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直流試験によるインピーダンス算出法

第3章 リニアモータの巻線間相互インダクタンス算定法

3.2 直流試験によるインピーダンス算出法

本節では,LIMの特性算定試験法として採用した直流試験によるインピー ダンス算出法(直流試験法)[12]-[15]について述べるとともに,ヒステリシスの 影響を考慮し,より高精度なインピーダンス(特に,無負荷時のリアクタン ス)を算出できる二段階電圧印加方式[14]の直流試験法について述べる.

3.2.1 直流試験法

図 3.1 は,LIMの特性算定試験法として採用した直流試験法の試験回路で ある.図 3.1 の試験回路を例に,直流試験法の実施手順を説明する.まず,

IGBT をONにし,直流安定化電源の電圧を調整して,LIMの a-b間に所定の 大きさの直流電流を流す.次に,リレー(MC)を短絡させると同時にIGBT を OFFにして,電源回路を切り離す.このときのMC短絡前の電圧VDC[V], 電流 IDC[A]および MC 短絡後の減衰電流 iN(t)[A]をデジタルオシロスコープ で測定する(図 3.2 参照).

これより,a-b間からみた各滑り角周波数に対するインピーダンス Zab() および演算子インピーダンス Xab(js)は,次式により算出することができる.

なお,Zab()の導出については,付録に記載している.

 

[ ]

) (

1

0

DC t DC j N DC ab

V dt I e t jV i

Z   ... (3.1)

 

 

[] js

r js Z

Xab abab

... (3.2) ここで,s:滑り(=/0,0:電源角周波数[rad/s])

rab:a-b間の巻線抵抗[]

図3.1 直流試験回路

図 3.2 MC 短絡前後の電圧・電流波形

ここでは,a-b間に対する例を示したが,他の巻線間(b-c間,c-a間)およ び一相端子と中性点間(a-n間,b-n間,c-n間)に対しても同様である.

3.2.2 ヒステリシスの影響を考慮した直流試験法

図3.3 は,前項の直流試験を実施した際におけるモータ機内のB-H特性の ループ軌跡を示している.ここで,便宜上,図3.2 の電圧・電流波形の MC短 絡前を区間 I,MC 短絡後を区間 II と呼ぶことにする.前項の直流試験法で

は,図 3.3 の区間 II の iN(t)の応答を Zab()の算出に用いている.しかしなが

0 t

iN(t) IDC

VDC

v(t), i(t)

MC短絡前 MC短絡後

ら,この区間 IIの傾きは,ヒステリシスの影響を受けるために普通磁化曲線 の傾きと一致しない.このため,インピーダンスの算出精度に影響を及ぼし ている.そこで,直流試験実施時におけるモータ機内の B-H特性のループ軌 跡を図 3.4 のように改良し,区間III′の iN(t)の応答をZab()の算出に用いた直 流試験法[14]について述べる.区間 III′の傾きは,普通磁化曲線の傾きと一致 することからインピーダンスの算出精度を向上することができる.

図 3.5は,直流試験実施時におけるモータ機内のB-H特性のループ軌跡を 図 3.4 のようにするために印加電圧を二段階としたときの直流試験実施時の 電圧・電流波形である.区間 I′で大きめの試験電流を流した後に,区間II′で 試験電流を下げ,MC短絡後の区間III′の iN(t)の応答を Zab()の算出に用いる.

図 3.3 従来の直流試験実施時の B-Hループ軌跡

図3.4 改良した直流試験実施時の B-Hループ軌跡

B

0 H

I II

B

0 H

I′

II′

III′

図3.5 印加電圧を二段階としたときの直流試験実施時の電圧・電流波形

本論文では,以降このような試験電圧の印加方式を「二段階電圧印加方式」

と呼び,また,図 3.2 に示す従来型の試験電圧の印加方式を「一段階電圧印 加方式」と呼ぶことにする.

3.2.3 直流試験法の実施例

直流試験法は,誘導機や同期機等の各種回転機(ただし,回転子漏れイン ダクタンスの非線形性を有する全閉スロット回転子の回転機を除く)に適用 できるが,ここでは,直流試験法を適用できる回転機の一例として,図 3.6に 示す半閉スロットのかご形回転子を有する誘導電動機( 5.5kW-200V-22A-4P-50Hz)を取り上げる.

(a)固定子 (b)回転子

図 3.6 半閉スロットのかご形回転子を有する誘導電動機

0 t

iN(t) IDC

VDC v(t), i(t)

区間III′

区間II′

区間I′

回転形の誘導機は各相対称であるため,誘導機一相分の演算子インピーダ ンス X(js)は,(3.2)式で求めたXab(js)を2で除すことで求められる.図 3.7 は,

誘導機一相分の T-II形等価回路[19][20]である.ここで,X(js)は,図 3.7のa′-b′

間からみた各滑り s におけるインピーダンスに相当しており,リアクタンス 分が正の実数,抵抗分が負の虚数で表される.

図 3.8は,図 3.6の供試機に対して一段階電圧印加方式(試験電流5A で直 流試験を実施)および二段階電圧印加方式(試験電流を 10Aから5A と下げ て直流試験を実施)の直流試験法を実施して求めた演算子インピーダンス軌 跡である.図中の各プロットは,各滑り周波数における値を示しており,0.01

図3.7 誘導機一相分のT-II 形等価回路

図3.8 誘導機一相分の演算子インピーダンス軌跡

r1

r2t xt

X0 js

X(js) a′

b′

−20

−10

00 10 20 30 40

リアクタンス []

抵抗 []

0.01Hz

0.1Hz 2Hz

5Hz 12.5Hz 25Hz

一段階電圧印加方式で求めた 50Hz

二段階電圧印加方式で求めた

X0 X0 X0

(無負荷試験)

(二段階電圧印加方式)

(一段階電圧印加方式)

X(js)

X(js)

1Hz

0.5Hz

0.2Hz

Hzの軌跡をリアクタンス軸上まで外挿した値は,図 3.7の励磁リアクタンス X0に相当している.一段階電圧印加方式と二段階電圧方式を比較すると,滑 り周波数の大きな領域(50~5Hz)では,差異はほとんど見られないが,滑り 周波数の小さな領域(5~0.01Hz)では滑り周波数が小さくなるほど大きな差 異がみられた.また,図中の青色の×印は,半電圧印加時の無負荷試験によ り求めた X0の値である.これより,二段階電圧印加方式で求めた X0のほう が無負荷試験の値により近い値となっており,二段階電圧印加方式を用いる ことによりX0の算定精度が改善することが確認される.