筑波大学医学医療系
ミトコンドリアは分裂と融合を繰り返すダイナミックなオルガネラ.として知られている。基本的に はミトコンドリアはネットワーク構造を形成しているが、この『形』は様々な条件によって変化し、
「ミトコンドリアの形態に異常が生じた」という言葉で説明がなされている。それではなぜ、ミトコ ンドリアの『形』は変化するのだろうか?このミトコンドリアの『形』を変えると、細胞内でどのよ うな変化が生じるのだろうか?そもそもミトコンドリアのネットワーク構造が崩れることは、ミトコ ンドリアにとって「異常」なのだろうか?本発表ではミトコンドリアの『形』に着目し、その『形』
がもつ生物学的意義をどのように紐解くのか、という点について、構成論的なアプローチを中心とし てお話をさせていただきたいと考えている。
2008年
神戸大学大学院 医学研究科 終了(学位:医学)
2008-2011年 国立がん研究センター研究所 リサーチレジデント 2011-2014年 Johns Hopkins University 海外特別研究員 2014-2017年 東京大学医科学研究所 特任助教
2018年-現在 筑波大学 医学医療系 助教
YTC1-1(症例)
持続血糖測定(CGM)にて無自覚性低血糖を認め たSLC5A2遺伝子変異を伴う家族性腎性糖尿の1 家系佐田 健太朗1、日高 周次1、今石 奈緒1、上野 大輔1、 柴田 浩平2、片島 るみ3、池上 博司4、加隈 哲也5、柴田 洋孝6
1大分県厚生連鶴見病院.糖尿病・代謝内科、2大分県厚生連鶴見病院.消化器 外科、3国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター.臨床研究部小児ゲ ノム医療研究室、4近畿大学医学部.内分泌・代謝・糖尿病内科、5大分大学 医学部.保健管理センター、6大分大学医学部.内分泌代謝・膠原病・腎臓内科 学講座
【症例】26歳、男性。従来高血糖を指摘されたことはないが、繰り返し尿糖 陽性を指摘されたため紹介受診となった。母・叔父・祖父も、高血糖を伴わ ない尿糖陽性を指摘されていた。患者は尿糖定性(4+)、43.0g/日の尿糖排泄 がみられたが、空腹時血糖値:91mg/dL、空腹時インスリン:5.9μU/mL、
HbA1c:5.3%、75gOGTTにおける耐糖能は正常であった。患者と両親を対 象に遺伝子解析を実施したところ、患者とその母にSGLT2蛋白をコードする SLC5A2遺伝子のヘテロ接合体ミスセンス変異(c.303T>A:p.N101K)が認 められた。CGMにて平均236分/日の無自覚性低血糖(<70mg/dL)が観察 された。【考察】家族性腎性糖尿は、尿細管におけるグルコース再吸収が低下 することで、高血糖を伴わないにもかかわらず尿糖を認める遺伝性疾患であ る。今回家族性腎性糖尿の1家系について検討を行った。腎性糖尿は尿検査を 契機に発見され、無症状であることが多く低血糖は稀とされているが、本症例 のCGMでは無自覚性低血糖が観察された。今回の症例より、腎性糖尿の診療 においては糖尿病の鑑別と同時に無自覚性低血糖の可能性も念頭に置く必要性 が示唆された。
YTC1-2(症例)
著明な高カルシウム血症を呈し、腺腫摘出術より20年以上経過した後に発見された肺転移病変を契 機に診断に至った副甲状腺癌の一例
松田 直樹1、藤原 貫爲1、仲間 寛1、今川 全晴2、水内 寛3、 米増 博俊4、中川 健士4、加隈 哲也5、柴田 洋孝6
1大分赤十字病院.内分泌・糖尿病内科、2同.腎・泌尿器外科、3同.呼吸器外 科、4同.病理診断科、5大分大学保健管理センター、6大分大学医学部.内分泌 代謝・膠原病・腎臓内科学講座
