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-就学 前教 育無 償化政 策の 実施 及びそ の 成果と 課題 -

1 . は じ め に

本 章 で は ,韓 国 に お け る 就 学 前 教 育 無 償 化 政 策 の 検 討 に よ っ て ,我 が 国 の 幼 児 教 育 政 策・

保 育 政 策 へ の 示 唆 を 求 め よ う と す る も の で あ る 。 以 下 の 各 節 で は , 実 施 形 態 の 特 徴 , 導 入 の 経 緯 , 成 果 と 課 題 に つ い て 述 べ て , 結 び を 付 し た い 。

な お , 韓 国 語 で は 幼 児 教 育 ・ 保 育 ・育 児 な ど の 多 様 な 表 現 が 使 わ れ て い る が , 本 稿 で は 幼 保 共 通 の 教 育 課 程 が 導 入 さ れ て い る 3 ~ 5 歳 児 の 状 況 を 中 心 に 検 討 す る た め ,「 就 学 前 教 育 」 と い う 言 葉 を 使 う こ と を 基 本 と し た 。

2 . 実 施 形 態 の 特 徴

( 1 ) 制 度 の 概 要 1 ) 就 学 前 教 育 機 関

6 年 間 の 初 等 学 校 に 接 続 す る 就 学 前 教 育 機 関 と し て , 3 ~ 5 歳 児 を 対 象 と す る 幼 稚 園 が

「 幼 児 教 育 法 」 に 基 づ き 設 置 さ れ て い る 。 ま た , 社 会 福 祉 施 設 と し て , 0 ~ 5 歳 児 を 対 象 と す る 保 育 所 ( 韓 国 語 で は 「 オ リ ニ チ プ 」。「 子 供 の 家 」 の 意 味 ) が 「 乳 幼 児 保 育 法 」 に 基 づ き 設 置 さ れ て い る 。 幼 稚 園 は 教 育 部 が , 保 育 所 は 保 健 福 祉 部 が そ れ ぞ れ 所 管 し て い る 。 設 置 主 体 別 に 見 た 場 合 , 私 立 幼 稚 園 が 国 公 立 幼 稚 園 よ り も や や 少 な い が , 私 立 の 園 児 数 は 国 公 立 の 4 倍 弱 に 達 す る(表 1参 照 )。こ れ は ,過 疎 地 域 の 就 学 前 教 育 を 担 う 小 規 模 な 公 立 幼 稚 園 が 多 い た め で あ る 。一 方 保 育 所 は ,私 立 が 圧 倒 的 に 多 数 を 占 め て い る( 約 95% )。

そ の 理 由 の 一 つ は , 0 ~ 2 歳 の 乳 幼 児 を 預 か る 小 規 模 保 育 所 で あ る 「 家 庭 保 育 所 」 が 多 数 含 ま れ て い る か ら で あ る ( 保 育 所 全 体 の 53.4% を 占 め る )。

年 齢 別 の 就 園 児 数 を 見 る と , 年 齢 が 低 い 場 合 は 保 育 所 , 年 齢 が 高 い 場 合 は 幼 稚 園 の 就 園 率 が 高 く な る 傾 向 が あ る が ,4 ,5 歳 児 の 90% 以 上 は 幼 稚 園 か 保 育 所 の ど ち ら か に 通 っ て い る (表 2参 照 )。

表 1 幼 稚 園 及 び 保 育 所 の 設 置 状 況 (2013年 )

機 関 園 数 ( 園 ) 園 児 数 ( 千 人 ) 教 員 ・ 保 育 士 数 ( 人 )

国 公 合 計 国 公 合 計 国 公 合 計

幼 稚 園 4,577 4,101 8,678 142.1 516.1 658.2 10,997 35,129 46,126 保 育 所 2,332 41,438 43,770 95.8 506.3 602.2 21,094 234,788 255,882 表 注 1: 保 育 所 数 に は , 国 か ら 認 証 を 受 け て い な い 保 育 所 も 含 ま れ る 。

表 注 2:幼 稚 園 の 園 児 数 に は ,若 干 の 3歳 未 満 児 及 び 6歳 以 上 の 児 童 数 が 含 ま れ る 。保 育 所 の 園 児 数 は , 3~5歳 児 の み 。

表 注 3: 幼 稚 園 の 教 員 数 に は , パ ー ト タ イ ム の 非 正 規 職 は 含 ま れ な い 。 保 育 士 数 に は , パ ー ト タ イ ム 保 育 士 や 補 助 員 な ど , 非 正 規 職 を 含 む 。

( 出 典 ) 教 育 部 ・ 韓 国 教 育 開 発 院 『 教 育 統 計 年 報 2013年 』 及 び 保 健 福 祉 部 『 保 育 統 計 2013年 』 。

