資源開発環境調査
アルゼンチン共和国
República Argentina
目 次 第 1 部 資源開発環境調査 1. 一般事情 ··· 1 2. 政治・経済概要 ··· 2 3. 鉱業概要 ··· 10 4. 鉱業行政 ··· 11 5. 鉱業関係機関 ··· 20 6. 投資環境 ··· 25 7. 地質・鉱床概要 ··· 30 8. 鉱山概要 ··· 36 9. 新規鉱山開発状況 ··· 38 10. 探査状況 ··· 41 11. 製錬所概要 ··· 45 12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況··· 46 第 2 部 地質解析 1. 地質・地質構造··· 48 2. 鉱床 ··· 57 2-1. 鉱床生成区 ··· 57 2-2. タイプ別・時代別分布の特徴 ··· 63 3. 鉱床胚胎有望地域 ··· 79 資料(統計、法律、文献名、URLなど) ··· 84
第1部 資源開発環境調査
1.一般事情 1-1. 面 積 2,782 千平方 km 1-2. 人 口 36,260 千人 1-3. 首 都 ブエノスアイレス(Buenos Aires) 1-4. 人 種 欧州系(スペイン,イタリア)97 %,インディヘナ系 3 % 1-5. 公用語 スペイン語 1-6. 宗 教 ローマカトリック(90 %) 1-7. 歴 史 ・1816 年 独立(7 月 9 日) ・1946 年 ペロン政権成立 ・1973 年 軍部介入など変遷の後サイド政権成立 ・1976 年 クーデターにより軍事政権成立 ・1978 年 4~6 月 フォークランド(マルビーナス)諸島紛争 ・1983 年 12 月 アルフォンシン大統領就任(民政移管) ・1989 年 7 月 メネム大統領就任 ・1995 年 7 月 メネム大統領再度就任 ・1999 年 12 月 デラルア大統領就任 ・2002 年 1 月 ドゥアルデ大統領就任 ・2003 年 5 月 キルチネル大統領就任2.政治・経済概要 2-1. 政 体 立憲共和制 2-2. 元 首 大統領(ネストル・キルチネル) 2-3. 議 会 二院制(上院72 議席,下院 257 議席) 2-4. 政治状況 1999 年に発足したデラルア政権(急進党)は,2001 年 11 月の経済・金融危機に端を 発した社会騒擾により任期半ばで辞任(同年 12 月)した。この後,ロドリゲス・サア, ドゥアルデ暫定政権を経て,2003 年 4 月繰り上げ実施された大統領選挙の結果,同年 5 月キルチネル政権(ペロン党)が発足した。現政権にとって,失業,貧困問題にも取り組 みつつ,IMF との合意に基づく経済再建と 1,884 億 USD もの債務問題解決が重要課題で ある。 2-5.主要政党
・ペロン党(Partido Peronista,正式には正義党:Partido Justicialista, PJ) ・急進党(Union Civica Radical, UCR)
・フレパソ党(Frente del Pais Solidario, FREPASO)
・平等な共和国のための選択(Alternativa por una Republica de Iguales, ARI)
連邦議会の政党別議席(2003 年 12 月) 〔単位:人〕 下院 上院 下院 上院 ペロン党(PJ) 127 41 人民運動戦線 8 -急進党(UCR) 46 14 社会党 6 1 平 等 な 共 和 国 の た め の 選 択 (ARI) 10 - 自決・自由 4 -フレパソ党(FREPASO) 4 1 その他 70 15 計 257 72
2-6.経済概況 以下の記述は,ARC レポート 2004 による。 1980 年代の経済は,停滞と不安定な状況にあったが,1990 年の前半は順調に成長した。 1994 年までは国際環境が好転したうえに,通貨安定化計画(兌換法)の実施より経済は急 速に安定した。しかし,1994 年 12 月に発生したメキシコの通貨危機・ペソ切り下げの影 響で大規模な資本流出が発生し,経済成長は一気に停滞に陥った。景気後退は激しく,1995 年に失業率は18 %を超えるに至った。1996~97 年に景気は回復し,経済は 1996~97 年 には実質でそれぞれ5.5 %,8.1 %成長した。 しかし,1997~98 年にアジアの通貨危機,ロシアの債務危機,ブラジルの通貨切り下 げの影響を強く受け,1998 年末から経済は再びマイナス成長に転じた。 1996 年から 1998 年までの3年間の国内総生産(GDP)は,投資と輸出の伸びに支えら れ年平均5.9 %という高い成長を記録した。しかし,1999 年および 2000 年は GDP がそ れぞれ3.4 %,0.8 %のマイナス成長となった。その後も景気の下降は続き,2001 年も GDP は4.4 %のマイナス成長となった。国内総投資は 1996~98 年は前年比プラスで推移した が,1999 年には 12.6 %マイナス成長となり,その後4年連続で大幅に低下した。一方, 輸出は1999 年に前年比 1.1 %減となったほか何れも増加している。これに対して,輸入は 1999 年から減少に転じ,2001 年は 13.9 %の大幅減となった。 一方,投資をGDP に占める比重でみると,1997 年および 1998 年に 20 %以上に達して いるが,1999 年から急速に低下に向っている。GDP に対して 16 %台で推移してきた国内 貯蓄も1999 年から下降に転じ,2001 年には 14.1 %と落ち込んでいる。また,投資に対し て国内貯蓄が不足しているため,海外貯蓄,すなわち対外債務の取り入れあるいは外国か らの投資はアルゼンチンにとって不可欠である。2001 年以降は財政・金融が危機的状況に 陥り,政治的・社会的混乱が発生し,外国投資流入は停滞し,対外債務の取り入れが困難 になったことが示されている。深刻な政治的,社会的混乱の中で2001 年 12 月から 2002 年1月のわずかな期間に大統領が5回交替した。行政府,議会,司法の国家権力の中で反 目が生じ,経済的不安が増大し,預金引き出し・為替取引規制の導入,対外債務返済の不 履行(デフォルト),兌換制度の廃止,ペソ切り下げなど金融システムの機能が停止し, 経済活動は大幅に後退した。 その結果,2002 年の GDP は 10.9 %のマイナス成長であった。落ち込みがとくに著しか ったのは建設および工業の財の生産部門で,それぞれ前年比33.4 %,11.0 %のマイナスと なったほか,サービス部門でも商業は18.5 %,金融 19.7 %の大幅なマイナス成長であっ た。 しかし,2002 年半ばから経済は,工業,建設および観光を中心に回復に転じた。為替切 り下げによる相対価格の変化により,一種の輸入代替工業化が進んだほか,輸出依存度の 高い工業の一部で若干活況を取り戻した。建設は一部の住宅部門で回復がみられたほか, 観光は為替切り下げで外国人旅行者の来訪が増加した。
2003 年の経済は全般的に成長し,GDP は推定で前年比 8.0 %の伸びとなった。しかし, 1993 年価格でみた GDP 総額は 1993 年の水準に若干及ばない。財の生産部門では建設が 31.4 %の大幅成長となったのに続き,工業は 16.1 %,農業部門が 5.7 %それぞれ成長した。 これに対して,サービス部門では商業が11.0 %,運輸通信は 6.7 %それぞれ成長したが, 金融は14.8 %のマイナス成長となった。 工業の成長は国内総投資の伸び(32.1 %)とそれに伴う中間財生産増によるものである が,輸出の伸び(8.1 %)にも支えられた。建設は主に民間部門の回復によるもので,公 供事業は財政難のため回復が遅れている。民間の建築が活発化した結果,雇用増に貢献し ている。 農業部門は収量が向上した結果,生産量が増加した。しかし,牧畜部門は牛の解体処理 頭数が7.9 %増の低い伸びにとどまった。 鉱業部門は天然ガス生産が11.5 %増加した結果,若干成長したが,石油生産はやや減少 した。また,発電量は生産部門の需要が増加したため,わずかながら増加した。 サービス部門は前年比3.5 %の伸びにとどまり,GDP の伸びを大きく下回った。運輸・ 通信部門は全般的に6.7 %の成長をみせたが,2001 年の水準には及んでいない。 2-7. 通 貨 アルゼンチン・ペソ(ARS) 2-8. 為替レート 1USD=2.9ARP(2005/02 現在) 年末 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 1USD= 0.99950 0.99950 0.99950 3.32000 2.90500