【症例】46歳、男性。X-22年に左橈骨骨折した際に高Ca血症、骨粗鬆症を指 摘。精査により原発性副甲状腺機能亢進症と診断され、同年に左下副甲状腺摘 出術施行。病理診断は腺腫であった。X年1月に心窩部不快感を自覚、近医で の腹部CTで巨大膵嚢胞を指摘され当院消化器内科受診。血液検査で著明な高 Ca血症.(15.0mg/dL). とintact-PTH高値.(502pg/ml). を認め、シナカルセト内 服開始。超音波検査では副甲状腺腺腫の指摘はなかったが胸部CTで右肺上葉 に7mm大、右肺下葉に20mm大の腫瘍を認め、Tc-MIBIシンチグラフィーで 同部位への集積をみたため異所性PTH産生腫瘍が疑われた。8月に胸腔鏡下右 肺下葉切除、右肺上葉部分切除術施行。術後より低Ca血症.(7.9mg/dL).となり CaおよびビタミンD製剤内服開始。切除した腫瘍は組織学的に悪性所見に乏 しいものの、以前摘出された腺腫と組織形態学的、免疫組織学的にほぼ同様の 所見を呈しており、臨床経過を併せ副甲状腺癌の転移再発と診断した。【考察】
原発性副甲状腺機能亢進症において癌腫の占める頻度は2~3%程度と稀な上 に組織学的に腺腫との鑑別が困難な場合があり、摘出後の局所再発や遠隔転移 によって初めて診断がつく症例も少なくない。本症例は腺腫摘出から20年以 上経過した後の肺転移により診断に至った非常に稀なケースであり、腺腫と診 断された症例においても癌腫の可能性を念頭に置き診療にあたる必要があると 考えられた。
YTC1-3(症例)
本態性血小板増多症に伴う両側副腎出血から副腎皮質機能低下をきたした一例
伊藤 慶人1、紀田 侑子2、丹波 祥子1、杉山 拓也1、山本 浩司1、 山田 晃3、山田 祐也1、松澤 佑次1
1一般財団法人住友病院.内分泌代謝内科、2一般財団法人住友病院.血液内科、
3一般財団法人住友病院.消化器内科
【緒言】本態性血小板増多症(ET)は動脈・静脈いずれにもきたし得る血栓性 疾患や出血性疾患を引き起こすが、両側副腎出血をきたし副腎皮質機能低下 症に至ることは極めて稀である。【症例】60歳女性。心窩部痛を自覚し近医で 胃腸炎と診断されたが、症状が持続したため翌日当院を受診した。WBC.29.1
×103/μl,.Hb.14.9g/dl,.PLT.70.8×104/μlとWBC,.PLTの上昇を認め、症状 の持続も含め精査目的に入院した。膵酵素の上昇はなかったが、入院時CTで 膵体尾部周囲の脂肪織濃度上昇を認めたため、3日目に再度CTを撮影した。
新たに両側副腎の著明な腫大が出現し、副腎出血疑いで当科紹介となった。
ACTH.494pg/ml,.F(6時).1.47μg/dl,.F(23時).1.54μg/dl,.蓄尿F≦5.0μg/日か ら副腎皮質機能低下症と診断し、ヒドロコルチゾンによる補充を開始した。副 腎腫大はその後画像検査で経時的に縮小し、その他所見を含め両側副腎出血と 診断した。骨髄生検やJAK2変異陽性等からETと診断し、鑑別疾患の精査後、
ETによる副腎出血と判断した。出血後半年以上経過したが副腎は萎縮し、補 充療法から離脱できていない。【考察】副腎は動脈が多く静脈が少ない血流豊 富な臓器である。血管壁も脆弱で、微小血管や主静脈レベルに血栓が形成され ると圧力により出血し易い。そのため易出血状態のみならず血栓も副腎出血を きたし得る。ETによる副腎出血は極めて稀であり、出血直後は画像変化に乏 しいことから診断が困難な可能性もあるが、致死的疾患であるため注意深い フォローを要する。また副腎皮質機能低下が不可逆的である可能性も重要であ る。
YTC1-4(症例)
肝転移巣からのACTH様物質の分泌によるクッシング症候群再発が疑われた膵NECの一例 岡本 紗希1、桑田 仁司1、浜本 芳之1、細田 洋平2,3、河本 泉2,3、 今村 正之2,3、清野 裕1
1関西電力病院.糖尿病・代謝・内分泌センター、2関西電力病院.外科、3関西 電力病院.神経内分泌腫瘍センター
