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大分類 I は、職業分類表に設定された小分類項目(379 項目)の 47%(178 項目)をしめ、9 つの大分類項目のうち最も項目数が多い。これは、元々、技能関連の項目が多かったことに 加えて、日本標準職業分類の累次の改定作業で大分類から中分類に格下げになった項目が大 分類 I に一括してとりまとめられていることによる。さまざまな職業が同一の大分類項目の 下に位置づけられることになった結果、現行の大分類 I は、大分類と中分類の中間に新たな 分類レベル(亜大分類)を設けて、全体を製造・制作、機械運転・電気作業、採掘・建設・

労務に区分している(図表 35)。亜大分類レベルの項目は、職業を集約するとき大分類と中 分類の中間レベルのくくり方として考えられているが、統計調査の結果を職業別に集計する 際にはほとんど利用されていないのが実態である。

3 つの亜大分類項目のうち特に項目数が多いのは製造・制作の職業である。この項目は、

実質的には製造、加工、組立に 3 分割されている。製造に関する中分類項目は、化学、窯業、

食料品、紡織、印刷、ゴム・プラスチックなど、やや大くくりの製品別項目が設定され、そ れぞれの項目の小分類レベルには具体的な製品別の項目が設定されている。加工の中分類に は金属材料を加工する仕事と金属の溶接・溶断の仕事がそれぞれ設定されている。組立の中 分類には、電気機械・輸送機械など機械の種類別に項目が設定され、それぞれの小分類レベ ルには具体的な製品別の項目が設けられている。

製造・制作の亜大分類の特徴は、生産工程の仕事を製造と組立のふたつに集約しているこ とである(図表 36)。このような項目設定の背景には、生産工程のさまざまな種類の仕事(制 御・監視作業、機械を使った製造作業、手工的製造作業など)を区分して項目を設けた場合 には調査実施上の技術的な困難が伴うこと、また製造技術を問わず製品別の項目を設定する ことによって製品製造の違いを仕事の違いとしてみなすことができるとの考え方がある。

(2) 主な問題点

ハローワークの職業紹介では従来、技能工の取扱いが多く、これを反映して大分類Ⅰの亜 大分類(製造・制作の職業)には求人・求職者のマッチングに配慮した細かな項目が設定さ れている。細分類レベルの項目数をみると、大分類Ⅰは全体の 6 割以上をしめている。しか し、現実の求人をみると大分類Ⅰのしめる比率は全体の 3 割程度である。求人の比率に比べ て項目数の比率が高すぎるといえる。この点を是正するためには細分類項目の大幅な見直し が必要である。

見直しの方向はふたつある。ひとつは、求人・求職者数を基準にして利用度の低い項目(す なわち求人・求職者数の相対的に少ない項目)を整理することである。その際、集約項目と 特掲項目に分類された求人件数は次の 3 つのケースに分かれるので、それに応じた項目の整 理を行うことが重要である。

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図表 35 大分類 I 「生産工程・労務の職業」の構成(中・小分類項目)

金属材料 製銑・製鋼、圧延、鋳物、鍛造、熱処理、伸線、非鉄金属製錬 化学製品 基礎的化学製品、石油精製、化学繊維、油脂加工、医薬品・化粧品 窯業製品 原料加工、ガラス成形、施ゆう・ほうろう、れんが・かわら、絵付、

