第4章 :「ポジショニング」のための構造方程式モデリングの応用
4.1 絶対評価の回答時間を併用したポジショニング分析 ~回答時間データの収集システム
4.1.6 適用事例
4.1.6.5 分析結果と解釈
まず、モデル1およびモデル2の適合度をそれぞれ確認する(表 4.2)。自由度が大きい ため、ここではRMSEAを適合度評価基準とすると、モデル1は 0.049、モデル2も0.052 と十分に小さく、適合が良いことがわかる。
次に、モデル1の回答値の尺度の因子負荷量とその標準誤差、回答時間の尺度の因子負 荷量とその標準誤差を示した表4.3と表4.4を解釈する。因子負荷は「買いたいと思う」
「おいしい(おいしそう)」が高く、いずれも有意である。測定誤差の値は、おおむね因子 負荷量の推定値よりも 1桁小さいものになっており、信頼性は高いといえる。同様に、今 回の回答時間の尺度の因子パタンとその標準誤差を見ると、いずれも非常に高 い。一方、
誤差は非常に小さく、因子の強い一次元性が読み取れる。
対象である製品のポジショニングを行うため、因子ηの平均であるμJでポジショニン グしたものが、図 4.8である。これを見ると、「商品 A」と「商品D」は評価が高いが、回 答時間に差異があり、「商品A」は迷いなく早く回答されていることがわかる。「商品 B」
と「商品 C」は、回答値の因子平均推定値だけを見ると、ほぼ同程度の評価を得ているこ
とがわかるが、回答時間因子の平均を合わせ見ると、圧倒的に「商品B」が即答されてお り、「商品C」の調査回答時間が遅いことがわかる。
表 4.2.適合度
表 4.3 回答値因子の測定方程式の母数推定値(モデル1)
表 4.4 回答時間因子の測定方程式の母数推定値 (モデル1)
図 4.8 モデル1の回答値因子と回答時間因子の平均によるポジショニングマップ
その他、製品ごとの回答値因子間には 0.4前後の中程度の相関が見受けられ,評価が全 体に高い人や低い人がいることが示されていた。回答時間間には強度の相関があり,評価 が早い人・遅い人がいることも明示された。また、回答値と回答時間の関係性は、5%有 意水準ですべて統計的に有意であった。値がマイナスであることから、ポジティブな回答 をする人ほど回答が速いことが示されていた(表4.5)。
表 4.5.因子間相関の推定値(モデル1)
表4.6と表4.7に示すモデル2の回答因子と回答時間因子の因子負荷量とその標準誤差 を確認すると、ほぼモデル1と同じで標準誤差も十分に小さく、信頼性が高い。図 4.9に 示したモデル2のポジショニングマップでは、どの製品のユーザーであるか「最もよく買 う製品」と答えるかどうかによる差異を差し引いたマップとなっている。この事例では、
モデル1とモデル2の各商品の相対的な布置に大きな違いはなかった。ただし、「商品B」
は即答傾向が因子得点から見て上がっており、「商品A」は下がっている点は興味深い。つ まり、良く買っているかどうかに関わらず、「商品B」の視認が高くブランド力が強い可能 性が示唆され、一方、「商品 A」は、よく買われているからこその視認の速さであると言え そうである。
モデル2の解釈で重要となるのは、アンケートで「最もよく買う食パン」として選択し た食パンの違いによる回答値因子、回答時間因子への影響を読み解くことである。
表4.8は外生要因(説明変数)から各因子へのパスである。この結果を見ると、アンケ ートで「最もよく買うパン」と答えた場合の回答値因子への効果はいずれの商品でも有意 である。
非標準化係数で1以上の値ということは、制約を置いた「買いたいと思いますか」とい う観測変数でも同じく 1ポイント以上、評価が高いことと同値である。
回答時間への効果は、「商品A」「商品C(タイプ1)」「商品E」「商品B」を「最もよく 買う食パン」と答えた場合、回答時間因子への影響が有意であった。「商品D」と「商品C
(タイプ2)」の場合にも有意確率5%には届かないものの、有意傾向はあることがわかっ た。最もよく買うと答えている場合、総じて回答時間が早いことが示されたと 言える。つ まり、よく買う商品であれば、回答値が高いだけでなく、回答時間も短くなることが、こ のパス係数から読み取れ、評価が素早く行われることがわかる。
また、「焼き立てパン」を購入する対象者においては、すべての製品の回答値因子へのパ スがマイナスで、「商品 C」以外へのパスは有意(商品Cへのパスは有意傾向)と、評価 が低いことがわかった。
表 4.6 回答値因子の測定方程式の母数推定値(モデル2)
表 4.7 回答時間因子の測定方程式の母数推定値(モデル2)
図 4.9 モデル2の回答値因子と回答時間因子の平均によるポジショニングマップ
表 4.8 外生要因「最もよく買うパン」の各因子へのパス推定値