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取り壊された家屋の実態 3.1 本章の概要

 3.1.1 本章の目的と概要  3.1.2 研究方法

3.2 取り壊された家屋の実態  3.2.1 中央区の状況

 3.2.2 東淀川区の状況  3.2.3 枚方市の状況

3.3 地域別に見た専用住宅の特徴 3.4 まとめ

-75-3.1 本章の概要

3.1.1 本章の目的と概要

 一般的に日本の住宅の寿命は20年から30年程度であり、欧米諸国に比べて短い傾向にあると 言われている。しかし、前章において木造専用住宅の平均寿命は50年程度であり、その年数は 次第に延びている状況が判明した。( 図3.2-8)

 しかし、建設後50年以上経過している住宅の存在はあまり目に付かず、建設後30年程度で取 り壊されている住宅が多く見られる状況である。また、住宅の寿命を考慮すると、長期間経過し ている住宅における耐久性の劣化はある程度仕方がないことであるが、短い期間で取り壊されて いる住宅は資源や環境の面から考察しても問題があると考えられる。そのため、短期間で取り壊 される住宅の実態や特徴からその要因を解明し、長寿命化を実現することが重要となる。しかし、

前述の通り現状では取り壊されてた住宅に関する統計的な資料が入手できないため、その実態は あまり明らかにされていない。

 そこで、前章で調査を行った固定資産家屋除却台帳に記載されている取り壊された家屋の属性 に着目した。固定資産台帳の中でも、固定資産家屋台帳及び固定資産家屋除却台帳は、調査時に おいて残存している家屋と調査時点で取り壊された家屋の建設年次や延床面積などの情報が年次 別に詳細に記録されている。そのため、本研究では固定資産家屋除却台帳の調査結果を基に、今 日までに取り壊された全ての家屋について、建設年次や取り壊された年次、敷地面積や延床面積、

用途や構造などの属性から、住宅の寿命を決定している要因の分析を行っている。

 また、前章では木造専用住宅の寿命を推計から平均寿命を算出を行っているが、戸建住宅の寿 命を考察するためには戸建住宅の寿命と木造専用住宅の寿命の関係性について分析を行う必要が ある。しかし、固定資産家屋除却台帳では戸建住宅という分類は行われていないため、固定資産 台帳で分類項目の1つである専用住宅と木造専用住宅の取り壊しの状況について比較分析を行い、

その関係を把握する。

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0

1980 1985 1990 1995 2000

中央区 東淀川区 枚方市

図3.1-1 寿命の推移 平均寿命(年)

建設年次(単位:年)

 本章の目的は、戸建住宅の寿命の要因とその背景を把握するため、2000年までに取り壊され た家屋の寿命について用途や構造との関係と、地域差の実態を明らかにすることである。

 ここで、本章で用いる用語を定義する。

建設年 :家屋を建設した年次 除却年 :家屋を取り壊した年次

寿命 :家屋が建設されてから取り壊しが行われるまでの年数。なお、この寿命は取り壊 された家屋の寿命であるため、前章の平均寿命とは意味が異なる

3.1.2 研究方法

 本研究では、今日までに取り壊された家屋の属性に関する資料を収集するため、固定資産台帳 の調査を行った。本調査では調査対象地の固定資産家屋除却台帳に記載されている家屋の取り壊 しの状況を調査用紙に転記し、取り壊された家屋のデータベースを構築した。

 調査対象地域については、大阪府の地理的条件と対象とする地域の住宅棟数や住宅地の変遷な どの立地条件を考慮に入れ、大阪市内の中央区と東淀川区の2地域、大阪市の近郊から枚方市と 茨木市の2地域の合計4地域で行った。しかし分析に関しては、資料不足と考えられる茨木市を 除く中央区、東淀川区、枚方市の3地域について行っている。なお、本章で分析を行った固定資 産台帳の調査は、前章の固定資産台帳の調査と併合して行っているため、その詳細については割 愛する。

