• 検索結果がありません。

初晶凝固過程で機械的回転撹持した ねずみ鋳鉄の初晶形態と強度

5. 1 実 験 の 目 的

前章までの研究は、主に初晶凝固中の冷却速度のみを変えて凝固を完了させ、

組成および黒鉛形態や基地組織が一定で初晶デンドライトの形態のみを変化さ せた鋳鉄試料を用いて、初晶デンドライトの形態や量が鋳鉄の強度に与える影 響とその作用機構を解明してきた。一方、一般に凝固時における初晶形態は冷 却速度を変化させること以外に撹祥などの機械的手段によっても変化しうるこ とは従来多くの研究が示唆している 98)~116) 。それゆえ、本章では、初品凝固中 に機械的な回転携祥を行い、これまで行ってきた初晶凝固中の冷却速度を変え た場合と同様の解析を行い、その結果から改めて初晶形態の作用を明らかにし ようと試みた。

鋳鉄に、機械的回転擾祥を加えた場合の凝固組織に関する研究はきわめて少

なく 101)106)、亜共品組成範囲で、

C

含有量および

CE

値を広範囲に変化させた

場合や C含有量を低く押えて初晶7を多量に品出させた場合の機械的回転撹祥 による鋳鉄の初晶形態と強度との関係はほとんど明らかにされていない。

そこで、本実験では、

C 2 . 2 ‑ ‑ 3 . 3   %  ( C E  2 . 9 ‑ ‑ 4 . 0 )

の亜共晶組成の鋳鉄を用い、

その溶湯中に撹祥羽根を挿入し、初晶凝固途中まで比較的低速度で回転撹祥さ せてねずみ鋳鉄試料を作製し、これらの試料の機械的性質および初品形態の変 化を詳細に調べ、とくに初晶晶出量の多い低炭素組成(低

CE

値)のものに外力を 加えた場合の破壊過程の観察や破壊の進行経路の定量的な測定を行い、携祥処 理した場合のねずみ鋳鉄の強度に及ぼす初晶形態の影響とその機構に考察を加 えた。

QU 

QU

  ‑99‑

5.  2 実 験 方 法 と 実 験 装 置

供試材料には、電解鉄

( F e 9 9 . 9 9  

%)、黒鉛および金属けし、素(Si

9 9 . 9 9 9  

%)  を目標組成になるように配合して、溶製した

Fe‑C

S i

鋳 鉄 を 用 い た 。 試 料 の 化 学 組 成 を 表5‑1に示す。

実験は、まず回転撹祥を加えた試料の機械的性質を調べ(実験 1)、次に撹祥 中 お よ び 撹 祥 後 に 急 冷 凝 固 し た 試 料 の 組 織 観 察 に よ り 、 本 実 験 条 件 で 撹 祥 処 理 した場合の初晶形態を明らかにし(実験 II)、 得 ら れ た 試 料 に 曲 げ 荷 重 お よ び 引 張荷重を加えた場合の破壊過程や破壊の進行経路を初晶形態に注目して観察し、

解析を行った(実験III)0 これらの結果から溶湯の初晶凝固途中まで機械的に回 転 撹 鉾 を 加 え た 場 合 の ね ず み 鋳 鉄 の 強 度 と 初 晶 形 態 と の 関 係 に つ い て 考 察 を 加 えた。

表5‑1 初品凝固中に回転倒件したねずみ鋳鉄試料の化学組成 試 料 ヒイ Au..  成. %  CE

No.  C  Si  Mn  P  S  (C+Si/3)  K020  2.25  2.07  0.005  0.003 

o . ∞

4  2.94  K021  2.55  2.04  0.004  0.004  0.005  3.23  K022  3.23  2.03 

o . ∞

0.004 

o . ∞

3.91 

K023  3.33  1.99  0.004  0.004  0.004  4.00 

実験

I

では、図

5

‑1に示す箱型電気抵抗炉と撹祥羽根駆動部で構成した溶湯 携祥装置を用いた。携祥羽根の回転はトルクモータ(オリエンタルモータ(槻製:

20W)を用い、ギャ比の種々異なるギャヘッドを組合わせて変速させ、その軸に シャフトを取り付け、その一端に、図5‑2に示す板状(厚さ 5mmx幅40mm

×長さ 120mm)の石英ガラス製撹祥羽根を挿入固定した。なお、炉内の温度お よび冷却速度は自動温度調節計((槻千野製作所NP163型)で調整し、試料の温度 変化は

Pt

Pt 

13 

%  Rh

熱電対で精密に測定した。

また、試料の作製方法は次のようにした。すなわち、 1回につき供試材料3kg

‑100‑

主 上

仁 ヨ / 光 電 式 回 転 計

~ pt‑rn ・13%Rh熱電対 (試料温度測定用)

骨 一 Pt‑Pt • 13 % Rh熱電対 (炉内温度調節・測定用)

アルミナライニング 円筒型粘土黒鉛るつぼ

SiC発 熱 体

試料 箱型電気炉

単位 mm

5‑1 実 験Iに用いた溶湯憤件装置の構造図

120 

1 ‑

300 

0 8 i i

持「 草 │

1

" '  

~l.

