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単層被覆壁面の実験結果

ドキュメント内 修 士 学 位 論 文 (ページ 58-66)

3 章

3. 実験結果および考察 1 予備実験結果

3.2 単層被覆壁面の実験結果

3.2.1 低濃度溶液を塗布した単層被覆壁面の結果

PVAを 5%の濃度で溶かした溶液に PEO を添加した,比較的濃度の低い溶液

での結果を図3.3に示す.図3.3の縦軸は管摩擦係数,横軸はRe数である.PVA のみの溶液を塗布したPVA-LはRe数1000以上の領域で被覆の無い壁面である N壁面より管摩擦係数が高い傾向があり,特にRe数が2000から4000,層流か ら乱流への遷移が起きていると考えられる領域において増加した.Re数が4000 以上の領域では通常の壁面とほぼ一致した.

一方,5%のPVA溶液に0.5%のPEOを添加したPEO-L溶液を被覆した壁面で は,Re数が2000から4000の領域でわずかにN壁面より管摩擦係数が低いこと が確認できる.つまり,PEO-L の溶液では遷移の遅れが生じている可能性があ る.Re数4000 以上の領域では,PVA-L同様に N壁面と大きな差異は認められ ない.

0.02 0.2

100 1000 10000

Pipe friction coefficient (-)

Re (-) N

PVA-L PEO-L

λ = 0.3164 × Re−14

λ = 1.353072 ×64 Re

Fig.3.3 Result of Low-concentration

3.2.2 高濃度溶液を塗布した単層被覆壁面の結果

PVA を 10%溶かした比較的濃度の高い溶液に PEO を添加した壁面での結果

を図3.4に示す.図3.4の縦軸は管摩擦係数,横軸は Re数である.高濃度の溶 液を用いた場合の結果は,おおよそ被覆のないN壁面と一致する結果となった.

PVAを10%溶かした溶液に,PEOを1%添加した混合液を被覆したPEO-H壁

面を被覆した場合,全体的に N 壁面と同様の挙動を示すが,遷移の生じる領域 ではわずかにN壁面と異なる挙動を示す.PEO-H壁面はこの領域でわずかに管 摩擦係数が低下し,遷移が遅れるような挙動を示しているが,これは先述の PEO-L壁面と同様の傾向である.Re 数が4000 以上の領域では N壁面と一致する点 も,PEO-L壁面と同様である.

PVAのみを11%溶解させた溶液を被覆したPVA-H壁面も,PEO-H,PEO-L壁

面と同様に,遷移の生じる領域で N 壁面と異なる挙動を示し,この領域でわず かに管摩擦係数がN 壁面と比較して低下する.Re 数 4000以上の領域でもわず かに管摩擦係数の低下が認められるが,この変化は微細である.これより, PVA-H壁面も,PEO-H,PEO-L壁面と同様に,遷移の生じる領域で N 壁面に対して わずかに管摩擦係数が減少し,Re数が 4000 以上となると N壁面と一致するこ とが分かる.PVA-H 壁面は抵抗低減効果の確認されているPEOを含まないにも かかわらず,本研究では抵抗低減効果を得られる結果となった.

0.02 0.2

100 1000 10000

Pipe friction coefficient (-)

Re (-) N

PVA-H PEO-H

λ = 1.353072 ×64 Re

λ = 0.3164 × Re−14

Fig.3.4 Result of High-concentration

3.2.3 抵抗低減率での評価

高分子被覆を行なった壁面での実験結果を,式3-2によって定義する抵抗低減 率(DR)で整理したものを図3.5に示す.DRの値が正をとると抵抗が減少してい ることを,負をとると抵抗が増加していることを示す.

先述の通り,PVA-H,PEO-H,PEO-Lに関しては遷移域においてわずかに管摩 擦係数が減少する傾向が確認されたが,図 3.5 からもその傾向が確認できる.

PVA-HとPEO-Lに関しては,Re数が2500から3000の領域でDRが高くなって いることが分かる.特にPVA-Hは10%ほど管摩擦係数が低下している.

PEO-Lに関しては PVA-H,PEO-Lとはやや管摩擦係数が低下する領域が異な

り,Re数が3500ほどでDRが最大の9%程度となっている.

管摩擦係数の低下が生じる領域は異なるものの,上記の3壁面については Re 数が 2000 以下の領域では DR が 0.05 以下であるものの,遷移の生じる領域で DRが高くなり,Re数が4000以上の領域では再びDRが0.05以内に収まる傾向 にあることは一致している.

遷移の生じる領域において N 壁面と挙動が変化した壁面では,その領域にお いて DR が急激に上昇している様子が確認できるが,遷移での挙動の変化が確 認できなかったPVA-Lに関しては,遷移の生じる領域でDRが低下している.

-0.2 -0.1 0 0.1 0.2

1000 2000 3000 4000 5000

DR(-)

Re (-)

PEO-L PVA-L PEO-H PVA-H

Fig.3.5 DR of Polymer coating

3.2.4 単層被覆の実験結果考察

今回の実験では,PVA のみを 5%溶かした溶液を被覆した PVA-L 以外は,遷 移の生じる領域で抵抗が低下する結果となった.一般的にToms効果による抵抗 低減はRe数が上がるほどその効果が大きくなるとされており,今回の実験結果 はこの傾向に反するものである.高分子被覆壁面で実験を行なった水沼らは図 3.6のように,遷移の生じる領域から Re数が 10000程度までの範囲で抵抗が低 減したものの,それ以上のRe数では抵抗低減効果がなくなるという結果を示し ている.1章で述べたように,高分子添加による抵抗低減は様々な要因による影 響を受けるため,流路寸法などが大きく異なる水沼らの研究と本研究の結果を 単純に比較することは出来ないが,遷移の生じる領域では抵抗低減効果を得ら れるものの,Re数が高くなるとその効果が失われる点は本研究と同様の傾向で ある.また,PVA-Hに関しては,抵抗低減効果が確認されていないPVAのみを 被覆しているにもにもかかわらず,遷移の生じる領域で抵抗が低下している.

これらのことから,単一濃度の高分子溶液を被覆した際に生じた,遷移の生じ る領域近辺での抵抗低減効果は,被覆にPEOが存在しなくても生じていること となる.Toms効果の原理である,高分子の持つ鎖が乱流の渦に作用することに よる抵抗低減効果を得るには,PEO の持つ高分子鎖が必要であると考えられた ため,本研究で得られた遷移域での抵抗低減は,高分子鎖の作用によるものでは ない可能性がある.

Fig.3.6 Frictional resistance for coated channel and a non-coated channel

ドキュメント内 修 士 学 位 論 文 (ページ 58-66)

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