 固定資産台帳の調査により、調査実施時までに取り壊された全家屋の構造、用途、延床面積、

建設後取り壊されるまでの年数に関する資料を入手することができた。これらの調査結果を基に、

取り壊された家屋の属性をとその特徴について分析を行っている。

 まず、現在までに取り壊された全家屋についての概要を把握するため、建設年、除却年、寿命 別の棟数の分布から用途と構造による相違点を明らかにしている。次に、固定資産家屋除却台帳 の整備が今日の形式に整った1951年以降と1950年以前について、用途と構造による相違を把 握している。最後に次章以降分析を行う戸建住宅の特徴を把握するため、専用住宅について建設 年、除却年、寿命のそれぞれの関係について分析を行っている。

-77-3.2 取り壊された家屋の実態

3.2.1 中央区の状況 (1) 家屋全体の概要

 中央区において、2000年までに取り壊された家屋26301棟のうち、新築家屋24799棟につ いて分析を行う。木造家屋については全家屋の82%、20389棟を占めている。中央区は近畿地 区の商業と行政の中心地という立地のためか、東淀川区や枚方市に比べて全体的に住宅の比率が 少なく、特に木造専用住宅は全家屋の21%、5194棟と他の地域に比べて3分の1程度の比率と なっている。一方、木造の併用住宅や店舗の棟数は他の3地域に比べて非常に大きな比率を占め ている。なお、1990年以前の家屋については新築棟数と増築棟数の比率が明らかではないが、

1991年以降の家屋については、新築家屋に対して増築家屋が1割程度を占めている。( 表3.2-1)  建設年の分布については、他の地域に比べて1950年以前に建設された家屋が非常に多い。ま た、除却年の分布については、1970年頃と1990年頃に多くなるが、その後減少する傾向が見 られる。寿命については、20年前後の家屋を中心に分布しているが、他の3地域に比べると50 年以上の家屋の比率が高い。なお、家屋全体、専用住宅、木造専用住宅別に建設年、除却年、寿 命の分布を比べてもその差はほぼ見られない。( 図3.2-1、図3.2-2、図3.2-3)

 1951年以降に建設され、2000年までに取り壊された家屋は13167棟と、2000年までに取 り壊された全家屋の40%を占めている。1950年以前に建設された家屋と1951年以降に建設さ れた家屋を比較すると、特に事務所と倉庫が多く建設されている状況が伺える。また、1951年 以降の延床面積については、事務所を除き全体的に僅かながら増加傾向が見られる。なお、1951 年以降の寿命については、専用住宅では平均44年から23年と短くなる傾向が見られ、全体的に 1950年以前は35年前後であった寿命が1951年以降は20年前後となっている。( 図3.2-4、図 3.2-5、図3.2-6)

 以上の結果から、中央区は古くから市街地が構成されていた状況が伺える。また、除却年につ いては高度経済成長及びバブル景気といった好景気の影響が強いと考えられる。家屋全体、専用 住宅、木造専用住宅の建設年、除却年、寿命の傾向にはあまり差が見られず、住宅と木造専用住 宅の寿命はほぼ同じ程度であると考えられる。なお、1951年以降に建設された家屋は1950年 以前に比べて寿命が短く、寿命の分析の際には注意が必要である。

表3.2-1 取り壊された新築家屋の内訳(中央区)

木造 RC造 鉄骨造 組積造 その他

専用住宅 5194 124 270 32 24 5644

併用住宅 4578 9 4 4591

共同住宅 218 47 44 1 310

事務所 813 568 471 35 19 1906

店舗 6456 755 399 71 4 7685

工場 539 24 81 2 646

倉庫 1781 175 500 78 9 2543

付属家 470 1 1 472

その他 340 119 528 13 2 1002

合計 20389 1822 2298 232 58 24799

構造分類 合計

用途分類

0 5 10 15 20

5

〜10 〜15 〜20 〜25 〜30 〜35 〜40 〜45 〜50 50〜

家屋全体 専用住宅 木専住宅 0

5 10 15 20

1950

1955

1960

1965

1970

1975

1980

1985

1990

1995

2000

家屋全体 専用住宅 木専住宅 0

10 20 30 40 50 60

1950

1955

1960

1965

1970

1975

1980

1985

1990

1995

2000

家屋全体 専用住宅 木専住宅

3.2-1 建設年の分布(中央区)

