ S−S|= 0 です。
log(1 +x)のx= 0におけるテイラー級数は
∑∞ k=1
(−1)k−1xk
k =x−x2 2 +x3
3 −x4 4 +x5
5 − · · ·
でした。この級数は|x|>1 では条件(8)に反することを示しましょう。|x|>1 を満たすxを一 つ固定します。
nlim→∞
n+ 1 n = 1
ですので、ある自然数N で、N より大きな任意の自然数nに対して n+ 1
n <|x|
となる N が存在します。よってN より大きな任意の自然数nに対して xn+1
n+ 1 =
xxn n
n n+ 1
= xn
n
|x| n n+ 1 >
xn n
n+ 1 n
n n+ 1 =
xn n
となって、N より大きいところではxn
nという数列は単調増加であり、0に収束することはあり 得ません。
これでlog(1 +x)のx= 0におけるテイラー級数が |x|>1 で収束しないことが示せました。
x = − 1 のとき
log(1 +x)のx= 0におけるテイラー級数 x−x2
2 +x3
3 − · · ·+ (−1)n−1xn n +· · · に x=−1を代入して得られる無限級数
1 +1 2 +1
3 +· · ·+1 n +· · · を調和級数といいます。lim
n→∞1/n= 0なので、|x|>1のときのように級数の発散を示すことはで きません。そこで、他の工夫が必要になります。
n n+ 1 x 1
n y= 1
x
図 5: 面積比べ。
積分と比較する
f(x) = 1/xの積分と比較しましょう。
1 n >
∫ n+1 n
1 xdx
です(図5)。 よって、
1 + 1 2+1
3 +· · ·+ 1 n >
∫ n+1 1
1
xdx= log(n+ 1)−−−−→n→∞ +∞ となって示せました。 □
発散することがわかっている級数と比較する
積分を微分の逆演算として定義している以上、定積分がグラフの囲む部分の面積になっているこ とを使ってしまったら証明とは言えない、と思う人もいるでしょう。冬学期に積分を面積の一般化 として定義し直すと上の証明はキッチリ正当化されますが、たしかに現時点ではその批判は当たっ ていると思います。そこで、もっと初等的な証明も紹介しましょう。
第2n+ 1項目から第2n+1 項目をすべて1/2n+1 に変えた無限級数を考えます。具体的には、
1 +1 2 +1
3+1 4+1
5 +· · ·+1 8 +1
9+· · ·+ 1 16+ 1
17+· · · を
1 +1 2 +1
4+1 4 +1
8 +· · ·+1 8 + 1
16+· · ·+ 1 16+ 1
32+· · ·
と作り替えます。すると、各項はもとの調和級数の対応する項以下であり、第2n+ 1項目から第 2n+1 項目までの和はすべて1/2です。よって、
1 +1 2 +1
3+1 4 +1
5 +1 6+1
7 +· · · ≥1 + 1 2+1
4+1 4 +1
8 +1 8+1
8 +· · ·
= 1 + 1 2+1
2+1 2 +1
2 +1
2· · ·= +∞ となって示せました。 □
9.4.1 問題12
テイラー展開可能である関数を利用して、テイラー展開でない無限級数展開を得る例を一つだけ お見せします。問題12です。
解答. −1< X≤1の範囲で
log(1 +X) =X−X2 2 +X3
3 −X4
4 +· · ·+ (−1)n−1Xn n +· · ·
が成り立ちます。これに X = 1/xを代入することにより、x <−1 および1≤xにおいて log
( 1 + 1
x )
= 1 x− 1
2x2 + 1 3x3− 1
4x4 +· · ·+(−1)n−1 nxn +· · · が成り立つことになります。よって、同じ範囲において
x−x2log (
1 + 1 x
)
=x−x2 x + x2
2x2− x2 3x3 + x2
4x4− · · · − (−1)n−1x2 nxn − · · ·
= 1 2− 1
3x+ 1
4x2 − · · ·+ (−1)n (n+ 2)xn +· · · となります。つまり、
an =(−1)n n+ 2 です。 □