セメント、セメント製品

土石製品 石工

精穀・製粉・調味食品 精穀、製粉、製糖、味そ・しょうゆ、動植物油脂

食料品 めん類、パン・菓子、豆腐・こんにゃく・ふ、かん詰・びん詰・レト ルト、乳・乳製品、食肉加工、水産物加工

製造 飲料・たばこ 製茶、清酒、酒類、清涼飲料、たばこ

紡織 粗紡・精紡、合糸・ねん糸、織機準備、織布、漂白・精練、染色、

編物・編立、綱・網

衣服・繊維製品 婦人・子供服仕立、紳士服仕立、和服仕立、刺しゅう、ミシン縫製、

木・竹・草・つる製品 裁断 製材・チップ、合板、木工・木彫、木製家具・建具、船大工、竹細工、

とう・き柳・草・つる

パルプ・紙・紙製品 パルプ・紙料、紙すき、加工紙、紙器、紙製品

製造/制作 印刷・製本 文字組版、製版、印刷作業、製本

ゴム・プラスチック製品 原料ゴム加工、ゴム製品、プラスチック製品成形・加工

革・革製品 製革、靴

装身具等身の回り品 かばん・袋物、がん具、ちょうちん・うちわ、ほうき・ブラシ、漆器、

貴金属・宝石・甲・角細工、印判、模型・模造品

金属加工 金属工作機械、金属プレス、鉄工・製缶、板金、金属彫刻、めっき、

加工 表面処理、針金・針・ばね

溶接・溶断 電気溶接、ガス溶接・溶断

一般機械 電気機械 電気機械、電気通信機器、電球・電子管、被服電線、半導体、電子応

組立 用機器

輸送機械 自動車、自動車整備、航空機、鉄道車両、自転車、船舶ぎ装 計量計測機器・光学機械器具 計量計測機器、時計、光学機械器具、レンズ研磨・調整

その他の製造・制作 内張、表具、塗装、画工・看板制作、写真、製図・写図、現図、包装

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機械運転 定置機械・建設機械運転 ボイラー、クレーン・巻揚機、ポンプ・ブロアー・コンプレッサ、

機械運転/ 建設用機械

電気作業 電気作業 発電・変電、送電線架線、配電線架線、通信線架線、電気通信設備、

電気工事

採掘 採鉱、石切出、じゃり・砂・粘土採取、ダム・トンネル掘削、さく井、

石油・天然ガス採取

建設躯体工事 型枠大工、とび、鉄筋

採掘/建設 建設 建設作業 大工、ブロック積・タイル張、屋根ふき、左官、畳、配管、内装仕上

/労務 防水

土木作業 土木作業、鉄道線路工事

労務 運搬労務 船内・沿岸荷役、陸上荷役・運搬、倉庫作業、配達、荷造

その他の労務 清掃

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生産工程の仕事 日本標準職業分類 原材料処理

制御・監視作業 製造作業

機械を使った製造作業 道具・手工的製造作業

組立・修理作業 組立・修理作業

検査 検査

その他の作業 その他の作業

図表 36 生産工程の仕事と日本標準職業分類

①集約コードに求人が集中し、特掲コードに分類される求人は相対的に少ないケース

②特掲コードに求人が集中し、集約コードに分類される求人は相対的に少ないケース

③集約コードと特掲コードにそれぞれ分類された求人は、おおよそ同程度であるケース 第 1 のケースでは集約職業を重視した項目の設定、第 2 のケースでは特掲職業を重視した 項目の設定を行う。また、第 3 のケースでは求人件数の分布などを考慮して個別に判断する。

もうひとつの見直しの方向は、現実の求人を分類表に反映させること、つまり現実の職業 を分類項目の形で分類表に写し取ることである。これには、現実の職業に合致していない既 存の分類項目を修正することと、分類表に設定されていない職業を分類表に設定することの ふたつの面がある。前者の例には印刷がある。印刷のプリプレス工程(印刷用の刷版を作成 するまでの工程)は大きく変化している。従来、写植機による文字組版の作成と写真製版の 組合せによって刷版を作成するのが主流であったが、現在では DTP ソフトを使用したパー ソナルコンピュータ上での組版作成とそのデータを刷版に焼き付ける技術が主流になってい る。このプリプレス工程の変化に対応した分類項目を設ける必要がある。

後者については、求人が増加しているにもかかわらず分類項目が設定されていない職業が ある。たとえば、商品注文リスト等にもとづいて該当商品を選び出す作業であるピッキング や、住宅の外壁をモルタル仕上げにするのではなくサイディングや ALC の外壁を取り付け る仕事などが該当する。

これ以外に大きな問題としては、求職者の現実にどのように対応するのかという問題があ る。製造や工場作業といった大くくりの仕事を希望する求職者が少なからずいる。大分類Ⅰ

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の亜大分類(製造・制作の職業)に設定されている中・小・細分類項目は、いずれも特定の 製品の製造に関係した職業である。つまり各分類項目は、明確な職務範囲と職務内容を伴っ ていることが特徴になっている。分類体系が、機械操作、手工的作業、単純作業などに分か れているのであれば、単純作業の下に設定する項目次第ではこのような求職者を位置づける ことも可能であると思われるが、製品の種類を問わず、また仕事の種類を問わないといった 求職者を職業分類表の項目に位置づけることは現行の体系では極めて難しい。ただし、この ような求職者の仕事を労務的なものに限定するのであれば、労務の職業に設定する項目によ っては対応は可能とも考えられる。

(3) 改訂素案

大分類Ⅰの見直し作業の結果を要約すると図表 37 のようになる。小分類項目別の見直し 結果と変更理由を示したものが図表 38 の改訂素案である。改訂素案の中から分類項目だけ を抜き出してその異同を図示すると図表 39 の新旧対照表になる。

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