• 検索結果がありません。

実母との関わりから妊婦の母性意識に影響する要因

○渡邊このみ1) 北川眞理子2)

1)元名古屋市立大学大学院看護学研究科博士前期課程助産学分野 2)名古屋市立大学大学院看護学研究科

Ⅰ 緒言

 母性意識は、母親になれば本能的にそなわっているものではなく、幼少時からの生育過程の中で形成され 出産・育児の体験を通して発達していくものとされているが、核家族化や少子社会の進行から母子関係が希 薄化し、乳幼児との接触がないまま母親になっている事から母性性の成熟が遅れる傾向にあるといわれてい る。また、家族や周囲からの教育・支援を受ける事も少ない中で妊娠期を過ごし育児をしている事や少子化 の中では兄弟の世話をする機会も少なく家庭内での伝承が失われる事も母性を育ちにくくしていると思われ る。

 本研究は、妊娠から出産における実母との関わりから妊婦の母性意識に影響する要因にはどのようなもの が存在するのかを明らかにする事が目的である。

Ⅱ 方法

 対象は、妊婦健康診査に通院する 19 〜 24 歳にある妊娠末期(37 〜 40 週)の初妊婦である。データ収集期 間は、2011 年 6~8 月である。研究方法は、妊婦健康診査時に本人の承諾を得て録音し半構造的面接を実施し た。面接内容を逐語録に起こし、妊婦に語ってもらった妊娠期における実母との関わりと妊婦の母性意識に 影響を与えたと解釈する実母の語りについて焦点を当て、質的記述的に分析をした。倫理的配慮として、大 学研究倫理委員会の承認を得た上で実施し、対象者には研究の目的、研究への参加協力の自由意志、プライ バシーの保護、公表等について文書と口頭で説明し、同意を基に面接を行った。

Ⅲ 結果

 分析対象者は 6 名である。106 場面のデータコードを収集し、93 のサブカテゴリー、30 のカテゴリーへ分 類、最終的に【語り継ぐ体験】【妊娠に伴う生体変化の気づき】【温かな感情と心待ちにする心境】【承認と 労いの言葉】【心強い親密な関係性】【助言やモデルを示した行動】の 6 つの大カテゴリーを抽出した。

Ⅳ 考察

 妊娠期に妊婦の出生の語りや実母の妊娠、出産、育児の体験談を得る事によって、妊婦は母親になる事へ のイメージを膨らませ、実母をモデルとして捉えながら妊婦自身の母親像のイメージを湧かせ妊娠期を過ご していったと考える。また、実母がつわりや腹部の増大の変化など妊娠に伴う生体変化の気付きや胎児の発 育、誕生を待ちわびる姿、その思いを妊婦が感じる事によって、胎児への愛着を促進していった契機とも なっていた事が明らかとなった。さらに、妊娠期を傍で見届けてくれた心強い実母の存在、励ましの言葉や 思いやり、助言、模範を示した行動によって、妊娠を契機に親密な関係性を築き母親になる事への自信や学 ぶ姿勢を持つことに繋がっていった事が明らかとなった。この事から、親から自立していく年代において も、妊娠を契機に実母との関係性を密にし、妊婦自身で気付く事よりも実母の働きかけが妊婦の母性意識に 影響を与え、イメージを描きながら妊娠期を過ごしていったことからも、実母の存在または体験談が妊婦の 母性意識に影響を与え、実母による働きかけが重要であると考える。

Ⅴ 結論

 妊娠から出産における実母との関わりから妊婦の母性意識に影響する要因として、【語り継ぐ体験】【妊娠 に伴う生体変化の気づき】【温かな感情と心待ちにする心境】【承認と労いの言葉】【心強い親密な関係性】

【助言やモデルを示した行動】の 6 つの大カテゴリーが明らかとなった。妊娠を契機に実母との関係性を密に し、妊婦は母親、実母は祖母といった新しい役割を担っていく中で、実母は娘として見るのではなく新しい 役割を担う母親として関わっていった。

一般演題︵ポスター︶

5月2日(木)10:00 〜 10:30 ポスター会場(金沢21世紀美術館)

一般演題(ポスター)妊産婦のメンタルヘルス

P‑13

妊娠 8、9 ヶ月に骨盤位であった初産婦の心理

○服部真里1) 北川眞理子2)