2-9. 主要経済指標(前年比増減) 〔単位: %〕 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003(注1) 2004(注2) 国内総生産(GDP) 8.1 3.9 △3.4 △0.8 △4.4 △10.9 8.0 5.4 財の生産(注3) 8.4 4.2 △5.2 △3.1 △5.2 △11.7 14.0 9.8 サービスの生産(注4) 7.7 4.7 △3.9 2.9 △4.0 △9.2 3.5 3.3 輸出 12.0 9.9 △1.1 2.7 2.7 3.1 8.1 8.3 輸入 26.6 8.1 △10.6 △0.2 △13.9 △50.1 42.3 13.8 総消費 7.9 2.1 △1.3 △0.5 △5.2 △12.8 6.8 4. 民間 8.8 1.8 △2.0 △0.7 △5.7 △14.4 7.6 4.4 政府 3.2 3.4 2.6 0.6 △2.1 △5.1 3.4 2.6 国内総投資 17.7 6.5 △12.6 △6.8 △15.7 △36.4 32.1 21.7 (GDP に占める比重) 投資 20.6 21.1 19.1 17.9 15.8 11.3 13.8 15.9 国内貯蓄 16.3 16.2 14.8 14.8 14.1 21.7 19.4 21.3 海外貯蓄 4.3 4.9 4.3 3.1 1.7 △10.4 △5.6 △5.4 (注1)推定 (注2)見込み (注3)農林牧畜水産業,鉱業,工業,電気・ガス・水道,建設 (注4)商業,金融など(注3)以外の経済活動部門
2-10.貿易概況 以下の記述は,ARC レポート 2004 による。 アルゼンチン経済の貿易依存度は相対的に低く,投資技術委資料によると,2003 年で輸 出(財・サービス)がGDP 比 14.1 %,輸入(財・サービス)8.3 %両者の合計は 22.4 % (何れも推定)となっている。ちなみに,隣国のチリは2003 年で輸出が 34.0 %,輸入 32.4 %, 合計66.4 %,またメキシコは 2003 年で輸出入の合計が 67.5 %と,アルゼンチンの約3倍 となっている。アルゼンチンの貿易依存度が低いことは,輸出の伸びが経済成長にそれほ ど大きな影響力をもたないことを意味する。 また,アルゼンチンの輸出構造を国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC) の資料でみると,2002 年で一次産品の比重が 69.6 %,工業製品 30.4 %となっている。ち なみに,ラテンアメリカ・カリブ22 カ国の平均が一次産品 41.2 %,工業製品 58.8 %であ るから,アルゼンチンの輸出が一次産品に大きく依存していることは明らかである。 さらに,ECLAC の資料によりアルゼンチンの上位 10 品目の輸出を 1980 年と 2002 年 についてみると,品目にそれほど大き変化がみられない。すなわち,2002 年の上位5品目 の中に油粕,原油,石油製品および大豆油が計上され,その他5品目の中に天然ガスおよ び自動車が入り,牛肉,牛肉かん詰,その他穀物および原糖が2002 年の主要 10 品目の中 から姿を消した。しかし,自動車(輸出総額の2.3 %)を除けば何れも一次産品もしくは その加工品である。また,投資技術委員会資料によると,2003 年の輸出のうち推定で 26.2 % が工業製品で,残りは農産物加工品(34.0 %),一次産品(22.0 %),燃料・エネルギー (17.7 %)で,一次産品・同加工品の比率が高いことを示している。 一方,輸入は2003 年で資本財 34.2 %,中間財 45.4 %,消費財 16.5 %,燃料 3.9 %(何 れも推定)となっている。このうち,消費財の比重は若干減少傾向にあるのに対して,資 本財がほぼ横ばい,中間財が増加している。何れにしても資本財と中間財を合わせると, 輸入総額の79.6 %となる。要するに,アルゼンチンは一次産品・同加工品を輸出し,工業 製品を輸入に依存している。 貿易相手国をみると,国別では輸出入ともにブラジルの比重が最も大きい。次いで,輸 出入ともに米国の比重が高いが,スペイン,ドイツ,中国など他の諸国との貿易が増加し ている。近年は南米南部共同市場(メルコスール)との貿易が拡大している。
2-11.輸 出 主要商品別輸出(FOB)〔単位:百万 USD〕 2001 2002 2003(注) 一次産品 6,049.0 5,263.3 6,462.0 穀物 2,445.9 2,148.9 2,311.1 油糧種子 1,004.4 1,282.4 1,986.8 農畜産物加工品 7,463.3 8,130.0 9,981.0 食品産業残留物 2,633.2 2,791.2 3,498.0 油脂 1,636.8 2,086.7 2,827.1 工業製品 8,306.6 7,602.8 7,706.3 輸送機器 1,984.1 1,625.3 1,436.9 金属製品 1,440.6 1,564.0 1,538.4 化学製品 1,431.4 1,352.2 1,557.0 機械・電気機器 1,125.2 927.4 861.3 燃料・エネルギー 4,791.1 4,350.1 5,226.1 原油 2,399.3 2,178.2 2,261.5 合計 26,610.0 25,346.2 29,375.4 (注)暫定値,〔出所〕INDEC:INDEC INFORMA,marzo de 2004
主要地域・国別輸出(FOB)〔単位:百万 USD〕 1999 2000 2001 2002 2003(注1) 米州 13,377 16,126 15,468 14,069 14,689 ブラジル 5,690 6,990 6,217 4,846 4,619 チリ 1,869 2,670 2,857 2,975 3,421 米国 2,628 3,111 2,847 2,884 3,052 ウルグアイ 812 808 726 529 528 欧州 5,112 5,043 4,947 5,562 6,525 スペイン 960 914 1,095 1,139 1,389 オランダ 1,013 746 801 1,043 1,095 イタリア 689 732 854 851 933 アジア(注2) 3,383 3,579 4,472 4,435 6,138 中国 508 796 1,124 1,099 2,453 日本 528 399 351 371 343 アフリカ・大洋州 1,196 1,206 1,350 1,388 1,690 その他 264 456 373 256 307 合計 23,333 26,410 26,610 25,709 29,349 (注1)推定,(注2)サウジアラビア,イラン,イスラエルを含む
2-12.輸 入 主要商品別輸入(CIF)〔単位:百万 USD〕 2001 2002 2003(注) 機械・機器 3,521.8 1,281.0 2,273.4 有機化学 1,322.5 987.1 1,290.9 自動車 1,877.1 721.7 1,519.5 電気機器 2,561.7 597.7 1,104.4 プラスチック 1,035.9 544.5 861.1 鉱物性燃料 797.9 426.2 478.2 医薬品 638.6 393.2 475.3 化学工業製品 442.9 287.9 391.4 紙・段ボール 681.3 282.5 390.4 ゴム製品 358.5 205.8 374.1 その他 7,082.9 3,262.0 4,674.8 合計 20,321.1 8,989.5 13,833.5 (注)暫定値,〔出所〕ジェトロ貿易投資白書2004 年版(原典は INDEC) 主要地域・国別輸入(CIF)〔単位:百万 USD〕 1999 2000 2001 2002 2003(注1) 米州 13,100 13,840 11,141 5,212 8,200 ブラジル 5,596 6,443 5,230 2,517 4,701 チリ 639 608 506 177 290 米国 4,942 4,732 3,737 1,788 2,232 欧州 8,104 6,709 5,369 2,485 3,354 ドイツ 1,409 1,006 1,051 551 767 スペイン 998 903 713 312 391 フランス 1,503 993 736 262 319 イタリア 1.355 1,014 839 313 440 アジア(注2) 3,867 4,006 3,381 1,072 1,978 中国 992 1,157 1,066 329 720 日本 1,068 1,006 767 314 395 アフリカ・大洋州 314 531 349 144 192 その他 123 156 81 77 89 合計 25,508 25,243 20,321 8,990 13,813 (注1)推定,(注2)サウジアラビア,イラン,イスラエルを含む
