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学校施設の長寿命化

ドキュメント内 出雲市学校施設整備・耐震化基本計画 (ページ 88-94)

<長寿命化による教育環境整備>

今後の施設整備・維持にあたり、学校施設の長寿命化は重要な課題である。

学校施設の長寿命化にあたり、今後の検討必要事項には次のようなものが挙げられる。

① 予防保全工事

…建物の劣化を遅らせる保全工事を行うことで、学校施設を長寿命化し、建物 の劣化や、それに伴う工事が教育環境に与える影響を抑えることが可能であ る。

② エコスクール化

…校舎や校地の整備にあたって、省エネルギーかつ長寿命な要素を導入し学校 施設全体の長寿命化を図る。学校環境自体が環境教育の素材となり、子ども たちの成長に寄与することが期待できる。

本計画においては、学校施設の整備にあたって、まず「予防保全工事」の考え方を取り入 れ、長寿命化を図る。次に予防保全の考え方について示す。

5.1.1

予防保全の考え方

本計画の主な事業は、耐震化対策推進事業(耐震補強、耐震改築)と、現在まで維持補修 が十分になされていない施設における大規模改造事業である。本計画完了後は、市内の学校 施設における建築物性能が一定品質を満たすこととなる。

しかし、建築物の性能は経年劣化を伴うものであり、新築・改修後も建物の良好な状態を 保つ、すなわち長寿命化を図るため、計画的な「予防保全工事」が重要となる。

要求性能 初期性能

建築物の性能 維持保全を行わない場合

維持保全を行う場合

60 年 設計耐用年数 30 年

大規模改造 時間

維持保全限界状態

鉄筋コンクリート造(RC造)

設備更新時期(推奨)

要求性能 初期性能

建築物の性能 維持保全を行わない場合

維持保全を行う場合

40 年 設計耐用年数 20 年

大規模改造 時間

維持保全限界状態

鉄骨造(S造)

図 73 維持保全周期のイメージ

建築物は、ただ使うだけでは、設計耐用年数まで初期性能を維持できない。樹木の手入れ と同じように、日ごろの清掃活動や一定の周期での改修を行う必要がある。

“予防保全工事”とは、建築物竣工後、年とともに老朽化する箇所について、初期性能に 近い復元が技術的に可能な時期に改修工事を行い、建築物の性能を保つことを示す。予防保 全工事をより短い周期で行うほど、建築物への手入れが行き届き、長期的な視点から工事の 規模・コストは抑えることができると考えられる。

ただし、「外壁」「屋根」「内装」などは全面的な改修により工事効果・効率・整備後の美 観性が向上するため、大規模な工事とすることが望ましい。しかし、これらは建築物の主要 な構成要素であるため、工事の効果は大きくなるが、コストも大きくなる。

学校施設の工事には、条件や組み合わせにより国からの補助金を利用することができるが、

大規模な維持保全工事と小規模な維持保全工事それぞれについて、本市の財政を考慮した工 事周期を計画する必要がある。

表 5.2.1 主な修繕工事と関連部位・機器等の例 部位・設備等 主な修繕工事

修繕周期

()内は 計画更新年数

同時に措置することが 望ましい 部位・設備等の例 シート防水改修 5(20)

アスファルト防水改修 10(30)

屋根

粘土瓦 10

排水溝(ルーフドレイン)、笠 木 、 屋 上 手 す り 、 設 備 架 台 、 断熱材

仕上げ改修

(塗装、吹き付け等)

シーリング、外部建具、笠木、

樋、断熱材 クラック補修、浮き補修

8~10(15)

シーリング、外部建具、笠木 外壁

建具改修(アルミサッシ等) 5(40)

シーリング 電気設備 受変電設備改修 10(25~30)

分電盤、変圧機、コンデンサ、

幹線 冷 暖房 設備 (フ ァン コイ ル、

空調機)改修

5~10(15~20)

ポ ン プ 、 冷 却 塔 、 配 管 等 、 屋 上防水

空調設備

熱源改修 4~7(20)

配管等 浄化槽、配管等 2~7(30)

衛生陶器 3~10(30)

給排水 衛生設備

水栓 3(25~15)

ポンプ、受水槽配管、(冷温水 管)等

『公共建築の部位・設備の特性等を踏まえた中長期修繕計画策定及び運用のためのマニュアル(案)』

『建築物のライフサイクルコスト』

(平成17年 国土交通省)より

5.1.2

大規模な予防保全工事

本計画では、学校施設に対する大規模な保全工事として、外装材・内装材・設備等の全面 的な改修を行う大規模改造事業をメニュー化している。

本計画における学校施設建物の耐用年数は、RC造:60 年としており、その1/2の竣 工後 30 年を大規模改造の実施判断時期としている。

事業の実施判断時期は、既存施設の築年数・老朽度の分析結果に加え、空調や電気設備の 耐用年数 20 年、居住性に影響する「屋上防水」「内装」の耐久年数 20~30 年(『建築物のラ イフサイクルコスト』国土交通省)を加味し、現在の本市における厳しい財政状況を考慮し て建築物耐用年数の間、最低限の1回とした。

