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第5章 単結晶 Li x CoO 2 における拡散係数測定

試料一部分を 6 Li電解液に浸漬

5.3 実験結果と考察

5.3.1 LCO単結晶の電気化学特性

図 5.5 に LCO 単結晶の定電流充放電試験の結果を示す.充電,放電ともに 10 μA(0.11

mA cm−2)で行い,電位範囲は3.0–4.1 Vで行った.動作電位はおよそ3.9 Vであり,これは一

般的なLCOの動作電位に対応する.図 5.6にサイクル毎の容量の変化,図 5.7に20 サイク ルまでの微分容量曲線を示す.1サイクル目に非常に大きな界面抵抗があるようだが,充放電 繰り返すことで改善していくことがわかる.その後は比較的良いサイクル特性を示している.

つぎに1サイクル目の充放電におけるEISの結果をNyquist線図(図5.8)とBode線図(図

5.9)として示す.大きく分けて 2 つの半円を確認できた.1つ目の半円は電位の変化に対して

ほとんど変化がないところから電解液の Li+イオン伝導度に対応する成分であることがわかる.

したがって,2 つ目の電位に対して強く依存してる成分を電解液―正極界面における電荷移 動抵抗と帰属した得られた電荷移動抵抗𝑟ctと交換電流密度𝑖exを図5.10と表5.1,表5.2に示 す.ただし.電極面積は0.077 cm2であった.充電時3.8 Vは測定していた周波数範囲(106– 10−2 Hz)では収まらなかったために値が定まらなった.4.0 V で𝑟ct≅ 30 Ω cm2であり,文献

[50]と比較すると2倍程度とやや大きい電荷移動抵抗となっている.この結果は充放電試験の

ときに確認された1サイクル目に特に顕著であった大きな界面抵抗と対応する.

図5.5 定電流充放電試験による容量―電位曲線

0 10 20 30 40 50 60 70 80

3.0 3.2 3.4 3.6 3.8 4.0 4.2

Pot e n ti a l v s . L i / L i

+

( V)

Capacity (μAh)

1st 2nd 4th 6th 8th 10th 12th 14th 16th 18th 20th 25th 30th 35th 40th 45th

図5.6 定電流充放電試験によるサイクル特性

図5.7 定電流充放電試験による微分容量曲線(左:放電時,右:充電時)

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 0

20 40 60 80

charge dischsrge

Capacity (μAh)

Cycle number

3.90 3.95 4.00 4.05 4.10

ΔQ / ΔV (a.u.)

Potential vs. Li / Li+ (V)

1st

20th

3.6 3.7 3.8 3.9 4.0 4.1

- ΔQ / ΔV (a.u.)

Potential vs. Li / Li+ (V)

1st

20th

Charge

Discharge

図5.8 1サイクル目におけるEISのNyquist線図.右図は,左図赤枠の拡大図.

図5.9 1サイクル目におけるEISのBode線図.インピーダンス𝑍の絶対値(a)と位相(b) の周波数依存性.

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 0

1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000

-Im(Z) )

Re(Z) (Ω)

3.8 V_charge 3.9 V_charge 4.0 V_charge 4.1 V_charge 3.8 V_discharge 3.9 V_discharge 4.0 V_discharge

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 0

200 400 600 800 1000 1200 1400

-Im(Z) )

Re(Z) (Ω)

3.8 V_charge 3.9 V_charge 4.0 V_charge 4.1 V_charge 3.8 V_discharge 3.9 V_discharge 4.0 V_discharge

10-3 10-2 10-1 100 101 102 103 104 105 106 102

103 104

abs(Z) (Ω)

Frequency (Hz)

3.8 V_charge 3.9 V_charge 4.0 V_charge 4.1 V_charge 3.8 V_discharge 3.9 V_discharge 4.0 V_discharge

10-3 10-2 10-1 100 101 102 103 104 105 106 -80

-60 -40 -20 0

phase(Z) (°)

Frequency (Hz)

3.8 V_charge 3.9 V_charge 4.0 V_charge 4.1 V_charge 3.8 V_discharge 3.9 V_discharge 4.0 V_discharge

(a)

(b)

図5.10 LCO単結晶における電荷移動抵抗と交換電流密度の電位依存性

表5.1 LCO単結晶における電荷移動抵抗の電位依存性

Potential (V) rct charge (Ω cm2)

rct discharge (Ω cm2)

3.8 - 356

3.9 67.4 48.9

4.0 28.9 35.6

4.1 31.7 -

表5.2 LCO単結晶における交換電流密度の電位依存性

Potential (V) iex charge (A cm-2)

iex discharge (A cm-2)

