アルゼンチン国土の主要部は,次の5つのテレーンから構成されていると考えられてい る:
(1)リオデラプラタ・クラトン(Rio de la Plata Craton)
(2)パンピア帯(Pampia)
(3)クジャニア帯(Cuyania)
(4)チレニア帯(Chilenia)
(5)パタゴニア帯(Patagonia)
リオデラプラタ・クラトンは,Florida terraneとBuenos Aires terraneが2,300~2,100 Maに衝突し,それがTandilia terraneに2,100~1,900 Maに付加された後に,原生代早 期に融合して固結した。縫合以前の沈み込みに関連して,2つのマグマ弧が発達したとさ れている。それらの縫合帯は,塩基性および超塩基性岩帯に認められる。Valcasi terrane の付加は750~700 Maに行われた。
パンピア帯は,片岩および片麻岩を伴う大理石の基盤から構成されており,それらは
1,000~900 Ma頃の安定な縁海における堆積物が変成したものである。パンピア帯は,原
生代後期(750 Ma)にリオデラプラタ・クラトンと衝突して付加されたものである。リオ デラプラタ・クラトンにおける縫合線の形成に先立つカルクアルカリ系列のマグマ弧は,
トーナライトと正片麻岩によって代表される。縫合線は衝上したオフィオライト岩体の存 在によって証拠づけられる。また,塩基性-超塩基性岩帯によって示される縫合線もあり,
それらのうちの最大のものは古生代早期のFamatina terraneの付加に対応している。パ ンピア帯とリオデラプラタ・クラトンの間の主要縫合線と超塩基性岩帯によって画される 地域は,背弧の引張の場を示すものであり,Cordoba地域の従属的なテレーンであると解 釈されている。
パンピア帯の北西端においては,Arequipa-Antofalla terraneが付加されており,Puna 地域の基盤を形成している。そこでの現在の位置関係は,原生代後期に形成されたもので ある。また,鉛の同位体データによると,アマゾン・クラトンとの初生的な関連を示唆し ている。
Arequipa-Antofalla terraneはおそらく1,000 Ma以前に集積したドメイン・グループ によって形成されている。それは2ブロックに分類され,北部のArequipa 帯は原生代の 早期から中期のものであり,南部の Antofalla 帯は原生代後期から古生代最早期のもので あり,アルゼンチンの最北西部を形成している。
CananiおよびLa Queseraの深成岩は,Arequipa-Antofalla 縫合線形成以前のマグマ 弧を代表する。それらは原生代早期のリフティング過程においてパンピア帯から分離し,
縁辺的な堆積盆を形成し,Ocloyica 造山運動に伴って縫合線を再構築したと見られる。
Puna 東部の火山帯については,非衝突の再生マグマとの見解があるものの,その縫合線 以前のマグマ弧を代表するものと考えられる。また,古生代早期には付加が行われ,
Famatina terraneのパンピアの部分が形成された。
クジャニア帯は,Cuyania-Precordilleraとも呼ばれ,変成年代が1,100~900 Maとさ れている高度および低度の変成岩類と古生代最早期の堆積岩類から構成されている。この 堆積岩類および基盤の変成岩の変成年代が有する特徴から,これらが Laurentia 東部の Grenville 帯に起源を有することが示唆される。それにはクジャニア帯と Precordillera
terrane が原生代に付加したことを示す縫合線を伴う地域が含まれ,その地域は Pie de
Palo 山脈の西斜面に出現する。パンピア帯はオルドビス紀末頃に付加したとされている。
Puna 東部の斜面に噴出したオルドビス紀のマグマ活動の南方延長は,その縫合線以前の マグマ弧に相当する。
チレニア帯の基盤は,古生代後期のマグマ活動および変成作用によって被覆されている。
基盤には500~415 Ma の間に変形と変成を受けた形跡があり,シルル紀の堆積物に覆わ
れる。その起源については不明な点がある。チレニア帯はデボン紀後期にクジャニア帯に 付加した。その縫合線は,多数の断片的なオフィオライト岩体によって示される。深成岩 と部分的には安山岩質火山岩がCordillera Frontalを形成し,その縫合線以前のマグマ弧 を代表している。その北方延長に関しては,チレニア帯とArequipa-Antofalla terraneと
の境界が27°30′S付近であるとされている。
