A.北米展開の各要素
(1)CD販売
CD をリリースする方法は、
1.北米レーベルとライセンス契約を結び、そのレーベルからリリースする。
2.北米レーベルとレコーディング契約を結び、そのレーベルからリリースする。
3.北米で CD をプレスして、自主製作盤としてリリースする。
4.国内盤 CD の輸出。
の 4 つがある。
1.、2.の場合では、より大きなレーベルと契約してリリースするというのが最終目標である と思われるが、これを実現するには北米ですでに活躍している必要がある。初期の段階では小 さな、あるジャンルに特化したレーベルとライセンス契約してリリースするというのが現実的 である。
3.の場合、プレス自体は北米のプレス業者に発注すれば対応可能だが、流通ルートに乗せる には北米のディストリビューターと契約する必要がある。ただし、ある程度のタイトル数(10 タイトル以上)がないと契約出来ない場合が多いので、すでに北米のディストリビューターと 契約しているレーベルと販売委託契約を交わし、そのレーベルから販売してもらうという方法 が現実的である。
4.の場合は国内盤がそのまま北米で流通している場合が多く、北米でのアルバムの販売価格 が 30 ドルから 50 ドル近くになりかなりの高額である(通常の北米アーティストのアルバムが 10 ドルから 15 ドル)。プレスコスト、送料を考えると 3.のパターンを採用するほうが得策で ある。
(2)音楽配信
北米には、近年流行している iTunes Store をはじめ、楽曲のダウンロード販売サイトが数 多くある。販売シェアは、iTunes Store が 70%以上を占め、Rhapsody、Napster のほか、イン ディーズ専門の eMusic などがある。ダウンロードサイトの売上は、CD セールスの 10%以上を 占めるに至り、その比率は年々上昇している。iTunes Store は、CD 販売店別チャートにおい ても、2006 年には 4 位に入り(1 位 WAL-MART)、タワーレコードを追い抜いた。(その後タワー レコードは 2006 年 8 月に連邦破産法 11 条の適用を申請)。販売だけでなく、プロモーション ツールとしても効果が大きく、積極的に活用したい。
<主な音楽配信サイト>
・iTunes Store - http://www.apple.com/itunes/store/
アップルが運営する世界最大の音楽ダウンロードサービス。2003 年 4 月にサービス開始。現 在では映画、ドラマ、プロモーションビデオなどの映像ダウンロードやゲームのダウンロー ドもサービスしている。2006 年 9 月現在で 350 万曲以上の曲が発売されている。
・Rhapsody - http://www.real.com/rhapsody/
リアルネットワークスが運営する音楽ダウンロードサービス。定額制のPCでの聴き放題サ ービスと携帯オーディオプレイヤーにダウンロードし曲を持ち運べる「Rhapsody To Go」と いうサービスがある。1 曲購買も可。2001 年 12 月にサービス開始。
・Napster - http://www.napster.com/
定額制のPCでの聴き放題サービスと携帯オーディオプレイヤーにダウンロードし曲を持ち 運べる「Napster To Go」というサービスがある。1 曲購買も可。2003 年 10 月にサービス開 始。
・eMusic - http://www.emusic.com/
DRM(digital rights management)無しの MP3 音源を配信。あらゆる携帯オーディオプレイヤ ーへの転送が可能。インディーズ楽曲がメイン。1995 年 3 月にサービス開始。
・URGE - http://www.urge.com/
MTV とマイクロソフトが共同で立ち上げた音楽ダウンロードサービス。2006 年 5 月にサービ ス開始。
(3)ライブ/マーチャンダイジング
