§ 26 .マクスウェル方程式の第 1 の組
§ 26の内容を補足しつつまとめよう.電場と磁場がポテンシャルから導かれること(ポテンシャルを用い て定義されること)
E=−1 c
∂A
∂t −∇ϕ, H=∇×A は,Maxwell方程式の第1の組
∇×E=−1 c
∂H
∂t , ∇·H= 0
を含んでいる[逆にこれはポテンシャルを導入できる根拠となる].実際,これらは恒等式
∂iFkl+∂kFli+∂lFik= 0 にすぎない.
∇·H= 0 ⇔ I
H·df = 0
[各点の周りの単位体積からの磁場のわき出しはゼロ
⇔ 任意の閉局面からの磁場のわき出し(磁束)はゼロ],
∇×E=−1 c
∂H
∂t ⇔
I
E·dl=−1 c
d dt
∫
H·df
[各点の磁場の時間変化が周りに電場の渦を作る
⇔ 任意の閉曲線を貫く磁束の変化が,その閉曲線に電場の循環(起電力)をもたらす].
§ 26 について
■積分形のMaxwell方程式(26.4)について 右辺の磁束∫
H·df は積分により位置依存性が失われ,時間だ けの関数となっているから,前の∂/∂tはd/dtと書いて良い.
■「i̸=k̸=lのとき」(式(26.5)の2行下)について これはi, k, lが相異なることを表しており,正確には i̸=kかつk̸=lかつl̸=iである.
■式(26.6)について 式(26.6):eiklm∂kFlm = 0は電磁テンソルの対偶テンソルF∗ik≡ 2!1eiklmFlmに対す る式∂kF∗ik= 0となっている.実際に式(26.5):∂iFkl+∂kFli+∂lFik= 0をこのように書き換えられるこ とは次のように確かめられる.
0 =1
3!eiklm(∂kFlm+∂lFmk+∂mFkl)
=1
3!(eiklm+eimkl+eilmk)∂kFlm
=1
2!eiklm∂kFlm (⇔式(26.6))
=∂kF∗ik.
§ 27 .電磁場の作用関数
電荷だけでなく場のダイナミクスも決定するには,電荷がないときの場に対する作用Sf を考えて系全体の 作用を
S=Sm+Smf+Sf としなければならない.場の作用は
Sf =a
∫
FikFikdVdt という形を持つ.このとき場のラグランジアン(密度)は
• 場の2次の量
→ 場の方程式は線形微分方程式 → 重ね合せの原理が成立.
• ポテンシャルと違って一義的に決まる量Fikから成る.
• Lorentzスカラーである.
• 場の時間に関する1階導関数だけを含む
→ 場の方程式は時間に関して2階の微分方程式 → 古典的因果律が満たされる.
Sfが極小値をとるにはa <0が必要であり,Gauss単位系でa=−1/16πである.こうして電磁場と粒子の 系に対する完全な作用は
S=−∑ mc
∫
ds−∑e c
∫
Akdxk− 1 16πc
∫
FikFikd4x となる.
§ 27 について
■粒子が場に与える影響(最終段落)について 場に対する作用Sfを導入することは粒子から場への反作用を 考慮することとは無関係である.実際,粒子の座標についての変分でδSf = 0となるのでSfを作用に加えて も運動方程式は変わらず,「粒子の運動に影響をおよぼすことはできない」(p.76,l.15).本来Smfの中に粒子 と場の双方向への影響が含まれており,特にSmfの中のAiを与えられたものと見ると粒子から場への反作用 が無視されることになるにすぎない.
■「Smfにおいては,一義的でないことは重要でない」(p.77,l.6)について 実際,電荷保存則によればSmf
におけるポテンシャルの不定性は運動方程式に影響しないことが§ 29最終段落にて証明される.
§ 28 . 4 次元電流ベクトル
点電荷の系の電荷密度は
ρ(r, t) =∑
a
eaδ(r−ra(t)) である.実際これは
• 点電荷が存在している点を除いてはゼロになり,
• ∫
ρdV は積分領域に含まれる電荷の和を与える.
一般に電荷密度ρは不変量ではなく,積ρdV 不変量となる*8.
電流密度の4元ベクトルji= (cρ,j)を導入すると,作用の相互作用項は Smf=−∑e
c
∫
Aidxi=−1 c2
∫
Aijid4x と書き換えられる.
§ 28 について
■電流密度(28.2):ji=ρdxi/dtの再定義 p.79,l.6で明確な意味を与えられずに導入されたdxiは,電荷が 空間に連続的に分布している描像の下で点xiにある流体粒子のdt中の変位(の第i成分)を意味すると考え られる.式(28.2):ji=ρdxi/dtはこの解釈と整合している.次に電荷が離散的な点粒子から成る描像に移る には,
ji =∑
a
eadxi
dt δ(r−ra) → ji=∑
a
eadxai
dt δ(r−ra), dxai
dt はa番目の粒子の速度 と再定義すれば良いと考えられる.連続体近似における表式はr=raではdxi/dt= dxai/dt,r̸=raでは
δ(r−ra) = 0だから粒子系に対する表式に一致する.一方,粒子が希薄なとき,連続体に対する表式はもは
や有効でない(r̸=ra の位置では電荷の速度dxi/dtはもはや定義されないから).流体の速度dxi/dtは∑
a
の外に出せるのに対し,粒子の速度dxai/dtは∑
aの外に出せない.
