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 〈体験活動〉・主題化された生活形

@ (社会的琶界〉・課題意識に基づく活動

搖Jかれた自己解釈

@ (主観的世界)

(w)

C実践化

      〈生活世界〉

i背景知)       日常の生活体験

図4−1 メディアとしての「体験活動」を生かした道徳教育の構想

 図4−1は、学校教育の中で行われる道徳教育が、常に生徒のく生活世界〉を認識の基盤 としていることを示す。〈生活世界〉は、基本的には家庭・地域における日常生活の場で ある。この日常の体験は、恣意的・無意図的な体験も含みこんでいるため、ここでの体験 が道徳学習に生かされる可能性は偶然性に依拠する。また、〈生活世界〉が意味基盤とし ての機能を果たしていない場合もある。この場合、図4−1中の(1)のプロセスにおけるく 道徳の時間A>は、背景に退いていたく生活世界〉の生活形式を主題化するという機能を

果たす。

 この生活形式の主題化は、価値や規範にかかわる社:会的世界を問い直すことである。し たがって、〈体験活動〉は社会的世界の構成として、道徳の時間との関連が図られること になる。〈体験活動〉との関連においてく道徳の時間A>は、メディアとしてのく体験活 動〉に対して社会的世界の秩序の(価値・規範にかかわる)「表象」を行うことになる。そ

して、生活形式の「表象」をく体験活動〉における生徒の課題意識へと転移させるために、

実践的ディスクルスに基づく生活形式の意味の妥当性をめぐる話し合い活動を行うのであ る。この話し合いによって「合意」された生活形式の意味が、〈体験活動〉における生徒

個々人の課題意識を明確にしていく基準となる。

 図4−1中の(H)におけるく体験活動〉は、<道徳の時間A>において形成された課題意 識の妥当性を解釈する場としてのメディアである。このく体験活動〉において、生徒はく 生活世界〉のある生活形式に意識的にかかわることになる。その際,他者や自然および事 物との相互行為において意味の生成が起こり、<道徳の時間A>において行った合意の内 容や自己の解釈との間に差異が生じてくる。この差異こそが生徒一人ひとりの意味認識の 基盤である。また、この差異は、自己が道徳的なものの見方や考え方を変化させ、社会性 や道徳性を身につけて自己形成するために必要不可欠のものなのである。しかしながら、

この自己解釈は、個人の枠に留まっていては自覚的な認識にはなりえない。自覚に至るた めには、再:び他者との共同の発話行為を必要とする。そこで、学習は図4−1中の(皿)へ移

る。

 <道徳の時間B>は、〈体験活動〉において生成した「新たな意味」を反省的(客観化 的)に思考する実践的ディスクルス(討議)の過程である。この過程でそれぞれが異なっ た感じ方・見方・考え方をもっていることを尊重し合いながら「新たな意味」の妥当性を 吟味し、共有できる規範や価値の意味を再構成していくのである。さらに、このく道徳の 時間B>における規範・価値の意昧の合意は、生活世界の意味の再構成(合理化)と自己 の経験の再構成であり、実践化への契機になる(図4−1中の(IV))。この一連の合意形成と いう「手続き」を経て行われる、「体験活動」を生かした自己と生活世界の意味の再構成の 過程を、社会化による個性化をめざす道徳教育として構想した。なお、〈道徳の時間A・

B>およびく体験活動〉で行われる主な学習活動と内容を表4・3に示す。

 このように自明とされる生活世界の妥当性を問い、生活世界の合理性の程度を論じると いうハーバーマスの生活世界の概念は、自明なものが抑圧機能(権力作用)を果たすメカ ニズムに対して、それを問題視しうるということを意饗している(3)。つまり、自明とされ ている事柄の妥当性を問うことで、道徳学習における価値:の押し付けを排除し、生徒が相 互主体的に規範の妥当性を吟味したり、価値が大切だとされる理由を考えたりすることに つながるのである。同様の機能がメディアとしてのく体験活動〉にも内在している。

価値や規範についての見方や考え方は、具体的な行為状況においては最終的に諸個人にゆ だねられるが、社会の中においては共有された(合意された)意味に基づいたものである。

共有されたある意味があるからこそ、その意味とは「ズレ」のある考え方や見方が生じ個 人の「価値観」が形成されるのと思われる。

表4−3 コミュニケーション的行為の理論に基づく「体験活動」を生かした道徳教育の概要

解釈の

vロセス 機能 内 容

・主観的、恣意的、無意図的な活動(意味基盤としての役割を喪 生活世界 認識の基盤 失している可能性がある)。

1 ・「手伝いユ、「遊び」などが主な活動。

道徳の時間A

合意形成

i意識化)

・生活世界の自明性を問い直す。

E生活世界のある生活形式が意識化される。

E資料を媒介とした実践的ディスクルスを行う。

・「体験活動」における学習課題の意識化を図る。

11 行為状況の ・意識的な現実社会とのかかわりにおいてある役割を担う(異質 構成 な他者との出会い)…社会的世界の基盤。

「体験活動」 (自己解釈) ・主観的ではあるが、リアリティを伴う具体的な意味認識の基盤

が成立(具体化・差異化)…主観的世界の基聲 認識の基盤 ・開かれた解釈と新たな意味の生成の揚。

合意形成 ・「体験活動」において生じた新たな意味に基づいて経験の意味

(反省化)謄

の再構成が行われる。

道徳の時間B ・資料を媒介とした実践的ディスクルスを行う。

(実践化)

