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第6章 結論

付録 3. 3 ゲームの狙い

このゲームにはイベント参加者が抱える受容懸念の解消に向けて,2つの狙いを設定し た.1つ目は,プログラミングスキルに関係なく誰でも様々な能力や特技を持っており,

それらを組み合わせることで暮らしを良くするものを作り出せるという「自己効力感の向 上」である.自己効力感とはある行動を完遂できると認識している程度(Bandura,1977)の ことであり,これは,主に活動に参加することに不安を抱えていると思われる非術者の受 容懸念解消を狙ったものであり,自己効力感が高まり自分が活躍できるという思いが強く なることで,受容懸念が解消されると考え,設定した.また,このアイデアはChi hack

nightの幹部メンバーに向けて実施したインタビュー調査の中で,非技術者が自分の取り組 みを話す場を設けているという回答から,そうした取り組みによって非技術者は自己効力 感が向上し,積極的に参加するようになるのではないかという発想を得た.

また,2つ目は,参加者の多様性を生かすのがシビックテックの現場であるということ を参加者に認識してもらう「多様性受容の向上」である.これは,主に技術者が抱えてい る受容懸念の減少効果を想定しており,今回の調査における協働の価値についての自由記 述の回答にもあった通り技術者は「手段」で物事を考えてしまうことから,技術者が持つ ITスキルという課題解決の手段を持っていない非技術者を受け入れるのが難しいのではな いかと考え,ITに縛られず非技術者が持つ多様なスキルも課題解決に有効であるという気 づきを得ることで技術者の受容懸念を減少させられると想定してこの狙いを設定した.

そして,それぞれの狙いについて達成できているかどうかを,イベント後に実施した参 加者への質問紙調査で調査した.

付録 3.4 ゲームの概要と手順

スキル組み合わせゲームは,4人以上の「チーム」で取り組むゲームである.チームの 中で各メンバーのスキル(特技・能力・趣味)を組み合わせて,指定された目的を達成す るようなストーリーを作成し,より多くの点数を稼ぐことを目指す.今回はより多くの組 み合わせが生まれる状況を作るため,チームで達成する目的を「身の回りの人を幸せにす る」と設定した.点数については,参加者により多くのスキルを組み合わせることを意識 させるため,スキルの組み合わせによって点数を変え,スキル2つを組み合わせたストー リーが1点,以後組み合わされるスキルが増えるほど加点がされる。上限はチームのメン バー全員のスキル4つの組み合わせとなる3点とした.このゲームにおけるストーリーの 作成の例を示すと,「プログラミングができる」というスキルと「絵が得意」というスキ ルを組み合わせて「生活に役立つデザイン性の高いアプリ開発」というストーリーを作成 すれば1点,それに「山登りが好き」というスキルを組み合わせて「山登りの情報を提供 するデザイン性の高いアプリ開発」というストーリーを作成すれば2点ということにな る.

ゲームは以下の順番で実施した.1)自分のスキルを3分間でできるだけたくさん付箋紙 に書く(1つのスキルにつき付箋紙1枚),2)そのスキルを1分間で他のメンバーに紹介 する,3)主催者から参加者に向けてゲームの目的とルールを伝える,4)10分間でより多く のストーリーを作る,5)各チームの合計得点を発表する.

ルールは,1)各メンバーのスキルは,1つのストーリーで1度だけしか使えない,2)点 数はストーリーの内容ではなく,組み合わせ数のみで決まる,3)ストーリーを作る場面で スキルを追記してはいけない,の3つを設定した.1)のルールは,他人のスキルを使わな いと得点を増やせないという状況を作ることで,より多様性を認識できるようにするため

である.また,2)は内容よりも組み合わせるというプロセスを重要視してもらうため,3) は他人に影響されず,主体的にスキルを考えるためのルールである.

付録 3.5 ゲームの効果と課題

イベント参加者の属性としては20代の参加者が21人中11人と最も多く,次いで40代 が4人,30代が3人,50代が2人という構成だった.また参加者のシビックテック経験 に関しては,「活動への参加経験がない」と回答した人が過半数を超える11人と最も多 かった.技術者と非技術者の構成は技術者が8人,非技術者が13人であった.また参加 者のイベント参加目的は,シビックテックを知りたいという興味から参加した人と課題解 決の場を求めて参加した人が8人,実際に自分の抱える課題を解決したいという目的の人 が4人であった.

ゲーム実施後の質問紙調査の結果,自己効力感と多様性受容に対してゲームが一定の効 果を示したことが明らかになった.まず,自己効力感についてはイベント開始前に自分の スキルに自信がないと答えていた9人のうち,7人がゲーム実施後にシビックテックにお いて自分のスキルが活用できそうだと回答した.また,多様性受容に関してはイベント開 始前からほとんどの参加者が必要であると認識していたが,ゲーム実施後に16人が多様 性の重要性についてより強く認識したと回答した.

付録 3.6 ゲームから見えた新たな課題

ゲーム実施後に見つかった課題として,長期的な効果を示さなかったことが挙げられ る.ゲーム実施後には多くの参加者にシビックテックに対する自らの自己効力感と多様性 受容の向上が見られたが,イベント参加者の中で質問紙調査にて初参加と回答した人のう ち,翌月にCode for Kanazawaが開催したシビックハックナイトに参加した人は1人もいな かった.また,イベントで生まれたアイデアについて,イベントの最後に今後も継続して 開発したい人はCode for Kanazawaが運営しているオンラインの課題投稿型掲示板である Ha4go(https://kanazawa.ha4go.net/)に投稿するよう促したが,アイデアは1件も投稿され

図 17 ゲーム実施中の様子