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2. 地域課題解決に向けた産学官連携の質的変化

2.1 地域開発プロセスモデル

2.1.1 地域開発プロセスモデルの必要性

⼤学が推進役(コーディネーター)として産学官連携による地域課題解決を進める場合,

その活動の指標として,現在活動がどの段階にあるか,次に何をするべきかを確認でき,活 動を実施していく過程で,何に注意しなくてはいけないかが明確に把握できるプロセスモ デルが必要であり,地域開発プロセスモデルは,地域課題解決を進める上で規範的な役割を 提供できるように設計・定義した.また,⾹川県において具体的な地域課題解決を進める上 で⼀連の活動の流れの中で,開発する情報サービスごとに実施するプロセスが異なること がないように,いずれの地域課題に対しても地域開発プロセスモデルの 1 つのインスタン スとして⾹川型開発プロセスを設定し,それを適⽤して進めることにした.

2.2 ⾹川型開発プロセス

地域開発プロセスモデルをベースに今回の⼀連の⾹川県における地域課題解決の開発プロ セスを設計・定義した.⾹川型開発プロセスの各過程について述べる.⾹川型開発プロセス は,⼤きく8段階から構成される.このプロセスの中では,地域課題解決に参画する産学官 の各当事者を参画メンバーと呼ぶ.

①「地域課題の抽出」

⾃治体や地域⼤学のこれまでの調査や地元住⺠,企業に対してのヒアリングやフィードワ ークをおこなうことで,地域課題を抽出する.抽出された課題を産学官の参加メンバーと共 有する.この時点での認識の相違は後のプロセスにおいて⼤きな考え⽅の差異となり活動 に障害を⽣じさせる要因となるため,この時点での参画メンバー間の課題に対する認識に 相違が⽣じないよう,⼗分に情報共有することが重要である.

②「課題に対する解決策(仮説)の⽴案」

メンバーがどのような技術やアイデアを保有し,それらがどのように利⽤可能かを共有す る.さらに参画メンバーに不⾜している課題(技術課題,保有スキルなど)も明確にする.

メンバー間ではオープンな情報共有の考え⽅を前提としてシステム開発を進めるため,共 同で課題に取り組むメンバーのリソースを相互に認識しておくことが重要である.次にこ れらのリソースが利⽤可能であることを前提に,メンバーで解決策の⽴案をおこなう.課題 解決型情報サービス開発では,解決策の創出が重要である.⾹川⼤学では,解決策の創出に デザイン思考を⽤いる場合もある.また,必要に応じてアイディアソンなどを開催し広く問 題解決策の素案を集めるといった場合もある.ただし,⾹川型開発プロセスでは,発想法は 特に規定していない.

③「仮説を検証するためのプロトタイプシステムの開発」

顧客要求の変化などの開発時のリスクを最⼩化するために,⾹川型開発プロセスではアジ ャイル型開発を⽤いてプロトタイプシステムを開発する.アジャイル型開発⼿法を導⼊す るのは,アジャイルソフトウェア開発宣⾔[2.3]にあるように,検証前の課題解決策の段階で は,環境や仕様の変化への対応を重視した活動を取り⼊れられるようにするためである.特 にこのプロトタイプシステムにおいては,開発初期に要求を確定するウォーターフォール 型でなく,開発途中でも仕様変更に柔軟に対応できるアジャイル型開発⼿法を⽤い,開発す るプロタイプシステムは,使い捨てのプロトタイプシステムでなく,改修を重ねても運⽤が 継続的におこなえる進化的プロトタイピング[2.8]の採⽤する.また,システム開発にともな う技術提供は,オープンな技術提供を前提とし,誰もが簡単に利⽤できるインタフェースを 備えた開発ツールの提供など,プロトタイプシステム開発の効率化,短期化を⽬指してい る.

④「プロトタイプシステムを⽤いた実証実験」

主に産学官連携の中の⾃治体や⼤学などの協⼒を得て,社会実装として実証実験を必ず実 施する.実証実験のためのフィールド(社会実験の場と機会)提供は,⾃治体に協⼒を要請 する場合が多いが,地域課題の内容に応じて企業がフィールドを提供する場合もある.

⑤「評価」

実証実験の結果,課題解決策⾃体に不適合が認められる場合は,②「課題に対する解決策

(仮説)の⽴案」へ戻る(図中A).プロトタイプシステムにおいて不⾜機能,機能的⽋陥 や障害など,プロトタイプシステムの機能に問題がある場合は,③「仮説を検証するため のプロトタイプシステムの開発」に戻る(図中B).このサイクルをできるだけ早く回すこ とも重要である.評価においては,①課題抽出で挙げられた課題を解決しているかを利⽤

者からの声を適切に評価し,産学官すべての参画メンバーの合意のもと判断する.

⑥「事業化判断」

プロトタイプシステムによる⑤「評価」の結果に基づいて,企業を中⼼に市場⾯,資⾦⾯で 事業化の⾒込みがあるかを判断する.事業化の⾒込みがあると判断された場合は,実際の製 品化へ進める.⾹川型開発プロセスでは,事業化判断に関する規程は設けていない.この判 断は,産学官の中で,実際に事業化をおこなう参画メンバー(通常は企業が担うケースが多 い)もしくは参画メンバー以外の事業主の基準に準じている.

⑦「製品化」

製品化において,プロトタイプシステムの延⻑上に製品を位置付ける場合もあるが,プロト

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場合もある.仕様が明確で変更などがない場合は,ウォータフォール型の製品開発をおこな う場合もある.この時点での製品開発プロセスは⾹川型開発プロセスでは規定していない.

⑧「市場投⼊・ビジネス展開」

製品化を完了したサービスは事業として運⽤を開始する.サービスを開始した製品の改修 や機能向上に関しては,事業主が主体的におこなうが,地域課題解決においては解決策に差 異が⽣じた場合は,必要に応じて参画した参画メンバーが集まり,①「地域課題の抽出」に

⽴ち戻って⾒直しをおこなう.

2.2.1 ⾹川型開発プロセスの適⽤範囲

⾹川型開発プロセス⾃体は,⼀般的な情報サービス・システム開発のプロセスにその後の 事業化判断や市場投⼊・ビジネス展開の過程を追加したものである.しかし,すべての地域 課題事例に対応できるものではなく,その解決⼿段が「ICTを活⽤した情報サービスとして システム開発がともなう事例」を対象としたものである.特に今回想定したのは,学⽣のプ ロトタイプシステムによる実証実験を必須としている点で,個⼈情報を特定しない観光情 報サービスや学内運⽤システムを前提としている.

⾹川型開発プロセスは,情報サービス・システムの開発を伴わない場合でも,考え⽅の⼿

順や,評価のタイミングなどでは地域開発プロセスモデルを利⽤することは可能であるが,

⾹川型開発プロセスとしての適⽤は,発案された地域課題解決策を具現化するための情報 サービスにおいて,プロトタイプシステムの開発とそれを⽤いた実証実験をおこなう事例 に限定した.