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日本標準職業分類に設定された大分類 H「運輸・通信の職業」は、中分類レベルで鉄道、

自動車、船舶、航空機、通信に分かれ(図表 31)、かねてから産業分類的色彩が濃いと指摘 されている。特に中分類レベルに設定された運輸の 3 項目は大局的にみれば機械運転の職業 であるにもかかわらず、大分類 I の機械運転の職業とは別に運輸・通信の大分類項目が設定 され、その中に独立した中分類項目として位置づけられている。機械運転の職業を大分類レ ベルに設定するのであれば、輸送用機械だけではなく、現在、大分類 I に分類されている建 設用機械や定置機械もあわせて設定する必要がある。この点については、日本標準職業分類 の改定結果を待つことになる。

(2) 主な問題点

運輸・通信の職業が大分類レベルに設定されていると、他の大分類項目に位置づけられて いる職業との関係がわかりにくくなることがある。たとえば、フォークリフトの運転作業は 大分類 H に設定されているが、フォークリフトを運転して倉庫作業や運搬作業を行う作業 員は大分類 I の倉庫作業者や運搬作業者に該当するのか、あるいは大分類 H のフォークリ フト運転者に該当するのかが明確ではない。この問題は日本標準職業分類の考え方に関係し ている。日本標準職業分類では、汎用的な機械を運転する仕事は、その機械が何に利用され ようとも、その機械の使用目的に対応した職業ではなく、機械の運転の職業に分類すること を原則としている。したがって、フォークリフトは倉庫作業や物の運搬に広く利用される汎 用的機械であることから、倉庫作業や運搬作業の仕事であってもフォークリフトを運転して 作業を行う場合にはすべてフォークリフト運転者に位置づけなければならない。

これとは逆に、特定の用途のために使用される機械を運転する場合には、その仕事は機械 の運転の職業ではなく機械の使用目的に対応した職業に位置づけられることになる。たとえ ば、ダムやトンネルを掘削するときに使用する大型掘削機の操作員は、建設用機械運転工で はなく、ダム・トンネル掘削作業員に分類される。

仕事の位置づけがわかりにくいという点は通信の仕事も同じである。たとえば、電話交換 手は事務の仕事と考える人が大半であると思うが、通信の職業が大分類 H の中分類レベル に設定されている関係で、事務の職業ではなく大分類 H に位置づけられている。また、郵 便物を集配する仕事は、仕事の類似性だけに注目すれば運搬の仕事と考えられるが、この仕 事も通信の職業が設定されている故に大分類 I の運搬作業員ではなく、通信の職業に分類さ れる。

(3) 改訂素案

図表 32 は、大分類 H の見直し作業の結果を要約したものである。見直し作業は小分類項 目別に行われ、その結果と見直し理由を示したものが図表 33 の改訂素案である。図表 34 の 新旧対照表は、改訂素案の中から分類項目だけを抜き出してその異同を図示したものである。

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図表 31 大分類 H「運輸・通信の職業」の構成(中・小分類項目)

鉄道運転 鉄道機関士(電気、ディーゼル、蒸気)

電車・気動車運転士

バス運転者(路線バス、貸切バス、自家用バス)

自動車運転 乗用自動車運転者(自家用自動車、営業用自動車)

貨物自動車運転者(トラック、トレーラー、コンクリートミキサー、ダンプカー、タンク ローリー)

船長(漁労船を除く)(貨客船、作業船(浚渫船、タグボート))

航海士・運航士(漁労船を除く)、水先人 運輸・通信 船舶・航空機運転 船舶機関長・機関士(漁労船を除く)

の職業 航空機操縦士

航空機関士

車掌(鉄道、バス)

駅構内係、信号係

その他の運輸 甲板員

船舶機関員

その他(フォークリフト、小形船舶、車両点検係など)

無線通信員、無線技術員(無線通信士、無線技術士、特殊無線技士など)

有線通信員(有線通信操作員、有線技術員)

通信 電話交換手(国際電話オペレーター、構内電話交換手、案内台交換手など)

郵便集配員、電報配達員 その他(航空管制官など)

(注)括弧内は細分類項目

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図表 32 大分類 H「運輸・通信の職業」の細分類項目改訂素案の総括表

改訂案 該当項目 主な改訂内容

(現行分類番号)

