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大阪大学理学部村田研究室

ドキュメント内 NMRvol7_hp.indd (ページ 101-104)

大阪大学理学部村田研究室1)、ERATO脂質活性構造プロジェクト2)

花島 慎弥

1)

、梅川 雄一

1, 2)

、村田 道雄

1, 2)

[email protected]

村田研究室が所属する大阪大学の大学院理学研 究科化学専攻は、大阪府の北部に位置する待兼山 の丘の上につくられた豊中キャンパス内にありま す。理学研究科は理化学研究所との連携利用も含 めると、溶液用と固体用の

300 MHz

から

700 MHz

NMR

装置をあわせて

9

台有しています。さら に村田脂質活性構造プロジェクトでは固体専用の

600 MHz

の装置

1

台を所有しており、

NMR

の利便 性が大変高い環境の中にあるといえます。村田研 究室では、このような研究環境を最大限に生かし て、生体膜を構成する脂質とその周辺分子の構造 と相互作用に焦点を絞り、固体

NMR

を用いた解析 に取り組んでいます。今回、このような機会を賜り ましたので、村田研究室と村田脂質活性構造プロ ジェクトにおけるこれまでの

NMR

研究の一端を紹 介させていただきます。

村田研究室

村田研究室は、執筆時点で

1

名の博士研究員、

9

名の博士課程の学生、

11

名の修士課程、

6

名の学 部学生が所属しており、村田道雄教授を中心に、

土川博史助教、花島の

3

名のスタッフにより構成さ れています。村田研究室では、 誰もできないこと をやる。誰もやらないことをやる をモットーに研

究を行っています。研究テーマは、生体膜とその周 辺でおこる生命現象の精密な解析というキーワード のもと、有機化学的な手法に機軸を置きつつ、物 理化学やケミカルバイオロジーまで多岐にわたって います。その中でも今回は特に、有機合成と固体

NMR

を併せて用いた生体膜脂質の構造と機能の解 析に関連する研究について紹介させていただこうと 思います。固体

NMR

では、測定感度と原子位置の 分解能を補うために

NMR

感度の高い核種で標識し た分子が必要になります。特に脂質分子は、ちょっ とした化学修飾をするだけで生体膜中での本来の 特性を失ってしまうことも少なくありません。その ため安定同位体標識した脂質分子は、膜中で分子 本来のふるまいを再現できる優れた 分子プロー ブ として重用されています。研究室に所属する学 生の多くは、日々化学合成に勤しみ、位置選択的 に標識を導入したターゲット分子を多段階にて自身 で合成します。苦労して合成を達成し、自分自身で 化合物を創り出した喜びに加えて、自分で合成した 試料で

NMR

を測定して新しい(時には予期せぬ?)

成果が得られるのは大変うれしいものです。以下 に、現在進行中の研究テーマに関して説明させて いただきます。

1

)生体膜には、シグナル伝達を担う機能ドメイ ンである脂質ラフトが存在することがわかってきま した。この脂質ラフトは ラフト脂質 と呼ばれる 特有の脂質分子が寄り集まって構成されていると考 えられています。ラフト脂質の代表的な分子として スフィンゴ脂質やコレステロールなどが挙げられま す。そこで、脂質の各メチレン上のプロトンを順番 に重水素で置換したスフィンゴミエリンを系統的に 合成し、コレステロールを含むリポソームに組み込 み重水素固体