3.鉱業概要 アルゼンチンは銅,鉛,亜鉛,カドミウム,マンガン,金,銀の非鉄金属鉱物の他,硼 素などの工業原料鉱物の生産も盛んである。 1990 年代に入り,アルゼンチンの鉱業は,探査・開発の促進を図るなど,構造変化が進 み,政府は民間投資の促進,明確な法律・財政制度による投資家保護などの政策を掲げた。 1993 年の外資投資関連規制緩和をきっかけとして,外資を主とする探鉱活動が急増し (1970~80 年代の 10 倍超),鉱業活動が飛躍的に発展した。 最近,生産を開始した鉱山としては,1997 年の Bajo de la Alumbrera 鉱山(銅,金) およびSalar de Hombre Muerto 鉱山(リチウム),1998 年の Cerro Vanguardia 鉱山(金・ 銀)がある。 また,隣国チリとの鉱業統合条約発効に伴い,チリ国境の銅,金を対象とした探鉱開発 が期待されているが,アルゼンチン経済低迷の影響で鉱業投資が減少している。 アルゼンチン共和国の主要非鉄金属の生産量(2003 年) 鉱 種 アルゼンチン(A) 世 界(B) (A)/(B)( %) ランク 銅鉱石(千 t) 198.5 13,675.6 1.5 13 銅地金(千 t) 16.0 15,236.7 0.1 35 鉛鉱石(千 t) 13.0 2,850.5 0.5 21 鉛地金(千 t) 41.3 6,864.7 0.6 24 亜鉛鉱石(千 t) 40.7 9,167.6 0.4 22 亜鉛地金(千 t) 42.4 9,806.5 0.4 29 アルミニウム地金(千 t) 271.9 28,001.3 1.0 21 金鉱石(t) 33.2 2,349.4 1.4 15 銀鉱石(t) 113.0 18,207.5 0.6 18 錫地金(千 t) 0.1 273.4 0.0 17 カドミウム地金(t) 25.0 16,873.4 0.1 19 出典:World Metal Statistics Yearbook 2004
日本のアルゼンチンからの輸入は,Bajo de la Alumbrera の開山により近年輸入が急増 した銅精鉱,アルミ地金がある。 日本のアルゼンチン共和国からの主要非鉄金属輸入実績(2003 年) 鉱 種 アルゼンチン(A) 世 界(B) (A)/(B)( %) ランク 銅鉱石(千 t) 92 4,106 2.2 7 アルミニウム地金(千 t) 28 2,042 1.4 10 出典:日本貿易月表 2003.12
4.鉱業行政 以下の記述は,JICA アルゼンティンの鉱業概観(2001)による。 4-1.鉱業政策 アルゼンチン政府は,国家経済の復興を目指して,外国企業による鉱業投資を促進し, 鉱業を国の主要産業として形成することを国家戦略として掲げている。この戦略の下,連 邦政府は1993 年に鉱業投資法,鉱業再建法,連邦鉱業合意の 3 法を制定し,1995 年には 消費税資金法,環境保護法の他,鉱業近代法を制定した。これら鉱業法の大改正により, 全般的に鉱業に投資する会社に対する各種の規制と税制が緩やかになった他,海外への外 貨持ち出しが自由になったことや各種の資本財減価償却が加速できることなど外国企業へ のメリットが大きくなった。さらに活動が停止している鉱山を各州にて入札を行うことが 許可されるなど,各州が保有する地下資源の有効活用と流通が図られている。これにより 1996 年と 1997 年,アルゼンチンは投資環境の最も良い国と世界の鉱山投資家から評価さ れるに至った。実際,1997 年以降大型鉱山が操業を開始し,アルゼンチンの銅,金,銀, リチウム生産量が急増している。 1999 年に発足したデラルア新政権においても,上記の鉱業政策は継承され,鉱業法の 大改革の際に持ち上がった各種の障害を解決していき,成功へと導きたいという意図も受 け継がれている。
エネルギー・鉱業庁の鉱業担当総合調査官(General Coordinator of Mining)は 2000 年2 月,地元新聞 Buenos Aires Herald 紙との会見で,アルゼンチンの鉱業投資環境が整 っていること,および2001 年から 2005 年の間には毎年 10 億 USD の投資を見込んでお り,その投資によって経済的に開発が遅れている北西部地域の経済性向上を図りたいと考 えていることを表明した。 また,鉱業局長も,鉱業政策上の重要課題として,①10 億 USD 規模の鉱山開発をさら に数個立ち上げ,また各州で意見が異なる税制を統一化するなどの整備を行い,鉱業の競 争力を高め,鉱山開発を促進させること,②鉱業振興のためのインフラストラクチャー開 発促進,③鉱業新規投資の創成のための地質・鉱業基盤情報の整備,および④中小鉱山に 対して技術面と経営面において支援する他,国際市場への道を開くための情報提供や海外 からのパートナー捜しの手助けを行い,海外資本の導入を図ることの4 つを挙げている。 なお,アルゼンチンにおいては,中小鉱山を含めた鉱山業界に対する金融面の支援策は, 現在のところ行われていない。 4 つの鉱業重点政策の概要は以下の通りである。 (1) 鉱業関連行政制度の統一化による鉱業競争力強化 従来,鉱業権の設定やロイヤルティーおよび税制に至るまで州政府の管轄であり,探鉱 投資を行う企業は州政府との個別交渉を行ってきた。しかしながら,各州毎に行政制度が 異なることにより,鉱区認定手続きに長時間を要したり,恣意的な判断が行われたりする
という問題があり,工業投資の促進を阻害する要因となっている。1995 年の鉱業近代化法 の制定により,連邦政府は州政府に対して保有鉱区のほとんどを開放するよう求めたが, 幾つかの州における州政府直轄の鉱山会社は依然として有望と目されるプロスペクトを抱 え込み,鉱区に参入する民間企業には鉱区権を与えず,代わりに探鉱開発権を付与して, オプションフィーとロイヤルティーを課している。新しい鉱業法の制定により,州政府独 自で入札が行えることとなり,州政府直轄鉱山会社が独自の契約条項での入札によって, 探鉱開発権を民間に明け渡し,数年間凍結していたプロスペクトの選定が行えることとな ったが,一度手放した鉱区を再び州政府直轄鉱山会社が取得している例も多く見られる。 外国企業は,州政府直轄鉱山会社との関連を持たない自由な状態で探鉱したいと考えてい るが,特に北部の州においては公開されていない古い鉱区権が今日まで永年にわたって存 在し続け,問題となっている。 鉱区管理制度の他にも,印紙税の廃止やロイヤルティーなど,連邦政府と州政府の間で 今後調整する必要のある課題が残っている。 連邦政府は鉱区管理制度の統一化をはかるため,世界銀行の融資による Argentine Mining Sector Development Project(PASMA プロジェクト)により,鉱業権管理や環境 保全モニタリングのための行政制度の見直しや,統一的システムの構築を進めてきた。 PASMA プロジェクトは 1995 年に開始され,2001 年半ばまでには完了し,アルゼンチン 政府へ移管されることになっている。 (2) 鉱業活動に必要なインフラストラクチャーの開発促進 鉱山開発を円滑に促進するためには,インフラの整備が不可欠となるが,連邦政府は, 鉱山局の中にインフラ整備部を配置し,電力,用水のユーティリティーを初めとして,道 路整備,エネルギー供給などについて,計画的な整備を進めている。 具体的には,アンデス山脈を横切る新しい道路を,これまでアルゼンチン北部で孤立化 していた各州を通過させる予定であり,チリ北部のイキケ港とサンパウロが繋がれること になる。そしてこの道路に沿って2 本のガスパイプラインと一本の送電線が平行して建設 される。その結果,チリ北部やアルゼンチン北部の鉱山へも容易にエネルギーを供給する ことが可能となる。現在,アルゼンチンでは鉱業開発において必要な電力は自家発電で賄 われているが,先頃,米国TDA の協力で,カタマルカからメンドーサに至るラインで 500 kV 高圧電線敷設のための調査が行われた。電力のエネルギー源はアルゼンチンに豊富に ある石油・ガスであり,この高圧電線の完成によっても,鉱山開発をいっそう促進するこ とになると期待されている。加えて,鉄道の活性化などが予定されている。 (3) 新規鉱業投資創成のための地質・鉱業基盤情報の整備 連邦政府は,外国企業の鉱業投資において,最も重要な地質データ情報と鉱床分布に関 する信頼性の高い情報を完備するため,1993 年より工業・防衛・鉱業庁(鉱業部門は現在, エネルギー・鉱業庁に改組されている)参加の地質鉱物調査所(SEGEMAR)において「国 家地質・テーマ図作成プログラム」を実施中である。
