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PDD群

第2節 妥当性の検討

 第1項 構成概念妥当性

 各カテゴリー間の相関はr衝動性」と「持続性」が0.729と高く、「注 意」と「持続性」、r注意」とr衝動性」がやや高かった。「柔軟性」と他 のカテゴリー間の相関係数は0.5以下であり、独立性がある程度示され

たといえる。

 「持続性」の項目に「自習時間に先生がいないと課題になかなか取り 組まない」という項目がある。これは、特にADHDの場合、周囲の状 況に注意が向かず、社会的状況がうまく理解できないこと、また、学習 に対する動機づけが低く「課題に取り組む」という「集中の持続」が困 難であるために、「行動の持続」が困難であるといったことが考えられる。

ADHDの診断基準で「持続性」というカテゴリーはないが、診断基準

をもとにつくられたADHD−RSの「不注意」の尺度をはかる9項目

のうち、3項目に「持続性」を表す項目があることから、「持続性」を反 映したカテゴリーであるといえる。

 診断基準の「衝動性」は、ストレス耐性の低さと行動抑制の難しさの 2つの要素に分けて理解することもできる。「嫌になるとすぐに投げ出し てしまう」、「気に入るとそのもの(事・人)から離れない」などは、「衝 動コントロールの困難」を示し、「今すべきことを後回しにしてしまう」、

「整理することが苦手」などは、「集中困難」と深い関連のある「衝動コ ントロール」の問題と考えることもできる(田中,2003)。また、診断 基準の「多動性」について田中(2003)は、頻回の離席や多弁も多動性 の現れと見られることも多いが、こうした現れ方は衝動抑制のまずさと も関連している。また、集中が難しくても「落ち着きがなく」見えるこ ともあり得ることを考えると、多動性の純粋な表出と考えられる行動特 徴は意外とすくないのかもしれない、と指摘している。本調査の「衝動 性」のカテゴリーは、診断基準の「衝動性」や「多動性」を反映したカ テゴリーであり、上記のような理由から「持続性」と相関が高かったと

思われる。

 診断基準の「不注意」には、「注意の持続の困難・順序立てた思考の困 難・日常生活習慣の習得と実行の困難・精神的努力の持続の困難」とい った行動があてはまっている。集中困難の結果として起こる、些細なミ スの多さ、忘れ物・失くし物の多さ、課題を最後までやり遂げられない ことなどとともに、すべきことを順序立てることの困難もここに含まれ、

これがADHDのもっとも基本的な問題点であるかもしれないと考える

学者も多い(田中,2003)。

 最近では、これらの症状の底に前頭葉の機能障害に起因する実行機能 の障害が存在することも指摘されている。バークレー(1999)は、行動 の抑制とセルフコントロールがADHDの本質的な問題であると考えて いる。注意散漫を回避し、到達点を思い出させ、それに近づくのに必要 なステヅプをとるよう手助けする精神活動に従事する能力を実行機能と 呼び、「ワーキングメモリ」、「感情/動機づけ/覚醒の自己調節」、「発話 の内面化」、「再構築」の4つの精神活動に分類している。近藤(2002)

は、行動抑制に障害があると、刺激と反応の問に「間」(遅延時間)を入 れられない。それは考えてから行動することができないことを意味する。

「考えてから行動する」の「考えてから」の過程をいつも跳び越してし まうので、新しい解決が必要な非日常的な状況で目標を達成するための 種々の力が育たない。これを「実行機能」といい、「コトをすすめる力」

と指摘している。

 Lezak(1982)によれば、実行機能とは目的を持った一連の活動を有 効に行うのに必要な機能であり、かかる行為が実際にどのように行われ

るかで評価されるものであるとしている。鹿島(2003)は、実行機能に ついて以下のようにまとめている。実行機能は、①vohtion②planning

③PurPosefull action④effectiveperformanceの4つの構成要素からな っている。①のvolitionは、動機付けと意図が必要であり、また未来に 向けて思考し、何をしたいのかを構想する能力が必要とされている。② のplanningには、目標を達成するための段階を考え、それらの評価お