NMR

を測定しました。得られたスペ クトルの核四極子に由来するシグナルの分裂幅を解 析すると、対応するホスファチジルコリンと比べ、

スフィンゴミエリンはより深い位置でコレステロー ルと相互作用することが明らかになりました。

写真1 村田研究室で頻繁に使用する研究科の Bruker 400 MHz固体NMR装置

日本核磁気共鳴学会 

N M

R

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7巻

2

)アンホテリシン

B

AmB

)は、放線菌が産生す

る強力な抗真菌活性物質で、真菌の細胞膜に存在 するステロール分子と選択的に結合して活性を発 現します。その作用メカニズムとして、

AmB

−ス テロール複合体チャネルを形成することが示唆され ていますが、生体膜中での詳細なチャネル構造は 不明な点が多く残されています。そこで、13

C

19

F

で位置選択的に標識を施した

AmB

を化学的、生物 工学的手法で系統的に調製し、

REDOR

を測定する ことにより膜中での

AmB

−ステロール複合体チャ ネル構造の全貌解明に取り組んでいます。

村田脂質活性構造プロジェクト

ERATO

プロジェクトは

JST

のもと

2010

年の秋 から約

5

年半(+

1

年)のプロジェクトとしてスター トしました。脂質分子の構造解析を通じて、機能 分子である膜脂質や膜タンパク質の構造や動態を 解明するための学術的基盤を作ることを目的として おり、具体的には以下の

3

つの段階的目標(図

1

)を 設定しました。

i.

マイクロドメイン:膜脂質分子などフレキシブル で疎水的な分子について、脂質二重膜における 立体配座と相互作用を正確に解析し、細胞膜の ドメイン形成(脂質ラフト等)の物理化学的性質 の分子基盤を解明する。

ii.

タンパク質内部脂質:タンパク質に結合した脂 質性リガンドの活性配座を解析し、脂質分子と タンパク質の相互作用に関して汎用的な研究手 法および共通概念を創出する。

iii.

膜タンパク質周辺脂質:前二項目で得られた知 見と技術をもとに、膜タンパク質に結合すること によって機能している周辺脂質や脂質性リガン ド分子の立体構造および機能を解明する。

これらの目的を達成するため、固体

NMR

のほ か、

X

線結晶構造解析、計算化学、有機合成化学、

生物物理等、さまざまな分野を専門とする研究員が 集まりました。

マイクロドメインに関する研究(

i

)では脂質ラフ トにフォーカスし、蛍光色素やラマン分光用のプ ローブで標識したスフィンゴミエリンの合成、およ びそれらを用いた分光測定を行うことで、ラフトド メインの中にもスフィンゴミエリン分子の濃淡があ ることを明らかにしました。また、村田研究室とも 密に連携し、固体重水素

NMR

測定などによる脂質 分子の運動性解析も行いました。

タンパク質内部脂質(

ii

)では心臓型脂肪酸結合

タンパク質(

FABP3

)に着目し、

FABP3

−脂肪酸の 親和性測定法の開発とともに、

X

線結晶構造解析と 計算化学を主とする研究を行い、

FABP

は脂肪酸結 合ポケット内にある水分子の数を調節することで、

鎖長の異なる脂肪酸と幅広く結合するというユニー クな認識機構を有していることを明らかにしまし た。

タンパク質周辺脂質の研究(

iii

)ではバクテリオ ロドプシン(

bR

)をモデルタンパク質として使用し、

写真2 村田研究室とERATOのメンバー

(2016年6月撮影)

写真3 プロジェクトで導入した Bruker 600 MHz固体NMR装置

4 mm H/X/Y三重共鳴MASプローブと4 mm H/F/X/

Y四重共鳴MASプローブが使用可能。

1 プロジェクトの3つの目標

N M R研究室便り

その周辺脂質が

bR

にどのような影響を与えるかを 活性試験や、

CD

スペクトル等により評価しました。

また、

bR

とリン脂質の相互作用を重水素の四極子 分裂や31

P

の化学シフト異方性の変化から周辺脂質 を直接観測する検討も行っています。

ほかにも化学シフト異方性の簡便な測定法の開 発や温度計分子の合成を行い、生体膜系の固体

NMR

測定の基盤となる研究も行っています。

最後に当理学研究科の

NMR

は、研究科の技術 職員である稲角直也博士、戸所泰人博士の

2

名が中 心となり、多様な依頼測定から新人への測定講習、

さらには管理運営にひとかたならぬご尽力をいただ いております。ここに改めて深く感謝いたします。

日本核磁気共鳴学会 

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