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原子力事情・原子力政策動向

ドキュメント内 1-1. 動向調査(米国・英国・フランス) (ページ 44-65)

1.1 エネルギー政策と原子力政策の状況と動向 エネルギー政策

英国政府は1990年代という早い時期から、電力市場の自由化、および脱炭素化の推進による 気候変動対策に取り組んできた。2008年には気候変動法(Climate Change Act)により、2050 年までに1990年比で温室効果ガス排出量を80%以上削減することを法的に定めている。

このような背景から、英国政府は2011年7月12日に「英国電力の将来計画:安定した低価 格の低炭素電源に対する白書」を公表し、低炭素電源支援を目的とした電力市場改革に着手した。

白書では、安全なエネルギーミックスを実現していくための政策を設定している。

エネルギー・気候変動省(DECC、現BEIS)は、白書で設定された政策を基に2012年5月 から法整備を開始し、2013年12月18日には2013年エネルギー法(Energy Act 2013)が成 立した。このエネルギー法では、発電施設と送電網の革新のために1,100億ポンドの投資を誘致 し、電力市場の改革(EMR:Electricity Market Reform)計画により、2020年までの再生可能 エネルギー化15%、2050年までの脱炭素化80%を達成し、同時に電力料金廉価安定化を目指す とされている。具体的には、

 低炭素発電電力の差金決済取引(CfD:Contracts for Difference)付き固定価格買取制度

(FiT:Feed-in Tariff)により投資を確保する

 CO2排出基準を制定し、新規石炭火力発電所に二酸化炭素回収・貯蔵システム(CCS)の 設置を義務付ける

 炭素最低価格(CPF:Carbon Price Floor)を設けて低炭素化を支える というものである。

CfDは、権利行使価格(strike price)と市場価格の差額を補償するもので、再生可能エネル ギーと共に、原子力やCCS付き火力も対象とする点に特色がある。常に一定の買取価格が保証 されるドイツや日本の固定買取価格制度とは異なり、卸売市場価格が権利行使価格を下回った 場合には発電業者にその差額が支払われるが、逆に上回った場合には発電業者が配電業者に支 払い、消費者に還元するという仕組みである。適用期間は、再生可能エネルギーに対しては 15 年となっている。

・クリーン成長戦略(Clean Growth Strategy)

2017年10月26日、英国政府は「クリーン成長戦略」(Clean Growth Strategy)を公表し た。この戦略は 2020 年代の英国経済の全てのセクターにおける脱炭素化に向けた提案であり、

気候変動に対する国際的な取り決めを遵守しながら、炭素排出量削減に係る取り組みを大きな 経済的チャンスと捉え、投資等を行っていくとしている。

クリーン成長戦略には、CO2削減対策なしの石炭火力発電からの 2025 年までの撤退、洋上

(オフショア)風力発電等の再生可能エネルギーへの更なる投資・開発の促進とあわせて、先進 的原子力技術開発への投資や、新たな原子力発電の提供が政策として盛り込まれている。

原子力の位置づけ

英国の原子力政策は、1954年に原子力公社法(Atomic Energy Authority Act)が制定された ことから始まる。本法に従い、同年、国家の原子力計画の責任を有する機関として、英国原子力 公社(UKAEA)が設立された。

その後、1990 年の電力民営化や競争導入という流れの中で、原子力エネルギーの重要性が低 下し、サイズウェル B原子力発電所を最後に原子炉建設は行われなくなった。しかし、北海油 田の枯渇や地球温暖化問題が叫ばれるようになった2000年代後半、政府は原子力開発の再開を 視野に入れたエネルギー政策の策定に取りかかり、英国における原子力開発が再開された。

英国政府が2008年1月に発表した「原子力発電に関する白書」(Nuclear White Paper 2008)

においては、気候変動とエネルギー保障対策の観点から、エネルギー利用を減らし再生可能エネ ルギーを増加させ、新エネルギー技術への投資を促進するとともに、原子力がエネルギー政策の 重要な一部と位置付けられた。また原子力開発や原子炉建設に関する一切の費用は事業者負担 によるとされた。

推進の姿勢は、2011年3月に起きた福島事故後も変わりはない。「英国電力の将来計画:安定 した低価格の低炭素電源に対する白書」(Planning our electric future: a white paper for secure, affordable and low-carbon energy)(2011年7月)においても、原子力発電は重要なエネルギ ーミックス手段の一つと見なされている。

