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内航海運における海事人材育成風土形成のための 5 つの提案

① 船員教育の促進のための船員評価に関するガイドライン作り

② 効果的且つ体系的な船員教育の促進

③ 組織的管理におけるSI育成のためのガイドラインの作成

④ 事業者単独の船員育成を支援するための教材の提供

⑤ 船員育成に関する事業者の経済的な支援

9.1.1 船員教育の促進のための船員評価に関するガイドライン作り

一杯船主においては、船員が家族や親族に限られることが多く、船員の入れ替わりがあ まりないため、他社の船員のレベルを把握出来る環境にない。また、一杯船主以外の内航 海運業者においても、小規模の事業者が多く存在するために、自社の船員のレベルしか把 握できておらず、その客観的な判断も出来ないものと思量される。

このようなことから、アンケート結果に見られるように多くの事業者が継続的な船員教 育の必要性について必要だと感じているものの、実際に教育を行っている事業者が少なか ったと考えられる。

一方、グループ化に関する課題においても、他の事業者と雇用条件が異なるためグルー プ化することが出来ないといった課題が挙げられていた。組織的な船舶管理を実行するに 当たっては、船員管理上の船員評価システムは不可欠であり、グループ化を行う際におい ても船員のレベルを知ることによって、給与面や待遇についての事業者間での調整が円滑 に進むものと考えられる。

従って、組織的な管理を行うに当たっての船員評価のガイドラインを作成し、適正な雇 用条件の決定と継続的な船員教育の普及を促進し、内航船員の安全レベルの向上を図るこ とが内航海運の安全の向上並びにグループ化の促進に有効であるものと思量される。なお、

海技士免許の更新講習において必要な能力を有しているか否かの評価(シミュレーター等 を利用)を行うことも安全性の向上に有効と考えられる。

9.1.2 効果的且つ体系的な船員教育の促進

内航海運業者の多くが、船員を育てられない環境にあることから、効率よく且つ効果的 に船員の熟練度を向上させるためには以下のような方法によって、事業者間の協力又は業 界内での船員育成の促進がなされるものと考えられる。

1) 航海士の育成の促進

内航海運の航海士に関しては、船舶が輻輳し、潮流が強く狭い海域を多く航行す る船舶に乗り組む船員が多いことから、高度な技術を要求されており、実務を行 う前に熟練度を増すことが内航海運業者の負担を軽減するものと考えられる。特 に狭い海域を航行する船舶において 1 人で航海当直を行う場合には、見張りと船 位確認等を 1 人で行う必要があり、ある程度海図を見ずに当直を行えるだけの熟 練度が必要とされている。

しかしながら、小型船においては、育成のための予備船員室の確保が出来ないこ とから、予備船員室の確保できる船舶を実習船として使用できるようガイドライ ンを作成し(ルール作り)、民間船舶の実習船としての利用促進のための環境を整 えることが有効であると考えられる。このことにより、新卒者等の経験の浅い航 海士の熟練までに必要な 2 年間(アンケート結果による)の実習を可能に出来る ものと考えられる。また、その効果検証のためには、操船シミュレーターの活用

も効果的であるものと思量される。なお、この事業等に関しては、船員を育てる 現場の船員の再教育という面も含んでおり、費用についての何等かの助成制度が あれば、事業者の費用負担も減少し、新人船員育成が促進されるものと考えられ る。

2) 機関士の育成の促進

特に機関士の育成に関しては、法定機関部職員の定員が 1 名(小型船の場合)に 対して 1 名の新人を付けて教育することは、事業者にとっても指導を行う機関士 にとっても大きな負担となり、高齢船員の退職により船員不足が加速すれば、更 なる機関士レベルの低下は免れず、故障・事故の増大によって、船舶の保守費用 の増大、安全の低下が起こってくることが予想されることから、船舶の保守管理 においては機関士の育成が最重要課題となっている。