53歳男性、来院1カ月前からの全身倦怠感と顔面浮腫を主訴に受診。満月様顔 貌を認め、ACTH低下、血中、尿中コルチゾールが上昇、日内変動は消失し ていた。デキサメサゾン抑制試験で0.5mg、8mgともに抑制が認められずクッ シング症候群と診断した。造影CT検査で、膵尾部に低吸収腫瘤、肝臓にリン グ状の造影効果のある低吸収腫瘤が多発しており、膵臓のEUS-FNA及び肝 生検の結果、膵神経内分泌癌(NEC)、多発肝転移と診断した。CTで副腎腫瘍 は認めず、アドステロールシンチグラフィでは両側副腎に同等の集積を認める 他に有意な集積を認めず、頭部MRIで腫瘍性病変を認めなかった。以上より、
コルチゾールは両側副腎からの分泌であり、ACTH低値のため肝腫瘍から測 定不能なACTH様物質が産生されコルチゾールの過剰分泌に至ったと考えた。
メチラポンを使用しつつ膵神経内分泌腫瘍の治療を開始した。転移巣に対して 動脈塞栓術(TAE)を施行したところ速やかにコルチゾール値は正常化し、正 常ACTHは上昇を認め、メチラポンが不要となった。しかし1年程度経過し再 度肝転移巣が増大、ACTH.4.0pg/mlと低下しコルチゾールは血中31.7μg/dl、
尿中1760μg/日と上昇を認め、CTにて両側副腎腫大が確認された。全身状態 の悪化とうつ傾向からメチラポンの服用が難しく、肝全体に対し再度TAEを 施行したところ、再度ACTHの上昇とコルチゾールの低下を認めた。肝腫瘍 の増悪に合わせてCushing徴候が出現し、2度にわたって全肝TAEにて症状 がコントロール可能となった症例を経験したためこれを報告する。
YTC1-5(症例)
妊娠中に高血圧と精神症状を呈した副腎皮質・髄質混合腫瘍の1例
神澤 真紀1、福岡 秀規2、重村 克己3、青山 弥生4、中村 保宏5、 原 重雄1、山本 あかね2、高橋 裕6、伊藤 智雄1
1神戸大学病院.病理診断科、2同糖尿病内分泌内科、3同泌尿器科、4東北大学 病院病理部、5東北医科薬科大学医学部病理学教室、6神戸大学大学院医学研 究科糖尿病・内分泌内科学
【症例】32歳女性【現病歴】妊娠14週に血圧165/105mmHgと高く、降圧薬開 始されたが、血圧は上昇傾向であった。妊娠27週頃からパニック障害などの 精神症状が出現。妊娠29週に血圧が214/140mmHgまで上昇し、緊急帝王切 開で分娩。分娩後も高血圧が続き、畜尿メタネフリン.5.35.mg/day、ノルメタ ネフリン1.2.mg/day、ドパミン.1235.ng/day、尿中遊離コルチゾール214.6.μ g/dayと高値を認めた。腹部CTで右副腎に4cm大の腫瘤を指摘され、MIBG シンチグラフィーにて同部に集積を認め、褐色細胞腫と診断され、産後1か 月半で腹腔鏡下副腎摘除術施行。術後カテコラミン、コルチゾールいずれも 正常化した。【既往歴】なし【家族歴】祖母、母親:高血圧症【病理所見】副 腎に4cm大の褐色充実性腫瘍を認めた。組織では1.両染性で広い細胞質を有 する細胞の充実性増殖像と2.好酸性胞体、類円形核を有する細胞の充実増殖 像が混在していて、両者は入り混じるように認められた。免疫染色では1.は chromogranin.A、DBH、PNMT等副腎髄質マーカーが陽性、2.はSF1、3β HSDなど皮質マーカーが陽性であり、皮質髄質混合腫瘍と診断した。【遺伝 子検索】患者末梢血リンパ球、腫瘍DNAのエクソーム解析を施行した結果、
FGFR4-G388Rの胚細胞バリアントを同定した。【考察】副腎皮質髄質混合腫 瘍は、検索範囲では20例しか報告のない稀な腫瘍であり、その病態は不明で ある。FGFR4-G388Rバリアントは膵内分泌腫瘍や下垂体腺腫を含む多くの腫 瘍発生との関連が示されており、病因との関連を現在検討中である。
YTC1-6(症例)
オクトレオスキャンが診断の一助となった異所性副甲状腺機能亢進症の一例
押田 卓磨1、横田 健一1、川合 未来1、吉本 憲史1、伊藤 智章1、 菱田 智之2、松阪 陽至3、亀山 香織4、宮下 和季1、
小林 佐紀子1、栗原 勲1、伊藤 裕1
1慶應義塾大学.医学部.腎臓内分泌代謝内科、2同呼吸器外科、3同放射線科、
4同病理診断科
71歳男性。X年8月に意識障害で近医搬送され、補正Ca.16.8.mg/dL、P.2.0.