表 2 幼 稚 園 と 保 育 所 の 年 齢 別 園 児 数 と 就 園 率 (2013年 )

機 関 3歳 4歳 5歳

幼 稚 園 143,069人 (30.3% )233,926人 (52.3% ) 277,826人 (59.4% ) 保 育 所 255,786人 (54.2% )184,513人 (41.3% ) 161,877人 (34.6% )

表 注 :( )内 は 就 園 率 。就 園 率 の 算 出 に 必 要 な 各 年 齢 人 口 は ,行 政 安 全 部 発 表 の 住 民 登 録 数 を 使 用 し た 。

( 出 典 )教 育 部・韓 国 教 育 開 発 院『 教 育 統 計 年 報 2013年 』及 び 保 健 福 祉 部『 保 育 統 計 2013年 』。

2 ) 法 律 上 の 規 定

就 学 前 教 育 の 無 償 化 を 巡 る 動 き は ,5 歳 児 教 育 の 無 償 を 定 め た 1997年 12 月 制 定 の「 初・

中 等 教 育 法 」 第 37 条 が 嚆 矢 ( こ う し ) で あ る 。 た だ , 当 時 の 国 の 苦 し い 財 政 状 況 を 踏 ま え ,生 活 保 護 受 給 者 の 子 女 や 島 嶼( と う し ょ )・ 僻 地( へ き ち )地 域 の 幼 稚 園 児 な ど ,対 象 は ご く 一 部 の 者 に 限 ら れ た( 同 法 施 行 令 第 65条 )。そ の 後 ,費 用 の 一 部 支 援 な ど ,支 援 規 模 は 漸 次 的 に 拡 大 さ れ て い っ た も の の ,2000 年 代 後 半 に 至 っ て も 完 全 無 償 化 の 対 象 は ,所 得 下 位 20% の 層 の み に と ど ま っ て い た 。

就 学 前 教 育 の 無 償 化 政 策 が 急 展 開 を 見 せ た の が , 李ミョンバク博政権 期(2008~2013 年 ) で あ る 。そ の背 景に つ い て は 後 述 す る と し て ,李 明博政権は 2011 年 ,5 歳 児 教 育 の 無 償 の 対 象 規 定 か ら 所 得 や居 住地 に 関 す る 制 限 を外す と と も に ,保 育 所 に 通 う 5 歳 児 も 対 象 に加え た

(「 幼 児 教 育 法 施 行 令 」 第 29 条 ,2011 年9月 30 日 改 正)。 す な わ ち , 幼 稚 園 と 保 育 所 に 通 う 全 て の 5 歳 児 が 無 償 化 の 対 象 と な っ た の で あ る 。 さ ら に ,翌 2012 年 に は , 無 償 化 の 対 象 を 3 , 4 歳 児 に も広 げ, 幼 稚 園 の 全 課 程及び 保 育 所 の 就 学 前 3 年 間 の 課 程 を 無 償 化 す る こ と を 定 め た (「 幼 児 教 育 法 」 第 24 条 ,2012 年 3 月 21 日 改 正)。

と ころで ,幼 稚 園 と 保 育 所 の 無 償 化 の範 囲を 定 め た「 幼 児 教 育 法 施 行 令 」第 29 条 に は , 無 償 化 対 象 の 規 定 と し て従前 ま で な か っ た も の が加え ら れ て い る 。 同 条 第1 項に よ る と , 3 年 間 の 無 償 化 は ,「 教 育 部長 官と 保 健 福 祉 部長 官が協 議し て 定 め る 共 通 の 教 育・ 保 育 課 程

( 以 下 ,“共 通 課 程”と す る )を提供 さ れ て い る 幼 児 を 対 象 と す る 」と 定 め ら れ た 。こ こ で

い う 「 共 通 課 程 」 と は ,2013 年度か ら 導 入 さ れ た 「 3 ~ 5 歳 児 共 通 教 育 課 程 」( 韓 国 語 で は「ヌリ 課 程 」と呼 ばれ る )の こ と で あ る 。同 課 程 は ,就 学 前 教 育 の充実 と い う 理念の 下 , 人 格教 育 や 初 等 学 校 教 育 と の連動 な ど に重 点が 置 か れ て い る 。 こ の 共 通 課 程 の運 営を 無 償 化 の 条件と す る こ と の 意 味 は ,充実 し た 就 学 前 教 育 を 家 庭 の 経済状 況 に 関係な く , 全 て の 幼 児 に提供 す る と い う 理念に 見 い だ さ れ る で あろう 。

表 3 幼 稚 園 評 価 の 共 通 指 標 ( 第 3 周 期 )

