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第5章 議論

5.1 仮説の検証結果

5.1.3 参加者の参加姿勢

次に,参加者の自律性向上の工夫をしているコミュニティは参加者が自ら率先して参加 しているという参加者の参加姿勢に関する仮説の検証結果について説明する.この項目に ついても前述した技術者と非技術者の依存関係と同様に,協働に影響しうる要素のまとま りが妥当ではないことが相関分析によって判明したため,因子分析によって作成した5つ の因子との関係性を分析によって明らかにした.なお,この項目については技術者と非技 術者という属性によって差が出ることを想定し,技術者・非技術者に分けて質問を作成し たため,それぞれについての検証結果を示す.

まず,技術者の参加姿勢に関しては協働に影響しうる要素から作成した各因子を独立変 数とした順序ロジスティック回帰分析の結果,それらの因子の中に技術者の参加姿勢に有 意な影響を与える要素を見出すことはできなかった.この結果から,本調査で想定してい た協働に影響しうる要素の中に技術者の参加姿勢に直接影響を及ぼす要素は含まれていな いことが示唆された.しかし,技術者の参加姿勢は非技術者の参加姿勢との間に非常に高 い相関があることから,非技術者の参加姿勢を高めることが技術者の参加姿勢向上につな がると考えられる.この考察を支持する結果として,技術者と非技術者の参加姿勢のクロ ス集計結果を表51に示す.表51を見ると,技術者の参加姿勢,もしくは非技術者の参加 姿勢のみが突出して高い,もしくは低いコミュニティはほとんど存在していないことが見 て取れる.

また,非技術者の参加姿勢に関しては,順序ロジスティック回帰分析とパス解析の結果 から,「協働のための場づくり」と「外部団体との関係とその強化」,そして「協力的な 関係性」が影響を与えていることが明らかとなった.この結果と5.1.1の協働に影響しう る要素同士の関係性,そして技術者の参加姿勢の分析結果を踏まえると,非技術者の参加 姿勢は協働の第1段階において「協働のための場づくり」と「外部との関係強化」が並行 して行われることで高まるとともに,第2段階で協働の関係性が高まる段階でも向上する こと,そして非技術者の参加姿勢が向上することによって技術者の参加姿勢も向上するこ とが示唆された.

表 51 技術者の参加姿勢と非技術者の参加姿勢のクロス集計結果

8 63 7 3 7 0

8 21

63 7 3 7 0

8

8

メンバーの参加姿勢に関して仮説で示したような結果が見られなかった理由として,ま ず技術者の参加姿勢については,技術者メンバーに関する今回の質問紙調査での結果と過 去に実施された質問紙調査の結果から考察する.まず,今回の調査結果については分析に は使用しなかった質問項目である,「技術者・非技術者メンバーの参加目的」を「人間関 係構築・課題解決・スキルアップ」から1つ選択してもらうという質問項目の結果を表52 に示す.表52を見ると全体の56%にあたる20人の回答者が技術者の参加目的について

「課題解決」と答えた.また,協働の価値に関する自由記述でも多くの回答者が「非技術 者が参加することで課題が見える」と回答していること,白川(2018)が実施したシビック テックコミュニティに向けた質問紙調査によって明らかになった,シビックテック参加者 の平均年齢は30代中盤以降であることなどを踏まえると.シビックテックコミュニティ の技術者メンバーは多くが開発スキルを有する30代以降の年齢層であり,スキルアップ などの自分の利益ではなく,どちらかというと社会貢献や地域貢献につながるような「課 題解決」を目的に参加していること,そして技術者が求める課題は非技術者が持っている ということが想像できる.このように考えると,シビックテックにおける技術者の活動へ のモチベーションは非技術者が提供する課題に依存するため,技術者自身の成功体験づく りや自律的参加促進,参加しやすさの向上などの自律性を高める工夫ではなく,非技術者 の参加姿勢を高めることが技術者の参加姿勢向上につながると考えられる.

また,非技術者の参加姿勢については技術者とは反対に,予想していたような自律性向 上の工夫だけではなく,両者の関係性や協働のための場づくりの工夫,そして外部団体と の関係性などの多くの要素が関係していることが判明した.その理由として考えられるの は,非技術者が抱えている「不安」である.本論文の付録に記載している,本研究の一環 として筆者が所属する研究室が主催したシビックハックナイトにおいて,参加した非技術 者の多くがシビックテックにおいて自らのスキルが活用できるのかどうかについて不安を 抱えていた.シビックテックは市民が自ら課題解決を行うという活動の性質や「テック」

という名前が使われていることなどから,非技術者にとっての活動参加に至るまでのハー ドルが高い活動であると考えられる.

また,そうした状況においても,表52に示す参加目的についての質問で非技術者に関 する回答を見ると,技術者を超える29コミュニティが「課題解決」と回答していること から,シビックテックに参加する非技術者は課題解決を目的としているものの参加するこ

表 52 技術者・非技術者の参加目的

とに不安を抱えているため,協働の場が存在して技術者と協働できる環境ができているこ とや,技術者との間に協力的な関係ができていることによってそうした不安が取り除かれ 参加姿勢が向上するという関係性になっていると考えられる.また,「外部団体との関係 性やその強化」との関係については解釈が少々難しいが,協働の価値に対する認識につい ての自由記述の回答の中に「外部のNPOから非技術者メンバーが参加している」や「非 技術者が参加することで外からの視点が手に入る」といったような,非技術者メンバーを コミュニティの外の人間とみなしていると解釈できる回答がいくつか見られたことから考 えると,本調査における回答者が,本来コミュニティのメンバーでない外部団体からの参 加者を「非技術者メンバー」とみなしている可能性が考えられる.実際にシビックテック コミュニティはお金を得るような場ではないため、どこからがコミュニティのメンバーで どこからが外部団体からの参加者なのかという線引きが難しい.上記を踏まえると,この 結果については,原因解明に向けて今後慎重に調べていく必要があると考えられる.