2013年3月26日、ビジネス・イノベーション・技能省(BIS)(当時)とDECCは、エネル ギー戦略報告書「英国の原子力の将来」(The UK’s Nuclear Future)を発表した。原子力は、安 全で信頼性が高く、かつ利用しやすい価格で電気を供給するエネルギー源として期待されてお り、将来的に活気溢れる原子力産業を発展させていくために、政府と産業界は、明確なビジョン を示すこととした。また同報告書において「原子力は将来の英国のエネルギーミックスにおいて 重要な役割を果たす」との政府の期待が述べられるとともに、新規原子炉建設から廃棄物管理、

廃止措置、燃料サイクルサービス、運転管理等、原子力産業全体を概観する内容が含まれている。

具体的な政策としては、新しく原子力産業会議や機関(原子力革新研究顧問委員会と原子力革 新研究局)を設置し、それらの機関を通して研究開発と技術革新のより良い協調を図っていくこ と、また、原子力産業分野におけるコスト低減の適用範囲を調査するためのコスト低減イニシア チブを推進することなどが盛り込まれた。

なお同報告書は、英国のエネルギー産業戦略報告書の一部として発表されたものである。英国 政府は同国の将来を見据え、産業界と協力し、“原子力”の他に“洋上(オフショア)風力”と

“石油・ガス”の3種類についての産業戦略を策定している。

前述した2017年の「クリーン成長戦略」においても、原子力発電が触れられている。主要な 政策および提案の一部として、ヒンクリー・ポイント C原子力発電所による新たな原子力発電

の提供、建設事業者との協議により将来の計画の競争力を高めることが挙げられている。

また、「クリーン成長戦略」においては、原子力発電は安全性を確保しながらコストを低下さ せる必要があるとされている。そのためには、予定通りかつ予算通りの原子力発電所建設を可能 にするような技術革新が求められるとして、研究開発に4 億6,000 万ポンド規模の投資を行う としている。支援対象となる分野として、将来の核燃料、新たな原子力製造技術、(核燃料の)

リサイクルおよび再処理、先進炉設計等が挙げられている。

・原子力発電所の所有権に関する法的枠組み

英国内の重要なインフラへの海外からの投資に対する、新たな法的枠組みの導入を2016年9 月15日に英国政府は決定した。この新たな枠組みにより、将来におけるすべての原子力発電所 建設計画においては、英国政府が一定の株式を有することとなり、これにより政府の同意なしに 大量の株式が売却されることがなくなった。また原子力規制室(ONR)は原子力発電所の所有 権の変更についてすべて通知されることとなり、所有権の変更に関連する国家セキュリティを 保護するための行動を英国政府がONRに対して指示することが可能になった。

・新規原子力発電所における資金調達モデル

英国における新規原子力発電所建設計画のうち、先行するヒンクリー・ポイント C原子力発 電所に対しては、前述の差金決済取引(CfD)付き固定価格買取制度(FiT)による資金調達が 図られている。しかし、この制度は権利行使価格による電気料金の高騰を引き起こしかねないと の懸念が英国内に根強く存在する。

これを受け、2018年6月、英国政府は後続の新規原子力発電所建設計画に対して規制資産ベ ース(RAB:Regulated Asset Base)モデルの導入を勧告した。RABモデルでは、規制収入を 基に規制機関が企業の資産価値から安定収益率を算定することで、資金調達のリスクを最小化 し、事業の低コスト化および民間主体の資金調達を目指すとしている。

・原子力セクターディール(Nuclear Sector Deal)

2018年6月、英国政府と原子力産業界の間で原子力セクターディール(Nuclear Sector Deal)

が締結された。この協定においては、「原子力発電所の新規建設コストを 30%削減」「廃止措置

費用を20%削減」「原子力分野の女性従事者の割合を40%増やすこと」「国内外において2億ポ

ンドの契約獲得を目標としたサプライチェーンの強化」といった項目が2030年までの達成目標 として据えられている。

なお、この原子力セクターディールは、2017年にT.メイ(Theresa May)首相の就任を機に 策定された産業戦略(Industrial Strategy)の一環である。研究開発への戦略的な公的・民間投 資によって経済成長を果たすという目的の下、生産性を高めるため、アイデア・人材・インフラ ストラクチャー・ビジネス環境・地域という5要素に着目し、様々な政策を定めている。ビジネ ス環境に関する取り組みの一環として、政府と産業界の間で業種別に生産性向上を図るセクタ ーディール(Sector Deals)を結ぶとしており、原子力セクターディールもこの一環である。

原子炉開発等に関する動向

当初、英国の原子力計画はガス冷却炉の開発に注力していた。1956年、UKAEAによって商

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