連邦政府は自ら地質情報を整備・公開することにより,投資のリスクを軽減し,抽出さ れたエリアにおける鉱業活動を促進する他,開発が見送られ永年放置されている鉱山の活 性化を図りたいと考えている。実際,特に小規模の探鉱会社は,独自で詳細な調査を行え ないことから,鉱区選定の段階で信頼できる情報を求めている。 アルゼンチン政府の探鉱開発に対する基本的政策は,基礎情報を整備するのは国の役割 で,開発に結びつく探鉱は民間企業の役割と明確に区別しているのが近年の特徴である。 このため従来は日本政府との間の協力事業では州政府の公社が保有する鉱山(鉱床)での 精密探鉱(カタマルカ州,ファラジョンネグロ,アルト・デラ・ブレンダ地域など)など も求められていたが,最近は広域型プロジェクトの要請となってきている。2000 年から始 まったプロジェクトタイプ技術協力「先進的地質リモートセンシング」や東部アンデス地 域広域調査(1997-98)並びに南部アンデス地域広域調査(1999-2000)はアルゼンチ ン政府の要請に合致したものと言えよう。 (4) 中小鉱山に対する技術面・経営面の支援 アルゼンチンには中小の鉱山会社が 800 以上ある。それらの大半は,花崗岩,石灰岩, ベントナイトなどの建築用・装飾用石材および工業用鉱物(非金属鉱物)を採取するもの であるが,内需の伸び悩みなどにより失業者問題が顕在化してきており,連邦政府として も,近隣国への輸出拡大を促進する方策を検討するなどの支援策を講じている。 その一環として実施されているのが,1999 年 6 月に開始された国家鉱業技術システム (National System of Assistance in Mining Technology:SINATEM)というプログラム である。SINATEM は中小の鉱業会社の生産活動の強化を目的とし,これら企業に対し鉱 業 セ ク タ ー の 競 争 力 向 上 の た め の 技 術 的 戦 略 の 拠 点 と な っ て い る Searching and Development Centers (I&D)とのリンクを提供している。現在,これらの伝統的工業会 社は,主として国内市場向けの非金属鉱物や建築・装飾用の石材の生産を行っているが, 同プログラムは,生産を増やし,競争力を高め,より多角売れる産品を開発し,海外市場 の需要に応えるためのプロジェクトの資金源を発掘するための活動を促進している。
4-2.鉱業法制度 1990 年代に入り,アルゼンチン国政府は,鉱業開発促進のために総合的な法的整備を行 った。それにより,特に内外からの鉱業投資を保障するため,次のような法的措置を施し ている。 (1) 外資の中立性(いかなる国からの外資であっても,内資と区別なく同様な取り扱いと する。) (2) 取得された鉱業権を法的に保証。 (3) 天然資源の開発に対する民間の主導性。 (4) 国有および州有鉱区の開放。 (5) 探査および採掘面積の拡大。 (6) 環境保護および探鉱費および企業費並びに操業コスト低下のための税制上の優遇措置。 また,鉱業関係組織の体制および機能強化,地質・鉱床ポテンシャルに係る情報および資 料の整備,新技術の導入と普及,探鉱開発に必要なインフラ整備などに関する政策を策定し ている。すなわち,政策目標は,鉱業開発に必要な法的制度の整備と民間の投資リスクを軽 減し,より有利な投資のための競争市場を生み出すことにある。 1990 年代から開始された構造改革プロセス(公共サービスの民営化,市場および経済活 動に関する規制緩和,経済および外資資本に関する法律の開放化など)は,経済強化およ び外資投資家によるカントリーリスク評価の低減に寄与している。 アルゼンチンの新しい鉱業法は,チリなどのおける鉱業法と共に最も開放的なものであ り,その後,そのほかのラテンアメリカ・カリブ海諸国においても同様の考え方で鉱業関 連法の改正が行われている。 開放的な鉱業関連法への改正は,近年の技術変化に基づき鉱山地域の比較的優位性を再 評価させ,経済的なコストでの探鉱開発および操業が可能となり,また,コンベンショナ ルプロセスでは経済的な価値がなかったと見られていた鉱床の開発が可能となった。アル ゼンチンの鉱業分野に対する近年の新規の探鉱投資および開発投資の増大は鉱業関連法規 の改正など投資環境改善の証である。 しかしながら,中央政府の法的制度の整備について,かなり進展しているが,アルゼン チンは連邦制であり,各州が州内に独自の鉱山・鉱物資源に関係する当局を有し,中央政 府の法制と州政府の法制に整合性が撮られていない部分が残されている。 相違点の主なものは環境関係,紛争の解決およびロイヤルティーの計算方法などである。 これらの点については国レベルおよび州レベルにおいて,重複したり,対立している規 定を法律,政令,決議などにより整備を進めている。 さらに,アルゼンチンとチリ国との鉱業統合条約が締結され,国境を越える鉱床をあた かも自国内での鉱床の開発であるかのようなことが可能となり,資源およびインフラスト ラクチャーの合理的な活用により,国境地帯の鉱山開発が促進されることが期待されてい
る。 アルゼンチンにおける鉱業関連法規の歴史的経過を概略する。 1886 年に制定された最初の鉱業法では,地下資源の所有権は,鉱物資源の存在する場所 により,国または州の所有としている。(第7 条) 国または州政府は,鉱物資源の探査・採掘のために民間に権利を付与することとなるが, この権利は,鉱物資源にかかわる権利と土地に対する権利とに大別される。 国の財産および戦略的政策として,一部の財源の採掘を政府が管理する目的で,採掘事 業を実施するために必要な公社を設立し,公的機関により操業を行った時代があった。 1907 年から 5 年間の間,大統領は,例外的措置として Comodoro Rivadavia 地区にお いて,石油生産のために5,000 ha の面積を保護地域として設定し,5 年毎に有効期間を大 統領令により延長し,鉱業法の内容と矛盾するで石油生産が継続された。 1935 年に法律 12161 号が成立され,これにより,国が直接または合弁企業(官民)を 通じて,探査,発掘,処理,貿易および輸送を実施することが法律上可能となり,民間と 同様な権利が与えられた。この時期は,第二次世界戦争により特に鉱山活動が拡大してい る時期であった。 アルゼンチン政府は,YPF(国立石油公社),YCF(国立石炭公社)および Fabricaciones Militares(陸軍工廠)などを通じて,石油,鉄鉱,銅,タングステン,アルミ,マンガン, ベリリウム,石炭およびガスの採掘を行った,その後,放射性鉱物は新たに設立された国 立原子力委員会により,独占的に採掘が行われた。 中央政府の活動は,州政府の活動を排除するものではなく,州政府も同様な機関を設立 することにより管轄地域で同様な権限を有することが可能であった。また,民間セクター は,政府が設定したリザーブ地域以外では,探査・採掘権限を得ることができた。 1958 年に法律 14773 号が公表され,ガスおよび石油鉱業が国営化され,州および民間 が所有する鉱床の採掘権を引き継ぎ,石油の採掘事業は中央政府の独占的な事業となった。 この政策の実施により,石油およびガスは国の公的財産(譲渡・消滅できないおよび専属 的な財産)と位置づけられ,鉱業法の管轄外となり,国営企業を通じて採掘事業が行われ ていた。 その他の鉱物については,鉱業法に示された主な内容に基づき,探査事業許可および採 掘に係るコンセッションを通じて,採掘事業が継続された。 その後,石油化学事業を規制する法律 17319 号が公表され,過去の国営制度を維持し, 設立された公営企業と民間企業の活動の共存が可能となったが,契約方法ではなく,探査 許可および特定の条件に基づく採掘コンセッションを通じて行われた。 民政の復帰により,政府の組織改革・経済の構造改革が行われ,石油化学に関連する法 律(第24145 号)が公表された。本法律により,鉱業法の原作に戻り,一部の鉱床の所有 権が州政府に復帰されると同時に,関連する国営企業の民営化が進められた。