3.2-2 除却年の分布(中央区)

3.2-3 寿命の分布(中央区) 棟数比率(%)

建設年次(単位:年)

除却年次(単位:年)

経過年数(単位:年数) 棟数比率(%)

棟数比率(%)

構造分類

構造分類

構造分類

-79-0

10 20 30 40 50 60 70

〜1950 1951〜

0 100 200 300 400 500 600 700 800

〜1950 1951〜

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

〜1950 1951〜

図3.2-4 用途別棟数(中央区)

図3.2-6 用途別寿命(中央区) 3.2-5 用途別延床面積(中央区) 建設棟数(単位:棟)

平均延床面積(単位㎡)

平均寿命(単位:年数)

建設年次(単位:年)

建設年次(単位:年)

建設年次(単位:年) 用途分類

用途分類

用途分類

(2)1951年以降に建設された家屋の特徴

 現存している住宅の大多数は1951年以降に建設された住宅であるため、1951年以降の木造、

RC造、鉄骨造の家屋について用途別の特性を明らかにする。

 用途別の構造の比率については、東淀川区や枚方市に比べて全体的にRC造が占める比率が高 く、特に事務所では木造の比率が低く、RC造の比率が高い。なお、木造専用住宅は専用住宅の 85%を占めているが、東淀川区や枚方市に比べて比率が低い。( 図3.2-7)

 用途別の延床面積については、全体的に木造よりも鉄骨造が広く、鉄骨造よりもRC造が広い。

特にRC造は他の構法に比べて非常に広い傾向が見られる。なお専用住宅に関しては、木造専用 住宅の79㎡と比較的小さな家屋であるのに対して、鉄骨造専用住宅は157㎡、RC造専用住宅 は349㎡とRC造は木造の4倍程度の差が見られる。( 図3.2-8)

 用途別の寿命については、全体的に木造やRC造に比べて鉄骨造が短い。しかし、木造とRC 造の寿命は使用用途によって傾向が異なり、住宅に関しては木造とRC造はほぼ同じ程度である。

また、非住宅の寿命については木造よりもRC造がかなり長くなる傾向が見られる。専用住宅の 寿命に関しては、木造専用住宅の23年に対してRC造専用住宅は24年、鉄骨造専用住宅は18 年となっている。なお、新築家屋のみの寿命と増築家屋を含めた寿命はあまり年数の差が見られ ない。(図3.2-9)

 なお寿命の分布について、木造、RC造、鉄骨造が占める比率を用途別に示した結果が図 3.2-10である。全体的に専用住宅や共同住宅では寿命が比較的早い時期、もしくは遅い時期に取り 壊される家屋の比率は低く、寿命が20年から30年程度の家屋の比率が高い。一方、事務所や店 舗や倉庫では、寿命が10年程度と建設後比較的早い時期から取り壊される家屋の比率が高く、

特にその傾向は木造や鉄骨造で顕著であるが、RC造については寿命が比較的長い傾向が見られ る。なお、寿命の分布からも木造に比べて鉄骨造は寿命が短く、RC造は長い傾向を把握するこ とができる。

 以上の結果から、使用用途にかかわらず寿命は木造家屋に比べて鉄骨造家屋で短く、RC造で 長くなる傾向が見られる。特にその傾向は住宅よりも非住宅で顕著に見られ、非住宅の場合は構 造により寿命が大きく異なる可能性が高いと考えられる。

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