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5. ランドマークの相対的位置関係に基づいた地図検索

5.1. ILS の基本概念

5.1.3. 地図検索アルゴリズム

ILSでは,クライアントが配置したランドマークの相対的位置関係を元に,実際の地図デ ータとの整合性を評価することで,ユーザがイメージした目的地の地図検索をする.具体 的には,クライアントから送信された情報と,空間 DB で管理されている地物の位相関係 を元に整合性を判定する.本節ではこのアルゴリズムを説明する.

整合性の定量的な評価指標として,Sorensen が示した空間的連関係数を用いた[96].空 間的連関係数は,2つの地物分布パターンA, Bの分布形状を比較し,その類似度を定量的 に評価できることを特徴としており,空間分析等に利用されている[97][98].空間的連関係 数Csは,地物分布を構成する地物から他地物までの最近接距離に基づいて2つの地物分布 の類似度を表す.点分布A, Bにおける分布内でのi番目の点から他の点までの最近接距離 をそれぞれdAi , dBi点分布Aにおけるi番目の点の点分布Bの点までの最近接距離dABi 同様に,点分布Bにおけるi番目の点の点分布Aの点までの最近接距離dBAiとし,nは点 分布A の点の総数,mは点分布Bの点の総数を表すとする.このとき空間的連関係数 Cs は以下の式(5-1)によって計算され,-1と+1の間を取り,+1に近いほど,分布A, Bの類 似性が高いと判定される.

𝐶𝐶

𝑆𝑆

=

��∑��∑𝑛𝑛𝑖𝑖=1𝑑𝑑𝐴𝐴𝑑𝑑𝐴𝐴𝑖𝑖+∑𝑚𝑚𝑖𝑖=1𝑑𝑑𝐵𝐵𝑖𝑖�−�∑𝑛𝑛𝑖𝑖=1𝑑𝑑𝐴𝐴𝐵𝐵𝑖𝑖+∑𝑚𝑚𝑖𝑖=1𝑑𝑑𝐵𝐵𝐴𝐴𝑖𝑖��

𝑖𝑖+∑𝑚𝑚𝑖𝑖=1𝑑𝑑𝐵𝐵𝑖𝑖

𝑛𝑛𝑖𝑖=1 �+�∑𝑛𝑛𝑖𝑖=1𝑑𝑑𝐴𝐴𝐵𝐵𝑖𝑖+∑𝑚𝑚𝑖𝑖=1𝑑𝑑𝐵𝐵𝐴𝐴𝑖𝑖�� 式(5-1)

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本論文では,点分布 A をクライアントから送信されたランドマークの集合とし,点分布 Bは後述のアルゴリズムを用いて実地図から取得したランドマークの集合で構成し,両者の 点分布数は同じとする.つまり,点分布Bを作成する際,点分布Aにおいてキャンバス上 に配置された各ランドマークの位置情報を,地図座標である緯度経度に変換し,その位置 に直線距離で最も近い該当するランドマークを空間 DB から検索するため,必ず点分布 A に対応するランドマークによって点分布B が形成される.厳密な座標値ではなく,最も近 い地物を対応付けることによって点分布B が形成されるため,ユーザが入力する空間イメ ージが歪んでいても地図検索が可能である.

検索アルゴリズムを以下に示す.なお,i番目にユーザが配置したランドマークの種別(レ イヤ)をTi ,キャンバス上の座標をAi とし,それに対応するk 番目の検索結果候補のi 番目のランドマークの地図座標(緯度経度に対応)をBkiとする.また,集合P = { pk (Bk1, Bk2, …, Bki ) | k=1, … } にて検索結果候補の地点集合を表す.またランドマークには,

ランドマークとしての役割を考慮して決定した優先度を付与している.これは,認知地図 において,交通の結節点である駅や有名な建物などのランドマークであるほど,重大な影 響を与えると言われるためである[99].

Step 1 検索対象とする地図の範囲を設定する.これは検索速度効率を向上させるためであ

り,ユーザが目的地を含むと推定する任意の範囲を設定する.

候補集合Pを初期化する(P = φ).

Step 2 i番目のランドマーク入力を受けて,Ti Aiを設定する.

Step 3 i番目のランドマークを空間DBから検索する.

(1) i = 1 の場合

検索範囲にある種別T1のランドマークを全て検索し,P = { pk (Bk1) | k=1,…, j }とする.

ここで,jは空間DBから検索結果として得られたランドマークの数である.

(2) i = 2 の場合

Pの各結果候補地点pkについてBk1に直線距離で最も近い種別T2の地物を検索し,Bk2 とする.P = { pk (Bk1, Bk2) | k=1, …, j }である.また,A1 , A2をそれぞれBk1 , Bk2 変換するヘルマート変換(相似変換)Fkを定義する.Fk (A1 )= Bk1, Fk(A2)= Bk2である.

キャンバス上の座標から地図座標への変換は,回転,平行移動,伸縮を伴うためヘルマー ト変換(相似変換)を採用している.ヘルマート変換は,地図補正で一般的に用いられる 変換手法のひとつである.

(3) i ≧ 3 の場合

Pの各結果候補地点pkについて,ヘルマート変換Fkを定義した2つのランドマークの 種別と,入力されたランドマークの種別Ti を比較し,Ti のほうが高い優先度を持つ場合,

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3つのうち優先度の高い2つのランドマークに基づくキャンバス座標を地図座標に変換する

ヘルマート変換に Fkを変更する(優先度が同じ場合,入力順が早いものを選択する).各 結果候補地点pkについて,Aiをヘルマート変換Fkにより地図座標Fk (Ai)に変換する.

このFk (Ai)に直線距離で最も近い種別Tiのランドマークを空間DBから検索し,その座標

をBkiとする.結果候補地点の集合は,P = { pk (Bk1, Bk2, … , Bki) | k=1, …, j }となる.

ただし今回は,Fk (A1)からの距離が10km以内に種別Tiのランドマークが見つからなけ ればその結果候補地点pkPから除く.この10kmという範囲は,日常生活における基礎 的な生活空間と考えられることから採用した[100].

Step 4 Pの各結果候補地点pkについて,式(5-1)の空間的連関係数によって整合性Ck

を計算する.これは,{ Fk(A1), Fk(A2), … , Fk(Ai)}を点分布A,{Bk1, Bk2, … , Bki } 点分布Bとして算出する.

Step 5 整合性Ckが高い順に,結果候補地点pkを結果表示する.

Step 6 さらなるランドマーク入力があればStep 2に戻る.

2点から定義されるヘルマート変換を用いてi番目に入力されるランドマークの地図座標

Fk(Ai)を求め,それに基づき空間的連関係数を計算することで計算時間を押さえている.短

時間で検索結果候補地点を出力することは,ユーザがランドマークを入力するたびに検索 を実行して結果を提示し,それに基づいてユーザがさらにランドマークを入力する使用方 法を想定している本システムでは重要である.また,ヘルマート変換Fk2つのランドマ ークの種別と距離によって決まる.方位は関係しないため,ユーザが入力する空間イメー ジが実際の地図に対して回転していても構わない.距離も,入力された他のランドマーク との相対距離が近いランドマークを対応させているため,空間イメージに歪みがあったと しても検索を可能にしている.

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