インタビューした業界関係者が皆、口を揃えて言うのは「アメリカで成功する為には、ライ ブをこなした回数が重要」という事である。現地でメディアにピックアップしてもらうために は、現地でファンを作る必要があり、口コミや話題が広まる事により、メディア関係者が興味 を示し、取材などを受ける可能性も出てくる。
ツアーでは以下の点が重要となる:
・ MC で CD/ライブの告知。
・ 入場エリア近くにメーリングリストのフォームを設置し、メールアドレスを集める。
・ ライブ終了後に客と話し、仲良くなる。必ず連絡先を交換し、その後も連絡を繋げておく。
・ 物販で CD 以外のグッズ(T シャツなど)を用意する。
・ 無料で配れるグッズを多数用意(ステッカーなど)。ステッカーはライブハウスや町中に 貼っておく。
「英語を話せない/英語が下手」は不利だが、有利な材料にもなり得る。アメリカ人には日 本なまりの英語を「かわいい/面白い」と思っている場合も多く、曲の合間のトーク(MC)で 一生懸命に英語を話していると観客がアーティストを気に入ってくれる可能性もある。MC は重 要であり、音楽だけでなくバンドを知ってもらう事によってファンが増えるきっかけとなる。
現地の人気バンドとの対バンが実現できるのであれば、プロモーションには最適である。こ れにより「日本バンドを見たい客層」と「現地バンドのファン」というふたつのファン層にラ イブを見てもらえるため、効果的である。また対バンしたバンドとのネットワーク構築も重要 となる。
(4)音楽出版
北米で作家の著作権使用料を徴収するには、北米の音楽出版社に楽曲を管理してもらう必要 がある。日本の音楽出版社と全世界契約している場合は、その音楽出版社が楽曲について北米 の音楽出版社を下請出版社(サブパブリッシャー)として契約する。日本の JASRAC などにあ たる著作権管理団体が北米にもあり、著作権使用料を徴収して音楽出版社や作家に分配してい る。
北米は CD や DVD などの録音物に対する録音権使用料(メカニカル・ロイヤリティ)を徴収
/分配する団体とライブの演奏やテレビ、ラジオなどの放送に対する演奏権使用料(パフォー ミング・ロイヤリティ)を徴収/分配する団体が、日本とは違い分かれている。
・ 録音権管理団体 ‒ Harry Fox Agency (HFA)
・ 演奏権管理団体 ‒ ASCAP、SESAC、BMI
日本の JASRAC が管理する楽曲に関しては、上記それぞれの管理団体と契約しているので、
日本の音楽出版社から北米での使用を JASRAC に申請していれば、それぞれの管理団体から規 定の著作権使用料を徴収してもらう事は可能である。ただし、テレビ番組や映画などの映像作 品で曲を使用する際の使用許諾(シンクロナイゼーション・ライセンス)に関しては、音楽出 版社との個別交渉となるので、現地にサブパブリッシャーがあるほうが好ましい。
※ HFA の録音権使用料(メカニカル・ロイヤリティ)(2007 年現在、数年ごとにアップする)
5 分未満の曲 9.1 セント($0.091)
5 分以上の曲 1 分毎に 1.75 セント($0.0175)
http://harryfox.com/public/licenseeRateCurrent.jsp
(5)パブリシティ
バンド/アーティストは、MySpace ページ(アメリカ最大の SNS)を持っている事が必須条件 である。MySpace は既存のオンラインプロモーションで最も有効な手口であり、しかも無料サ ービスのため、使用しない手はない。ページに無料視聴の楽曲をアップするのも重要。ファン はページ内で音楽が視聴出来ないとあまり注目してくれない。
MySpace の有利な点は、アメリカ中のユーザーに以下のアプローチができる点。
1) 音楽を視聴してもらえる
2) バンドを知ってもらえる(プロフィール/ディスコグラフィーなど)
3) バンドのイベント告知ができる
4) バンド関連の最新ニュースを読んでもらえる
現地で人気が出始めたら優秀なパブリシストを雇用し、プロモーションを任せるのも有効。音 楽パブリシストは通常、以下サービスを実施する。
1) 大学ラジオ局へ音源の配布