3.8 - 7.22 × 10−5

3.9 3.81 × 10−4 5.25 × 10−4

4.0 8.89 × 10−4 7.22 × 10−4

4.1 8.10 × 10−4 -

3.8 3.9 4.0 4.1

0 100 200 300 400

3.8 3.9 4.0 4.1

10-5 10-4 10-3

charge discharge

r

ct

( Ω ·cm

2

) i

ex

( A ·cm

-2

)

Potential vs. Li / Li

+

(V)

5.3.2 LixCoO2単結晶におけるab面内のトレーサー拡散係数

電気化学的に Li 脱離した LCO 単結晶において,トレーサー拡散測定を行った.6Li 電解 液に一部分を沈め,拡散によって6Li濃度がせりあがってくる様子をSIMSによって観察した.

SIMSまでの輸送中に拡散が進行する可能性に気を付けるため,試料は回収後30 min 以内 にSIMSへ輸送し,温度可変ホルダーによって液体窒素温度で冷却をした.

Li組成x = 0.6における室温拡散実験後の6Li同位体比を図5.11に示す.室温19 hでお

よそ 1 mm の拡散長を観察することができた.解析には一定ソースにつけたときの半無限解

[32]

𝐶(𝑥, 𝑡) − 𝐶0

𝐶f− 𝐶0 = erfc ( 𝑥

2√𝐷𝑡) (5.1)

を使用した.得られたab面内トレーサー拡散係数𝐷ab∥ は2.8 × 10−8 cm2 s−1であった.これは Van der Ven[71, 105]が予想した値や,NMR[63],μ+SR[66]の室温外挿値より速い.

温度依存性を測定するために一度測定した試料を SIMS に入れたまま温度可変ホルダー

によって120°Cまで昇温し,試料を3 hアニーリングした.その後改めて 6Li同位体比を測定

したものを図5.12上に示す.もともと形成されていた6Li同位体比のプロファイルが 120°Cア ニーリングによってさらに拡散長が伸びたことがわかる.ただし,およそ 2 mm の位置から拡散 が進行しなかった.これは回収後の光学レーザー顕微鏡の観察(図 5.13)で SIMS 測定用の ホルダーに固定するときにクラックが入ったために拡散が途切れてしまっていたことが確認さ れた.

試料端からクラックまでの間を6Liは拡散できるとし,1次元拡散シミュレーションを陽解法に よって計算した.その結果を図5.12下に示す.計算の結果,120°Cにおける ab面内のトレー サー拡散係数は10倍の2.8 × 10−7 cm2 s−1であった.シミュレーションの結果に対して実際の

6Li同位体比が小さくなっているが,これはクラックにおける染み出しのためだと考えられる.

同様にしてx = 0.5,0.7でも測定を行い,得られた6Li同位体比プロファイルをそれぞれ図 5.14に示した.また,そこで得られたab面内トレーサー拡散係数の値を表5.3にまとめた.

図5.11 Li0.6CoO2単結晶における室温19 h後のab面内6Li同位体比プロファイル

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2

6 Li / (6 Li + 7 Li)

Position (mm)

Soaked in

6Li Electrolytes

Li0.6CoO2 in-plane 25oC 19 h D*ab‖ = 2.8 x 10-8 cm2 s-1

図5.12 120°C,3 hアニーリング後のLi0.6CoO2単結晶の6Li同位体比プロファイル.下は拡 散シミュレーションとの比較図.

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2

Before Annealing Annealing at 120oC 3h

6 Li / (6 Li + 7 Li)

Posituon (mm)

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2

Before Annealing Annealing at 120oC 3h

6

L i / (

6

L i +

7

L i)

Posituon (mm)

Diffusion Area

Initial State DRT x 2 DRT x 4 DRT x 6 DRT x 8 DRT x 10

図5.14 Li組成x = 0.5(上), 0.7(下)における室温での6Li同位体比プロファイルと120°C,3 hアニーリング後の6Li同位体比プロファイル

表5.3 LixCoO2単結晶におけるab面内トレーサー拡散係数𝐷ab∥

x in LixCoO2 single crystal Temp. (°C) 𝐷ab∥ (cm2 s−1)

0.7 25 1.1 × 10−8

0.7 120 2.8 × 10−7

0.6 25 2.8 × 10−8

0.6 120 2.8 × 10−7

0.5 25 1.5 × 10−9

0.5 120 2.0 × 10−7

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

0.2 0.4 0.6

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

0.2 0.4 0.6

6 Li / (6 Li + 7 Li)

Position (mm)

Initial State

(DRT = 1.5 x 10-9 cm2 s-1) DRT x 133

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