1)元名古屋市立大学大学院看護研究科 2)名古屋市立大学大学院看護研究科

Ⅰ 緒言

 超音波診断による骨盤位の頻度は、妊娠 25 〜 28 週 27.8 %、妊娠 29 〜 32 週 14 %、妊娠 33 〜 36 週 8.8 %であ り、最終的に骨盤位分娩は 3 〜 5 %と報告されている。その 3 〜 5 %は、骨盤位経腟分娩または帝王切開とな る。本研究は、妊娠 8、9 ヶ月に骨盤位であった初産婦の告知された時から出産までの心理を明らかにするこ とを目的とした。

Ⅱ 方法

 研究協力者は、骨盤位分娩の選択的帝王切開を実施している施設で、妊娠 8、9 ヶ月に単胎骨盤位であり、

頭位に矯正した妊婦も含め、妊娠経過が良好である初産婦とした。データ収集期間は、平成 23 年 6 〜 9 月で ある。研究方法は、告知から出産までの心理について、半構造化面接を実施した。分析方法は、面接内容を 逐語録に起こし、場面毎の心理について焦点をあて、質的記述的分析をした。倫理的配慮として、名古屋市 立大学看護学部倫理委員会の承認を得て、協力者には研究協力への参加自由意志、プライバシーの保護等に ついて、口頭と文書にて説明を行い、同意を得て面接を実施した。

Ⅲ 結果

 7 名の研究協力者が得られた。分析した結果、5 つ のエピソード場面から、114 のサブカテゴリー、30 の カテゴリーを抽出した。エピソード場面は、「初めて 告知された時の心理」、「骨盤位が持続することへの 思い」、「出産に対する思い」、「骨盤位を矯正すること に対する思い」、「頭位に矯正した時から出産までの心 理」の 5 つを抽出した(表)。

Ⅳ 考察

 妊娠末期に告知された妊婦は、帝王切開を予期した ことによる不安や動揺が生じたことから、帝王切開の 心の準備を開始した。骨盤位が持続することで、頭位 に矯正していないことにより、妊娠 9 ヶ月に、落胆、

焦燥感、危機感へ心理が移行していくと考えられた。

 出産に対し妊婦は、帝王切開となる予期的心配から 情報を得るなかで、次子出産に影響をもたらす帝王切 開を回避したい思いがある反面、骨盤位の持続で、帝 王切開の受け入れへの決断をしていた。本研究は、骨 盤位が持続することで、妊婦自身が自然分娩や帝王切 開のメリットやデメリットを妊娠期に認識する機会 をもつようになることが考えられ、分娩方法に対する 正しい情報提供をしていく必要がある。骨盤位の妊婦 は、逆子体操の効果への不安を抱きながら、頭位に矯 正する希望を持ち、アンビバレントな心理状況の中で 矯正することに取り組んでいた。