mg/dL、intact-PTH.531.pg/mLなどを認めたため原発性副甲状腺機能亢進症 (PHPT)が疑われた。しかし頚部超音波検査で副甲状腺腫を指摘できず、CT で中縦隔に28mm程度の嚢胞性病変を認めるものの、頸部から骨盤にかけて の99mTc-MIBIシンチグラフィーで集積所見を認めなかったため、高Ca血 症コントロールとPHPT原発巣精査目的に当科に紹介となった。高Ca血症に 対し生食補液、ゾレドロン酸およびシナカルセト投与を行うもintact-PTHは 反応不十分で、Ca値も11~13mg/dl程度までの改善に留まった。一方原発巣 の探索については、CTで指摘された中縦隔嚢胞性病変の左壁の一部にオクト レオスキャンにて111In-pentetreotideの集積亢進を認め、同部位を原発巣と した異所性副甲状腺機能亢進症が疑われた。11月18日に呼吸器外科にて縦隔 腫瘍切除術が施行され、手術直前の血液検査でintact-PTH.570.pg/mL、補 正Ca.12.1.mg/dLと高値だったが、手術直後よりいずれも低下を認め、11月 25日にはintact-PTH.47.pg/mL、補正Ca.10.7.mg/dLまで改善を認めた。病 理検査では、3cm大の嚢胞で内部に1cm大の充実部を認め、充実部は異型に 乏しい神経内分泌細胞が胞巣状に増生しており、縦隔原発の異所性副甲状腺 腫の診断となった。免疫染色では、PTH(+)、chromogranin.A(+)、CD56(-)、synaptophysin(-)、CK.AE1/AE3(+)、Ki-67.index<1%で あ っ た。 以 上、
MIBIシンチグラフィーで集積を認めないPHPT症例にオクトレオスキャンを 用いることは診断の一助となりうると考え報告する。
YEC3-2
ミトコンドリアの『形』を読み解く
宮本 崇史、島野 仁
筑波大学医学医療系
ミトコンドリアは分裂と融合を繰り返すダイナミックなオルガネラ.として知られている。基本的に はミトコンドリアはネットワーク構造を形成しているが、この『形』は様々な条件によって変化し、
「ミトコンドリアの形態に異常が生じた」という言葉で説明がなされている。それではなぜ、ミトコ ンドリアの『形』は変化するのだろうか?このミトコンドリアの『形』を変えると、細胞内でどのよ うな変化が生じるのだろうか?そもそもミトコンドリアのネットワーク構造が崩れることは、ミトコ ンドリアにとって「異常」なのだろうか?本発表ではミトコンドリアの『形』に着目し、その『形』
がもつ生物学的意義をどのように紐解くのか、という点について、構成論的なアプローチを中心とし てお話をさせていただきたいと考えている。
2008年
神戸大学大学院 医学研究科 終了(学位:医学)
2008-2011年 国立がん研究センター研究所 リサーチレジデント 2011-2014年 Johns Hopkins University 海外特別研究員 2014-2017年 東京大学医科学研究所 特任助教
2018年-現在 筑波大学 医学医療系 助教