その後,経済面,技術面および環境関係に関する規定などが施工されると同時に 1976 年に施工された外資法の改正(大統領令第1853/93 号)などにより,鉱業セクターの発展 の目が生まれてきた。次いで 1993 年から,鉱業投資法,鉱業再生法,連邦鉱山調整法, 鉱業近代化法および環境保護法などが施行され現在の法的枠組が整った。 1995 年鉱業近代化法が制定され旧鉱業法に大幅な変更が加えられた。現在の鉱業法は, 1997 年5月に改訂されたものである。 現行の鉱業関連法を次の表に示す。 アルゼンチンの鉱業関連法制度 法律1919 号:鉱業法(1886 年) 法律24196 号:鉱業投資法(1993 年) 法律24224 号:鉱業再生法(1993 年) 法律24402 号:付加価値税のフィナンスおよび返還法(1994 年) 法律24228 号:連邦鉱山調整法(1993 年) 法律24498 号:鉱業近代化法(1995 年) 法律24585 号:環境保護法(1995 年) 法律21382 号:外資投資法(1976 年)および大統領令 1853 号(1993 年) 憲法改正(1994 年) アルゼンチンの鉱業分野における現行の法制度の主要点は次の通りである。 鉱物の所有権:鉱業法では地下の鉱物の所有権は国または州に帰属するとし,土地の所有 権と切離している。鉱業権は国,州からリースにより付与される権利で,排他的なもので, 契約および死亡による譲渡可能な権利であるとしている。 鉱物のカテゴリー:鉱業法では鉱物を次の3 つに分類している。 (1) 第 1 種:主要鉱物 ・金属鉱物:金,銀,白金,水銀,銅,鉄,鉛,亜鉛,ニッケル,コバルト,ビスマス, マンガン,アンチモンなど ・燃料鉱物:石炭,褐炭,無煙炭など ・砒素など ・宝石(貴石) (2) 第 2 種:工業用鉱物および第1種に含まれない鉱物 ・河床および流水,並びに沖積鉱床にある砂鉄および宝石 ・占有されていない採掘場からの岩屑,残鉱および鉱滓の堆積 ・硼酸塩および硝酸塩 ・第1 種に含まれない金属鉱物 ・黄鉄鉱,硫酸塩,磐土,白土,エメリー,黄土,樹脂,滑石,燐酸塩,石灰石,硫黄,
硫酸バリウム,蛍石,黒鉛,カオリン,アルカリ土類 (3) 第 3 種:採石,建設用材など 土地所有者に帰属する採石場,石切り場。公益を理由とする場合を除き,土地所有者の同 意なくして採掘することは出来ない。 探査権:鉱業法第23 条は探査権について次のように規定している。 ・ いかなる人(外国人を含む)も法で規定されている期間,排他的探査許可を求めること ができる。 ・ 期間:最初の1 単位当たり,150 日間,さらに追加される 1 単位当たり 50 日ごとに延 長される。 ・ 面積:500 ha を 1 単位として,20 単位(10,000 ha)の許可を得ることができる。各州 ごとに各人20 単位を超えることの許可を求めることは出来ない。即ち各州ごとに 20 万 ha までの探査許可を得ることができる。 ・ 減区:300 日を過ぎた時点で,4単位を越える部分の半分を削減し,700 日を過ぎた時 点で,さらに当初残された面積の半分を削減する。 ・ 航空調査:各州ごとに2 万平方㎞の許可が受けられる。 探鉱開発:探査許可を通じて,あるいは直接鉱床を発見し,探鉱開発をしようとする者は, 開発のための鉱業権(コンセッション)を取得することができる。何れの場合も排他的権利 を設定するためには,鉱物のサンプルを添付し,鉱業法で定める事項を記載した発見調書の 提出が義務付けられている。鉱業権の有効期間は36 年間とされている。 鉱業権を取得した者が,上記に定められた期間内に事業を実施しない場合,対象鉱区は破 棄されたものと見なされ,州が管理することとなり,入札などにより他の者に権利を与える ことができる。 鉱区料は鉱物の種類により異なり,第1種は1鉱区当たり年間 80 USD,第2種は 40 USD である。 最低投資額は,年間鉱区料の300 倍である。 採掘活動に基づく州へのロイヤリティーの支払いは山元価格の3 %を上限とし,州によ り異なる。 生産物の処理および販売:核燃料鉱物以外,特定な規定は制定されてなく,鉱物の処理・加 工および販売は自由に行うことができる。 地質図などの基礎情報の整備:鉱業再建法により国は地質図などの基礎情報を整備し,民間 に供することにより,鉱山開発を促進することとし,SEGEMAR が各州毎の 50 万分の 1 地質図,鉱床が期待できる地域の25 万分の 1 および 10 万分の 1 の地質図の整備に当たっ ている。 大規模鉱山の公共入札:1995 年の鉱業近代化法にて,鉱業法に設定されていた大規模鉱山 制度が廃止したため,現在,地増別の措置に関する規制はない。 鉱業権登録台帳:鉱業権は各州の鉱山当局が扱っているが,鉱業近代化法に基づき,各州の
登録基準を統一すると共に,電子化を進め2000 年末現在,北西部諸州およびアンデス東部 の鉱床地帯が属する州の電算化が終了し,2001 年中には全国の整備システムが完成する見 込みである。 中央と各州政府の連携:中央政府および各州は,連邦鉱業合意書で次に示す事項を確認し, 持続的鉱業の発展を期している。 -全国において統一名鉱業政策の活用に係る方策および活動の実施。 -鉱業権台帳のアップデート。 -環境の保護。 -規制の緩和。 -鉱業活動に対する地方税および付加価値税などの廃止または軽減。 -現行の連邦制度に基づき,各地区において施行されている鉱業手続きの統一化を図る。 外資規制の撤廃:外資法(1976 年法律第 21382 号)および改正法(大統領令第 1853/93) において,国内と海外の投資家は,差別しないことを規定し,投資そのものおよび投資に基 づく利益を海外に送金する権利を保障する。また,国内に投資するための特別な許可の申請 を廃止している。 環境保護:1995 年に施行された環境保護法(法律 24585 号)は,鉱業活動における環境保 護に関する条項を鉱業法に追記した。また,環境保護に関して,憲法および州の憲法に定め られている規定も考慮する必要がある。 既存の鉱業関係規制にも環境関係は含まれているが,法律第 24585 号および同法律の内 容を補足する州の規定(たとえば,ブエノスアイレス州およびサルタ州)は,探査,採掘の 各段階および鉱山の閉鎖に係る環境インパクト調査の実施を義務付けている。したがって, 鉱業活動を行おうとする者は州の担当当局に対して,環境インパクト調査報告書を提出しな い限り,活動を開始できないこととなっている。 州当局が,報告書の検討および承認を行い,環境インパクト証明書を発給する。本証明書 は,プロジェクトの各段階における必要な条件および特定な条件を設定する。 環境インパクト調査報告書は2 年間毎にこのアップデートを行う必要があるが,環境イン パクトに関する新しい証明書を提出義務はない。報告書内容と実際に発生した結果との間に 不具合が生じた場合,定められた期間内に再調査と対策の見直しをする必要がある。それら の義務を義務を果たさない場合,警告,罰金,損害の修復,賠償,事業の一時的閉鎖又は資 格の剥奪などの措置が取られることになっている。 促進制度:鉱業活動を促進させるため,1993 年の鉱業投資法(法律第 24195 号)は制度の 安定性および税制上の優遇措置を規定している。鉱業投資法の主要なポイントは以下の通り である。 (1)制度の安定性:鉱業活動を行う企業に対して,法律は 30 年間制度の安定性を保証して いる。これは,F/S 調査を提出した時点で設定された税率などが,将来の税務関係法律の影 響を受けないことを意味している。また,為替制度および税制にも適用されるが,向上する
既存の鉱業プロジェクトにも適用される。 (2) 所得税の特別措置: ・ 概査,探査,特殊な調査,鉱物試験,試練試験,パイロットプラント,応用研究などの コストおよびその他経済的・技術的なF/S 調査に必要な経費は 100 %課税の対象から控 除される。 ・ 新規鉱業案件,および既存の生産案件の生産能力拡大への資本投資の償却。 ・ 採掘および選鉱処理コストの5 %までを限度額として,鉱業活動に起因する可能性のあ る環境の変化の復旧および防止のための控除。 (3) 資産および資機材の輸入に対する税務的措置:担当当局が必要と認めた鉱業用の資本財 および資機材の輸入税およびその他の税金は免除される。この免税措置は,事業の実施開始 および継続を保証されるために必要なスペア・パーツおよび付属品に対しても適用される。 (4) 州のロイヤルティーの限界:ロイヤルティーを課している州または課すことを決定した 州は,採掘された鉱物の坑口価格の3 %以上の割合を課することはできない。 ロイヤルティーに関して,坑口価格算定方法について異なった見解があったため,決議第 56/97 号が公表され,計算には鉱物および普通の金属と,適切なプロセスで製造される付加 価値の高い製品と区別する。ロイヤルティー計算の基は,鉱物価格に生産コストを差し引き, 鉱業生産者が「正価格」であるとした。 しかしながら,これでも未だ明解でないとし,1999 年 9 月に改定され,運搬費,運搬保 険料,粉砕,選鉱費,販売経費,粉砕,選鉱費,山元管理費,溶錬,製錬費が差し引かれる こととなった。 1994 年に施行された鉱業活動に対する付加価値税のファイナンスおよび返還制度(法律 第 24402 号)は,直接または間接的に生産活動に必要な資本財の購入契約・最終的な輸入 およびインフラ整備工事に対する投資に適用される。 以上の法制度の中でも,鉱業投資法が民間投資の拡大に大きく寄与している。鉱業案件で は,多大な投資額および投資の回収には長期間が要するため,法的および制度的安定性に対 する信頼がキーポイントである。国会の上院および下院において,鉱業投資法は,満場一致 で合意され,鉱業振興制度に対して,政治的な支援が表明された。この政治的なコンセンサ スが,アルゼンチンへの投資の主な判断基準であることを多くの外国企業が認めている。