Ⅴ 結論

 本研究において、妊娠 8、9 ヶ月に骨盤位であった 初産婦は、正期産に近づくことで危機的な心理状況に 移行していくことが明らかとなった。その危機的な心

理状況に移行するなかで、予期的心配に対する正しい情報提供や精神的なサポートをする必要がある。

  表  妊娠 8、9 ヶ月に骨盤位であった初産婦の  心理のカテゴリー一覧表    

࢚ࣆࢯ࣮ࢻ ࢝ࢸࢦ࣮ࣜ

㸯ึࡵ࡚࿌

▱ࡉࢀࡓ᫬

ࡢᚰ⌮

1㸸㢌఩࡟▹ṇ࡛ࡁࡿㄆ㆑࡟ࡼࡿẼᣢࡕࡢࡺ࡜ࡾ

2㸸ணᮇࡋ࡞࠸㦵┙఩࡟ࡼࡿ㦫ࡁ

3㸸ᖇ⋤ษ㛤ࢆணᮇࡋࡓࡇ࡜࡟ࡼࡿືᦂࡸ୙Ᏻ 2㦵┙఩ࡀ

ᣢ⥆ࡍࡿࡇ

࡜࡬ࡢᛮ࠸

1㸸㢌఩࡟▹ṇࡍࡿᮇᚅࢆࡶࡘẼᣢࡕࡢࡺ࡜ࡾ

2㸸㦵┙఩ࡀᣢ⥆ࡍࡿࡇ࡜࡬ࡢẼࡀ࠿ࡾ

3㸸⫾఩ࡢ▱ぬࡀ㦵┙఩࡛࠶ࡿࡇ࡜࡬ࡢẼࡀ࠿ࡾ

4㸸⫾఩ࢆ▱ぬ࡛ࡁ࡞࠸ࡇ࡜࡟ࡼࡿẼࡀ࠿ࡾ

5㸸㢌఩࡟▹ṇࡋ࡚࠸࡞࠸ࡇ࡜࡟ࡼࡿⴠ⫹

6㸸⫾఩ࡀᐃࡲࡽ࡞࠸ࡇ࡜࡟ࡼࡿ୙Ᏻ 7㸸㢌఩࡟▹ṇࡋ࡚࠸࡞࠸ࡇ࡜࡟ࡼࡿ↔⇱ឤ 8㸸ᖇ⋤ษ㛤ࡀ㏕ࡗ࡚ࡃࡿࡇ࡜࡟ࡼࡿ༴ᶵឤ 9㸸㢌఩࡟▹ṇࡍࡿࡇ࡜࡬ࡢኻᮃ 3ฟ⏘࡟ᑐ

ࡍࡿᛮ࠸

1㸸ண ࡛ࡁ࡞࠸⮬↛ศፔ࠿ࡽ㏨㑊࡛ࡁࡿணᐃᖇ⋤ษ㛤ࡢཷᐜ 2㸸㑅ᢥࡢవᆅࡀ࡞࠸ᖇ⋤ษ㛤ࡢཷࡅධࢀ࡬ࡢỴ᩿

3㸸⫾ඣࡢᏳ඲ࢆඃඛࡋࡓᖇ⋤ษ㛤࡬ࡢぬᝅ

4㸸ḟᏊฟ⏘࡟ᙳ㡪ࢆࡶࡓࡽࡍᖇ⋤ษ㛤ࢆᅇ㑊ࡋࡓ࠸ᛮ࠸

5㸸⮬↛ศፔ࡛ฟ⏘ࡍࡿࡇ࡜࡬ࡢᕼᮃ 6㸸ฟ⏘࡟ᑐࡍࡿぢ㏻ࡋࡀࡘ࠿࡞࠸୙Ᏻ 4㦵┙఩ࢆ

▹ṇࡍࡿࡇ

࡜࡟ᑐࡍࡿ

ᛮ࠸

1㸸㏫Ꮚయ᧯ࡢᐇ᪋࡬ࡢᙉ໬

2㸸⭸⬚఩ࢆಖᣢࡍࡿ㌟యⓗⱞ③࡬ࡢཷᐜ 3㸸㦵┙఩࡛࠶ࡿ⫾ඣࡢཷᐜ࡜⮬ᕫᅇ㌿ࢆ㢪࠺Ẽᣢࡕ 4㸸⫾ືࡢ▱ぬࡀኚ໬ࡋࡓࡇ࡜࡟ࡼࡿᮇᚅ

5㸸ၥ㢟ゎỴࡢࡓࡵࡢྲྀࡾ⤌ࡳ࡛㢌఩࡟▹ṇࡍࡿࡇ࡜࡬ࡢᕼᮃ 6㸸㏫Ꮚయ᧯ࡢຠᯝ࡬ࡢ୙Ᏻ

7㸸ࢧ࣏࣮ࢺࡢ୙㊊࡟ࡼࡿᏙ⊂ឤ 8㸸ࢧ࣏࣮ࢺࡢᏑᅾ࡟ࡼࡿᏳᚰឤ 5㢌఩࡟▹

ṇࡋࡓ᫬࠿

ࡽฟ⏘ࡲ࡛

ࡢᚰ⌮

1㸸㢌఩࡟▹ṇࡋࡓࡇ࡜࡟ࡼࡿᏳᚰឤ

2㸸㢌఩ࡀᣢ⥆ࡍࡿᏳᚰ࡜෌ࡧ㦵┙఩࡟ᡠࡿ୙Ᏻ࡜ࡢᦂࡽࡂ 3㸸㢌఩ࡢ☜ㄆ࡛⮬↛ศፔ࡟ᑐࡍࡿᚰᵓ࠼

4㸸㦵┙఩ࡢ᝟ሗⓗࢧ࣏࣮ࢺࡢ୙㊊࡟ᑐࡍࡿ᜼ࡸࡴẼᣢࡕ

一般演題︵ポスター︶

5月2日(木)10:00 〜 10:30 ポスター会場(金沢21世紀美術館)