領 域 指 標 項 目 内 容

教 育 課 程(30

教 育 目 標 及 び 教 育 計 画 の 適 切 性 (10

教 育 目 標 は 全 国 水 準 の 教 育 課 程 と 教 育 庁 の 運 営 指 針 に 基 づ き ,幼 児 の 全 人 的 発 達 ・ 教 育 を 目 指 し て い る か 。

年 ( 月 ) 間 , 週 間 , 日 々 の 教 育 計 画 の 目 標 と 内 容 が 適 切 で , 連 続 性 が あ る か 。

日 々 の 教 育 計 画 案 に は , テ ー マ や 目 標 , 活 動 時 間 , 内 容 , 資 料 , 評 価 な ど が 含 ま れ て い る か 。

日 課 運 営 及 び 教 授 ・ 学 習 方 法 の 適 合 性

15

計 画 に 基 づ き , 日 課 を 統 合 的 に バ ラ ン ス よ く 運 営 し て い る か 。 教 育 内 容・活 動 に 適 切 な 教 授・学 習 方 法 ,教 材 を 使 用 し て い る か 。 教 員 と 幼 児 間 に 適 切 な 相 互 作 用 が 生 じ て い る か 。

評 価 方 法 ・ 活 用 の 適 切 性

5

幼 児 評 価 の 実 施 方 法 と 活 用 が 適 切 か 。

教 育 課 程 ( 共 通 課 程 ) 運 営 評 価 の 実 施 方 法 と 活 用 が 適 切 か 。

教 育 環 境(15

室 内 外 の 教 育 環 境 構 成 と 活 用 の 適 合 性

10

室 内 空 間 は 興 味 領 域 の 構 成 が 適 切 で , 展 示 ・ 掲 示 が 教 育 的 か 。 室 外 空 間 に は 各 種 遊 び 道 具 を は じ め , 多 様 な 活 動 領 域 が あ る か 。 室 内 外 の 施 設 ・ 設 備 が , 幼 児 の 発 達 水 準 及 び 幼 児 教 育 の 特 性 に 合 っ て い る か 。

教 材 , 教 具 の 提 供 及 び 管 理 の 適 切 性 (5

幼 児 の 発 達 水 準 に 適 し た 教 材 ・ 教 具 が 十 分 に 用 意 さ れ , 提 供 さ れ て い る か 。

使 用 し や す い よ う , 教 材 ・ 教 具 の 整 理 ・ 管 理 さ れ て い る か 。

健 康 及 び 安 全

15

幼 児 の 健 康 管 理 及 び 指 導 の 適 切 性 (10

幼 児 を 対 象 に 清 潔・衛 生 指 導 な ど ,健 康 教 育 が 実 施 さ れ て い る か 。 栄 養 バ ラ ン ス を 考 慮 し , 多 様 な 給 食 ・ 間 食 が 提 供 さ れ て い る か 。 幼 児 を 対 象 と す る 食 習 慣 指 導 が 行 わ れ て い る か 。

幼 児 の 安 全 管 理 及 び 指 導 の 適 切 性 (5

幼 児 と 教 員 を 対 象 に 安 全 教 育 を 実 施 し て い る か 。 幼 児 , 教 職 員 及 び 施 設 に 対 す る 保 険 に 加 入 し て い る か 。 室 内 外 及 び 設 備 を 安 全 に 設 置 ・ 管 理 し て い る か 。

運 営 管 理(30

教 職 員 の 勤 務 条 件 及 び 専 門 性 の 向 上(10

教 職 員 関 連 規 定 ( 人 事 , 報 酬 , 福 祉 ) が あ り , 遵 守 し て い る か 。 教 職 員 の 専 門 性 向 上 の た め の 研 修 機 会 を 与 え て い る か 。

園 長 は 機 関 を 民 主 的 に 運 営 し , 改 善 の た め に 努 力 し て い る か 。 予 算 編 成 及 び

運 営 の 適 切 性

5

予 算 ・ 決 算 書 を 運 営員 会 の審 議・諮 問を経定 し , 対 内 外 的 公開 し て い る か 。

入 園 料 と 授料 以 外 の他 経 費に 関 す る 規 定 を 整 備 し ,遵 守 し て い る か 。

家 庭及 び 会 と の 連

5

護 者教 育 及 び加 活 動 を体 系的 に 計 画 , 運 営 し て い る か 。 幼 稚 園 の 教 育 活 動 及 び 幼 児 発 達状 況を 保護 者に 案 内 し て い る か 。 域社会 と の力 を 目 指 し ,地会 の 人 的 ・的 資を 活 用 し て い る か 。