※空調や電気設備の耐用年数は、一般的に 20 年といわれている。より丁寧な予防保全のためには、工事 周期を 20 年に設定することで、より適切な時期に建築・設備を一体的に大改修することが可能となる。

予防保全工事を行わない場合には、建築物性能の劣化スピードが早まり、耐用年数前に改 築の必要が生じる可能性も決して低くない。建物の長寿命化には、工事実施時期に見合った 適切な内容の維持保全工事を行うことが重要である(前頁の表 5.2.1 参照)。

また、本計画では耐用年数の1/2の時期に大規模改造を設定しているため、事業実施時 の改修箇所が多く、事業費が高くなると予想される。

市の学校建物にはどれひとつとして同じものはない。適切な予防保全工事のためには、事 業実施時期の建物劣化状況を詳細に把握した上で、設計・工事を行うことが必要である。

設計+見積り 建物調査

学校施設 整備計画

事業実施 事業実施

必要あり

事業実施 必要なし

営繕要望・消費エネルギー等の モニタリング継続

学校施設カルテ・

修繕課題一覧の参照 築年数、生徒数、課題数 な ど か ら 事 業 の 必 要 性 をおおまかに判断

将来における予防保全工事の流れ

営繕要望

教 員 、 教 務 員 の た め の、簡易な建物調査マ ニュアル作成を検討

5.1.3

予防保全工事のための簡易な点検

現在、本市には 86 の学校施設(県有施設の若松分校 2 校除く)があり、同時期に建てら れた建物も複数ある。将来においても整備時期が重なることが予想され、事業実施の優先順 位を検討する必要が出てくると考えられる。

本計画では、大規模改造・改築事業の判断時期を定めているが、その際の建物調査のみで 事業優先順位を決定するには、事業時期の切迫性から判断が難しくなる場合がある。そのた め、毎年の簡易な点検体制の構築も課題である。

現況の点検体制は以下の2つである。

① 建築基準法第 12 条に基づく定期検査報告

…建築基準法における特殊建築物等、昇降機、遊戯施設、特殊建築物等に設ける建築設 備について、その所有者・管理者が安全を確保するため義務付けられている、専門技術 者(1級建築士又は国土交通省大臣が定める資格を有する者)による定期的(※)な調 査・検査。建築物の損傷や腐食などの劣化状況についての点検。

※建築物:1回/3年、設備・昇降機:1回/1年

② 営繕要望

…学校施設側(教職員等)が記入する。建物に関する機能劣化の改善や、劣化箇所の修 繕・改修の要望をまとめたもの。

①は、建築基準法に基づいた調査が行われ、建築物の安全性を客観的に確認することがで きる。

しかし、それと同時に、より学校の教育環境に沿った建築物の維持、改修の内容や時期を 把握するためには、学校施設利用者である教職員・校務員等による点検体制が重要である。

営繕要望書の提出は、毎年受け付けられており、市がとりまとめる体制が構築されている。

ただし、要望書に書かれる内容は記入者に任せられている面が大きく、各項目の書き方など は統一されていない。

各施設からの要望を適切な時期に反映させるためにも、営繕要望書の記入に際して、共通 するチェック項目、劣化箇所の簡易な劣化評価などをマニュアル化することが望ましい。

学校施設利用者が、積極的に建物状況を把握することで、整備を担う市との情報共有が円 滑に行われると考える。

教育環境は日々変わっていくものである。学校施設を利用する側・整備する側の協力体制 を強化することで、変化していく教育環境をサポートしていく必要がある。

■簡易な点検マニュアルの作成にあたって

以下に、今後のマニュアル作成にあたっての参考資料を示す。いずれも建築物の外観から 内部の設備に至る維持管理項目が網羅されている。

<今後のマニュアル作成にあたっての参考資料>

『住宅・社会資本の管理運営技術の開発 第Ⅱ部1.公共建築物の中長期修繕マネジメン ト技術の開発』国土技術政策総合研究所 プロジェクト研究報告

『建築物のライフサイクルコスト』国土交通省大臣官房 官庁営繕部

『公共建築の部位・設備の特性等を踏まえた中長期修繕計画策定及び運用のためのマニュ アル(案)』(平成 17 年 国土交通省)

マニュアルの作成にあたっては、建築物の専門家ではない学校施設利用者でも、簡易に状 況を把握できる項目の抽出と点検・評価方法の設定が必要である。

■簡易な点検の評価方法について

営繕要望をもとに新たな点検体制を整えるにあたって、評価ランクの設定には注意すべき である。要望書提出後には、評価ランクに基づいて整備方針が決定されるためである。

劣化が、どの状況に達すると安全性や美観が保たれなくなるのか、修繕が難しくなるのか、

学校施設を利用する側と整備する側で共通認識を持つ必要がある。

マニュアルは共通認識を持つために作成されるが、点検体制の導入初年度には、全学校施 設の代表者が参加できるような講習会等を開くなどして、市全体の教育関係者が点検体制を 認知する機会を設けることが望ましい。

簡易な点検項目として望ましいもの

日常的に外観を見ることが可能なもの 外装、内装、サッシ、建具、外構など

危険を伴わずに点検が可能なもの 屋上防水、防火シャッターなど

ドキュメント内 出雲市学校施設整備・耐震化基本計画 (ページ 88-94)