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第 5 章

5.3 モデル:加算ノイズを伴った乗算的確率過程

5.3.1 初期状態と成長過程

初期状態として,各サイト51の人口を 100 人52とした.この初期人口から乗算ノイズ )

(t

bi と加算ノイズ fi(t)の影響を受けながら,各々のサイトが成長していくのである.

図5.3は,47サイトの成長過程の1例である.横軸は時間,縦軸は人口サイズxを表 している.2×106時間あたりまでは,どんぐりの背比べのような感じで,大きいサイトと小 さいサイトに大きな差はなく順位の変動も激しいが,4×106,6×106 と時間が経つにつ れて大きくなるものと小さいままのものとの差が,明確に現れてくる.一度大きくなる軌 道に乗ったサイトは,その他の多数のサイトの数十倍にも成長する.しかし,長い時間 軸で見ると,このように一度大きくなったサイトも,やがては衰退してその他大勢の中 に紛れ込み,別のサイトが大きくなっていく.まさに栄枯盛衰である.このように,どの サイトが成長し衰退するかは予測できないが,全体のサイズ分布は,定常分布に収 束していくのである.

51 サイトとは,自治体のことを指す.以後,都道府県と市町村を区別なく呼ぶときに用 いる.

52 100人という人数に,特に意味はない.すべてのサイトの初期値を同じにすること で,平等なスタートラインから格差が生まれていく様子を観察することに意味がある.

図5.3 各サイトの人口成長過程

図5.4は,成長の初期段階での順位変動である.図5.3の①の時間範囲(106から 100時間)での順位変動を可視化したものである.横軸は時間,縦軸は順位(上から1 位,2 位,・・・47 位)を表している.この図から,時々刻々と順位変動がおきており,し かも変動規模が大きいことが見てとれる.これに対し,図 5.5 は,定常状態以後の順 位変動である.図 5.4と同様に,図5.3の②の時間範囲(6×106から100 時間)での 順位変動を可視化したものである.順位変動は少なく,その変動も順位が 1 つ入れ 替わるくらいで,小さい変動である.さらに,上位の数サイトと下位の数サイトは,100 時間という範囲では順位の変動がほとんどない.このことから,定常状態に達してから の順位変動は,初期段階に比べて緩やかであるといえる.

0 1e+007 2e+007 3e+007 4e+007 5e+007 6e+007 7e+007 8e+007 9e+007 1e+008

0 1e+006 2e+006 3e+006 4e+006 5e+006 6e+006 7e+006 8e+006

x

time 1*108

6*107

4*107

2*107 8*107

2*106 4*106 6*106 8*106

① ②

図5.4 成長の初期段階での順位変動

図5.5 定常状態以後の順位変動

図 5.6は 1920 年から 2006 年までの都道府県の人口順位の変動である.スタート である1920年とゴールである 2006年に県名を付している.シミュレーションにおける 1 時間が,現実の何年に当たるのかについて,厳密に対応付けしてはいないが,実 際の都道府県の順位変動は,シミュレーションの定常状態以後の順位変動よりも,さ らに緩やかである.しかし,上位と下位の県の順位が他の県よりも安定している点や,

順位の変動も,1 つずつ入れ替わる小さい変動である点など,定性的な傾向は一致 する.

図5.6 都道府県の人口順位の変動