5.鉱業関係機関 以下の記述は,JICA アルゼンティンの鉱業概観(2001)による。 アルゼンチンの鉱業行政を司る機関は経済省の下に設置されている,エネルギー・鉱業 庁である。経済省は1999 年 12 月までは,公共事業も管轄し,経済・商工業・公共事業省 と称されていたが,デラルア新政権発足時の機構改革により公共事業部門が分離された。 また,鉱業を主管する庁は商工鉱業庁であったが,2000 年 9 月に再編されエネルギー・ 鉱業庁となった。エネルギー・鉱業庁の下にはエネルギー・鉱業次庁が置かれ,それぞれ の庁を長官および次官と称している。 経済省の概略機構図を次に示す。 経済省組織図
Secretaría de Agr. Gan. Pesca y Alímentación
農牧水産食糧庁
Secretaría de Política Económica 経済政策庁
Secretaría de Hacienda 財務庁
Secretaria de Energia y Mineria エネルギー・鉱業庁
Secretaría de Coordinacion 調整庁
Secretaría de Industría y Comercío 商工業庁
Ministerio de Economía 経済省
鉱業行政の実務を行うのは,エネルギー・鉱業庁の連邦鉱山局および地質鉱物調査所で ある。連邦鉱山局には局長以下,鉱山・インフラ調整部,鉱業経済開発部,鉱業投資部が 設置されている。地質鉱物調査所(SEGEMAR)は地質鉱物資源研究所(IGRM)と鉱業 技術研究所(INTEMIN)の二つの組織からなる(2000 年初めまでは,SEGEMAR 傘下 に地震予防研究所-INPRES-が置かれていたがインフラ・住宅省に移管された)。 エネルギー・鉱業庁の概略機構図を次に示す。 エネルギー・鉱業庁組織図
Secretaría de Energía y Minería エネルギー・鉱業庁
Subsecretaria de Energía y Minería エネルギー・鉱業次庁
Coordinador de Energía Coordinador de Minería 鉱業次官補
Dirección Nacional de Minería 連邦鉱山局
Servicio Geológico Minero Argentino SEGEMAR 地質鉱物調査所 CIM 鉱山・インフラ調査部 DEMD 鉱業経済開発部 DINM 鉱業投資部 IGRM 地質鉱物資源研究所 INTEMIN 鉱業技術研究所
連邦鉱山局
連邦鉱山局の主な職責は,
・エネルギー・鉱業庁(Subsecretaría de Energía y Minería)が連邦の工業政策を策 定するに当たっての支援。 ・連邦および州政府関連機関の調整を図る。 ・アルゼンチンの鉱山地域のさらなる発展を図る。 ・また,鉱業環境の継続的な分析に基づき,戦略的な行動計画を策定し,提示すること により,鉱業および関連経済部門との健全な発展に寄与する。 ・さらに,連邦および州政府機関のインフラ整備計画の調整に参画するほか,鉱業セク ターに関連する,対外貿易を促進するための通関規則,関税,手続きに関する革案を策定 する。 などである。 地質鉱物調査所(SEGEMAR) 地質鉱物調査所は次の 2 つの研究所と管理部門からなる。人員は 2000 年 11 月現在で 458 名である。
(1) 地質鉱物資源研究所(IGRM-Instituto de Geología y Recursos Minerales) (2) 鉱業技術研究所(INTEMIN-Instituto de Tecnología Minera)
(1) 地質鉱物資源研究所(IGRM)
IGRM は SEGEMAR の最大の部署で 309 人の陣容を有し,本部内に 5 部局,地方に 11 支所を擁し,およそ以下のように各部署で業務を分担している。
(1) 広域地質局(Dirección de Geología Regional: DGR)
約50 名の地質技師を擁する。地質図(1:250,000,1:100,000)を作成している。 (2) 環境・応用地質局(Dirección de Geología Ambiental y Aplicada: DGAA)
環境・防災図を作成している。
(3) 地質・鉱物資源局(Dirección de Recursos Geológico-Mineros:DRGM) 物理探査,地化学探査を実施や,鉱床生成図の作成を行っている。
(4) リモートセンシング・GIS 部(Unidad de Sensores Remotos y Sistemas de Información Geográfica:RS/GIS Division):各部署の要望に応じて,衛星画像 (LANDSAT – TM)の提供,および GIS による他部署の各種画面の作成支援を行 っている。
(5) 地方支所調整部(Coordinación Técnica de Delegaciones Regionales : CTDR): IGRM 本部と地方支所の間の調整を行っている。
(6) 地方支所(Regional Delegations):11 ヶ所に設置されており,本部の各部局の各 種現地業務を支援している。
SEGEMAR の主要業務の1つとして,国家地質・テーマ図作成プログラムがある。その 内容は: (a)地質図プログラム 1) 1:250,000 地質図作成 2) 1:100,000 地質図作成 (b)テーマ図プログラム 1) 環境・ハザード関係の図面作成 2) 物理探査,地化学探査解析図作成 3) 鉱床生成図作成 (2) 鉱業技術研究所(INTEMIN) 鉱業技術研究所(INTEMIN)は鉱業関係技術の研究開発およびその普及を目的とする 研究所で,鉱物処理,化学分析,材料研究,応用地質および鉱山計画・管理の5 つの部署 からなる。
Organization Chart of SEGEMAR
SEGEMAR – Servicio Geológico Minero Argentino (Argentine Geological and Mining Survey) IGRM-Instituto de Geologia y Recursos Minerales(Geology and Mineral Resources Institute) INTEMIN-Instituto de Tecnología Minera(Mining Technology Institute)
DGAA-Dirección de Geología Ambicntal y Aplicada(Environmental and Applied Geology Direction) DGR-Dirección de Geología Regional(Regional Geology Direction)
DRGM-Dirección de Recursos Geológico-Mineros(Geological and Mining Resources Direction) UNIDAD SRySIG-Unidad de Sensores Remotos y Sistemas de Ínformación Geológica(Remote
Sensing and Geographic Information System Division)
CTDR-Coordinación Técnica de Delegaciones Regionales(Coordination of Regional Delegations)
SECRETARIA DE ENERGÍA Y MINERÍA
Secretary: Lic,Debors DEORGI
SEGEMAR
President:Lic,Roberto F.N.PAGE Executive Secretary: Dr.Juan Carlos SABALUA
Personnel: 458 Budget: 15.993.979
ADMINISTRATION
Director: Ing. Ciaudio Patrone
IGRM
Director: Lic,Jose E.MENDIA Personnael: 309 Budget: 8.421.448 INTEMIN Director: Ing,Heeror CEVINELLI Budget: 3.088.631 UNIDAD SRySIG Lic,Graciela MARIN Personnel: 16 Budget: 45.000 DGAA Lic,Omar R.LAPIDO Personnel: 15 Budget: 96.961 DGR Dr.Antonio LIZUAIN Personnel: 52 Budget: 443.709 DRGM Dr.Eduardo ZAPPETTINI Personnel: 13 Budget: 615.097 CTDR Dr.Eddy LAVANDAIO Personnel: 2 11 Regional Delegation