)0 

凶 + j l i i 

単位

m m

5‑2 実 験Iに用いた石英ガラス製償枠羽根の形状寸法

‑101

づつをアノレミナライニングした円筒型粘土黒鉛るつぼ(内径65mmX高さ 150mm)に入れ、 Ar雰囲気に保った高周波誘導電気炉(3kHz,30kW)で溶解 し、これを 15000Cに昇温後、携祥装置内に設置し、所定の速度で冷却した。溶 湯温度が13700Cに達したとき、撹祥羽根を溶湯中心部に挿入したが、この際、

溶湯の温度が低下しないように羽根はあらかじめ携祥装置内で同温度に加熱し ておいた。援祥羽根の回転速度は0‑‑‑111 rpmとし、撹祥は、 Ar雰囲気で、溶 湯温度13500C(初晶晶出開始前)から初晶凝固過程の途中すなわち各CE値の試 料で初晶量の70%が晶出する温度(この温度はあらかじめ組成の異なる各試料に ついて温度と初晶量との関係を実測した結果から求めた)まで撹祥を行い、この 温度で羽根の回転を止め、そのまま一定条件で冷却凝固させた。初晶が70%晶 出した時点、で撹祥を止めたのは、この温度以下になると、とくにCE値の低い試 料では粘性がきわめて高くなり、本実験条件では撹梓が機械的に困難になった ためであるO 試料の初晶凝固中の冷却速度は60C/min一定、共品凝固時間は3min

とし、共析変態開始温度までは350C/minで冷却した。なお、実験に用いた石 英ガラス製撹祥羽根は携拝中に変形したり、溶損あるいは変質などしないこと

をあらかじめ確認した。

作製した試料(直径65mmX長さ 120mm)は、図5‑3に示すように、引張試 験片および、破壊過程観察試験片に切削加工し、この試験片で機械的性質の測定 と顕微鏡組織の観察および成分分析を行った。さらに、画像解析装置(側ナック 製)を用い、試料の断面積に占める初晶面積の比率(初品面積率)や黒鉛片平均長

さなどを測定した。

実験Hでは、図5‑4に示す縦型管状電気炉と携祥羽根駆動部を組合わせた溶 湯撹祥装置を用いた。この基本構造は、先の実験Iの場合と全く同じであるが、

初晶形態の変化のみを追求することを目的としたので、実験Iより少量の試料 を用い、携祥羽根も厚さ3mmX幅20mmX長さ35mmの小板状にし、下部に 試料急、冷用の水槽を設置した。すなわち実験は、 1回につき供試材料200gをア ルミナ質タンマン管(内径36mmX長さ 100mm)に入れ、 Ar雰囲気に保った縦

3

<D 

A' 

ONF 

単位 rnm

引張試験片採取位置 破壊試験片採取位置

図5‑3試料の形状寸法と引張試験片および破填試験片 の採取位置

型管状電気炉で 14000Cで溶解し、初晶凝固過程で撹祥処理を行った。この際、

試料の冷却速度や携祥温度などはすべて実験 Iと同ーとした。この過程の所定 温度で、氷水中にて急冷凝固させ、その断面に認められる初晶の形態を顕微鏡で 観察し、さらに2、3の試料について第33.1節の場合と同様の方法で初晶の 立体模型を作製し、その形態を観察した。

破壊過程の観察(実験1lI)には、実験

I

で得られた試料の所定の位置(図

5 ‑ 3 )  

から切り出した6X 15 X 50mm (曲げ破壊用)および7X 15 X 90mm (引張破壊 用)の試験片を用いた。図5‑5に試験片の形状を示したが、いずれも破壊位置 を予知し観察し易いように中央部に2mmU溝切欠き(切込み深さ 1mm)を設け、

102 103

モータ 変速ヰ:ヤ

AC 電源へ

~光屯式回転計 Pt ‑Pt・13%Rh熱電刈、

(試料温度測定用)

