第三章 Vialinin A 及び vialinin A 標的分子 USP5 、 TNF-α 産生との関
第五節 実験の部
5-1. USP5酵素活性阻害試験
5-1-1. K48-linked tetra-Ub (Ub4) を用いた活性試験
K48-linked Ub4を基質としてrhUSP5酵素活性に与えるvialinin類の影響につい て検討した。1 nM rhUSP5と阻害物質 (vialinin AまたはDMT、biotin-DMT) を 混合し、37°Cの条件で15分間インキュベートした。そこに、Ub4を溶解させた 反応液※1を添加した。その後、混合液をSDS-PAGEにて分画し、銀染色にて可 視化させた。
5-1-2. Ub-AMCを用いた活性試験
Ub-AMCを基質としてrhUSP5及びUSP2 core、USP4、UCH-L1、UCH-L3 (LifeSensors)、USP8 (Boston Biochem) の酵素活性に与えるvialinin類の影響につ いて検討した。それぞれの脱Ub化酵素とvialinin Aを混合し、37°Cの条件で15 分間インキュベートした。そこに、Ub-AMCを溶解させた反応液※1を添加した。
その後、蛍光プレートリーダー (λex = 380 nm、λem =460 nm) で測定し、酵素活 性を評価した。
※1反応液
50 mM Tris-HCl (pH 8.0) 150 mM NaCl
2 mM DTT
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5-2. 脱Ub化酵素ノックダウン細胞の調製
コンフルエントのRBL-2H3細胞を新しい培養液で再懸濁し、20 nM siRNAを トランスフェクション試薬Lipofectamine RNAiMAXを用いてRBL-2H3細胞に導 入した。手順は付属の説明書に従い行った。トランスフェクション試薬のみを 処理したサンプルをMockとし、Non-target siRNAをトランスフェクトさせたサ ンプルをネガティブコントロールとした。RBL-2H3細胞を60-80%コンフルエン トの状態で播種した。その後、Opti-MEMを用いてLipofectamine RNAiMAX及
びsiRNAをそれぞれ希釈、混合し、5分間インキュベートした。この混合液を
細胞に処理し、2-4日培養した。使用したそれぞれのdsRNAはtable 3-1に示し た。
Table 3-1 siRNA sequences.
siRNA Antisense sequences (5’ to 3’)
USP5 siRNA1 CCCGAUGGAGCUGAUGUGUACUCUU
USP5 siRNA2 CCGAUGGAGCUGAUGUGUACUCUUA
USP5 siRNA3 UGUGGUCACUAUGUCUGCCAUAUCA
USP4 siRNA1 AAUUAUACGAGGCAGAGAAGCCAGC
USP4 siRNA2 UAUUCUGAGCCAUCCAUGGGAGUGG
USP13 siRNA1 CAUAGAGUCCACCUUCAGAGUUCGG
USP13 siRNA2 UACAUACGCUCUCUGGAACUCUGGG
Control AAGCUACAUGUACACGACACCUGGG
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5-3. ノックダウン効率の確認
Vialinin A標的分子USP5及びvialinin Aにより強力な酵素活性阻害を受ける
USP4、USP5とドメイン構造の類似するUSP13についてsiRNAを用いたノック
ダウンを行った。その導入効率をそれぞれの脱Ub化酵素のmRNAレベルを
RT-PCRを用いて、タンパク質レベルをwestern blotting を用いて検討を行った。
5-3-1. リアルタイムPCRを用いた脱Ub化酵素mRNAレベルのノックダウン効
率の検討
それぞれの脱Ub化酵素 (USP5及びUSP4、USP13) をノックダウンさせた
RBL-2H3細胞中のそれぞれのmRNAレベルをリアルタイムPCRにて測定した。
RNA抽出は、RNeasy Plus Kit (Qiagen) を用い、逆転写反応にはTaq Man Reverse Transcription Reagent (Applied Biosystems) を使用し、リアルタイムPCRには Power SYBR Green PCR Master Mix (Applied Biosystems) を用いて行った。使用し たそれぞれのプライマーはtable 3-2に、温度条件をtable 3-3に示した。
85 Table 3-2 Primers used for real-time PCR.
Primers Sequences (5’ to 3’)
USP4 forward CTTTGGTTTGCCCAGAATGT
USP4 reverse TGGAGAGTGCTTCACACAGG
USP5 forward CTCGGAAGCAGGAGGTACAG
USP5 reverse TCTGTCAGGTTGAGCCACAG
USP13 forward TCTGCCCTCACTGCCTATCT
USP13 reverse CTCTGGTTCCTCTCCACTGC
GAPDH forward GGCACAGTCAAGGCTGAGAATG
GAPDH reverse ATGGTGGTGAAGACGCCAGTA
Table 3-3 Conditions used for real-time PCR.
