命題3.3.10. p1 pmod 4qで p
q
1のとき,gpYp,qq ©4 logpqとなる.
証明. p1 pmod 4qで p
q
1とする.pga20 pmodq2qより
1 pg
q
p
q g
p1qg となる.すなわち,gは偶数となりg2hがいえ,
p2ha20 pmodq2q と表され,補題3.3.3から
ph a20 pmodq2q となり,a0はSpの定義より奇数なので
ph a20 pmod 2q2q (2)
となる.一方a20¨pgすなわち|a0|¨phである.背理法で示していく.q 4 logpqとするとph q2と なる.このとき|ph a0| 2q2となり(2)よりph a0となる.pga20からa1a2a30となり 矛盾する.よってgpYp,qq ©4 logpqである.
注意 3.4.1. mが偶数またはp1 pmod 4qとする.法4で考えると前の定義からわかることは現れるす べての4つ組px0, x1, x2, x3qはx0が奇数でx1, x2, x3が偶数となる.2次形式を導入する:
Q1px0, x1, x2, x3q x20 4q2px21 x22 x23q.
mが偶数またはp1 pmod 4qのときsQppmqはちょうど2次形式Q1によるpmの表現と同じになる.
一般のpに戻る.
補題3.4.2. mPNに対し,sQppmq 2 ¸
0¨r¨m2
fm2rとなる.
証明. 定理3.3.6よりXp,qとYp,qは同一視できる.x01, x1, , xl1, xl1を後戻りなしの始点,終点が 1の長さlのYp,qの経路とする.命題3.3.4の証明より,t1, , tlPTp,qがあり,xit1t2 tip1¨i¨lq とできる.αPSppi1, , lqによりtiΠqprαisqと一意的にかける.rα1srα2s rαlsは後戻りなしの 経路であるから,Λ上の長さlの既約語となり,Πqprα1srα2s rαlsq xl1となるからrα1srα2s rαls はΛpqqに属する.これからflはΛpqqに属する長さl のΛでの既約語の数となる.
px0, x1, x2, x3q PZ4がsQppmqの条件をみたすとする.αx0 qpx1i x2j x3kqとすると,この四 元数αはΛ1に属し,補題3.3.2より同値類はΛpqqに入る.これから次となる;
sQppmq | tαa0 a1i a2j a3kPΛ1 : Npαq pm, q|a1, a2, a3u |. (3) αが(3)の右辺の条件をみたすとする.系2.4.14よりαは一意分解α plωm2lをもつ,ただし ωm2lはSpの長さm2lの既約語である.類rαsはΛ上で長さm2lの既約語となりΛpqqに属する.
反対にΛpqqに属する長さm2lの既約語ωからα plωのように2つの四元数を生成できる.これは
| tαPΛ1 : Npαq pm,rαs PΛpqqu |2 ¸
0¨r¨m2
fm2r
を意味し,すなわち
sQppmq 2 ¸
0¨r¨m2
fm2r
となる.
Xp,qのtrace formulaはすべてのmPNに対し,
sQppmq 2 npm2
n¸1 j0
Um
µj
2?p
となる.ここでCの部分集合Θpを導入する:
Θp rilog?
p,0s∪r0, πs∪rπ, π ilog? ps. 複素数zPCのコサインとサインは
cosz1z2 2!
z4 4! z6
6! ¸8
n0
p1qn z2n
p2nq! eiz eiz 2 sinzzz3
3!
z5 5! z7
7! ¸8
n0
p1qn z2n 1
p2n 1q! eizeiz 2i
と定義された.変数変換zÑ2?pcoszの写像はΘpからrpp 1q, p 1sへの全単射となる.特に,この変数 変換はr0, πsをr2?
p,2?
psに移すのでr0, πsをラマヌジャン区間とみることができる.j0,1, , n1 に対しθjPΘpをΘpの一意的な元でµj2?pcosθj となるものとする.特にθ0ilog?pで,
p q
1 のとき:
θn1π ilog?
p p系3.3.7よりq. チェビシェフ多項式Umの定義より
sQppmq 2 n pm2
n¸1 j0
sinpm 1qθj sinθj
となる.
Xp,qがラマヌジャンであることを示すためにはθ0ilog?pと,
p q
1のときはθn1π ilog?p を除いたら,すべてのθjが実数であることを示す必要がある.これは最初に注意3.4.7の方法で示された.
初等的な方法では今のところできないが,その代わり十分大きなqに対しθjの虚数部分がpだけに依存し て決まることで十分だということを示す.これによりXp,qがfamily of expandersであることがわかる.
trace formulaからθjの重複度は固有値の重複度に一致することがわかる.
