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大学システムに対する費用負担

ドキュメント内 我が国大学システムの経済学 (ページ 54-63)

これまでの検討か ら,欧米 と比較 して,我が国の大学システムの特性がか な りはっきりして きた と思います。まず,社会が もつ大学に対する理念が大 き く違 います。 ヨーロ ッパでは,大学の存在や役割 について,中世での発祥 期 における理念,すなわち,大学 とは,学問追求のための 自治組.織であ り, 人間本性の 自然な発露である知識追及の場であって, 自律的,主体的な存在

として聖俗の如何なる権威か らも超然 として学問の 自由を享受 し,人類文 明 の進歩 ・発展への貢献 とい う役割 を果た さなければな らない とい う考 え方 が,現在 もその制度 と活動の根底にあ ります。 したがって,大学が,その発 祥期 に権力者か らの経済的保護 を受けつつ,権力の介入は受けない特権を享 受 した歴史 を受け継 ぎ,現在で も大学 には教育 ・研究の 自由を享受 させつつ, その活動資金については社会全体が支 えるべ きもの とい う考 えが制度の基礎 にあ り,実際には,国民の意思を代理 して,政府等の公的部門が,全面的に 大学システム運営を経済的に支えているわけです。新興国アメ リカの場合 も, 基本的 にヨーロッパの理念を受け継 いでお りますが,清教徒 による建国 とい

う歴史的事実がアメ リカ社会における大学の成立基盤 に強い精神的特徴 を付 加 してお り,大学の経済的基盤は公的部門だけでな く個人的財産の贈与や遺 贈等の形態で,社会全体 として支えて きてお ります。個人は 自主的にその信 念 ・理想にしたがって 自己の勤勉 と成功の成果を大学等の人類社会の福祉 に 寄与す る機関に寄付す るのが一般的社会感覚 とな ってお り,国家 も,税制等 でその ような行為 を奨励する体制を とっているわけです。

要するに,欧米社会では,大学での学問研究,教育活動は人額社会 に大 き な正の外部効果をもた らす公共財を生み出す ものであ り, したが って,その 活動 を担 う大学 は社会的共通資本 として社会全体 で支 えるべ きものであ っ て,私的財の需給法則や受益者負担の原則 に委ね られるべ きものではない, との理念が,現在 もなお,大学システムの制度運営の基本にある と言 えるの です。したがって,運営資金の負担者の面 か ら設置者を分類するな らば,ヨー ロッパではそのほ とん どすべてが国立,公立 に類 し,学生か らの授業料はほ とん ど徴収 してお らず,また,アメ リカで も,連邦政府は資金提供以外 には 大学活動に介入 しない反面,州政府が大学教育の 3分の 2を供給 してお り, 活動財源を学生か らの授業料 に依存するとい う制度 にはなっていないわけで す。

我が国の場合は どうであったか と言 うと,近代 国家形成期 にあ って教育制

度 と大学が国家 目的に仕 えるべ きもの として導入,整備 され,大学は国家官 僚養成 ・再生産を 目的に国によって教育システムの最上位 に位置づけ られま した。その ことか ら,教育制度や大学 は,序列的試験制度 と相まって,社会 的差別化の体系,個人的立身出世のための社会的装置であるとい う意識が国 民の中に形成 されて現在 に至 ってお ります。 したがって,大学教育を受ける に して も,学問,知識習得の姿勢は 自己の個人的将来便益の増大 目的に誘発 された もの とな り,各個人 とその家庭 はその便益に見合 った費用 を個人的 に 負担することに何の疑問 も抱 かないようになってお ります。 この ような国民 意識 を背景にして (む しろ,それを利用 して, と言 ったほうが適切かも知れ ません)国は,他の側面ではその活動 に微細なまでの管理 ・介入を行いなが ら,私立大学の授業料値上げには異を唱えることを しないだけでな く, 自ら が設置者 となっている国立大学の授業料 を,第 9表 に見た通 り近年の20年 ほ

どの間に実に

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倍以上 にも引 き上げ (その間の全国消費者物価の上昇は,

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倍以下で しかあ りません),その水準 は,現在,私立大学のそれの7割近 く にまで達 してお ります。地方政府の設立 になる公立大学の授業料 も,国立大 学 に追随 して同様の水準に上昇 して きてお ります。この ように,我 が国では, 一般 に,大学教育サービスは個人的便益増大のための私的財 と考 えられてお

り,国 も,その費用は利益を受ける個人が負担すべ きもの とするいわゆる受 益者負担の原則を,その授業料値上げの姿勢か ら見て,当然視 しているよう に思われます。

この ように, ヨー ロッパ とアメ リカ と日本 とで,それぞれの社会における 大学 に対する理念の違 いが学生負担の実態 にか くも大 きな相違 を もた らして いるわけですが,その理念の違 いが,授業料収入を含む大学経営の財政的基 盤全体の うえに, どの ような相違 と特徴を もた らしているかを示す資料が第 11表 です。アメリカ と日本については,大学の財政が国公立 と私立 とに分け て示 されてお りますが, ヨーロッパの大学の典型 として ドイツの場合は財政 的基盤の うえで基本的に私立 に相当す るものが存在 しませんので,すべてが