次元解析 電流密度(28.4):ji= (cρ,j)の時間成分と空間成分は等しい次元を持つ:
[cρ] = [jα].
jiが4元反変ベクトルであること jiがベクトルとして変換することを確かめるp.79の議論を,粒子系に関 して再定義した
ji=∑
a
eadxai
dt δ(r−ra) に対してやり直そう.
dt
∫
dV ji= dt∑
a
ea
dxai dt =∑
a
eadxai
の最右辺においてeaはスカラー,dxaiは4元反変ベクトルだから,最右辺全体は4元反変ベクトルである.
よって最左辺も4元反変ベクトルでなければならない.ところがdVdtはスカラーだから,jiは4元反変ベ クトルである.
Smfのjiを用いた書き換え 作用の相互作用項がjiを用いてp.80のように書き換えられることを,粒子系 に関して再定義した
ji=∑
a
ea
dxai
dt δ(r−ra)
*8dV の値は座標系ごとに変わっても,これが指定する空間内の領域は座標系に依らずに定義され,そこに含まれる電荷ρdV はど の座標系で見ても変わらない.
に対して確かめる.
−1 c2
∫
Aijid4x=−1 c
∫ Ai
{∑
a
ea
dxai
dt δ(r−ra) }
dVdt=−∑
a
ea
c
∫
Ai(ra, t)dxai dt dt
=−∑
a
ea
c
∫
Ai(ra, t)dxai.
式(31.3)の3行下の式について 同様に
∫
V
j·EdV =
∫
V
∑
a
eavaδ(r−ra)·E(r)dV =∑
a
eava·E(r) と考えれば良い.
式(34.1)の1つ前の式から式(34.1)への書き換えについて ここでv→vaと書き換えられてるのも同様.
§ 29 .連続の方程式
§ 29の内容を補足しつつまとめよう.
電荷保存則は連続の式
∂ρ
∂t +∇·j = 0 (4)
によって表されることを説明する.まず,電荷保存則は次のように言い表せる:
空間に固定した領域内部の電荷が増加したならば,それは領域内部で電荷が無から生じたからではなく,
領域の表面を通って電荷が内部に流入したからである. (5)
特に空間の各位置の周りに無限小領域d3xを考えれば,単位時間当たりの内部の電荷ρd3xの増加量は∂ρ∂td3x である.一方,電流密度jは名前の通り電荷の流れの密度を表すので,電荷の流入量は−∇·jd3xである.
これらを等置して連続の式(4)を得る.さらに各体積要素d3xで
∂ρ
∂td3x=−∇·jd3x
が成り立てば,任意の有限な領域V に対しても保存則の主張(5)が成り立つ.実際,領域V を構成する全て の体積要素d3xについて電荷の流入量−∇·jd3xを足し合わせると体積要素間の電荷の出入りが相殺され,
表面Sからの流入量−∫
Sj·df になる*9.こうして領域V 内部の電荷∫
V ρd3xは,単位時間に表面Sから 流入した分だけ増加することになる:
d dt
∫
V
ρd3x=−
∫
S
j·df. ここで総電荷∫
V ρd3xは時間tだけの関数であることに注意して,常微分の記号d/dtを用いた.df は表面 Sの外向き法単位ベクトルである.
連続の式は
∂iji= 0 と表される.
*9このことは体積要素dV が直方体d3xに限らず無限小の四面体の場合にも成り立ち,数学的には発散定理と呼ばれ,∫
V∇·jdV =
∫
Sj·dfと書かれる
■粒子系 粒子系に関する表式 ρ(r, t) =∑
a
eaδ(r−ra(t)), j(r, t) =∑
a
eava(t)δ(r−ra(t)) に対して連続の式は自動的に満たされる.
■ゲージ不変性と電荷保存則 最後にゲージ不変性と電荷保存則の関係性について,§ 18(p.56の脚注)の説 明と併せて論じる.作用のゲージ不変性が非自明な項は粒子と場の相互作用項であり,その2通りの表現
Smf=−∑e c
∫
Aidxi, −1 c2
∫
Aijid4x
に応じてゲージ不変性と電荷保存則の関係を2 通りに見ることができる.相互作用項Smf のゲージ変換 δAi=−∂ifに伴う変化
δSmf=∑e c
∫
df, δSmf= 1 c2
∫
(∂if)jid4x
は電荷保存則によりeが時間に依らない定数であれば,あるいは連続の式∂iji= 0が成り立てば,それぞれ δSmf =∑ ∫
d (e
cf )
, δSmf = 1 c2
∫
∂i(f ji)d4x
となる.これらは与えられた境界の値で決まるような,変分をとると落ちる量となっているから,運動方程式 は不変に保たれる.こうしてゲージ不変性と電荷保存則は密接に関係している.
