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国民基礎生 活保 障の受給者規 模とその 推移

第 4 章 韓国 の福祉政 策とジェンダ ーエクイ ティ

3. 公的扶助 制度― 国 民基礎生活保 障 制度

3.1 国民基礎生 活保 障の受給者規 模とその 推移

図表 4-8 は、2016 年 12 月末現在、韓 国の 基礎生活保障 の受給者 規模を 示し たものである 。総人 口 のうち 154 万人(3% )が国民基 礎生活保 障 の受給者とな っているが、 そのう ち 84 万人(54.5%)を女性が占め ている。 なかでも、 65 歳以上の受給 者に占め る女性の割合 が 67.4%に達してい ることが わかる。

図 表 4- 8 性 別 に み た 国 民 基 礎 生 活 保 障 受 給 者 数

(単 位 : 千 人 , %)

全 年 齢 全 年 齢

2016 年 19 歳 以 下 65 歳 以 上 19 歳 以 下 65 歳 以 上 受 給 者 1,540 840 216 284 700 223 137 (割 合 ) (100.0) (54.5) (49.2) (67.4) (45.5) (50.8) (32.6) 総 人 口 51,696 25,869 4,850 4,039 25,828 5,197 2,957 対 総 人 口 比 3.0 3.2 4.4 7.0 2.7 4.3 4.6 資 料:韓 国 保 健 福 祉 部『 2016 年 国 民 基 礎 生 活 保 障 受 給 者 現 況 』よ り 作 成。

続いて図表 4-9 より、世帯類型別 の受給世 帯数とその推 移をみる と、 2010 年から 2014 年までの 受給世帯数 は 87 万 9 千 世帯から 81 万 4 千世 帯 に減ったが、

2015 年に突然、20 万 世帯( 24.6%)の増加 がみられ 、101 万世帯 に達っ した 。 それは前述し た公的扶 助の死角地帯 を解消す るため に、2015 年 7 月から基礎生 活保障制度を 生計、医 療、住居、教 育の 「給 与」別に分離 して支給 する、個別 給付体系に転 換した成 果であるとい える。具 体的には、認 定所得基 準に相対的 貧困概念を適 用し、最 低生計費の代 わりに基 準中位所得に 連動・多 層化し たこ とや、完全な る廃止ま でには至らな かったも のの、厳しい 「扶養義 務者」の基 準が緩和され た66ことの影響である。 だが、 10 年以上の長 期間にわ たる受給 世 帯の割合は、2016 年現在 25.7%に達し て おり、6 年以上にす る と、40.7%に上 る。これを見 る限り、 基礎生活保障 制度が目 標として掲げ ている、 積極的な雇

66 重 症 障 害 者 の い る 扶 養 義 務 者 世 帯 へ の 扶 養 義 務 基 準 は 緩 和 さ れ 、 教 育 給 与 の 扶 養 義 務 者 基 準 は 廃 止 さ れ た 。

63 用政策の推進 を通した 受給者の自活 支援が、 その成果を十 分 にあげ るものにな っているとは 思えない 。

図 表 4- 9 世 帯 類 型 別 に み た 国 民 基 礎 生 活 保 障 一 般 受 給 世 帯 数 の 推 移

(単 位 : 世 帯 , %)

高 齢 者 世 帯 母 子 世 帯 父 子 世 帯 その他 の世 帯 2002 691,018 235,893 65,132 17,289 372,704 2005 809,745 244,565 77,985 19,450 467,745 2010 878,799 243,708 85,970 20,879 528,242 2014 814,184 236,548 74,925 18,362 484,349 2015 1,014,177 262,124 123,497 34,538 594,018 2016 1,035,435 261,680 132,277 37,753 603,725 (割 合 ) (100.0) (25.3) (12.8) (3.6) (58.3)