Gene name Denaturation Annealing Extension Cycle
USP4 94°C, 15 s 55°C, 30 s 72°C, 20 s 38
USP5 94°C, 20 s 55°C, 30 s 72°C, 20 s 34
USP13 94°C, 20 s 55°C, 30 s 72°C, 20 s 38
GAPDH 94°C, 10 s 62°C, 20 s 72°C, 10 s 39
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5-3-2. Western blottingを用いた脱Ub化酵素タンパク質レベルのノックダウン効
率の検討
それぞれの脱 Ub 化酵素 (USP5 及び USP4、USP13) をノックダウンさせた
RBL-2H3細胞中のそれぞれのタンパク質レベルをWestern blottingにて測定した。
まず、細胞内タンパク質をprotease inhibitor cocktailを含む0.2% triton X-100-PBS で細胞を破砕することで抽出した。タンパク質サンプルは、SDS サンプルバッ ファーと混合し、100°C で 3 分間インキュベートし、それを SDS-PAGE に供し た。タンパク質が分画されたゲルを PVF メンブレンに転写した。USP4 及び
GAPDHの検出は、0.4% ゼラチン-PBS を用いて室温で 30分間ブロッキングを
行い、anti-USP4(Santa Cruz) 及びanti-GAPDH (Santa Cruz) で4°Cで16時間、免 疫染色した。また、USP5及びUSP13の検出は、0.05% カゼイン-PBSを用いて 室温で60分間ブロッキングを行い、anti-USP5 (Abgent) 及びanti-USP13 (Protein Tech) で4°Cで16時間、免疫染色した。それぞれ2次抗体としてgoat anti-rabbit IgG-HRP を 用 い て 室 温 で 2 時 間 感 作 後 、 発 色 基 質 3, 3’-diaminobenzidine tetrahydrochloride でバンドを検出し、Image Quant 400 で画像解析を行った (Scheme 3-1)。
87 Cell lysate sample
←SDS-sample buffer (1: 1) Incubated at 100 °C for 3 min.
SDS-PAGE
Transfer to polyvinylidene fluoride membrane from acrylamide gel.
←0.4% gelatin-PBS (for USP4 and GAPDH) or 0.05% casein-PBS (for USP5 and USP13) Incubated at 4°C for 30 min or 60 min (Blocking)
←wash with 0.05% tween-PBS at four times.
←rabit anti-USP4, anti-USP5, anti-USP13 and anti-GAPDH Incubated at 4°C for overnight (First antibody)
←wash with 0.05% tween-PBS at four times.
←goat anti-rabbit IgG conjugated with HRP Incubated at r. t. for 2h. (Secondary antibody)
←wash with 0.05% tween-PBS at four times.