§ 29 について
■粒子系に対する密度の表式が連続の式を自動的に満たすこと § 28の補足にて修正した電流密度の表式 j(r, t) =∑
a
eava(t)δ(r−ra(t))
を用いて,粒子系に対する密度の表式が連続の式を自動的に満たすことの証明pp.81–82を多粒子系の場合に 拡張する.電荷密度・電流密度の式
ρ(r, t) =∑
a
eaδ(r−ra(t)), j(r, t) =∑
a
eava(t)δ(r−ra(t)) に対して ∂ρ∂t+∇·j= 0を自動的に満たすことは,
∂
∂tρ(r, t) =∑
a
ea
∂
∂tδ(r−ra(t)) =∑
a
eava(t)· ∂
∂ra(t)δ(r−ra(t))
=−∑
a
eava(t)·∇δ(r−ra(t)),
∇·j(r, t) =∂iji(r, t) =∑
a
eavai(t)∂iδ(r−ra(t))
=∑
a
eava(t)·∇δ(r−ra(t))
となるので,これらを辺々足すと連続の式が得られる[5, p.195].これは系が生成消滅しない点電荷で構成さ れていることを電荷密度・電流密度の式が適切に表現しているため,電荷保存則すなわち連続の式が満たされ るものと解釈できる.
図17 全3次元空間を含む無限超曲面と,面を通過する電荷
一方で電荷密度・電流密度の具体的な表式とは無関係に,Maxwell方程式(30.2): ∂kFik=−4πc jiの中に 連続の式が含まれていることが次のように分かる(§ 30参照).
∂ρ
∂t +∇·j =∂iji=− 1
4π/c∂i∂kFik= 0.
最後の等号では添字i, kについて∂i∂kは対称,Fikは反対称なので∂i∂kFik= 0となることを用いた.
■全電荷の表式(p.82,l.9)について ∫
ρdV =1c∫
j0dS0= 1c∫
jidSiの2番目の等号は,x0軸に垂直な超 平面内のベクトルに対してdx0= 0よりdS1,dS2,dS3= 0となるから.これはxy平面に平行な領域の面積 分でdfがx, y成分を持たない,あるいは領域のyz, zx面への正射影が面積を持たないのに似ている.
■全電荷の保存 「x0=一定というどの超平面についておこなっても積分∫
jidSiは同じである」(p.82,l.13) ことを示すのに,単位時間だけ隔たる2枚のx0= (一定)の超平面における総電荷の差を考えれば,Gaussの 定理(6.15)を用いる必要はない:
d dt
∫
j0dV =−
∫
∂αjαdV (連続の式∂iji= 0)
=0. (空間の無限遠でjα= 0)
■「全3次元空間を含む2つの任意の無限超曲面」(式(29.5)の2行下)について 図17参照.
■§ 29最終段落について ポテンシャルの不定性が運動方程式に影響しないことの電荷保存則を用いた確認 では次のように部分積分を用いる.Smfをゲージ変換すると
Smf →Smf+ 1 c2
∫
(∂if)jidΩ =Smf+ 1 c2
∫
∂i(f ji)dΩ− 1 c2
∫ f ∂iji
|{z}
=0
dΩ =Smf+
∫
f jidSi. 最後の第2項の積分領域である「境界の超曲面」(p.83,l.4)とは図18のような 円柱 の表面である.その
側面 すなわち3次元空間の無限遠ではji= 0なのでx0=ctA, ctBでの積分が残る.ここでは変分をとる 際,粒子の座標が変化しないからこの積分は変分によって落ちる.
図18 超平面x0=ctA, ctBによって切り取られた時空の領域
§ 30 .マクスウェル方程式の第 2 の組
§ 30の内容を補足しつつまとめよう.変分原理によれば,粒子の運動として現実の粒子の運動を考え,場 Aiだけを変化させたとき作用の変分はδS= 0である.ここから場の方程式
∂kFik=−4π c ji が導かれる.これはMaxwell方程式の第2の組
∇×H= 1 c
∂E
∂t +4π
c j, ∇·E= 4πρ を与える.
∇·E= 4πρ ⇔ I
E·df = 4π
∫ ρdV [電荷はその周りにわき出すような電場を作る],
∇×H=1 c
∂E
∂t +4π c j ⇔
I
H·dl= 4π c
∫ ( j+ 1
4π
∂E
∂t )
·df [
電流と変位電流 1 4π
∂E
∂tが周りに磁場の渦を作る ]
.
Maxwell方程式∂kFik =−4πc ji は連続の式∂iji = 0を含んでいる[逆にMaxwell方程式が変位電流の項 を欠いていたら,電荷保存則が破れる].
§ 30 について
■δSの式(30.1)について 右辺第2項の符号は+と考えられる.これは以降の議論には影響しない.
§ 31 .エネルギーの密度と流れ
Maxwell方程式から
−∂
∂t
(E2+H2 8π
)
=∇·S+j·E, S= c
4πE×H:Poyntingベクトル