― 阪神・淡路大震災の経験と教訓を踏まえて ―
兵庫県副知事 齋藤 富雄
1 はじめに
○ 人類史上初めてといわれる、機能が集中した大都市直下型の地震。
しかも、誤った安全神話に惑わされ、地域の住民も、行政も、メディア も不備な状況での対応を迫られた。
・被災状況の概要
・初動時における県災害対策本部の情報収集・発信の状況
・ 地元メディアの被災状況
2 大震災時における取材される側の行政(兵庫県)の反省
○ 対応要員の確保の課題
○ 情報収集体制の課題
・ハード面の課題、ソフト面の課題
○ 情報発信体制の課題 ・平時からの体制の不備 ・安全情報の不足
○ 報道協定の課題
3 取材される側から見た大震災時のマスメディア活動の課題 (1)取材手法
○ 救援・復旧業務への支障
対応する要員が不足している状況のなかで、大量の取材記者へ対応 する必要から、災害対応が妨げられることがしばしばあった。
○ 短期間の応援記者と予備知識の欠如
被災地外からの動員(研修)記者が 1〜2 週間で入れ替わるため、
事実や背景の知識がないままの取材が多く、同じ内容の取材が繰り返 され、その対応に大変時間をとられた。
○ プライバシーや被災者感情への無配慮
避難所などで被災者が要望した取材ルールを守らない、被災者の感 情を思い計らない取材が見られた。
○ ヘリコプター取材の弊害
取材のためのヘリが集中し、騒音で救助活動に支障を来した。
(2)報道内容
○ 不正確な報道内容や誤報
にわか勉強のため記事、報道が不正確であったり、誤報があり、被 災者の不信感を助長するようなことがあった。
○ 意図的な報道
あらかじめ決めたシナリオに都合の良い部分のみを組み立て、公平 でない報道があった。
ヤラセの特別番組などもあった。
○ 点 の被害報道
被害の大きかった地域、場所に取材が集中し、画になる特定の箇所 からの報道が頻繁に行われた。
被害が大きくても、一般的な被害状況の地域は報道される機会は殆 ど無かった。
まち全体の被害の状況が把握できるような面的に捉えた報道が少な かった。
○ 安全情報の不足
初動時は被害情報に合わせ、安全情報が求められているが、取り上 げられることは殆ど無かった。
○ 一過性の報道
他に大事件が起きると、関心が移ってしまい、被災地外では継続的 な報道が十分になされなくなった。
4 メディアへの期待 ■【初動期】被害情報報道
(1)被害の概要を正しく、速く
・誤報を防ぐ(相手に確認)─── デマ、不信防止 (2)安全情報の発信
・被害情報だけでなく安全情報も───避難誘導、負傷者対応 ■【応急対応期】救命・救助・安否情報報道
(3)激励、希望報道
・被災者を激励し、希望を持たせる報道── 被災者の立ち直り支援 (4)面的視点の報道
・被災地全体の状況を─── 被災地外からの支援 (5)共同取材
・ヘリの取材等── 救援活動への支障 ■【復旧期】生活情報報道
(6)公共性
・報道協定の実効性確保───報道機関は情報のライフライン ■【復興期】対応情報、分析・検証報道
(7)提言報道
・復興に向けての具体的な方策報道─── 批判でなく建設的提言 ■【平時】啓発報道
(8)予防報道
・発災時のみでなく平時の啓発報道─── 減災
5 取材される側(行政)の努力 (1)情報収集体制の整備
・災害対策センターの整備 ・災害待機宿舎の整備 ・情報システムの整備 ・連携体制の構築 (2)被害予測システムの整備 ・被害想定の充実
・オペレーションシステムの整備 (3)情報発信体制の整備
・マニュアルの整備
・情報センターの整備 ※災害対策の情報公開 ・報道協定の整備
・実戦的訓練の実施
6 むすび
○ 防災は 人 である。──── 人材育成
○ 「人と防災未来センター」のオープン
2.5 第2日目 3 限 講座 6 分科会1 テレビ災害放送
講師:日本テレビ報道局デスク 谷原和憲 アドバイザー:NHK解説委員 藤吉洋一郎
大妻女子大学教授
プロフィール(講師:谷原和憲)
1961 年生れ。1985 年・日本テレビ放送網入社。その後、今日まで報道局 勤務。災害報道と主体的にかかわるようになったのは、1991 年・雲仙普賢 岳噴火から。以後、1993 年・奥尻島津波被害、同年・鹿児島豪雨、1995 年・
阪神大震災、2000 年・有珠山噴火&三宅島噴火で現場キャップなどをつと める。また、気象庁・地震津波情報のNTV速報スーパーシステム・ソフト 開発担当者でもある。
現在はニュース編集部 NNN センター・デスク。
プロフィール(アドバイザー:藤吉洋一郎)
昭和 41 年東京大学工学部都市工学科卒業、NHK 記者になり、名古屋、東京 で勤務。主として社会部で科学、気象、災害を担当。また、新ニュースセン ターの建設やコンピュータを使った原稿システムの開発を担当。平成 3 年か ら解説委員。
この 4 月から、NHK 解説委員をつとめながら、大妻女子大文学部コミュニ ケーション文化学科で教壇に立つ。
講義要旨
テレビ報道の最大の武器は「速報性」と「映像」といわれます。災害報道においても、「ど こで何が起きているか?」を広く伝えるという意味では、これまでも生中継・ENG取材 を駆使して、一定の成果を出してきました。しかし、テレビの災害報道の最大の足かせは
「災害が起きても、1日・24時間は変わらない」ことです。災害報道において、「迅速で わかりやすい被害報道」と同時にテレビに求められるのは「被災地の命と生活を守るため の情報提供」です。でも、「1日・24時間」である以上、「被害報道」と「命と生活を守 るための報道」を、限られた時間のなかで、「バランス良く」交互にOAするしかありませ ん。口で言うのは簡単ですが、これが至難の技なのは、テレビ報道現場の人なら誰もが痛 感しているところです。
この「バランス」問題について、それぞれの局でどう乗り越えようとしているのか? ま た、そもそもテレビの災害報道はどこまで「責任」があるのか? たまには「電波を離れ たオープン戦」で議論してみませんか?
講義資料