0~2 年 431,689 80,197 83,853 26,125 241,514 3~5 年 182,019 55,678 17,254 4,534 104,553 6~9 年 155,821 41,373 14,962 3,578 95,908 10 年 以 上 265,906 84,432 16,208 3,516 161,750 (割 合 ) (25.7) (32.3) (12.3) (9.3) (26.8) 資 料 : 韓 国 保 健 福 祉 部 『 2016 年 国 民 基 礎 生 活 保 障 受 給 者 現 況 』 よ り 作 成 。

世帯類型別の 割合をみ ると、2016 年現在、す べての受給世 帯の 25.3%を高齢 者世帯が占め ており、 そのうち 32.3%が 10 年以上の長期 にわたる 受給世帯と なっている。ち な みに 、65 歳以上の高齢受給 者の 67.4%を女性 が 占めているこ とは、すでに 図表 4-8 より確認した 。高齢化 のスピードか ら考える と、高齢女 性受給者の規 模は今後 も増加し続け ると 予想 される 。ひと り親受給 世帯の割合 は、全体 の 16.4%に達 している。より詳し く みると、母 子世帯の 割 合は 12.8%

と、父子世 帯の 3.6 倍 となっており 、その う ち 10 年以上、受 給を 脱することが できなかった 母子世帯 は 12.3%に上る 。こ れらのひとり 親受給世 帯の貧困は 、 子どもの貧困 にそのま まつながり得 る という 問題を引き起 こす 。

64 基礎生活保障 の受給者 規模の推移を 見る限り 、2015 年から公的扶助 の 受給者 規模が大きく 拡大した ことは 確かで あ る。し かし ここで注 意すべき は、 拡大し た受給世帯す べてが 「 基礎生計給与 」の保障 を受けていた わけでは ない という ことである。す でに述 べたように、2015 年 7 月から、基準中位 所 得が最低生計 費に取って代 わって 、「給与 」別の受 給者選 定基準 となっ た。それ によって 、全 体の受給者規 模は拡大 したが、 その 内訳は 厳 密に検討する 必要があ る 。ここで は、その違 いが明ら か に読み取れる「生計 給 与 」につい て検討す る ことにする。

図 表 4- 10 受 給 者 選 定 基 準 お よ び 受 給 世 帯 数

資 料 : 韓 国 保 健 福 祉 部 『 国 民 基 礎 生 活 保 障 受 給 者 現 況 』 各 年 度 よ り 作 成 。 注 : 2016 年 の 受 給 世 帯 数 は 、 施 設 受 給 者 を 含 み 、「 給 与 」 別 の 重 複 世 帯 は 除 い

た も の で あ る 。

図表 4-10 は、2014 年と 2016 年の受給 者選 定基準 (3 人世 帯基準 ) および受 給世帯数を表 したもの である。

まず、受 給者選定 基準 をみると 、2014 年は 認定所得額が 最低生計 費 133 万ウ ォン以下であ れば 、「 生計給与」をは じめ、他のすべての「 給与」を受給できる 。 これに対し、2016 年 は、「生 計給与 」 の選 定基準は基準 中位所得 の 29%である

2014年 増 減 率

最 低 生 計 費

1 ,3 2 9,1 1 8 3 ,5 7 9,0 1 9( A) 受 給 可 能 「 給 与 」 生 計 1 ,0 3 7,9 1 6( A* 2 9% ) 生 計 /

教 育 / 住 居 / 医 療 / △ 2 1 .9 1 医 療 1 ,4 3 1,6 0 8( A* 4 0% ) 教 育 / 住 居 / 医 療 7 .7 1 住 居 1 ,5 3 8,9 7 8( A* 4 3% ) 教 育 / 住 居 1 5 .7 9

教 育 1 ,7 8 9,5 0 9( A* 5 0% ) 教 育 3 4 .6 4

9 0 5,5 1 1 2 4 .4 1

生 計 △ 1 .0 3

医 療 住 居 教 育

( 単 位 : ウォン, % , 世 帯 )