課 程 運 営 の 適 切 性

10

国 及 び・ 道 教 育 庁 の放課課 程 運 営 指 針 に 基 づ き , 活 動 及 プ ロ グラ ム を 適 切 に 計 画 , 運 営 し て い る か 。

課後課 程 の た め の 基的 な 施 設 ・ 設 備 が 準 備 さ れ て い る か 。 課後課 程 の 専職 員 が置 さ れ て い る か 。

表 注 :( ) 内 は配 点数 。

( 出 典 ) 教 育 部「 第3周 期幼 稚 園 評 価中 央研 修」2014年 ,1314

3 ) 質 保 証 の 仕 組 み

幼 稚 園 の質保証に 対 す る取 組と し て ,国 に よ る 幼 稚 園評 価制度が整 備さ れ て い る 。2007 年 のモ デ ル 事 業を 経 た 後 ,2008 年 か ら 3 年 間 を 一周 期と し て 本格的 に 開始さ れ た 。2014 年 現在は , 第 3周 期(2014~2016 年 ) の 初 年度に 当 た る 。 国 ( 教 育 部 ) は ,評 価の 基 本 計 画の 策 定 やデ ー タ ベ ー スの運 営な ど を 行 い , 実際の評 価 作 業は 地 方 ( 各広域市・道教 育 庁な ど ) が 行 う 。

評 価 内 容は ,「 教 育 課 程 」と「 教 育環 境」,「 健康 及び安全 」,「運 営管 理 」の 4領域 に 大 き く分け ら れ ,更に 11 指 標 30 項 目に細 分化 さ れ て い る (表 3参 照 )。評 価に 当 た っ て は , 教 育庁な ど に 設 置 さ れ る評 価 委 員会 に よ る書 面 評 価と 実 地調 査が 行 わ れ る 。書 面 評 価は , 幼 稚 園 の運 営 計 画 書や自 己 評 価 書,情 報公 開 さ れ て い る情 報な ど が資 料と な る 。 実 地調 査 に お い て は ,観 察 調 査と面 談を 通 し て書 面 評 価の内 容を確 認す る こ と が 中 心 と な る 。評 価 結 果 は ,「 全 国 幼 稚 園情 報」ウ ェ ブ サ イ ト(http://e-childschoolinfo.mest.go.kr/) で 公 開 さ れ る 。 ま た , 幼 稚 園 に 対 す る 行 財 政 的 支 援 と評 価結 果 を連動 さ せ た り ,質向 上 の た め の フ ィ ー ド バ ッ ク 資 料と し て 活 用 さ せ た り す る こ と が 検 討 さ れ て い る( 1 )

( 2 ) 機 能 , 要 素

上 述 の と お り , 教 育 は 幼 稚 園 , 保 育 は 保 育 所 と い う役 割 分担 が な さ れ て い る 。 た だ , 3

~ 5 歳 児 に つ い て は 教 育 ・ 保 育内 容が統一 さ れ て お り , 幼 稚 園 で も 「放課 後 課 程 」 と称さ れ る午後 の 教 育 活 動 ( 預 か り 保 育 を 含む) が 一般的 で あ る こ と か ら ,両者 の 機能の 実際に そ れほど 大 き な差 異は な い 。そ の た め ,教 育 と 保 育 の 一元化 に 関 す る議 論も進行 し て い る 。 教 育 と 保 育 の 一元化 を 検 討 す る 政府の 動 き は ,2013 年 に 本格化 し た 。2013 年 5 月 に 関 係 省 庁の副 長 官 級や民間 の有 識者 な ど 12 名か ら構成 さ れ た 幼 保統合推 進 委 員会 ( 現 乳 幼 児 教 育 ・ 保 育統合推 進 団) が 国務 調 整 室(日本 の内 閣 府に相当 ) に 立 ち 上げら れ ,2013 年 12 月 に は 一元化 へ 向 け たロ ー ド マ ップ が 示 さ れ た( 2 )。 そ れ に よ る と ,2014 年度に情 報公 開シ ス テ ムや評 価制度,財務会計 項 目な ど に つ い て ,2015 年度に 施 設 基準や 機 関 の利 用 基準,教員 資 格な ど に つ い て ,2016 年度に 教職 員の待 遇や 所 管庁 及び 財源な ど に つ い て , そ れ ぞ れ 一元化 を推 進す るス ケ ジ ュ ー ルと な っ て い る 。

こ のス ケ ジ ュ ー ルに先 駆け て 一元化 の 動 き を み せ た 共 通 課 程 で は , 全 て の 年 齢 ( 3 ~ 5 歳 ) に 共 通 す る五つ の 教 育 活 動領域 (表 4参 照 ) が 定 め ら れ て お り , 幼 稚 園 と 保 育 所 の ど

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