公法人 となってお ります。 ドイツの場合 もアメリカ と同様 に,基本的には連 邦国家は大学活動 には直接関与 しない体制を とってお り,少数の例外を除い て,ほ とん どすべて Landと称 され る地方の政府が大学の必要経費を負担 し てお ります。そ して,先 にも言いま した ように,学生は

Abi t ur

取得後は, 原則 として大学選択の 自由,すなわち,本当の意味での 「学ぶ こ との 自由」

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表 欧米 日の大学財政的基盤の特徴

財政収入

資 金 源 欧州 (ドイツ) 州立大学アメ リカ私立大学 国公立大学 私立大学 中 央 政 府 10.4 6.9 5.4 36.9 4.5 学 生 納 付 金 0.0 10.9 14.5 (4.7)㌔ (34.0) 大学 自己資金 0.0 20.1 16.1 0.0 16.3 地 方 .政 府 89.6 25.1 1.0 7.9 0.5

100.0 63.0 37.0 44.8 55.2

資料 :文部省,教育指標の国際比較, 1997年版

が与 え られ その制度理念を実質的な もの とするために,大学選択時に僅か な金額 (50ユーロ程度)の登録料以外 には授業料は無料 とされてお ります。

ですか ら, ドイツの場合, 日本の文部省がつ くった この表では大学の財政す べてが公的負担 によって行われているもの として示 されてお ります。実際に は,研究資金の3分の 1程度は民間や財団か らの受入れで行われてお ります。

また,大学病院の経費の多 くはその医療活動収入で賄われてお ります。いず れにしまして も,大学 は社会的共通資本であ り,大学教育サービスや研究成 果は社会に とって大 きな正の外部効果を もつ公共財であって,その活動の費 用は公的部門が負担すべ きものであ り,その活動 に参加する学生 に負担 させ る理 由はない という思想を,この表 は きっち りと反映するものになっている

と言 って良いで しょう。

上の表で,アメリカ と日本については, ドイツの場合 と対比す る意味で, 国公立 と私立 を合わせたその国の大学全体経費を

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とし,その中での設置 者別受け入れ資金の内訳を示 してお ります。アメ リカの場合,大学はその発

禅の段階か ら私立大学の先導によって発展 し,現在で も多 くの有力私立大学 が世界の研究 ・教育を リー ドしてお り,その活動の うえで私立大学の比重の 高さは現在でも変わ りません。それで も,財政収入に占める学生納付金の割 合は,私立大学だけについて

3 9 %

,州立を合わせた全大学経費で,その

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分 の 1を賄 うに過 ぎません。 これに対 して我が国の私立大学では,その必要経 費の

6 2 %

を学生納付の授業料収入に依存 している反面,国からの補助は僅か に

8%

程度でしかあ りません。 ここでも, 日本では,大学教育サービスが家 計の私的需要の対象 として,その経費が受益者負担の考えで扱われている実 態がうかがわれます。アメリカの大学 と対比 して, 日本の大学の収入財源構 成の特徴は,大学独 自収入の低 さです。 と言 うより,アメリカの大学では, 大学 自身の持つ基本財産運用か らの収入,病院 ・その他事業収入,個人 ・企 業 ・財団な どの民間か らの寄付な ど,公的資金および学生納付金以外の収入 が多いのが特徴だ と言 ったほうが適切で しょう。大学のもつ基本財産は元は と言えば個人等の寄付によるものであることを考 えます と,アメ リカのすべ ての大学での必要 とする活動資金の うち,3分の 1以上が個人,企業等によ る自主的な資金供与および事業収入によってお り,私立大学ではその活動資 金のはば半分近 く,州立大学で も3割以上がそれ らの収入で賄われてお りま す。 この ことは,大学が知識の生産工場 ・貯蔵庫 として人類文明の進歩 ・発 展のための社会的共通資本であ り,その活動は,設置形態の如何を問わず, 社会全体 として支えるべきもの,よ り具体的には,個 々人が税を通 してその 費用を社会的に負担するだけでな く,個人の精神的理想実現のための社会的 貢献 として自主的 ・自発的行動によって支えるべきもの との理念を,公私 と

もにしっか りと保持 している結果を表 すもの と言えます。

ヨーロッパの大学について,統計資料で ドイツの場合のみを見ましたが, 他の主要国の場合 も,大学発祥の過程 が類似の ものであった ところか ら,宿 動財源負担の理念 と実態について, ドイツの場合 と基本的には同様です。 し かし,近年,国の財政事情や,外国, とくにアメリカの大学 との競争関係の

ドキュメント内 我が国大学システムの経済学 (ページ 54-63)

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