小分類項目 統合 493、494 求人の少ない甲板員と船舶機関員を統合 した。

細分類項目 小分類に格上げ 499-10 求人の多いフォークリフト運転者を小分 類レベルに格上げした。

統合 461-10 〜 98 鉄道機関士

462-10 〜 98 電車・気動車運転士 482-10、-20 航海士・運航士 491-20、-21 バス車掌・バスガイド

新設 472-03 事業者・就業者の増えている自家用乗用 自動車運転代行者を新設した。

分割 473-11 求人の多いトラック運転者は、運転免許 の区分に対応した 2 項目に分割した。

項目名の変更 504-20 電報だけではなく、最近増えているメッ セージ配達サービスを含めるために電報 配達員を電報等配達員に変更した。

特 掲 項 目 の 細 分 求人の多い特掲項目を細分類レベルに設

類独立 定した。

471-11 〜 13 路線バス運転者など

472-11、-12 自家用乗用自動車運転者など 473-11 〜 15 トラック運転者など

501-21 ラジオ・テレビ放送技術員 雑 多 項 目 ( -99) 479-10 廃棄物収集車運転者 か ら 細 分 類 に 引 479-10 自動車陸送員 き上げた職業

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図表 33  大分類 H「運輸・通信の職業」の細分類項目に関する改訂素案

                       

現行(平成 11 年改訂)  新規求人数

合計 

集約・特掲

コード合計 改訂素案  主な改訂理由 

H  運輸・通信の職業  441,292             

46  鉄道運転の職業  268             

461  鉄道機関士  83      461  鉄道機関士     

461-10  電気機関士  17  17   461-01  鉄道機関士  ○求人 

461-20  ディーゼル機関士  25  25       相対的に求人の少ない「電気機関士」(17 件)、「ディーゼル機関 

461-30  蒸気機関士  1  1 (分類番号の対応)    士」(25 件)、「蒸気機関士」(1 件)、「鉄道機関士見習」(13 

461-98  鉄道機関士見習  13  13   461-01:461-10〜30、98    件)を統合し、細分類は「鉄道機関士」に一元化する。 

462  電車・気動車運転士  185      462  電車・気動車運転士     

462-10  電車運転士  154  154   462-01  電車・気動車運転士  ○求人 

462-20  気動車運転士  6  6       相対的に求人が多い「電車運転士」(154 件)と求人が少ない「気 

462-98  電車・気動車運転士見習  24  24 (分類番号の対応)    動車運転士」(6 件)と「電車・気動車運転士見習」(24 件)を統 

      462-01:462-10〜20、98    合し、細分類は「電車・気動車運転士」に一元化する。 

47  自動車運転の職業  400,527             

471  バス運転者  20,650      471  バス運転者     

471-10  バス運転者  10,504    471-01  路線バス運転者  ○バスの種類 

471-11  路線バス運転者  4,204    471-02  貸切バス運転者    路線バス(乗合バス)、貸切バス(観光バス)、自家用バスの 

471-12  貸切バス運転者  2,902    471-03  自家用バス運転者    3種類に分かれるので、それぞれを細分類の項目に設定する。 

471-13  自家用バス運転者  2,784 

20,394

      求人数を見ると集約項目の「バス運転者」に小分類全体の約半数 

      (分類番号の対応)    (約1万件)が振り分けられている。これは、バスの種類を明確に 

      471-01:471-11、-10 の一部    していない、あるいは募集時に複数種のバスを示している求人が 

      471-02:471-12、-10 の一部    多いためと考えられる。こうした求人の受け皿として雑多項目を 

      471-03:471-13、-10 の一部    設けることも考えられる。 

472  乗用自動車運転者  162,626      472  乗用自動車運転者     

472-10  乗用自動車運転者  20,846    472-01  自家用乗用自動車運転者  ○求人 

472-11  自家用乗用自動車運転者  1,464    472-02  営業用乗用自動車運転者    小分類全体で約 16 万 2,600 件もの求人が寄せられており、この  472-12  営業用乗用自動車運転者  139,539 

161,849

  472-03  自家用乗用自動車運転代行者    約 86%を営業用乗用自動車運転者(タクシー、ハイヤーの運転手) 