パタゴニア帯は,Somuncura地塊とDeseado地塊の2つの地塊から構成されている。
それらは古生代早期の Famatina 造山運動の時に衝突したものであり,それに先行して
Deseado地塊の沈み込みに関係するマグマ弧の活動があった。
パタゴニアがアルゼンチンと完全に接合したのは古生代後期であり,それが大規模付加 運動としては最後のものである。Somuncura 地塊におけるペルム紀の深成岩活動は,こ の縫合線に先立つマグマ弧に相当するものである。縫合線は,西部においては付加後のマ グマ活動や中生代から新生代の堆積物によって抹消されているため,その位置状況につい て論争がある。
次に各時代の地層について概略を述べる。
始生界の岩石はアルゼンチンでは同定されておらず,最古の地層は原生代中期のタンデ ィリア造山サイクル(2,000~1,800 Ma)に相当する。これらの岩石は花崗岩類および片 麻岩からなり,リオデラプラタ・クラトンおよびブラジル・クラトンに関連して,中~高 度の変成作用を受けている。それらは Gran Chaco 地域の基盤を構成し,Buenos Aires 地域に部分的に露出する。
先カンブリア紀後期からカンブリア紀早期のパンピア造山サイクルの期間,造山運動が アルゼンチンの北部~中部に起こり,北西-南東方向に引き続いた。これによって多様な サイクルの変形運動が生じ,大規模な花崗岩の迸入を伴った。これらの地層は火山岩およ
び変成岩からなり,Puna帯,Cordillera Oriental帯,Sierras Panpeanas帯の基盤を構 成している。それらの地域では,第三紀末のアンデス造山運動の期間に大略南-北方向の 断層によるブロック化を蒙っている。
カンブリア紀後期からデボン紀の間にファマティナ造山サイクル が起こった。この間,
縁海堆積盆がアルゼンチン西部の厚い堆積物が集積する地域で発達した。そこにおいては 堆積盆内で堆積環境が変化に富んでいる特徴を有する。これらの堆積物はアルゼンチンの 北西部の各州に広く露出し,その堆積シーケンスはペルーおよびボリヴィアへと追跡する ことができる。また,それらは南東に続き,下部古生界のシーケンスがBuenos Aires 州 南東部で再露出する。それらの岩石は南部アフリカにおける岩石との類似性を有している。
オルドビス紀からシルル紀にかけての時期に,アルゼンチン北西部はオクロジカ造山運 動に関連する造構運動の影響を受けた。下部古生界のシーケンスの変形とマグマ弧の形成 は花崗岩類の迸入,ミロナイト質片麻岩,ペグマタイト,酸性および塩基性岩脈の生成を もたらした。
石炭紀と三畳紀の間のゴンドワナ・サイクルは,その初期においてさらなる変形と花崗 岩類の迸入をもたらした。それからはマグマ活動や構造運動を全く伴わない陸成堆積物の 堆積時期となった。しかしながら,ペルム期早期末から三畳紀早期に継続したサンラファ エリナ造山運動は,集中的な火山活動と深成岩の活動をもたらした。最も活動の激しかっ たのはSan Juan,Mendoza,Neuquenの各地域である。
三畳紀には多数の陸上盆地が形成され,それはジュラ紀における顕著な海盆での堆積へ と引き続いた。このプロセスは,ジュラ紀中期の南部大西洋の拡大によって最高潮に達し た。三畳紀における陸上盆地堆積物は,アルゼンチンの西部において南-北方向に連なり,
南方はパタゴニアまで連続している。
ジュラ紀と白亜紀の大半を占めるパタゴニア造山サイクルの間にリフティング運動があ り,上昇した海盆はアルゼンチンの南部および西部の広大な範囲に分布している。この時 期の陸成堆積物はアルゼンチン中央部では地下に潜っているが,パタゴニアでは広く露出 している。そこにおいては,ジュラ紀の堆積物が広範囲なイグニンブライトとその他の火 山噴出物の産出に付随している。アルゼンチン北東部ではParana高原からの塊状の玄武 岩溶岩が分布している。その全体の分布域は,ブラジル,アルゼンチン,ウルグアイ,パ ラグアイに跨る約百万平方kmの範囲にわたっている。
アンデス地帯の上昇は第三紀に始まり,そのプロセスは今日も継続している(アンデス 造山サイクル)。連続的な構造運動および火山活動は,山脈の形成と厚さ数千mに達する 陸上堆積物の堆積をもたらした。暁新世から始新世には,主に酸性火山岩からなる火山活 動がチリ側アンデスの広い範囲で発生した。一方,南部および東部のMendoza州,Santa Cruz州における火山岩は主として玄武岩質である。
第三紀の堆積物はアルゼンチン全土に広く分布し,中央部および北部では砕屑物や火山 砕屑物が最大1万mの厚さで分布する。そして,東部および南部では主に陸棚堆積物が分