良く、まとまった形で、開始、維持、変換し、また中止する能力が求め られる。④のeffectiveperformanceには、常に目標を意識し、遂行中の 行動がどの程度目標に近づいているかを評価する能力が関与する。実行 機能の障害としては、行動開始の困難や発動性低下、認知ないし行動の 転換の障害、すなわち保持や固着、行動の維持困難や行為の中断、行動 の中止困難、衝動性や脱抑制、誤りの修正障害、具体的な行動などがあ

げられる。

 「柔軟性」のカテゴリーは、「こだわり・同一性の保持」、「感情理解」

などPDDの特性を示す項目が多い。「その日の日程が変わると、変わっ たことを何回も確認に来る」は、順番や物の位置への固執や、予測して いたことが変更されることへの強い抵抗が表れている行動であると思わ れる。自閉症児は、外界を断片的にしか理解できないため、ある部分か ら物事全体を認識することが困難であり、そのため、自分が理解してい る範囲のことや具体的で予測可能なことを好み、ときには彼らの理解を 超えるような事態になると、理解できる範囲にとどまろうとするために、

こだわりや同一性の保持といった行動を示す(河内,2002)。いわゆる 自閉症の三つ組みの1つである「こだわり」を示している項目であると

思われる。

 自閉症の子どもは人とのやりとりへの関心が欠けており、気持ちの共 有をしようとする姿勢が乏しい(河内,2002)。また、言葉の意味を文 脈から理解することが困難で、やりとりがかみあわなかったり、相手の 言ったことを誤解してしまい、トラブルになることが起こる(河内,

2002)。「話し合いの際、自分の言い分を譲らないので友達とトラブルに なる」は、自閉症児の三っ組みである「対人関係」や「コミュニケーシ ョン」の障害を示している項目であると思われる。バロン・コーエンら は、自閉症の「心の理論毛ジュール」障害仮説として、自閉症児は他者 の考えを考える能力を欠き、そのためある種の対人関係、コミユニケー ションのスキル、想像などに障害が出るのは、実行機能の障害のためワ ーキングメモリヘの負荷が高く、出来事の記憶の間の関係性をみつけて 文脈をよみとることができないからであるとしている。

 第2項 基準関連妥当性

  ADHD−RSのr多動一衝動性」と「衝動性」の相関係数が0.63 と高かった。ADHD−RSと行動チェックリストの項目を照らし合わ

せると、ADH:D−RSのr多動一衝動性」の全ての項目に「行動チェ

ックリスト」のr衝動性」の項目があてはまった。AD HD−R Sは、

診断基準の「多動性」、r衝動性」の特性を尋ねた項目から成っており、

行動チェックリストの「衝動性」の構成概念と対応している。

 行動チェックリストの項目とADHD−RSの「不注意」には「注意」、

「持続性」、「柔軟性」の3つのカテゴリーが対応している。AD HlDの

「不注意」については、構成概念妥当性の項で述べたように、「不注意」、

「注意の転導」、「注意の持続」、「プランニング」、「ワーキングメモリ」

などの要素があり、ADHD−RSの「不注意」の尺度はそれらの特性

を尋ねている。行動チェックリストでは、「不注意」や「注意の転導」、

「ワーキングメモリ」を「注意」のカテゴリーで、「注意の転導」や「注 意の持続」を「持続性」のカテゴリーで、「注意の持続」や「プランニン グ」を「柔軟性」のカテゴリーで尋ねている。こうしたことから、「不注 意」と「注意」、「持続性」、「柔軟性」の相関が高かったと思われる。

 今回は、AD}IDの診断基準に合わせたチェックリストとの基準関連 妥当性のみの検討であったので、PDDの診断基準に合わせたチェック

リストとの関連も検討する必要がある。

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