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分析モデル

ドキュメント内 報告利益の管理と株式市場の反応 (ページ 40-43)

利益の履歴情報と市場の反応

第4節  分析モデル

4.1 諸特性に関する分析モデル

 奥村[2011]においては、利益訂正の諸特性と株式市場の反応の関係を以下の基本モデルにも とづいて分析した。本章ではこのモデルを基本モデルとして、遡及訂正情報と株式市場の反応の 関係を分析する。

〈基本モデル〉

1 2 3 4 5 PL 6 7

CAR= +a bMag+b Rev+bCore+b Fraud+b Perv +bNoNum+bSESC

変 数 定  義 利益訂正公表日およびその翌日の累積異常リターン

累積利益訂正額を訂正公表直前期末の訂正後総資産で割ったもの

収益認識にかかわる訂正の場合に1、それ以外の場合に0をとるダミー変数 経常利益の変動を伴う訂正の場合に1、それ以外の場合に0をとるダミー変数 訂正の原因が意図的な誤謬である場合に1、それ以外の場合に0をとるダミー変数 訂正が関連する損益計算書上の項目グループの数

訂正に関する最初の開示情報において訂正額の情報を開示していない場合に1、それ以 外の場合に0をとるダミー変数

証券取引等監視委員会による開示検査にもとづく訂正である場合に1、それ以外の場合 に0をとるダミー変数

 変数の測定方法について捕捉しておこう。 において訂正の原因が意図的であるか否かは 決算短信の訂正を開示する情報における記述に基づいて判断する。また、 における損益 計算書上の項目グループとは、損益計算書において、「売上高」、「売上原価」、「販売費及び一般 管理費」、「営業外損益」、「特別損益」、「法人税等および法人税等調整額」の6グループであり、

グループごとに訂正がある場合に1ポイントを付加する。これによって各利益訂正の影響範囲は 1から6のポイントが付けられる。 については、企業は訂正内容が確定するまでに時間 を要する場合には訂正の可能性がある旨の開示だけをする場合があるので、この点の影響を区別 するためのダミー変数である。そして、 は訂正に至る原因が証券取引等監視委員会による 開示検査に基づいているか否かを区別する変数である。

 基本モデルに修正を加えることによって、利益情報の履歴の書き換えという性質を分析するた めのモデルを以下のように設定する。

 履歴モデル1-1は、基本的に Lev, Ryan, and Wu[2008]と同様の分析モデルである。これは累 積利益訂正額( )を直前期の利益に関する訂正額( )とそれ以前の期の利益に関す る訂正額( 1)に分けている。これによって、累積利益訂正額の内容に対する株式市 場の反応を検討する。そして、履歴モデル1-2は、遡及訂正額についてさらに詳細に分析するた めに、 1を直近期からさらに1期遡った2期前訂正額( )とそれ以前の期の 利益に関する訂正額( 2)に分けている。

〈履歴モデル1-1〉

1 21 22 3 4

5 6 7 8

1

PL

CAR Crt CrtMag LaggedMag Rev Core Fraud Perv NoNum SESC

= + + + + +

+ + + +

a b b b b b

b b b b

〈履歴モデル1-2〉

1 21 22 23 3

4 5 6 7 8

2

PL

CAR Crt CrtMag PreMag LaggedMag Rev Core Fraud Perv NoNum SESC

= + + + + +

+ + + + +

a b b b b b

b b b b b

 次に、履歴モデル2では、過去の業績の推移パターンの訂正に対する株式市場の反応を検討す るために、基本モデルに業績の推移パターンの訂正を示す変数 を加えている。なお、

変数 には、仮説2、3、4のそれぞれに対応した変数 、 、 が 入る。

〈履歴モデル2〉

1 2 3 4 5 6 7

8 9

CAR Crt TestVar Mag Rev Core Fraud PervPL

NoNum SESC

= + + + + + + +

+ +

a b b b b b b b

b b

 以下は、基本モデルに追加される変数の定義である。

変 数 内  容

直近決算期について訂正している場合に1、それ以外の場合に0をとるダミー変数 直近決算期の利益訂正額を同期の訂正後総資産でわったもの

2期前決算期の利益訂正額を直近決算期の訂正後総資産で割ったもの

1 −

2 − −

過去2期以上連続で増益していた企業が訂正によって少なくとも1期が減益となる場合 に1、それ以外の場合に0をとるダミー変数

過去2期以上連続で利益を計上していた企業が訂正によって少なくとも1期が損失とな る場合に1、それ以外の場合に0をとるダミー変数

過去2期において少なくとも1期は損失を計上していなかった企業が訂正によって2期 連続で損失計上となる場合に1、それ以外の場合に0をとるダミー変数

 以下では、追加した変数の測定方法を説明するとともに、測定上の問題点について検討する。

  は、直近決算期についての訂正があるか否かを示すダミー変数である。ここで、Lev,  Ryan,  and  Wu[2008]と同様に、直近決算期とは、訂正公表時点が訂正対象の会計期間の決算 日以降4か月以内である場合に、当該会計期間を直近決算期とする。したがって、典型的なケー スとしては、決算日後の決算手続き及びその過程で発見され訂正が公表される場合が含まれる。

中間決算日と訂正公表日の関係について上記と同様に判断し、四半期あるいは中間会計期間を直 近決算期とみなす。

  は直近決算期に対応する利益訂正額であり、 は累積利益訂正額( )か ら を控除したものである。したがって、 =1 の訂正については が と

に分割され、 =0 の訂正については と は同額となる。

  に対する市場の反応を分析する際に、直近決算期が1会計期間に満たない場合には問 題が生じる可能性がある。たとえば、第1四半期だけで直近決算期が構成されるような場合には、

1会計期間全体が直近決算期となっている場合と比較して、利益訂正額が少額になっている可能 性がある。すなわち、継続的に誤謬が生じるような場合には、一四半期だけの訂正額は1会計期 間であれば生じたであろう訂正の4分の1(季節変動がないとする)となると予測される。この ようなケースは、投資家が第1四半期の利益から会計期間全体の利益を予測し、その予測をもと に株式を評価しているとすると、投資家が第1四半期利益の訂正を会計期間全体について4倍の 大きさで評価することを意味する。それゆえ、1会計期間をベースに測定されている他の利益訂 正額と同様に扱うためには、1年間の訂正額に換算する必要がある。このような問題に対処する ために、ここでは、季節性の考慮なしに、第1四半期の訂正については4倍、中間決算期の訂正 については2倍、第3四半期までの累積の訂正は3分の4を乗じることによって年間の訂正額の 予測値とする。本研究では訂正額を年度換算した場合と換算しない場合の両者について分析す る。

  は継続的な増益企業における訂正がその継続性の履歴を変える場合に株価がマイナス に評価されるかどうかを検定するための変数である。測定においては、2期以上連続で増益して いる企業について、利益訂正が連続増益期数を減少させる場合に1、それ以外の場合に0とする。

同様に、 は2期以上連続で利益を計上している企業が、利益訂正によって連続期数が 減少する場合に1、それ以外の場合にゼロをとるダミー変数とする。 は、本研究で追加 的に検討する業績の推移パターンの変数である。この変数によって、 とは対称的に、

訂正によって2期連続で損失計上となるケースについて分析する。

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