遷移金属酸化物
YTiO
3に高度化したXMD
実験システムを適用した。本研究 の目的は、YTiO
3のスピン磁気形状因子を測定すること、および、得られたスピ ン磁気形状因子を用いて実空間での3
次元スピン密度分布、ならびに、軌道整 列の直接観測を行なうことである。4-1 . YTiO 3 の基礎物性
4-1-1.結晶構造
YTiO
3の結晶構造を図4-1
に示す。格子定数は室温でa=5.316A、b=5.679A、
Y
O
Ti
サイト1Ti
サイト3 Ti
サイト4
Ti
サイト2a b c
Y
O
Ti
サイト1Ti
サイト3 Ti
サイト4
Ti
サイト2Y
O
Ti
サイト1Ti
サイト3 Ti
サイト4
Ti
サイト2a b c
a b c
c=7.611A
になる51)。結晶構造は斜方晶のGdFeO
3型ペロブスカイト構造であり、空間群は
Pbnm
である。図4-1
で赤丸はTi
原子、紫丸はY
原子、青丸はO
原子 をそれぞれ表している。黒色の実線は結晶構造の単位胞を表している。単位胞図
4-1 YTiO
3の結晶構造。赤丸はTi
原子、紫丸はY
原子、青丸はO
原子を表す。内に
4
つのTi
原子を含んでおり、それらは(0,1/2,0)、(1/2,0,0)、 (0,1/2,1/2)、 (1/2,0,1/2)
に位置している。それぞれをTi
のサイト1、サイト 2、サイト 3
およびサイト4
と呼ぶ(図4-1)
。1つのTi
原子は隣接する6
つの酸素原子が作る八面体の中に 存在する。1
つの酸素八面体に注目すると、6
つあるTi-O
結合の中に4
本の短い 結合(2.02A)と2
本の長い結合(2.08A)51) があること、および、Ti-O結合角が
90°ではない
51) ことから八面体に歪みが生じている。この歪んだ八面体がわずかに傾きながらつながっているのが結晶構造の特徴である。
YTiO
3の磁気的な性質としては、キュリー温度30K
以下で強磁性体となる。また、電気的な性質としては絶縁体である。
4-1-2.電子構造
結晶の中で
Ti
原子はTi
3+の状態で存在する。電子配置は、1s
2, 2s
2, 2p
6, 3s
2, 3p
6, 3d
1をとり、3d電子を一つ持つ。磁性を担うのはこのTi 3d
電子である。一 般に球対称場では、3d 軌道は5
重に縮退しているが、立方対称の結晶場では、エネルギーの高い
2
重に縮退したe
g軌道とエネルギーの低い3
重に縮退したt
2g軌道に分裂する。
YTiO
3の場合、さらに酸素八面体に歪みが生じており結晶場の 対称性が立方対称から正方対称に低下するため、3 重に縮退したt
2g軌道は、さ らにd
xy軌道とd
yz, d
zx軌道に分裂する。これらのエネルギー準位の中で、一つのTi 3d
電子は二重に縮退したd
yz, d
zx 軌道に存在することが言われている 26)。YTiO
3では軌道磁気モーメントが消失しているため 21, 22, 36)、t2g軌道の波動関数 はd
yz軌道とd
zx軌道の線形結合で表すことができる。本試料における軌道整列 とはこのt
2g状態の線形結合した軌道が空間内で規則的に配列した状態のことで ある。本試料のTi
のn
番目での波動関数n
は以下の(4-1)式で与えられる。
n
ud y
nz
nvd z
nx
n(4-1)
ここで、u と
v
は規格化されたパラメーター(u2+v
2=1)である。d
yz、および、dzx の波動関数は、以下の(4-2)式52)を用いた。) ( 1 yz 8 ) 15 ( 3 sin sin 8 sin
15
2 3d 3d
yz
R r
π r r
φ R θ π θ
d
1 zx ( )
8 ) 15 ( 3 cos cos 8 sin
15
2 3d 3d
zx
R r
π r r
φ R θ π θ
d
(4-2) 3 )
(
ドキュメント内
放射光X 線磁気回折実験システムの構築ならびにYTiO3 のスピン密度分布の観測
(ページ 48-51)