1.東日本大震災支援活動関連
GLOCOLは、震災直後から東日本大震災の支援活動として、「NPO法人多言語センターFACIL」(以下、FACIL)、「NPO
法人エフエムわぃわぃ」(以下、FM わぃわぃ)と連携して、「BHN テレコム支援協議会」の協力を得ながら、被災者がひと りも排除されないために、少数者への視点にこだわった支援として「多言語情報提供」「コミュニティラジオ」「移民コミュニ ティ」という三つの柱での活動を続けているが、2012年度はこれをさらに発展させて継続した。
(1)多言語による情報提供
震災直後に必要な情報は、避難所での情報の時期も過ぎて、仮設住宅の情報と復興に向けたさまざまな情報へと移行してい る。その中でも特に、コミュニティが分断されたり、排除の構造がうまれたりする中で、コミュニティ再生や、住民同士をつ なぐための情報や、今後の経済を再生するための具体的な情報が大切になってくる。このような視点で、福島県からの情報を 中心に多言語に翻訳して、音声データを作成し、災害臨時FM局などに提供を続けた。
(2)災害臨時FM局から市民参加のコミュニティラジオへ
災害後に始まった32局の災害臨時FM局のいくつかは、コミュニティラジオ局ヘの移行を希望していたので、自治体の認 可を得て、NPO 法人等を立ち上げて恒常的な放送局にしていくうえで、阪神・淡路大震災の経験からアドバイスできること を提案する等のサポートを続けた。それは簡単ではなく、住民が本当にラジオの必要性を認識して、それを道具として有効に 使えると自主的に思い、その活動に参画していくまでのプロセスが必要で、これからも時間をかけた連携が必要になるだろう。
(3)移民コミュニティ支援
2011 年度からサポートしている気仙沼市に住む日本人配偶者のフィリピン女性グループ「バヤニハン国際友の会」のメン バーの、タガログ語によるラジオ番組制作支援を、奥州市国際交流協会と連携して続けた。制作の技術的な研修だけではなく、
阪神・淡路大震災から18年の追悼イベントをともに過ごし、FMわぃわぃの特別番組の生放送に出演してもらうなどして、
今後の復興へ向けた自助活動/発信活動についての情報交換も行った。
また、被災地に住む中国出身の住民グループなど他のグループが発信する機会を創出するために、宮城県国際化協会や岩手 県国際交流協会に、インタビューや情報の音声データをWEBサイトにアップするための機材を提供し、使い方の技術研修を 行い、より多くのマイノリティの小さな声を地域社会に伝えるために連携した活動を行った。
(4)学生の教育プログラムとして
阪神・淡路大震災18年追悼イベントおよび特別番組出演のために「バヤニハン国際友の会」のメンバーと宮城県国際化協 会の職員を招いた機会に、大阪大学大学院生が、その内容を記録して文章化し、多くの学生に伝えることとした。
2.JICA 連携事業
昨年度に引き続き、主にJICAとの連携協定にもとづいた事業を推進した。大阪大学は2007年2月にJICAとの間で以下 の連携協力協定を結んだ。GLOCOLはこの連携協力協定の内容を具体化する役割を担っている。
連携目的
(1) 国際協力に関する研究の推進 (2) 国際協力に資する人材の育成
(3) その他国際協力にかかわる事業の実施 連携協力
(1) 国際協力にかかわる研究の推進と成果の公開 (2) 国際協力にかかわる啓発的事業の実施
(3) 講師の相互派遣その他大阪大学とJICA間の人的交流
(4) 国際協力のための専門家および調査団の派遣 (5) 国際協力のための研修プログラムの実施
(6) 学生の青年海外協力隊などへの参加に対する支援 (7) 学生のJICAインターンシップへの参加に対する支援 (8) 国際協力に携わる要員の教育・訓練に対する支援 (9) 施設の相互有効利用
(10) その他、双方が合意する連携プログラム
1)JICAボランティアセミナー
JICA との連携協力協定にもとづき、大阪大学の学生に対してJICAボランティアセミナー(旧青年海外協力隊募集説明会)
を実施した。共通教育科目「世界は今」を公開授業とし、協力隊経験者の体験談を交えた応募説明会を実施した。
【開催日・場所】
2012年11月30日、共通教育B207号室(豊中キャンパス)
【プログラム】
(1) 青年海外協力隊DVD上映 (2) 青年海外協力隊事業説明
(3) 青年海外協力隊体験談 大西功二さん(マラウイ共和国:青少年活動)
(4) 質疑応答
2)JICA 大阪夏期インターンシップ実習事業
大阪大学とJICA の連携協定にもとづき、国際協力に関心をもつ大学生・大学院生を対象に、
JICA 大阪国際センター(JICA 大阪)にインターン実習生を派遣する事業を実施した。本事