命題3.4.3. µをXp,qの非自明な固有値,すなわち|µ|p 1とし,その重複度をMpµq とする,この ときMpµq © q1
2 となる.
証明. Vµをµに対応する固有空間とする.命題3.1.3からベクトル空間VµはXp,qを構成している群の表 現空間である.この群は常にPSL2pqqを含んでいることからVµはPSL2pqqの表現空間である.定理2.7.31 からPSL2pqqの表現の次数は少なくともq1
2 である.|µ|p 1のときVµ上のPSL2pqqの表現が非自 明であることを示せばよい.背理法で示す.V µ上のPSL2pqqの表現が自明とする.2つの場合にわける.
p q
1のとき,表現が自明ならばfpg1xq λPSL2pqqpgqfpxq fpxqよりfpxqは定数である.
µfpxq Afpxq ¸
sPSp,q
fpxsq pp 1qfpxqからµp 1となる.
p q
1のとき,0でない関数f PVµはPGL2pqqのPSL2pqqによる2つの剰余類となり,それぞれ 定数となる,すなわち
fpxq
$&
%
a pxPPSL2pqqのときq
a pxPPGL2pqq, xRPSL2pqqのときq とできる.fはXp,qの隣接行列の固有関数であるので
µfpxq Afpxq ¸
sPSp,q
fpxsq
$&
%
pp 1qa pxPPSL2pqqのときq
pp 1qa pxPPGL2pqq, xRPSL2pqqのときq から
$&
%
µa pp 1qa µa pp 1qa
となる.fは0ではないのでµ2 pp 1q2,すなわち|µ|p 1となり,2つの場合とも矛盾となる.
以上からMpµq © q1
2 となる.
定理3.4.4. 実数εを0 ε 1
6 に固定する.十分大きなqに対し,Xp,qのすべての非自明な固有値µは
|µ|¨p56 ε p16ε をみたす.特にXp,qはfamily of expandersである.
証明. Xp,qのtrace formulaから始める:すべてのmPNに対し,
sQppmq 2 n pm2
n¸1 j0
sinpm 1qθj
sinθj
となった.ここでµj2?pcosθjとする.µjがラマヌジャンの範囲r2?p,2?psにないとき
$&
%
θjiψj p2?p µj ¨p 1のときq θjπ iψj ppp 1q ¨µj 2?pのときq となり,どちらも0 ψj¨log?pである.
今後,mを偶数とする.複素数zのハイパボリックサインとハイパボリックコサインを sinhz ezez
2 isinpizq, coshz ez ez
2 cospizq
と定義する.µj R r2?p,2?psのとき,どちらの場合もmは偶数だから sinpm 1qθj
sinθj
sinipm 1qψj siniψj
sinhpm 1qψj sinhψj
©0 となる.このとき自明な固有値µkR r2?p,2?psを固定すると
sQppmq 2
npm2Mpµkqsinhpm 1qψk
sinhψk
2
npm2 ¸
j:µjµk
sinhpm 1qθj
sinhθj
© 2
npm2Mpµkqsinhpm 1qψk sinhψk
2
npm2 ¸
j:|µj|¨2?p
sinhpm 1qθj sinhθj
となる.実数θに対し,
sinpm 1qθ sinθ
sinpmθqcosθ cospmθqsinθ sinθ
¨
sinpmθqcosθ sinθ
|cospmθq |
¨
sinpmθqcosθ sinθ
1
¨m 1 となるので
sQppmq © 2
npm2Mpµkqsinhpm 1qψk
sinhψk 2pm2pm 1q (4)
となる.注意3.4.1よりsQppmqを評価する.mが偶数よりsQppmqは x20 4q2px21 x22 x23q pm
の整数解の個数である.まずx0の選び方の個数を評価する.|x0|¨pm2 であり,x20pm pmodq2qより 補題3.3.3を使うと
x0 pm2 pmodq2q となる.x0とpは共に奇数だから
x0 pm2 pmod 2q2q となる.これよりx0の選び方は多くて
pm2 q2 1
通りとなる.いったんx0を固定し,
x21 x22 x23 pmx20 4q2 を整数解で解く.2.1節の記号を使うとr3
pmx20 4q2
通りである.系2.1.13より,すべてのε¡0に対し
r3
pmx20 4q2
Oε
pm q2
12 ε
となる.このとき
sQppmq Oε
pm2 εm q1 2ε
pm2 q2 1
Oε
pmp1 εq q3 2ε
pm2p1 2εq q1 2ε
Oε
pmp1 εq q3
pm2p1 2εq q
となる.