管状電気炉

一 水 槽 ー ー

アルミナ質タンマン管

撹枠羽根(厚さ3mmX20mm

×長さ35mm) Pt ‑Pt

13%Rh熱屯対

(炉内温度fJ~l 節・測定用) 試料

支持棒(黒鉛製)

図5‑4実験Eに用いた溶湯撹枠装置の構造図

(a) 曲げ破域試験片

荷量

図5‑5

検鋭面

90 

(b)引張破域試験片

単位 m m 破填試験片の形状寸法

‑104

r

f~jffi

1‑t

p

その検鏡面で荷重の増加に伴う破壊の進行状況を光学顕微鏡により観察した。ま た、破断後の破面の状態を走査電子顕微鏡により観察した。 なお、荷重の加え 方、破壊過程の観察方法などは第4章の実験と同様であるO

5.  3 実 験 結 果 お よ び 考 察

5.  3.  1 試料の顕微鏡組織と機械的性質(実験 1)  5.  3.  1 . 1 初晶および黒鉛形態について

5‑6

に、

CE 2 . 9 4

の無撹祥および撹祥処理(撹祥羽根の回転速度

l l l r p m )

図5‑6 試料の顕微鏡組織例 (C2.25 %. Si 2.07 %,  CE 2.94) 

(a)は無撹枠. (b)は慣作羽根回転速度l11rpmで出枠したもの (上段:2.5%過硫酸アンモニウム水溶液腐食.下段:3%ナイタール腐食)

‑105‑

した試料の顕微鏡組織例を示す。撹祥を行わない場合は、 a図のように初晶は粗 大なデンドライトに成長していたが、携祥処理した場合、撹祥羽根の回転速度 の増加に伴って明瞭なデンドライト状のものは認められなくなった。 111rpmで

撹祥処理したものは、 b図のように初晶の断面形状が細かく、分布も一様で、こ れらが各所でつながり合い連続した形態になっていることを認めた。

図5‑7に、 CE3.91試料の場合を示す。図から明らかなように、撹祥処理し たものは、初晶は微細化していたが、先の低CE値のものに比べ、晶出する初晶

7の絶対量が少ないため、初晶がつながり合って連続した形態になる傾向も小

さかっfこ。

いずれの試料も黒鉛は微細な共晶状(D型)で、黒鉛片長さは 10‑‑‑15μmであ り、基地組織はすべてパーライトで、その硬さはHV325‑‑330であった。なお 試料の初晶面積率は

CE

値の増加とともに直線的に減少したが、同一

CE

値のも のは撹祥処理の有無による初晶面積率の変化はほとんど認められなかった。す なわち、本実験条件で撹祥処理を行うと試料の黒鉛形態や基地組織は変化せず、

初晶形態のみ撹祥処理の影響を受け変化することを認めた。

5.3. 1.2 試料の機械的性質と擾梓羽根の回転速度との関係

5‑8

に、試料の引張強さと撹祥羽根の回転速度との関係を示したが、撹祥

羽根の回転速度が増すとともに引張強さは上昇し、この傾向はCE値が増すとと もに小さくなり、

CE4 . 0

程度になると羽根の回転速度に無関係にほぼ一定値を

3 0  

2 5  

E E 

¥ 

2 0

1 5  

C弘, Si.弘 CE

o  2 . 2 5   2 . 0 7   2 . 9 4  

ロ 2 . 5 5 2 . 0 4   3 . 2 3  

3 . 2 3 2 . 0 3   3 . 9 1  

o  3 . 3 3   1 . 9 9   4 . 0 0   5 0   1 0 0   1 5 0   1 0  

5‑7試料の顕微鏡組織例 (C3.23 %  Si 2.03 %  CE 3.91)  (a)は無撹伴, (b)は撹伴羽根回転速度111rpmで撹排したもの (上段:2.5%過硫酸アンモニウム水溶液腐食,下段:3 %ナイタール腐食)

出枠羽根回転速度,rpm 

5‑8試料の引張強さと樹枠羽根の回転速度との関係

‑106‑ 107‑

示した。

また、図5‑9に、 111rpmで撹祥処理した試料の引張強さ増加率と初品面積 率との関係を示したが、初晶面積率(Ds)77 %のものは、 111rpmで撹排すると、

無撹祥の場合より引張強さが約25%増加し、 Ds65%のものでは引張強さは約 15 %増加した。

300  280  260 

J240 

220 

t

士、

200

180  160 

C,% Si,日 CE o 2.25  2.07  2.94  口2.55 2.04  3.23  t::.  3.23  2.03  3.91  O 3.33  .199  4.00 

100  150  30 

25 

関連したドキュメント