ジオサイトの特徴や見どころ
壇鏡の滝は、隠岐島後の南西部に ある那久川上流に位置し、粗面岩の 岩壁を流れ落ちる二条の滝でありま す。岩壁に向かって右側の滝を雄滝 と呼び、落差が50mあります(写 真1)。それに対し、左側の滝を雌滝 と呼び、落差が40mあります(写 真2)。このうち、雄滝は裏側から眺
また、池の周辺は森林となっており、さらにその東側には馬蹄形状の崖が切り 立っています。この急崖は粗面岩の溶岩から成っていることから、油井ノ池の円 い地形は、島が形成された頃の活発な火山活動時(約500万年前)の「爆裂火口」
ではないかという考えがあります。しかし、隕石衝突でできた「クレータ」や巨 大地すべりによってできた「頭部陥没帯」
などの説もあります。
池周囲には展望台や自然観察路が設備 されており、貴重な動植物やダイナミッ クな地形を観察できるようになっています。
地質学的な 意義
「油井の池はどのようにしてできたか?」これについて過去から様々な説があり ました。池周辺でのボーリング調査により、池とその東側の急崖との間には不揃 いの礫を含む地層が存在することが明らかとなりました。さらに最新の調査では これらの地層は鮮新世の海成堆積物(向ヶ丘層)であることが分かってきました。
つまり、現在の油井の池周辺は鮮新世には海底であり、向ヶ丘層の堆積後、鮮新 世末から更新世には隆起したことを意味しています。このことから、油井の池を 取り囲む急崖は、島後が沈降していた時の海の波浪によって形成された海食崖で あり、隆起時に発生した巨大な地すべりによって堆積物が移動し、現在の地形が 形成されたものと考えられます。したがって、油井の池
は巨大地すべりの頭部陥没帯に水が溜まってできた天然 の池であると考えられます。
記念物指定など
大山隠岐国立公園特別地域
↑写真3:油井の池とその東側に切り立つ急崖
↑周辺地図
↑写真1:雄滝全景 ↑写真2:雌滝全景
↑写真4:地質境界と社殿
↑写真5:降下火山灰堆積物 ↑周辺地図
↑写真3:「裏見の滝」(雄滝裏側より)
めることができるので、「裏見の滝」とも呼ばれています(写真3)。粗面岩の岩 壁と緑に囲まれたこの滝は幻想的でさえあり、「日本の滝百選」および「名水百選」
に選ばれています。島内では「勝利の水」「長寿の水」とも呼ばれ、島の闘牛大会 や隠岐古典相撲大会に参加する者は、必ずこの水で清めて大会に望む慣習があり ます。
流域には、絶滅危惧Ⅱ種「オキサンショウウオ」が生息しています。
地質学的な意義
壇鏡の滝周辺の地質は、今から550万年前に噴出した重栖層上部の粗面岩溶 岩が分布しています。滝が流れ落ちる岩壁の大部分は粗面岩の溶岩から構成され ますが、岩壁の麓には溶岩の下位の降下火砕堆積物が分布しています。岩壁の前 に立つとその境界をはっきりと見ることができます(写真4)。
降下火砕堆積物は溶岩に比較して軟らかく、浸食されやすいため、長年の風雨 によって深くえぐられ、地質境界を境にオーバーハング状態となっています。こ のオーバーハングのおかげで「裏見の滝」ができたと言えます。また、このえぐ られた部分に壇鏡神社の社殿が建てられています。このため、社殿は粗面岩溶岩 の屋根に守られているようになっています。社殿横では粗面岩溶岩と降下火砕堆 積物の境界の様子が詳細に観察できますが、溶岩には節理が多数発達しているた め、近寄るときには落石に注意してください。
記念物指定など
大山隠岐国立公園第1種特別地域
大久の玄武岩中の捕獲岩
―地下深部からの便り―ジオサイトの特徴や 見どころ
地球は、その物性の相違を基に表層から6
〜30kmの地殻、2900kmまでのマン トル、6400kmまでの核と大きく3つに 分けることができます。地殻は大陸を構成す るものを大陸地殻、海洋を構成するものを海 洋地殻とよび、大陸地殻の厚さは平均約30 km程度、海洋地殻の厚さは6〜7kmであ ることが知られています。マントルは、上部
660kmまでを上部マントルと呼びますが、これは主にかんらん岩でできてい ます。玄武岩マグマは地下数百km〜数十kmの上部マントルで発生し、かなり の速さで上昇してきますが、マグマが上昇する時に、周りの岩石を取り込んでく ることがあり、取り込まれた岩石を捕獲岩(ノジュール)と言います。ちなみに、
1974年に発表された東京工業大学の高橋栄一教授の論文では、大久での玄武 岩の上昇スピードは毎秒10m(換算すると時速36km)とされています。大 久から卯敷に至る海岸には玄武岩の中に、さまざ
まな捕獲岩が存在することで有名です(写真1)。
この捕獲岩には、地殻下部の斑れい岩や変成岩の ほか、マントル由来のかんらん岩が含まれていま す。かんらん岩は主に薄いオリーブグリーン色を したかんらん石と深緑色をした輝石からできてい ます。捕獲岩にはかんらん石と輝石の割合の異なっ
た、さまざまなかんらん岩があります。これらは海岸斜面の崖や海岸の転石に含 まれていることから、容易に観察することができますが(地点①、写真1)、国立 公園であるため採取するためには許可が必要です。海岸斜面の崖は、約350万 年前(鮮新世後期)のマグマの通り道(火道)周辺の地層が浸食されたために、
火道が塔状に露出した「岩頸」と呼ばれるものです(写真2)。岩頸は地点①のほ かに黒島(地点④、写真3)にも見られますが、後者はチャーター船でしかアク
セスすることができません。
↑写真3:黒島
↑写真1:海岸の転石に見られるさまざまな捕獲岩。
写 真 で の 大 き さ は 最 大 13 × 8cm。
左上がかんらん石を多く含むもの、右 が輝石を多く含むもの、左下が斜長石 を含む斑れい岩。
↑写真2:海地点①の海岸
(右手が岩頸の露頭)
地質学的な意義
上部マントルの主な構成鉱物は、かんらん石と斜方輝石および単斜輝石ですが、
地下70kmよりも浅いところでは、これにスピネル と呼ばれる鉱物が含まれ、地下70kmより深いとこ ろでは、マグネシウム(Mg)に富んだざくろ石(ガー ネット)が含まれます。大久ではスピネルを伴ったか んらん岩が発見されているため、地下70kmよりも 浅いところからもたらされたものと考えられます。大 久の玄武岩中の捕獲岩は、地下深部からの手紙と言え るでしょう。
記念物指定など 大山隠岐国立公園