したがって,ある定数Cε¡0により(4)は Mpµkq
n pm2 sinhpm 1qψk
sinhψk ¨Cε
pmp1 εq q3
pm2p1 2εq q
pm2pm 1q となる.pm2 を消して,n¨q3を使うと,
Mpµkqsinhpm 1qψk
sinhψk ¨Cε
pmp12 εq q2pmε
q3pm 1q となる.mをpm2 ¨q3となるように選んだとする.このとき
Mpµkqsinhpm 1qψk
sinhψk ¨Cε
q3 6ε q2 6ε
q3p1 6 logpqq となる.sinhψk ¨sinh log?pから
Mpµkqsinhpm 1qψk Oε q3 6ε
となる.mをpm2 ¨q3をみたす1番大きな偶数とする.十分大きなqに対し,
sinhpm 1qψk © epm 1qψk
3 ©ep1 6 logpqqψk 3 ©p12
3 e6 logpqψk
となる.最後の不等式はψk ¨log?pを使っている.このとき Mpµkq Oε
q3 6εlog6ψkp となる.µkは非自明な固有値なので命題3.4.3より
Mpµkq ©q1 2 となる.十分大きなqに対して
3 6ε 6ψk logp©1, すなわち
ψk ¨ 1
3 ε
logp となる.
このとき,θk iψkまたはθkπ iψkとµk2?pcosθkから,qが十分大きいとき
|µk | 2?
p|cospiψkq | 2?
pcoshψk
¨?
ppep13 εqlogp ep13 εqlogpq p56 ε p16ε
となる.これからεP
0,1 6
を固定する.十分大きなqに対し,定理1.2.3より
hpXp,qq ©p 1p56 εp16ε 2
となる.よってXp,qはfamily of expandersである.
系 3.4.5. 実数εを0 ε 1
6 に固定する.
p q
1のときµn1 pp 1qよりqが十分大きいとき,
系1.5.4より
χpXp,qq © p 1 p56 ε p16ε となる.
次の系により,大きなgirthと大きな彩色数を持つ有限なグラフ族の構成がわかる.これは1.6節の確率 論的証明では解決できなかったことだ.
系 3.4.6. NPNを固定する.十分大きな素数qに対し,
gpXp,qq ©N かつ χpXp,qq ©N となる奇素数pが存在する.
証明. pを p 1
p1112 p121 ©N をみたすよう十分大きく選ぶ.このとき,qを次の4条件を同時にみたすよう に十分大きく選ぶ:
paqq©p8; pbq2 logpq©N; pcq
p q
1;
pdqχpXp,qq © p 1 p1112 p121 . これから命題3.3.4と定理3.3.6より
mintgpXp,qq, χpXp,qqu ©N をえる.
注意3.4.7. グラフXp,qがラマヌジャンであることの証明の概略を記していく.
ラマヌジャン予想はモジュラー尖点形式の係数の増大度についての予想で,重さ2でのこの予想はEichler によって証明された.
2次形式のQ1のθ-関数は
θpzq ¸
xPZ4
e2πiQ1pxqz ¸8
k0
rQ1pkqe2πikz
により与えられる;ここでrQ1pkqは整数kの形式Q1による整数表現の個数である.このときθは重さ2 のモジュラー形式で;θをアイゼンシュタイン級数と尖点形式の和として分解すると,Eichlerの結果を偶 数mに対しrQ1ppmq sQppmqと得ることができる.特にすべてのε¡0に対し
sQppmq 4 qpq21q
pm 11 p1 Oε
pm2p1 εq
となる.この結果と初等的な証明であった定理3.4.4に含まれている評価を比べることは興味深い.
Xp,qのtrace formulaは
sQppmq 2 n pm2
n¸1 j0
sinpm 1qθj
sinθj
であった.主要な項 4 qpq21q
pm 11
p1 は自明な固有値,すなわち
$' '&
''
%
θ0ilog?p p
p q
1のときq θ0ilog?
p, θn1π ilog? p p
p q
1のときq により与えられる.まず,sinpm 1qθ0
sinθ0 pm2 pm 11
p1 を示す.
sinpm 1qθ0
sinθ0 sinhpm 1qplog?pq sinhplog?pq
epm 1qplog?pqepm 1qlog?p eplog?pqelog?p p12pm 1qp12pm 1q
p12 p12 pm2 1pm2
p1 pm2 pm 11
p1
となる.sinpm 1qθn1
sinθn1 pm2 pm 11
p1 も同様である.
p q
1のときn qpq21q
2 であるので,
sQppmq 4
qpq21qpm2 pm2 pm 11 p1
2 n pm2
n¸1 j1
sinpm 1qθj sinθj
4
qpq21q
pm 11 p1
2 n pm2
n¸1 j1
sinpm 1qθj
sinθj となる.