6.投資環境 以下の記述は,ARC レポート 2004 による。 6-1.外資法 外国からの投資には1993 年法律第 21382 号「外国投資法」が適用される。投資促進と して投資振興エージェンシー(ADI,生産省商工鉱業庁に所属),アルゼンチン投資財団 (民間と政府が設立した投資情報機関)がある。 ・規制業種・禁止業種:内資と同等の対応で,基本的にはない。 ・出資比率:規制はない。 ・外国企業の土地所有の可否:規制はない。 など,外国投資は内資と同等に扱われる。 外国投資法(1993 年法律第 21382 号)の概要は次の通りである。 1)経済活動の振興,または現存する経済活動の拡大,ないし完成に向けられる資本をアル ゼンチン国内に投下する外国人投資家は,本法および特別法制度,ないしは振興制度中 に含まれる諸規定に服することを条件に,憲法および諸法律が国内投資家に与えられて いるものと同一の権利および義務を有する。 2)外国投資は,以下の形態で行うことができる。 (1)自由交換性を有する外国通貨。 (2)資本財,その予備部品および付属品。 (3)外国投資家に帰属する利潤,あるいは国内通貨による資本。ただし,これらの利潤, あるいは資本が国外移転の条件で適法に該当している場合に限る。 (4)自由交換性を量剣外貨建て対外クレジットの資本化。 (5)無形資産。ただし,特別法に適合するもの。 (6)特別法,または振興制度で認められるその他の出資持ち分。 3)外国投資家は,その投資から発生した純利益を国外に送金することができる。また, その投資の元本を本国に送還することもできる。 4)外国投資家は,国の法で規定される合法的組織のいずれのかたちをも採用することが できる。 5)外国資本内国企業は,内国資本内国企業と同などの権利と同などの条件で国内融資を 利用することができる。 6)外国資本内国企業と当該内国企業を直接,または間接的に支配する企業,あるいはそ の子会社との間で合意された法的行為は,その課役および条件が独立した企業体間に おける市場で通常の慣習と一致する場合には,すべての効力の点で独立した当事者間 にて合意された法律行為とみなされる。 7)その他 (1)外資の土地所有を規制する条文はないが,土地所有者は地下鉱産物の所有権を有さ
ない。鉱物資源発見者は政府とコンセッション契約を締結し,商法上の所有権を取 得する。炭化水素資源は沿岸10 マイルまでの鉱区も含め州政府が所有権を有する。 森林,水力資源,野生動物・魚は州政府に属する。 (2)外資の最低資本金などの規制はなく,企業設立は会社法(法律19550 号)の規定に 基づく。 6-2.鉱業投資法(1993 年法律第 24196 号,2001 年法律第 25429 号) 1)適用分野:鉱業法に含まれる鉱物に関する調査,探査および採掘について適用される が,炭化水素,セメント,セラミックスの生産,建築用土石の採掘は除く。 2)権益料:1993 年5月の法律第 24196 号公布以前は,生産額の 2.5 %から 12 %の権益 料が微収されていたが,法律第24196 号により,永続的に最高 3 %とされた。ただし, この規定は法律第24196 号を受け入れる州だけに適用される。 3)租税の減免など: (1)生産開始前に行われた探査,開発,フィージビリティ・スタディー(F/S)などの 支出は課税所得からの完全控除が認められる。 (2)すべてのインフラおよび機械設備への投資は3年以内の完全償却が認められる。環 境リスクについては,経常費の年間5 %までの準備金繰り入れを認め,これを法人 所得から控除できる。 (3)本法に基づく鉱業活動に対するすべての資産税を免除する。これらの課税基準は, 企業がF/S を提出した後,30 年間適用されることが保証されている。 4)関税などの免除:鉱業用機械設備および備品・付属品の輸入については,関税その他 の輸入課金が付加価値税(IVA)を除き免除される。また,当局が必要と認める鉱業 半製品の国内加工用の輸入についても同様に免除する。 5)環境対策の義務:本法により鉱業活動を行う企業は,環境保護,汚染防止のための措 置を講じなければならない。 6)2001 年5月法律第 25429 号は税制安定制度,償却制度など恩典の内容を明確化した。 6-3.租税の減免 1)外資のみを対象とした租税の減免制度はない。 2)ティエラデルフエゴ州フリーゾーン設置法(1972 年法律第 19640 号)の恩典は 1994 年メルコスール諮問会議決定に基づき,政令第998/98 号により 2013 年まで有効とさ れた。州内での活動は所得税,付加価値税などが免除されるとともに,自由貿易地域 として輸出入に関わる関税などが免除される。地域内商品の付加価値部分については, アルゼンチンを含むメルコスール各国の輸入関税は免除される。 3)輸入税の減免 (1)自動車について,ブラジルとの自動車協定国内法の政令第 660/2000 号により,域
内化率,国産化率,輸出入均衡などを条件に,自動車生産企業はブラジルからの自 動車,同部品を無税で輸入できる。2005 年末までの時限法。 (2)大型投資プロジェクト(工場新設,拡張,環境改善)に伴う財の輸入について,経 済省決議第256/2000 号,経済省決議第 8/2001 号により,導入する技術が最新であ ることを条件に,輸入税を0 %とすることができる。 (3)中古生産ラインの輸入について,経済省決議第511/2000 号,経済省決議第 8/2001 号により,30 %以上の国産新製品の調達などを条件に,輸入税を 0 %(中古生産ラ インに対する輸入税は通常28 %)とすることができる。 4)加速減価償却と付加価値税の払い戻し早期化 2004 年4月に有効期間3年間の限定措置として,加速減価償却と付加価値税(IVA) の払い戻しの早期化からなる投資促進策が導入された。自動車産業は対象外とされる が,他の産業が設備投資やインフラ面での投資を行う際に,税制上の優遇が講じらる。 税制優遇が適用される最低投資規模は 14 億 3,000 万ペソである。主にエネルギー分 野での投資の活発化が狙いとされている。 6-4.輸出奨励 1)輸出レインテグロ:現行制度は政令第1011/91 号,政令第 998/95 号などに基づき, 輸出向け商品の国内生産,販売段階で発生した間接税の一部,または全部を還付する。 還付率は国内付加価値額の最大6 %までである。ドローバックとの併用も可能である。 2)レエンボルソ:パタゴニア地域を対象に,1983 年に導入された間接税還付追加措置で ある。1995 年法律第 24490 号により 1999 年時点の還付率7~12 %を同年末から毎年 1ポイントずつ引き下げ,2007~2012 年にかけ還付を廃止する。 3)ドローバック:現行規定は政令第1012/91 号,政令第 2189/91 号などに基づき,輸出 業者は,資材輸入時に支払った輸入税,統計税の還付を受けられる。政令第313/2000 号により還付内容の安定化,簡易化が講じられた。 4)一時輸入:現行制度は政令第2284/91 号,政令 1439/96 号に基づき,1年,最長2年 以内の輸出を条件に毛原材料の輸入税を免除する。 5)付加加値税融資:1994 年法律第 24402 号,政令第 349/2000 号などにより,生産の 30 %以上の輸出を条件に,生産財の輸入時に支払う付加価値税に伴う銀行融資に対し, 政府が最長年間,最高12 %の金利を負担する。 6)自動車:政令第 660/2000 号により,自動車メーカーはブラジルとの年間の輸出入バ ランスを維持する。現在は,ブラジルからの輸入2に対して,アルゼンチンからの輸 出は最低1で均衡するとされている。