・実践化への契機となる。

w

生活世界 実践

∠揄サ

・規範に導かれた行為カミ可能となるが、実際の道徳的判断は本人 ノゆだねられる。

2 了解を志向した道徳学習の基本モデル

(「)実践的ディスクルスに基づく道徳学習展開モデル

 道徳の時間に行う学習は、ハーバーマスの「実践的ディスクルス(討議)」の理論を基に 構想する。実践的ディスクルスとは、自明化された生活世界におけるコミュニケーション 的行為に何らかの葛藤状況が生じたとき、各人の支持する命題や規範および主観的体験の うちどれが最も妥当であるかに関して議論するために設定される手続き(形式)である。

道徳教育においては、特に社会的世界にかかわる規範や主観的世界にかかわる社会化の問 題が主題化されることになる。その主題化された規範によって利害が生じるすべての関係 者が、この実践的ディスクルスへの参加者であり、その人たちのすべてが同意しうるよう な規範が、より普遍的・合理的な規範として妥当性を承認されるのである。その際、実践 的ディスクルスにおいて「討議原則D」と「普遍化原則U」2つの原則がともに充足される

とき、規範は妥当なものとみなされうる。

D)各々の妥当性を有する規範が当事者すべての一致を見るのは、当事者すべてがもつぱ  ら実践的ディスクルスに参加できる場合である(4)。

U)すべての妥当な規範は、各々の個々人の利害を充足させるためにその規範に普遍的に  従うことから生ずると予期される結果や副次的効果が、あらゆる当事者によって強制  なく受け入れられうるという条件を満足しなければならない(5)。

 このような実践的ディスクルスの原則は、「体験活動」における生徒の多様な解釈を生か す上でも道徳学習の前提になると考えられる。そこで道徳の時間に取り扱う資料について は、以下の6点に留意して選択・活用する。また、道徳の時間におけるある行為の妥当性

を吟味する生徒の学習活動を表4−4のように構想した。

〈道徳の資料に関する留意点〉

①現実の社会的な諸課題を内容とする資料や題材に取り入れる。

② 「体験活動」でのさまざまな事物や人々とのかかわりを生かした資料・題材を用い

  る。

価値や規範の意味を多様に解釈できるような資料・題材を用いる。

オープンエンドの資料、クローーズドエンドの資料のどちらも用いる。

共感的・批判的・感動的・範例的活用類型として従来区別されてきた資料の活用類 型のいずれも用いる。ディスクルスはいずれの資料にも適用できる。

道徳の時間Aおよび道徳の時間Bにおいて資料内容・主題に差異を設ける。

表4−4 実践的ディスクルスに基づく学習展開モデル(「体験活動」を生かす場合)

資料 内容

道徳の時間A

i)生活世界に関わる状況から葛藤状況を浮かび  上がらせる。

 ・「体験活動」において予想される行為の葛藤   状況を提示する。(道徳資料など)

五)葛藤状況の解決に向けて、とりうる行為(規  範)を挙げる。複数でも1つでも構わない。

亜)五で挙げられた行為(規範)の結果を予想・

 把握する。

iv)五・鐵で挙げた行為(規範〉やその結果につ  いて、なぜそれが妥当だと考えられるのかを根

拠に基づいて議論する(合意形成)。

 ・発書に際しては、理曲を述べる。

 ・各意見に対して、賛成(納得できる)、反対   (納得できない)、保留いずれかの態度を決   標しながら議論を行う。

 ・態度は変更可能であるが、その際変更の理曲   を明らかにする。

v)抄の議論を基に各人が最も納得のいく行為  (規範)を決定する。

 ・決定した根拠を(理由)明らかにする。

 ・決定した行為(規範)は「体験活動」へ向け   ての各自の課題意識に関連づけられる。

○全員が共通して体験する価値・規範に基づく行  為状況

道徳の時間B

i)「体験活動」において生じた具体的な葛藤 状況を浮かび上がらせる。

 ・生徒の具体的な葛藤状況に即した道徳資料   や生徒の感想文などによって提示する。

h)葛藤状況の解決に向けて、各自の体験に基  づいてとりうる行為(規範)を挙げる。

 ・道徳の時間Aにおいて決定した行為(規範)

  およびその理由との相違も明らかにする。

童)hで挙げた行為(規範)について、なぜそ  れが妥当だと考えられるのかを根拠に基づ

 いて議論する(合意形成〉。

 ・議論の際の留意点はAに同じ。

 ・差異ある体験の中から共有できる経験の意   味を見出してく。

 ・自己の体験を表出しやすいよう学習活動を   工澄する。

v)短の議論を基に各人が最も納得のいく行為  (規範)を決定する。

 ・「体験活動」の前後で決定した行為(規範)

  に変化があったかどうかを理由とともに   明らかにする。

 ・決定した行為(規範)の意味は、新たな自   己の生活世界に関連づけられる。

○直接体験に類似した行為状況

○個別的、具体的な行為状況

(2)実践的ディスクルス成立への手立て

 実践的ディスクルスが可能になるためには、脱慣習的レベルの世界のパースペクティヴ を獲得し、相互行為が論証的談話の形態に達する必要がある。しかし、授業実践の対象は 中学生であり、脱慣習的段階への移行は現実的にはかなり困難であると思われる。まず、

ハーバーマスによって慣習的レベルへの移行のための条件として示されたことを再度確認

しておく。

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