p q
1のときnqpq21qであるので,
sQppmq 2
qpq21qpm2 2pm2 pm 11 p1
2 n pm2
n¸2 j1
sinpm 1qθj sinθj
4
qpq21q
pm 11 p1
2 n pm2
n¸2 j1
sinpm 1qθj
sinθj となる.これから
p q
1のときを考える.
p q
1のときも同様である.ラマヌジャン-アイヒラー の評価より
2 n
n¸1 j1
sinpm 1qθj
sinθj Oε pεm2 となることがわかる.これより
2 n
n¸1 j1
sinpm 1qθj
sinθj
¨Cεpεm2 (5)
となる.θjが実数でないものがあるとする.定理3.4.4のようにθj iψjまたはθjπ iψj p0 ψj¨ log?
pqとすると,mが偶数から 2 n
sinpm 1qθj
sinθj 2 n
sinhpm 1qψj
sinhψj ¡0 となる.また,
2 n
¸
i:θiが実数
sinpm 1qθi sinθi
¨2pm 1q である.これらから
2 n
n¸1 j1
sinpm 1qθj
sinθj
2
n
¸
i:θiが実数
sinpm 1qθi
sinθi
2 n
¸
j:θjが虚数
sinhpm 1qψj
sinhψj
© 2 n
¸
i:θiが実数
sinpm 1qθi sinθi
2
n
¸
j:θjが虚数
sinhpm 1qψj sinhψj
© 2pm 1q 2 n
¸
j:θjが虚数
2emψj
3 (6)
となる.(5),(6)より
Cεpεm2 © 2pm 1q 2 n
¸
j:θjが虚数
2emψj 3 となる.ε
2 ψjとし,mを偶数で十分大きくとると,これは矛盾する.よってθj はすべて実数であり,
グラフXp,qはラマヌジャンであることがわかる.
4 グラフ H z X
p,q4.1 商ケーリーグラフ
この節でいよいよHzXp,qを定義する.まず,この節で商ケーリーグラフの基本的な性質を示し,4.2節 でHzXp,qの性質を示す.ラマヌジャングラフであることを4.3節で示し,4.4節でgirthや彩色数につい て議論する.
定義4.1.1. GpG, Sqをケーリーグラフとする(Gは群,Sは空でないGの有限集合で対称であった).G
を部分群Hで左から割った剰余類HzGを頂点集合とする.Hx, HyPHzG, sPSによりHyHxsと なるときHxとHyを結ぶ辺があるものとする.s1PSによりHxHys1となるときs1 s1ならばこ れは1つの辺とする.s1, s2 PS, s1 s2によりHy Hxs1, Hy Hxs2となるとき,どちらもHxと Hyに辺を与えるが,これらは異なる辺とする.すなわち,多重辺となる.これらの頂点集合と辺集合に よるグラフをHzGpG, Sqとかき,商ケーリーグラフという.
商ケーリーグラフHzGpG, Sqは|S |kとすると明らかにk-正則グラフである.まず,HzGpG, Sqが 連結である条件を示す.
命題4.1.2. xSyをSの元が生成する群とする.商ケーリーグラフHzGpG, Sqが連結となることは,HxSy Gとなることと必要十分である.
証明.
pùñqHzGpG, Sqが連結とする.任意のxPGをとるとHxは辺をたどることでHとつながっている.す なわち,s1, , siPSが存在し,HxHs1 siとなる.このときhPHがありxhs1 si となる.
よってHxSy Gとなる.
pðùqHxSy Gとすると,任意のxPGはhPH, s1, , siPSが存在し,xhs1 siとかける.こ れによりHxHs1 siとなるのでHxは辺をたどることでHとつながっている.よって任意のHxは Hとつながっているので連結である.
GpG, Sqは命題3.1.2(a),(b)のとき,ループをもたず,単純であった.しかし,HzGpG, SqはGpG, Sqが ループをもたず,単純であっても,ループがあったり,多重辺が存在したりする.HzGpG, Sqがループを もたない条件は次の補題である.
補題4.1.3. HzGpG, Sqがループをもたないことは,どのhPH, sPSも共役でない,すなわちxhx1s となるxPGがないことと必要十分である.
証明. 明らか.
次の命題がHzGpG, Sqが単純である条件である.
命題 4.1.4. mを任意のhPHに対し,hm1となる最小の自然数とする.GpG, Sqのgirthが2mより 大きいとき,HzGpG, Sqは単純である.
証明. 背理法で示す.単純でない,すなわち多重辺があるとすると,あるHxPHzGに対しs1, s2PS, s1 s2が存在しHxs1Hxs2となる.このときhPHがあり
xs1hxs2