6-5.税 制 税の種類は次の通り。 ・国(連邦政府)税:所得税,みなし最低所得税,個人資産税,個人への不動産譲渡税,支 払利子,・企業借入金融コスト税,付加価値税,内国税(物品税),液体燃料・天然ガス税, 社会保障費,関税,輸出税,金融取引税 ・州税:総売上税,資産(不動産,自動車)税,印紙手数料 ・市税:手数料,特別税 法人税 所得税:所得税は,不動産の賃貸,投資収益,企業利潤,労働報酬の4種類のカテゴリ ーに分類され,法人・企業は第3のカテゴリーに該当する。納税期間は企業の会計年度。 税率は純利益の35 %(個人所得税率は 9~35 %)。 付加価値税 消費税。ネット販売額×税率の納税負債(デビット・フィジカル)から,投入財資本財 の購入に伴い支払った税合計の納税信用(クレジット・フィジカル)を差し引いて納税 する。基本税率は21 %,特定条件の公共サービスは 27 %,必需品・サービス,医療, 近距離乗客輸送,金利は10.5 %。輸出は免税で,財・サービスなどへの税支払いは還付 される。 社会保障規則 社会保障(年金,医療)サービスに向けた資金調達。雇用者の納税額は(給与に対し), 年金制度*16 %,年金者医療制度*2 %,家族手当*7.5 %,雇用基金*1.5 %,労働者医療 保険4.5 %,保健システム管理費 0.5 %を納付。*の項目の率は雇用連邦協定(1993 年, 1995 年)などにより減額され,また,2001 年に統合され 2002 年の合計税率は 17 %。
6-6.その他 二国間租税条約 17 カ国と二重課税防止協定を締結。また,58 カ国と2国間の投資保護・促進協定を締 結(2001 年8月時点)。日本とは締結していない。 二重課税防止協定の対象国は,ドイツ,オーストラリア,オーストリア,ベルギー,ブ ラジル,カナダ,チリ,デンマーク,米国(国内法化されていない),スペイン,フィン ランド,フランス,イタリア,オランダ,英国,スウェーデン。 外国人就業規則,現地人の雇用 《在留許可》 入国許可の種類:外国人の許可はパーマネント,テンポラリー,トランジットの3種類 がある。パーマネントはアルゼンチン人ないしはパーマネント許可居住者の家族か,自己 投資による移住(10 万ペソの預金を提示)。トランジットは観光,医療処置,投資市場調 査など。テンポラリーは,テクニカル活動(工業,商業,ビジネス,科学,文化,スポー ツなど),学生,宗教,契約された労働者,季節労働者,年金生活者に分類される。 ダイレクターの入国手続きは,テンポラリーの外資企業の代表,ビジネス企業家などの カテゴリーに基づく。 《現地人の雇用義務》 外資法には,現地人の雇用義務はない。漁業法(1997 年法律 4922 号)では,漁船乗組 員の75 %はアルゼンチン人ないしは 10 年以上の滞在許可を有する外国人と定められてい る。アルゼンチン人の雇用において,試用期間は3カ月とされ,それを超える場合には, 正式雇用に切り替えることが求められる。 その他 ・現地での資金調達制度 現地資金調達に関する規制は特にない。 ・技術・工業および知的財産権供与にかかわる制度 特許は20 年間,商標 10 年間(更新可能),実用モデル 10 年間,実用モデル・デザイ ンが5年間(最大 15 年間),各法律に基づき保護される。工業所有権保護に関するパ リ条約などに加盟している。
7.地質・鉱床概要 7-1.地質・地質構造
アルゼンチン国土の主要部は,次の5つのテレーンから構成されていると考えられてい る:
(1)リオデラプラタ・クラトン(Rio de la Plata Craton) (2)パンピア帯(Pampia)
(3)クジャニア帯(Cuyania) (4)チレニア帯(Chilenia) (5)パタゴニア帯(Patagonia)
リオデラプラタ・クラトンは,Florida terrane と Buenos Aires terrane が 2,300~2,100 Ma に衝突し,それが Tandilia terrane に 2,100~1,900 Ma に付加された後に,原生代早 期に融合して固結した。縫合以前の沈み込みに関連して,2つのマグマ弧が発達したとさ れている。それらの縫合帯は,塩基性および超塩基性岩帯に認められる。Valcasi terrane の付加は750~700 Ma に行われた。 パンピア帯は,片岩および片麻岩を伴う大理石の基盤から構成されており,それらは 1,000~900 Ma 頃の安定な縁海における堆積物が変成したものである。パンピア帯は,原 生代後期(750 Ma)にリオデラプラタ・クラトンと衝突して付加されたものである。リオ デラプラタ・クラトンにおける縫合線の形成に先立つカルクアルカリ系列のマグマ弧は, トーナライトと正片麻岩によって代表される。縫合線は衝上したオフィオライト岩体の存 在によって証拠づけられる。また,塩基性-超塩基性岩帯によって示される縫合線もあり, それらのうちの最大のものは古生代早期のFamatina terrane の付加に対応している。パ ンピア帯とリオデラプラタ・クラトンの間の主要縫合線と超塩基性岩帯によって画される 地域は,背弧の引張の場を示すものであり,Cordoba 地域の従属的なテレーンであると解 釈されている。
パンピア帯の北西端においては,Arequipa-Antofalla terrane が付加されており,Puna 地域の基盤を形成している。そこでの現在の位置関係は,原生代後期に形成されたもので ある。また,鉛の同位体データによると,アマゾン・クラトンとの初生的な関連を示唆し ている。 Arequipa-Antofalla terrane はおそらく 1,000 Ma 以前に集積したドメイン・グループ によって形成されている。それは2ブロックに分類され,北部のArequipa 帯は原生代の 早期から中期のものであり,南部の Antofalla 帯は原生代後期から古生代最早期のもので あり,アルゼンチンの最北西部を形成している。
Canani および La Quesera の深成岩は,Arequipa-Antofalla 縫合線形成以前のマグマ 弧を代表する。それらは原生代早期のリフティング過程においてパンピア帯から分離し, 縁辺的な堆積盆を形成し,Ocloyica 造山運動に伴って縫合線を再構築したと見られる。
Puna 東部の火山帯については,非衝突の再生マグマとの見解があるものの,その縫合線 以前のマグマ弧を代表するものと考えられる。また,古生代早期には付加が行われ, Famatina terrane のパンピアの部分が形成された。 クジャニア帯は,Cuyania-Precordillera とも呼ばれ,変成年代が 1,100~900 Ma とさ れている高度および低度の変成岩類と古生代最早期の堆積岩類から構成されている。この 堆積岩類および基盤の変成岩の変成年代が有する特徴から,これらが Laurentia 東部の Grenville 帯に起源を有することが示唆される。それにはクジャニア帯と Precordillera terrane が原生代に付加したことを示す縫合線を伴う地域が含まれ,その地域は Pie de Palo 山脈の西斜面に出現する。パンピア帯はオルドビス紀末頃に付加したとされている。 Puna 東部の斜面に噴出したオルドビス紀のマグマ活動の南方延長は,その縫合線以前の マグマ弧に相当する。 チレニア帯の基盤は,古生代後期のマグマ活動および変成作用によって被覆されている。 基盤には500~415 Ma の間に変形と変成を受けた形跡があり,シルル紀の堆積物に覆わ れる。その起源については不明な点がある。チレニア帯はデボン紀後期にクジャニア帯に 付加した。その縫合線は,多数の断片的なオフィオライト岩体によって示される。深成岩 と部分的には安山岩質火山岩がCordillera Frontal を形成し,その縫合線以前のマグマ弧 を代表している。その北方延長に関しては,チレニア帯とArequipa-Antofalla terrane と の境界が27°30′S 付近であるとされている。 パタゴニア帯は,Somuncura 地塊と Deseado 地塊の2つの地塊から構成されている。 それらは古生代早期の Famatina 造山運動の時に衝突したものであり,それに先行して Deseado 地塊の沈み込みに関係するマグマ弧の活動があった。 パタゴニアがアルゼンチンと完全に接合したのは古生代後期であり,それが大規模付加 運動としては最後のものである。Somuncura 地塊におけるペルム紀の深成岩活動は,こ の縫合線に先立つマグマ弧に相当するものである。縫合線は,西部においては付加後のマ グマ活動や中生代から新生代の堆積物によって抹消されているため,その位置状況につい て論争がある。 次に各時代の地層について概略を述べる。 始生界の岩石はアルゼンチンでは同定されておらず,最古の地層は原生代中期のタンデ ィリア造山サイクル(2,000~1,800 Ma)に相当する。これらの岩石は花崗岩類および片 麻岩からなり,リオデラプラタ・クラトンおよびブラジル・クラトンに関連して,中~高 度の変成作用を受けている。それらは Gran Chaco 地域の基盤を構成し,Buenos Aires 地域に部分的に露出する。
先カンブリア紀後期からカンブリア紀早期のパンピア造山サイクルの期間,造山運動が アルゼンチンの北部~中部に起こり,北西-南東方向に引き続いた。これによって多様な サイクルの変形運動が生じ,大規模な花崗岩の迸入を伴った。これらの地層は火山岩およ