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テキスト解析による協働の認識と成果物の関係の分析

第4章 研究結果

4.4 アプリケーション開発数による協働の価値測定の検討

4.4.2 協働がもたらす価値についての再検討

4.4.2.2 テキスト解析による協働の認識と成果物の関係の分析

上記のクラスター分析と群間の比較の結果を踏まえ,成果物と依存関係によって別れた 3群について,各群の協働に対する認識の違いを明らかにするため,テキスト解析による 協働の価値の認識についての比較を行った.

分析対象とする文章は今回の質問紙調査の中で聞いた「協働ができることにより生まれ る価値は何か」という自由記述の回答結果を用い,解析にはユーザーローカルテキストマ イニングツール(https://textmining.userlocal.jp/)を用いて群ごとにワードクラウドを作成す ることによる視覚的な比較と,ワードクラウドにおいて特徴的と判定された単語がどうい った文脈で使用されているのかについての実際の文章の参照によって分析する.各群の文 章から作成したワードクラウドを下記に示す.なお,本研究で用いた「ワードクラウド」

は文章中に出現する単語の中から特徴的な単語を選び出し図示する手法であり,単語の大 きさはどれだけ特徴的であるかを表している.また色は品詞の違いを示しており,青が名 刺,赤が動詞,緑が形容詞を表している.

図10〜12の各特徴語を比較すると,クラスター2のワードクラフトを表す図11,クラ スター4のワードクラフトを表す図12は「地域課題」や「技術者」といった言葉が中心に

図 10 クラスター1のワードクラフト(n=5)

図 11 クラスター2のワードクラフト(n=10)

図 12 クラスター4のワードクラフト(n=4)

大きく現れている.またその中でも協働が進んでいるクラスター4はクラスター2やクラ スター3と比べると「地域課題」が大きく,「短縮」や「スピード」「サービス」といっ た実務的な言葉が見える.しかし一方で,クラスター1は他のクラスターにはない「コン サルフェーズ」や「クオリティ」,「アウトプット」といったアプリケーションの開発を イメージできるような言葉が多く見える.

次に,各クラスターに属する回答者の協働に対する認識についての理解と群間の違いを より明確にするため,実際の自由記述回答の一部をクラスターごとにまとめたものを表46 に示す.

表46を見ると,アプリケーション開発数が多く協働の認識は低いクラスター1は,技術 者と非技術者の持つ「スキル」が組み合わさることで効率や成果物の質が上がるという回 答が多く見られた.

それに対して,アプリケーション開発数が少なく,協働ができているという認識が低い クラスター2は,技術者と非技術者が持つ異なる価値観や対話を重要視した回答が多かっ たこと,そして「課題の当事者である非技術者」のようにスキルを持つ人間ではなく,課 題の当事者と捉える書き方をしている回答が多く見られた.さらに,図11のワードクラ フトを見てもわかる通り,「と思う」や「と考える」,「が大切」と言ったような書き方 をしているケースが多く見られたことから,多くの回答者が協働の価値を認識していなが らも実際にはまだ実現できていない,もしくは協働によって起こる具体的な効果ではなく 信条として重要視している状況にあることが示唆された.

また,協働ができておりアプリケーション開発数が少ないクラスター4は,クラスター2 と同様に多様な視点が活動に取り入れられることや地域課題にアプローチできることの重 要性に関する記述が多く見られた.また,このクラスターの回答はクラスター2の回答と

表 46 各群の自由記述文章

I T

は異なり「協働によって技術者が誰も使わないアプリケーションを自己満足で作らないよ うになれる」という実際に技術者に起きる変化や「予算的な問題や解決までのスピードが 上がる」といった実際に現場で見られる効果に関する記述,そして「〜になる」「〜がで きる」といった言い切った形の表現が多く見られた.上記を踏まえると,クラスター4は クラスター2と同様に非技術者を技術者とは異なる視点を持つ存在や課題の当事者と捉え ており,かつ技術者と非技術者の協働が実際に実現しており,現場で起きている事実や事 実に基づいた考察を元に回答を記述していることが示唆された.

4.4.3技術者の比率とアプリケーション開発数に着目した分析

上記のテキスト分析によって,アプリケーション開発数が多いクラスター1と他の群に よって協働の価値に対する認識に違いがあることが明らかになった.上記の結果を踏ま え,そうした違い生まれる原因について明らかにするためにクラスター1とその他の群の 違いについてより詳細な分析を行うことを目的として,コミュニティに所属する技術者の

比率が30%以下の「非技術者多数群」,40%-60%の「均等群」,70%以上の「技術者多数

群」に分類し,それぞれの群が集中するクラスターの有無を調べた結果,クラスター1は 他のクラスターと比較して非技術者多数群の比率が高いことが判明した.技術者の比率に よって分類した3群のクラスターごとの分布を表47に示す.

表47から,4つのクラスターを比較すると,クラスター2から4は各群のクラスターご との分布が均等もしくは人数比均等群が多いという状況であるのに対し,クラスター1の み非技術者多数群が全体の8割を占めていた.上記の結果から,技術者の比率によってア プリケーションの開発数に差が出る可能性が示された.

そこで,技術者の比率によってアプリケーションの開発数に差が出るのかについて明ら かにするため,3群に対してKruskal-Wallis検定と多重比較を行うことで,群間で成果物の 数に差があるのか調べた.なお,多重比較にはTukeyの手法を用いた.また,上記の調査 で差が見られた場合,成果物が多い群をさらに成果物を多く生み出している「成果物多数 群」と生み出していない「成果物少数群」に分け,U検定を行うことで,協働に影響する 要素に差が見られるかどうかを明らかにすることとした.

表 47 技術者の比率によって分類した3群のクラスターごとの分布

Kruskal-Wallis検定に関して,各群の単純集計結果を表48に,多重比較の結果を表49に 示す.有意水準5%で検定をした結果,成果物の数は3群間で有意傾向(p=0.058)がある ことがわかった.さらに,多重比較の結果,非技術者多数群は均等群と比較して成果物の 数に有意傾向(p=0.051)があることが明らかになった.また,技術者多数群は他の2群と比 較して有意傾向が見られなかった.

次に,他の群と比較して成果物が多かった非技術者多を,成果物の数が同群の平均値であ る2.14以下(つまり,2以下)の「成果物少数群」に属する9組織と,2.14以上(つま り,3以上)の「成果物多数群」に属する5組織に分け,U検定を行なった.調査の結 果,p値が0.10以下の有意傾向が見られたものを表50に示す. 表50を見ると,成果物 多数群が少数群に比べて外部団体との良好な関係,非技術者が成功体験を得られる支援,

個人向けの報酬や報償が高い傾向にあることがわかる.

上記の結果から,半年以上運用するアプリケーションをより多く開発しているコミュニ ティは非技術者の比率が高いことに加え,外部団体との良好な関係があり,メンバーが成 功体験を得られる支援と個人向けの報酬や報償の提供をしていることが明らかになった.

表 48 人数比別の成果物数の違い

表 49 人数比別の多重比較結果

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表 50 成果物別の協働に影響する要素の違い