業の目的は、学生に実務経験の場を提供し、国際協力に携わる人材を育成することである。イ ンターン実習生の公募は、GLOCOL が大阪大学での窓口となって行われた。応募資格をもつ 対象者は、大阪大学の学部または大学院に在学中の者で、国際協力や開発援助に深い関心があ り、将来的に国際協力に関連した仕事に携わる意志をもった者とした。2012 年度に本プログ ラムにより派遣されたインターン実習生は、下記の1名であった。
外国語学部2年
実習期間:9月3日〜14日
実習内容:「イラク国別研修 海外投資促進コース」研修業務支援
3.学生支援活動
GLOCOL では、学生、大学院生のキャリア形成の一環としていくつかの学生支援活動を行っている。その主旨は、グロー
バル共生や人間の安全保障等に関する業務を実地に学ぶこと、大学院生、あるいはPDを経済的に支援すること、これから大 学院をめざす人に安心感を提供することの3点である。
GLOCOLにおけるTA、RA、アソシエイツ、招へい研究員などは、上記主旨のもとで制度化された学生支援である。また
個々のプロジェクトでは、「地域研究コンソーシアム次世代ワークショップ」「GLOCOLプレゼンコンテスト」「ハロハロスク エア」(外国人児童生徒の学習支援に関する吹田市国際交流協会との共同事業)が、有償無償を問わず学生、大学院生のキャリ ア形成に資するものと言える。
1)地域研究コンソーシアム次世代ワークショップ
2012 年度地域研究コンソーシアム(JCAS)次世代ワークショップ(グローバル共生・国際協力)として、「東アジアの境 界を超える人々と宗教をめぐる諸問題−宗教社会学と公共人類学の対話から」(代表:藤野陽平)を採択した。
本ワークショップは、移民の増加に伴い様々な宗教が流入し日本社会が多宗教化するなか、日本を含む東アジアをフィール ドとする若手研究者が調査を通じて得た知見を共有することで、現代の東アジアにおける移動と宗教に関する新たな研究視角 を模索することを目的としている。
19世紀後半以降の人の移動は、カテゴリーの越境に伴い、意味の過剰と喪失を移民たちの生につきつけてきた。そうしたな か、とりわけ必ずしも本意ではない移動を強いられた人たちが自らの生を回復する拠り所となってきたのが宗教的実践である。
一方、こうした宗教的実践は、移動先の多文化化のコンテクストにおいて、他の住民や移民が新たな生の意味づけを見いだす 契機ともなる。本ワークショップでは、ボーダレス化した社会において意味が創造される契機としての宗教的実践を、「新しい 公共」の概念とも関連づけつつ分析しようとするが、とりわけ「新しい公共」の概念は、GLOCOL の研究や教育と融合した 実践の一つのあり方を示唆している。
本年度実施された2回のワークショップのプログラムは、以下の通りである。
● 地域研究コンソーシアム次世代ワークショップ
東アジアの境界を超える人々と宗教をめぐる諸問題 ― 宗教社会学と公共人類学の対話から
【開催日・場所】
2012年11月18日、東京外国語大学本郷サテライト5階セミナー室 2013年1月27日、国立民族学博物館4F大演習室
【言語】
日本語
【概要】
移民の増加に伴い様々な宗教が流入し日本社会は多宗教化している。ヒトがボーダレスに交 差する現代社会ではグローバルな視野に基づいた理解が求められている。
しかし、ヒトの移動と宗教についての研究はいまだ十分に進んでいない。
そこで本企画では各発表者がこれまでの調査を通じて得た知見を報告・共 有し、現代の東アジアにおける移動と宗教に関する研究視角を提出した。
【プログラム】
第1回ワークショップ【多文化共生の実践と宗教】:2012年11月18日 司会:稲沢努(東北大学)
趣旨説明:藤野陽平(日本学術振興会)
高橋典史(東洋大学)「「現代社会における移民と宗教」研究の課題と 射程」
白波瀬達也(大阪市立大学)「宗教組織による生活困窮者支援の社会学的分析 Ɇ カトリック教会による滞日外国人 支援と韓国系プロテスタント教会によるホームレス支援の比較から」
田中孝枝(東京大学大学院)「観光ルートに組み込まれた日本の神社仏閣 Ɇ 中国人ツーリストを事例として」
川崎のぞみ(筑波大学大学院)「在日ムスリム第二世代への信仰継承における日本人ムスリム指導者の役割」
コメント:山田政信(天理大学)
総合討論
第2回ワークショップ【東アジアの移民とエスニシティ】:2013年1月27日 司会:小林宏至(首都大学東京大学院)
趣旨説明:高橋典史(東洋大学)
藤野陽平(日本学術振興会)「台湾の日本人妻にとっての日本とキリスト教」
李賢京(日本学術振興会)「在日コリアンのキリスト教」
星野壮(大正大学大学院)「「倫理」と「霊・術」Ɇ日本におけるブラジル系心霊主義運動の展開よりɆ」
コメント:河合洋尚(国立民族学博物館)
総合討論