・ アメリカでは大学の学生ラジオ局からヒットが生まれる事が多く、この客層をつかまないと 大ヒットは生まれない。全国に 300 局以上の学生ラジオ局が存在し、これらの局にプロモー ションをして、曲をオンエアしてもらうことにより「音楽の No.1 ヘビーバイヤー」である大 学生の層に直接的なアピールが可能。また、こうしたラジオ局の音楽ディレクターは数年後 には業界入りし、プロモーターやイベンターとなる(もしくは関わる)可能性が非常に高い 為、有効なネットワーキングともなる。
2) 紙面/オンラインメディアの音楽ディレクターへ音源の配布
・ アメリカは広大な国である為、様々な州の紙面やオンライン音楽情報/レビューサイトで取 り上げてもらう事が重要。パブリシストは、各種メディアのディレクターや編集長に直接資 料を送ってくれるので(通常、この連絡先は公開されていない)、有効かつ迅速にプロモーシ ョンがおこなえる。オンラインサイトにも送ることにより「サーチエンジンで検索してひっ
かかる」可能性が高まり、またブログや BBS などの情報源にピックアップされ口コミで広が る可能性も高まる。
・ ツアーなどでアメリカ公演がある場合には、その時期や場所に適した告知を行う必要がある が、パブリシストに依頼する事により、有効なプロモーションが行える。現地周辺でポスタ ーを貼ったりチラシを配布したり、その月の音楽雑誌でライブの告知や CD のレビューを書い てもらったり、ライブ後にライブレポートを書いてもらったりといった活動が、次回のライ ブへの布石ともなる。
効果的、かつ費用のあまりかからない方法として「Street Team」を募って、彼(彼女)らにPR してもらうという方法もある。「my space」などでartist pageを持っていれば、そこで公募して、
希望者がいればフライヤーなどを送ってその人の通う大学、地域のCD Shop、服屋などでフライ ヤーを配布してもらう。その代わりに、ライブ時にゲストとして招待したり、バッジなどを送付 したりする。ビジネスという形ではなく、サポーターとして良い関係を築く事で成立するもの。
(6)上記に関わる日本企業の実績(CD販売枚数や公演実績など)
80 年代にLOUDNESSが米アトランティックと契約、長期間全米ヒットチャートにインし、全米 ツアーも大成功。メジャーレーベルとの契約が成立し、アルバムも 50 万枚以上売れたという 実績を作った。90 年代には、Pizzicato Fiveが米マタドールからリリースし 20 万枚を記録、
少年ナイフ、Hi-STANDARDやギターウルフ、Corneliusといったバンドが北米インディーズレー ベルと契約し、ライブ活動と共に日本のバンドを北米に知らしめた。2000 年に入り、PUFFY (PUFFY AmiYumi)がケーブルTVカートゥンネットワーク158でのアニメキャラクターとの連動で 大人気となり、ツアーも盛況を博した。SONY系列の「TOFU RECORDS」からリリースしている。
他にTOFU RECORDSからリリースしている「POLYSICS」も、精力的に北米でライブを行っている。
また「和」を強調した「鼓動(KODO)」なども毎年欧州・米国を交互にツアーしており、その数 も相当なものになるだけでなく、CDセールスもコンスタンスに相当数売れている。DJでは、90 年代の代表的な海外成功例として「DJ Honda」が挙げられる。彼も 20 万枚以上のセールを記 録している。他「DJ Krush」もCD発売国が 30 ヶ国を超え、日本、欧州、米国とほぼ同等のセ ールスがある。2006 年にもSXSW Japan Niteが 10 周年を迎え「PEʼZ」や「ELLEGARDEN」が参 加、その後のJapan Nite Tourは 9 都市 9 公演を行った。
また、2006 年は「Dir en grey」の年だった。すでにヨーロッパでは大きなフェスティバル に出演する実力があり、北米進出も果たした。3 月のSXSW出演時にも、業界関係者の注目度No.1
158 Cartoon Network。アメリカのアニメ専門チャンネル