←colorimetric substrate 3,3’-diaminobenzidine tetrahydrochloride Incubated at r. t. for several min. (Detection)
Densitometric analysis
Scheme 3-1 Western blotting
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5-4. 脱Ub化酵素ノックダウンRBL-2H3細胞からのTNF-α放出量
USP4及びUSP5、USP13をノックダウンさせた細胞からのTNF-α放出につい
て検討を行った。それぞれの脱Ub化酵素をノックダウンさせた細胞を6時間イ ンキュベートし、その後、Monoclonal anti-DNP IgE antibodyを16時間感作させ た。細胞に非結合の抗体を洗浄し、抗原としてDNP-BSAで3時間刺激を行い、
細胞外に放出されたTNF-α量をELISA法にて定量を行った。
5-5. USP5ノックダウンRBL-2H3細胞からのTNF-α産生量
USP5 をノックダウンさせた細胞からの TNF-α 放出量が減少したことから、
TNF-α産生量を検討した。TNF-α産生量とは、細胞外に放出された TNF-α量と
細胞内に残存するTNF-α量の和で示した。USP5をノックダウンさせた細胞を6 時間インキュベートし、その後、Monoclonal anti-DNP IgE antibodyを16時間感 作させた。細胞に非結合の抗体を洗浄し、抗原としてDNP-BSAで3時間刺激を 行った。細胞外に放出されたTNF-α量は細胞上清をELISA法にて定量し、細胞 内に残存する TNF-α 量は細胞を 0.2% triton-X-100-PBS で破砕後の抽出液中の
TNF-α量をELISA法にて定量した。
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5-6. USP5ノックダウンRBL-2H3細胞におけるTNF-α mRNA発現量
USP5をノックダウンさせた細胞におけるTNF-α産生が減少したことから、
TNF-α mRNA発現量に与える影響を検討した。USP5をノックダウンさせた細胞
を6時間インキュベートし、その後、Monoclonal anti-DNP IgE antibodyを16時 間感作させた。細胞に非結合の抗体を洗浄し、抗原としてDNP-BSAで1時間刺 激を行った。RNAはRNeasy Plus Kit (Qiagen) で精製し、逆転写反応にはTaq Man Reverse Transcription Reagent (Applied Biosystems) を使用し、TNF-α mRNA発現 量は、リアルタイムPCRにおいてPower SYBR Green PCR Master Mix (Applied Biosystems) を用いて定量した。
5-7. 脱Ub化酵素ノックダウンRBL-2H3細胞からのTNF-α以外のメディエータ
ーの放出
5-7-1. 脱Ub化酵素ノックダウンRBL-2H3細胞からのIL-4の放出
USP4及びUSP5、USP13をノックダウンさせた細胞からのIL-4放出について
検討を行った。それぞれの脱Ub化酵素をノックダウンさせた細胞を6時間イン キュベートし、その後、Monoclonal anti-DNP IgE antibodyを16時間感作させた。
細胞に非結合の抗体を洗浄し、抗原としてDNP-BSAで3時間刺激を行い、細胞 外に放出されたIL-4量をELISA法にて定量を行った。
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5-7-2. 脱Ub化酵素ノックダウンRBL-2H3細胞からのβ-hexosaminidaseの放出
USP4及びUSP5、USP13をノックダウンさせた細胞からのβ-hexosaminidase
放出について検討を行った。それぞれの脱Ub化酵素をノックダウンさせた細胞 を6時間インキュベートし、その後、Monoclonal anti-DNP IgE antibodyを16時 間感作させた。細胞に非結合の抗体を洗浄し、抗原としてDNP-BSAで3時間刺 激を行い、細胞外に放出された β-hexosaminidase 量を p-Nitrophenyl-N-acethyl-β
-D-glucosaminideを用いた比色法にて定量を行った。
5-8. 脱Ub化酵素ノックダウンRBL-2H3細胞における細胞毒性
siRNAを用いた脱Ub化酵素のノックダウン細胞の調製における細胞毒性を細
胞上清中に含まれるLDHの量をLDH assay kit (Promega) で測定し評価した。手 順は付属のプロトコールに従い行った。
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5-9. Vialinin A処理及びUSP5ノックダウンがIκBの分解に与える影響
USP5 をノックダウンさせた細胞におけるTNF-α mRNA 発現量が減少したこ とから、TNF-αの転写因子であるNF-κBの抑制因子であるIκBの分解に与える 影響を検討した。USP5 をノックダウンさせた細胞を 6 時間インキュベートし、