一般演題(ポスター)妊産婦のメンタルヘルス

P‑14

分娩開始の前駆症状が出現している妊娠 37 週以降の妊婦が抱える「怖さ」等の分析

○坂野亜都1)2) 北川眞理子3)

1)愛育病院 2)元名古屋市立大学大学院看護学研究科博士前期課程 3)名古屋市立大学大学院看護学研究科

Ⅰ 緒言

 妊婦の不安は初期に高く中期に減少し、分娩前では再び高まることが明らかになっている。心理学におけ る不安は恐怖の下位感情の一つとみなされている。本研究は妊娠 37 週以降の妊婦が抱える怖さや不安等妊娠 末期の妊婦の感情を構成する因子について質的に分析し、その実態を明らかにすることを目的とした。

Ⅱ 方法

 研究期間は平成 23 年 4 月から平成 24 年 1 月までである。研究デザインは質的記述的研究デザインとした。

正常な妊娠経過をたどる正期産の時期の 5 名の初産婦、3 名の経産婦を対象とした。半構成的面接法によっ て妊娠末期の感情や出産に対する思い等のエピソードを収集した。データの分析は質的帰納的分析方法を用 いた。分析において信頼性と妥当性を得るよう、質的研究に長けた専門家のスーパーバイズを受け取り組ん だ。本研究は名古屋市立大学看護学部研究倫理審査委員会の承認を得て行った。

Ⅲ 結果

 妊娠末期の感情および出産に対する思いをインタビューし質的帰納的に分析した結果、5 つの大カテゴ リー【】とそれぞれ≪≫のカテゴリーを抽出した。()内の数字はカテゴリー数を示す。

 出産を間近に控えた妊婦が抱く怖さには、【自己の身体や生命に対する脅威への怖さ】(4)が存在し、≪

逃れられない未知の分娩への怖さ≫や≪自己の身体や生命を脅かす危険性に対する怖さ≫という因子が含ま れており、出産という体験が自己にとってどれほどの脅威であるのかということに関心が高まっていた。≪

前回の出産体験がもたらす怖さの再燃≫や≪母や妹の出産体験がもたらす怖さ≫という因子により現実味を 帯びた具体的なものとなり恐怖を強いものにしていた。また、出産によってもたらされる【胎児との分離へ の怖さ】(1)を抱えていた。また、この時期は【出産に対する怖さと期待の両価的な心理】(2)という相反 する両極の心理が存在していた。

 分娩が近づくにつれて【母親となる自己への揺らぎ】(2)が起こり、出産を目前に控え母親となる時が 迫っている現状から、初産婦には≪母親になることの責任と自己への揺らぎ≫、経産婦には≪出産によって 確立される自己への期待≫の感情を抱いていた。【理想の出産に対するこだわり】(3)を持つことは、出産 を間近に控えた状態では理想の出産が叶わないかもしれないという可能性の高まりにより焦りや戸惑いおよ び抵抗感等のネガティブな感情をもたらすことが明らかとなった。

Ⅳ 考察

 妊娠末期の妊婦の関心は自己と胎児の両方に向けられるといわれているが、妊娠 37 週以降の妊婦の関心は 自分自身へと向けられていることが示唆された。経産婦における分娩時の身体的苦痛や生命が脅かされると いう危機的体験への恐怖は初産婦よりも具体的で現実味を帯びた強いものであった。過去の出産によって恐 怖は軽減されるというものではなく、恐怖の質が変化することが示唆された。また妊娠に伴い胎児と自己と の同一視が存在しており、前回の出産における胎児との分離が喪失体験となっているということが示唆され た。妊娠や出産という過程は、母と子の関係性を見つめ直すことにより理想とする自己像を構築する段階で あり、母親となる自己の在り方の揺らぎが起こるといえる。自然分娩に対する切望から分娩予定日付近の妊 婦の心理状態は不安定なものであり、より一層の支援の必要性が示唆された。

Ⅴ 結論

 妊娠末期においては妊婦は母子の関係性を見直し、母親になろうと心がける一方で、分娩を自己に対する 脅威と感じており、強い恐怖を抱いており、妊婦の気持ちに沿ったケアが求められる。