      が占めている。 

      (分類番号の対応)    自家用自動車運転者(社用車、公用車、送迎車等の運転手)の求人 

      472-01:472-11、-10 の一部    は約 1,400 件にとどまるが、これは求人職種名と細分類項目名の違 

      472-02:472-12、-10 の一部    い(「社用車、公用車、送迎車」と「自家用乗用自動車」)から、 

      472-03:472-10 の一部    かなりの求人が集約項目「乗用自動車運転者」(約2万件)に振り 

      分けられているためとも考えられる。ハローワークインターネット 

      サービスや民間求人情報誌・求人サイトを見ても、「自家用乗用自 

      動車運転者」の求人が多数確認されるため、細分類項目に設定する。 

      ○運転代行 

      自動車運転代行業(主に飲酒のため自分の車を運転することができ 

      なくなった顧客に代わって、車の運転を代行するサービス)が郊外 

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      や地方を中心に発達してきている。求人規模は明らかではないが、 

      雑多項目 479-10 に振り分けられた求人職種名や、各種求人情報サイ 

      ト等を見ると、多数の求人のあることが確認できる。このため、 

      「自家用乗用自動車運転代行者」の細分類を新設する。 

473  貨物自動車運転者  204,441      473  貨物自動車運転者     

473-10  貨物自動車運転者  81,458    473-01  大型・中型トラック運転者  ○求人 

473-11  トラック運転者  94,909    473-02  小型トラック運転者    トラック運転者に9万 4,900 件、それぞれの枝番項目にも数千件規  473-12  トレーラートラック運転者  9,090    473-03  トレーラートラック運転者    模の求人が寄せられている。このため現在のすべての枝番項目を細  473-13  コンクリートミキサー車運転者  2,632    473-04  コンクリートミキサー車運転者    分類項目に設定する。トラック運転者は求人がとくに多いため、 

473-14  ダンプカー運転者  9,088    473-05  ダンプカー運転者    運転免許の区分に基づき「大型・中型」と「小型」に分割する。 

473-15  タンクローリー運転者  4,055 

201,232

  473-06  タンクローリー運転者  ○雑多項目の新設 

      473-99  他に分類されない貨物自動車運転者    小分類と同名の集約項目(貨物自動車運転者)への求人が8万件を 

      超えている。これは①複数種の貨物自動車を求人の際に示している、 

      (分類番号の対応)    ②貨物自動車の種類を明確にしていない、③479 その他の自動車運転 

      473-01:473-11    の職業に位置づけるべきものが振り分けられている、 

      473-02:473-11    に加え、④現在の枝番項目に設定していない種類の貨物自動車 

      473-03:473-12    (ライトバンなど)運転への求人が一定規模存在する、ことを 

      473-04:473-13    うかがわせる。小分類 473 に雑多項目を新設し、こうした求人の受 

      473-05:473-14    け皿とする。 

      473-06:473-15     

      473-99:473-10     

479  その他の自動車運転の職業  12,810      479  その他の自動車運転の職業     

479-10  その他の自動車運転の職業  12,645  12,645   479-01  廃棄物収集車運転者  ○求人職種 

      479-02  自動車陸送員    ①ユニック(小型クレーン付トラック)運転者=約 250 件 

      479-99  他に分類されないその他の自動車運転    ②廃棄物収集車(パッカー等)運転者=約 1,000 件 

      の職業    ③運転代行者=約 150 件 

      ④配送員=約 200 件 

      (分類番号の対応)    ⑤自動車回送員(陸送員、キャリアカー運転者等)=約 500 件、が多い。 

      479-01:(479-10)    ①は 473-01、-02 トラック運転者、③は 473-03 自家用乗用車運転代行 

      479-02:(479-10)    者、④は 794-01 配送員、集配員に分類される。②は 801-03 ごみ処理 

      479-99:479-10    作業員の求人が振り分けられている可能性も高いが、収集車の運転 

      に主として従事する者も少なくないことから、細分類項目に設定する。 

      ⑤も求人が多いため細分類項目に設定する。 

48  船舶・航空機運転の職業  258             

481  船長(漁労船を除く)  142      481  船長(漁労船を除く)     

481-10  貨客船船長  59  59   481-01  貨客船船長  ○求人 

481-20  作業船船長  22    481-02  作業船船長    求人が一桁台にとどまる枝番職業名を整理し、「貨客船船長」、 

481-21  しゅんせつ船船長  2    481-99  他に分類されない船長    「作業船船長」、「他に分類されない船長」に項目を整理した。 

481-22  タグボート船船長  2 

26

       

481-99  他に分類されない船長  40  40 (分類番号の対応)     

      481-01:481-10     

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