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問題設定の授業過程と教師の手だて

ドキュメント内 数学学習における問題設定の研究 (ページ 74-94)

      だて

 本章では、竹内と沢田(1984)の「問題から問題へ」の指導を参照しながら問題設 定を取り入れた授業の展開過程について述べる。また、前章での考察、すなわち、

生徒がどのような思考過程を経て問題設定を行うかについての考察の結果をもとに して、中学校数学科の図形の証明において生徒に問題設定を促進させるための教師 の手だてについても述べる。

 まず、§1では原問題の解決について、原問題としてどのような問題を提示する か、そしてどのように原問題を解決していくかなどについて述べる。§2では問題 設定について、問題設定の促進のための教師の手だてとして、発問や考えられるつ まづきと対策などを中心に述べる。§3では問題設定後の活動として、作った問題 の発表と分類・整理、作った問題の解決、そして学習のまとめと発展について述べ

る。

§■原問題の解決

 問題設定を取り入れた授業(問題設定の授業と呼ぶ)は、図14のように、まず、

原問題の解決を行い、その後で原問題をもとに新しい問題を設定していく。そして、

設定された問題を解決していくという流れを踏んでいく。

匡璽一《問題解決》一《問題設定》一設定され三一《問題解決》一

図14 問題設定の授業の流れ

 竹内と沢田(1984)は、図14のような「問題設定の授業」を具体的に進める場合 の展開過程について原問題の解決、原問題からの問題設定、作った問題の発表と分 類・整理、作った問題の解決、学習のまとめという過程を示している。本研究では、

作った問題の発表と分類・整理、作った問題の解決、学習のまとめと発展という3 つの過程をまとめて 問題設定後の活動 とする。以下では、それぞれの過程につ

いて説明する。特に、問題設定の過程においては、教師がどのような手だてをすれ ば問題設定が促進されるかについても述べる。

(1)原問題の提示

 問題設定の授業を進める場合には、まず、原問題を提示して問題解決をさせるの であるが、生徒が活発に思考を働かせそれによって多様な、しかも価値のある 問 題 を考え出すためには、次のような特性を持った原問題が望ましい。もちろん、

原問題のどれもがこれらの特性をすべて持っているということではなく、これらの 特性のいくつかを持っていることが望ましいということである。(竹内,沢田,1984)

① 一人一人の生徒が興味、関心をもって学習できるようにするために、多様な  アプローチが可能なノンルーチンな問題あるいはオープンエンドな問題などが  よい。

 島田(1977)は、普通の証明問題を証明内容(結論)をふせて「…  の間にはど のような関係があるか。また、見付けた関係を証明せよ。」とオープンエンドな問 題に書きかえて提示することで多様なアプローチが可能であることを示している。

次のような問題は、オープンエンドな問題の例である。

問題 2つの円0,0 の交点をA,Bとする。点Aを通る直線4が,ふたたび円0,

  0 と交わる点をそれぞれP,Qとし,点Bを通る直線 がふたたび円0,0   と交わる点をそれぞれS,Tとする。このとき,線分や角の間にはどのような   関係があるか。また、見付けた関係を証明せよ。

4  P

A Q

0

0

T

S

B

 Yerushal皿1yら(1988)は、オープンエンドな問題を「探求問題」と呼んでいる。

次の問題は探求問題の例としてYerushalmlyがあげている問題の例である。

問題 下の図の中にある角の関係を探求しなさい。

B

 また、Silver(1990)は、オープンエンドな問題を「ゴールが特殊化されていない 問題0inon−goal−specific proble皿)」と呼んでいる。次の問題はその例である。

問題 下の図のように、半径が6㎝の円が正方形に内接している。この図から、円   と正方形についてできるだけ多くのことを見付けだして下さい。

 これら3つの問題の共通点は、多様なアプローチが可能なことであり、どの生徒 でも興味・関心を持って学習することができることである。

②問題の構成要素などが生徒にとって多様に変え得るもの。

 例えば、「直角三角形ABC(∠C−90。)で, AB=c, BC=a, AC

=bとするとき,a, bを1辺とする正方形の面積は,斜辺。を1辺とする正方 形の面積に等しい。このことを証明せよ。」という三平方の定理の証明問題から What if not方略などを使って、以下のように問題の構成要素を変化させていくこ