その後、Monoclonal anti-DNP IgE antibodyを16時間感作させた。細胞に非結合 の抗体を洗浄し、抗原としてDNP-BSAを添加し、0及び5、10、30、60分後の 細胞を回収した。その細胞サンプルに含まれるIκB-α量及びGAPDH量をwestern
blotting で検討した。ブロッキングを 0.05% casein-PBS で行い、一次抗体を
anti-IκB-α (Abcam) 及び anti-GAPDH (santa cruz)、二次抗体を goat anti-rabbit IgG-HRP、発色基質を 3,3’-diaminobenzidine tetrahydrochloride とし、westerrn
blottingを行い、発現量を検出した。
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総括
中国産食用茸ツブイボタケ (Thelephora vialis) 含有vialinin AがFcεRIを介す る抗原刺激RBL-2H3細胞におけるTNF-α発現を強力に抑制することから、この 阻害メカニズムの解明を目的として研究を行った。
まず、初めにvialinin Aを含むp-terphenyl骨格を有するツブイボタケ含有の化 合物及び合成サンプルによるTNF-α産生阻害の構造活性相関を行い、vialinin A の活性アナログDMTを見い出した。Vialinin Aとその活性アナログDMTの
TNF-α発現阻害活性発現パターンを比較したところ、臨床で免疫抑制剤として
使用されているタクロリムスとは異なる阻害パターンを持つことが明らかとな った。タクロリムスはTNF-αの産生段階を阻害することから、TNF-α放出量も 産生量も濃度依存的に阻害することが観察された。これに対し、vialinin A及び DMTは、TNF-α放出量は濃度依存的に阻害するのに対し、TNF-α産生量は低濃 度で強力に阻害するものの濃度依存性を持たないという特徴的な阻害様式をも つことが観察された。この結果は、TNF-αの産生段階と放出段階で複数の阻害 点を有することを示唆した。
Vialinin Aが新たな特徴的阻害様式を持つことが示唆されたことから、活性ア
ナログDMTをリード化合物とするケミカルプローブを調製し、RBL-2H3細胞 内の動態及び標的分子の探索を行うこととした。細胞内への取り込み及び局在 性を検討するため、クマリニル基を蛍光発色団とする蛍光プローブを調製した。
また、標的分子を探索するため、biotin標識させたbiotinプローブも調製した。
蛍光プローブを用いた実験では、少しのリンカーの構造の違いにより、細胞へ の取り込みが異なること、さらに細胞内分子への結合はDMTの構造に依存する ことが示唆された。続けて実験したbiotin-DMTを用いた実験により、vialinin A
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標的分子として脱Ub化酵素の1種であるUSP5を同定した。さらに、vialinin A はUSP5の酵素活性を阻害することが観察され、加えて他の脱Ub化酵素USP4、
UCH-L1に対する酵素活性阻害を有することも観察された。
Vialinin Aが標的分子であるUSP5の酵素活性を阻害することが観察されたこ
とから、USP5の発現量とTNF-αの発現量に関連性があるのかを明らかにするた め、RNA干渉を用いて検討を行った。USP5及びvialinin Aによって酵素活性阻 害を受けるUSP4、USP5と類似するドメイン構造を有するUSP13についてRNA 干渉実験を行い、それぞれの脱Ub化酵素ノックダウンRBL-2H3細胞を調製し た。これらの細胞からの抗原刺激によるTNF-α放出量を検討したところ、Cont.
に比較してUSP5をノックダウンさせた細胞からの放出量に有意な減少が観察 された。さらに、TNF-α産生量及びmRNA発現量についても検討したところ、
Cont.に比較して有意な減少が観察された。このことから、USP5はFcεRIを介す
る抗原刺激RBL-2H3細胞におけるTNF-α産生に重要な役割をもつ分子であるこ とが示唆された。
USP5をノックダウンさせた細胞からのTNF-α mRNA発現がCont.に比較して 有意に減少したことから、TNF-αの転写因子であるNF-κBの抑制因子であるIκB の分解について検討した。TNF-αは、転写因子NF-κBによって転写誘導される。
また、NF-κB は細胞質内ではその抑制因子である IκB と複合体を形成して存在 しており、IκB がユビキチン-プロテアソーム系において分解されることによっ て、核内に移行しTNF-αを転写誘導する。Vialinin Aを処理したサンプルにおい
て、IκB-αの分解はCont.と比較し有意に減少しており、USP5をノックダウンさ
せた細胞においても同様な減少が観察された。このことから、vialinin A の
RBL-2H3細胞におけるTNF-α 産生阻害活性は、細胞質内に存在するUSP5の酵
素活性を阻害し、IκB-αの分解を阻害することで、TNF-αの転写誘導を阻害する メカニズムであることが示唆された。