「 給 与 」 9 0 5,5 1 1 1 ,3 2 9,1 1 8

1 ,1 2 6,5 1 0 8 9 6,2 2 1 9 7 7,2 1 6 9 4 5,3 4 8 2 6 2,9 0 3 受 給 世 帯 数

2016年 基 準 中 位 所 得 受 給 者 選 定 基 準

( 3 人 世 帯 )

「 給 与 」

65 104 万ウォンと、2014 年に比べ 21.9%も低 くなっている が、その 他の医療・住 居・教育 の「 給与」の 選定基準はそ れぞれ基 準中位所得 の 40%、43%、50%と 2014 年の最低生計 費 基準を上回っ ている。これによって、2016 年のすべての受 給世帯数は 2014 年 のそれよ り 24.4%増 大したものの 、基 礎生 活保障の核心を なす「生計給 与 」の受 給世帯数はむ しろ減っ ているのであ る。例え ば、 3 人世 帯の「生計給与」額 は 、2014 年に 84 万ウォ ンから 2016 年に 104 万ウォンへと 高くなったが 、基準 中 位所得の 29%以上 ~ 最低生計費以 下の世帯 が「 生計給 与 」 の 受 給 対 象 か ら 排 除 さ れ て し ま う こ と に な る67。 も ち ろ ん 、 医 療 ・ 住 居 ・ 教 育 の「給与」の 対象には なるので、受 給世帯数 には含まれる 。つまり 、最低生計 費制度を無力 化したこ とで、最低生 計費以下 の所得しか受 け取って いない世帯 の一部が、受 給者に数 えられながら も最低生 計保障を受け なくなっ てしまうこ とが起こるの である。

最低生計費制 度を無力 化することに よって生 じ うる問題は 、 それだ けではな い。例えば、 日本 で は 、2007 年に 40 年ぶりの最低賃金制 の改定が 行われ、最 低賃金は「労 働者の生 計費及び賃金 並びに通 常の事業の賃 金支払能 力を考慮し て 定 め ら れ な け れ ば な ら な い68」 と さ れ 、 地 域 別 の 最 低 賃 金 と 生 活 保 護 水 準 と の乖離を解消 すること が求められて いる。 最 低賃金が生活 保護の受 給水準を下 回る「逆転現 象」が起 き た際には 、「逆転 現 象」を解消す るため に 、積極的に最 低賃金を引き 上げるよ うにするなど 、 最低賃 金の下支えの 役割を果 た すような 役割が付与さ れたとい える 。

これに対して 、今後の 韓国において は、最低 生計費の概念 が まるご と 基準中 位所得に代替 されるこ と によって 、「逆転 現 象」が起き るこ と自体 が不可能とな った。そもそ も最低生 計費は、人々 の 所得..

に よって決まる のではな く、実際の 具体的な消費 生活.. ..

の内 容を品目別に 積み上げ 算定される べ き金額で 、「 健康で文 化的な最低限 度の生活 」 を支えるた めの生計 費 である。言 うまでも なく、最低 生計費は基準 所得に簡 単に代替され るべきも のではない。 ほかにも 、基礎法 の

67 2014 年 の 生 計 給 与 額 は 、最 低 生 計 費 か ら 教 育・医 療・住 居 給 与 を 引 い た 金 額 で 、 認 定 所 得 が 全 く な い 受 給 者 に 支 給 さ れ る 最 高 の 金 額 基 準 で あ る 。 ち な み に 、 実 際 支 払 わ れ る 現 金 支 給 額 は 、 生 計 給 与 に 住 居 給 与 を 加 え た 金 額 と な る 。

68 日 本 の 「 最 低 賃 金 法 」 第 九 条 。

66 受 給 権 者 と 連 携 す る 他 の 法69に お け る 「 受 給 権 者 」 を 「 生 計 給 与 受 給 者 」 へ と 改定する場合 、その基 準額は、例え ば、 2015 年現在、3 人世 帯の 最低生計費の 136 万ウォンか ら「 生 計給与 」受給基準 の 96 万ウォンへと 下方調 整されること になるなどの 懸念の声 も上がってい る70