とができる。

・直角三角形の各辺の上の正方形を他の相似な図形に変える。

 正方形→正三角形(正多角形)→半円→一般の相似な図形

・直角を鋭角や鈍角に変える。

 ∠C>900のときa2+b2<c2,∠C<9 0。のときa2+b2>c2

・逆の定理を作る。

③新しい問題をつくり、それを解くことにより、生徒にとって数学的に意味  (価値)のある何らかの発見が期待できるもの。

 例えば、上の三平方の定理の証明問題をもとにして作った問題を解く活動を 通して次のようなことの発見が期待できる。

・正方形でなくても、相似な図形であれば三平方の定理が成り立つ。

・∠Cが鈍角であればa2+b2〈c2,∠Cが鋭角であればa2+b2>c2が成り

 立つ。

・三平方の定理の逆が成り立つ。

 しかし、例えば、上の②の三平方の定理の逆の証明問題をもとにして作った次の ような問題は、原問題の理解を深めたりすることは可能であるが、証明も難しく、

また数学的に価値のある発見もあまり期待できない。

問題 三角形の3辺の長さa,b, cの間にa2+b2<c2の関係が成り立てば、

  その三角形は鋭角三角形である。このことを証明せよ。

問題 三角形の3辺の長さa,b, cの問にa2+b2>c2の関係が成り立てば、

  その三角形は鈍角三角形である。このことを証明せよ。

 問題設定の授業を進めていくために、上にあげた①、②、③のような特性を持っ た原問題を開発していくことは今後の課題である。

(2)原問題の解決

 問題設定において多様な問題を生み出すには、原問題を十分に理解していなけれ ばならない。そのためにも、原悶題の解決が必要である。まず、原問題を提示し、

個別に自力で解決させる。そのあと、発表・討議をさせることによって、解決の過 程をふりかえり、問題のどこに着目し、どんなアイディアを用いて解決したのかを 明確におさえる。生徒は、他の生徒の発表を聞くことによって、自分の気がっかな かった解き方を知ることができ、原問題に関する理解を深めることができる。

§ 2  問題設定

(1)発問の仕方

 原問題の解決の後、原問題をもとにして新しい問題を作る場合に、問題設定を促 進させるためには指導者の適切な手だてが必要となってくる。もちろん、生徒が自 発的に問題作りができる場合は、指導者の手だてはあまり必要ないであろう。しか し、特に、生徒が問題設定の経験がなかったり、少なかったりした場合には、問題 設定を促進するための指導者の適切な手だては欠かせないものと思われる。その場 合に、前章で述べた問題設定の「思考モデル」を指導者が理解しておれば、短い時 間に生徒各自の思考の段階やつまづきを理解し、適切な手だてが可能になると思わ

れる。

 ところで、実際に、問題設定をさせる場合は、まず原問題をもとにして新しい似 た問題を作るように発問をし、個別に取り組ませながら生徒の反応を観察しチェッ

クする。もし作れない場合には、さらにできるだけくだいた発問をするなり、例示 するなりして助言を与え、できるだけ多様な問題を作るように促す。しかし、作り 方の指示をすれば、問題設定活動は活発になるかもしれないが、作られる問題に多 様性が見られなくなる可能性がある。指示を最小限にとどめ、生徒の思考の自由性

(オープン性)をできるだけ保障することが大切である。また、生徒問の話し合い やグループ学習などによって問題を作らせることも大切である。なぜなら、話し合 いやグループ学習は、さまざまな考えや新しい考えを共有したり、豊富にしたりす

ることができるからである(Moses, Bjork,&Goldenberg,1990)。 NCTM(1989)でも問 題設定における話し合い活動の大切さを強調している。

 下の表8は、竹内と沢田(1984)を参照にして、前章の問題設定の「思考モデル」

の各段階における指示をあまり含まない発問の仕方についてまとめたものである。

表の1、皿、皿はそれぞれ問題設定の思考過程の3段階を表している。1はWhat if not方略では問題の属性作り、Solutio皿方略では証明方法(解決に使われている知 識)の選択、Proposition方略では証明した結果(定理)の選択である。皿はWhat if not方略ではWhat if notの問いかけ、 Solution方略とProposition方略では場面 の選択と条件付与である。皿はVhat if not方略、 Solution方略、 Proposition方略

とも問題設定(問題の表現)である。

表8 問題設定における発問の例

問題設定方略 過程1での発問の例 過程皿での発問の例 過程皿での発問の例 What if not方略 ・似た問題を作って下 ・〜ナなければどうカ

さい。 と考えて下さい。 ・できるだけ多くの機

・場面や証明内容、条 ・〜の一般化(特殊化) 題を作って下さい。

件などを変えて問題 を考えて下さい。

を作って下さい。

Solution方略 ・似た問題を作って下 ・証明方法を使うため ・いろいろな種類の陪

さい。 の場面を決めて下さ 題を作って下さい。

・証明方法(証明に使 い。

われている知識)を ・証明方法が使えるよ

使って問題を作って うに場面に条件を・ ・創造性のある問題を

下さい。 けて下さい。 作って下さい。

Proposition方略 ・似た問題を作って下 ・解いた結果を使うた

さい。 めの場面を決めて

・解いた結果(定理) さい。 ・表やグラフ、図など

を使って問題を作っ ・解いた結果が使える を入れた問題を作っ

て下さい。 ように場面に条件を て下さい。

付けて下さい。

・原問題の逆を考えて 下さい。

(2)つまづきと対策

 上で述べたように、問題設定の授業においては、指示をあまり含まない発問で、

生徒がいろいろな新しい問題を設定できることが望ましい。しかし、問題設定の経 験がなかったり、少なかったりする生徒の場合は途中でつまついたり、作っても問 題の与えられた場面を変えただけの問題にとどまっている場合などがあると思われ

る。

 下の表9と表10は、第2章で述べた問題設定の調査、すなわち「平行四辺形A BCDにおいて, AB==DC, AD篇BCを証明せよ」を原問題とした問題設定の 調査をもとにして、設定された問題についてその種類と生徒がどのような順序で問

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