機関士においても予備船員室等の問題から、船内で育成が困難と考えられるが、

各種機械の操作、メンテナンス方法、緊急対応等の習得に関しては、陸上での船 内機器の再現やシミュレーター利用、メーカー・造船所等での実習によっても同 様の効果が得られると考えられることから、海技士(機関)免許制度における乗 船履歴をこれらに代える等の改革(乗船履歴を工場実習に置き換える等)の検討 も内航機関士養成の方法に有効であると考えられる。

なお、この事業についても、何らかの助成制度があれば、機関部職員の養成が促 進されるものと考えられる。

9.1.3 組織的管理における SI 育成のためのガイドラインの作成

船舶管理事業者の管理費用は、傭船料に比べて極端に少なく、独立した外航船舶管理事 業者の場合には、50 隻以上といった規模の船舶管理を行わなければなかなか厳しい面が あるとのことである。

内航海運業者においても組織的な船舶管理を普及させるためには、複数隻を統括的に管 理する船舶管理に精通した船舶管理者≪SI(Super Intendent)≫の存在が不可欠であり、

その体系的養成が必要とされる。

しかしながら、船舶管理・監督者(SI)については、一般的には、船舶運航能力及びそ れに裏打ちされた管理・監督能力を備えている者と認識されているものの、その能力を客 観的に証明するような資格制度は存在しない。また、そもそも、船舶管理・監督者(SI)

に要求される知識の範囲やレベル、あるいは職務の範囲について体系的・組織的な共通理 解が十分ではない。

船舶管理・監督者(SI)の重要性に鑑みれば、これらの者の位置づけの明確化や効果的 な育成のための基盤整備を図ることが必要であり、船舶管理・監督者(SI)に係る要件を 示した育成のためのガイドラインを定めることが必要と考えられる。

組織的な管理の普及と船舶運航に係る安全確保、ひいては海運業の発展に資することが期 待されるとともに、船舶運航能力の重要性が再認識されることにより、船員(海技者)の 職業としてのブランドイメージの強化、船員のキャリアアップに関するインセンティブ向 上にも寄与するものと期待される。

なお、将来的には、当該ガイドラインに基づく資格制度が創設され、関係者間によって その普及が図られることが望まれるが、安全管理実現のためには、安全を統括的に管理で きる人材の確保は組織的船舶管理において欠くことのできないものとの考えから、国の行 っている運輸安全マネジメント評価とリンクするよう、安全マネジメントを実現する際の 要素としてSIの存在を位置づけるような検討が行われることが有効と考えられる。

(参考:『海事分野における人材の確保・育成のための海事政策のあり方について』(答申)平 成 19 年 12 月 交通政策審議会海事分科会 ヒューマンインフラ部会)

9.1.4 事業者単独の船員育成を支援するための教材の提供

今まで船員育成を行ってこなかった内航海運の船員にとって、現在の若者を船員として 育てることは、大きな負担となることが容易に想像できる。

船舶管理の課題としても挙げられていたが、新人船員を育てるためのカリキュラムや教 材の提供は、事業者の船員育成の意欲促進の上でも有効であり、効果的な船員育成を実現 させるためにも効果的であると判断される。

また、これらの教材を利用すれば、指導を行う側の船員に対しての再教育にもなるもの であり、現場での安全管理が促進されるものと思量される。

9.1.5 船員育成に関する事業者への経済的な支援

船員育成は本来、事業者の責任で行わなければならない。

しかし、船員は、日本にとって必要な人材であり、国内海上物流は、他の輸送モードに 比較して環境にも優しい輸送モードである。

海洋立国であり、環境立国である日本としては、今後、この環境に優しい輸送モードを 推進していくことは責務であり、その輸送モードを支える海事人材の育成にも行政として 力を入れていかなければならない。

しかしながら、船員教育を行うに当たっては、船舶の設備(予備船員室)が必要であり、

現在の船舶では、その設備が確保されていない船舶が多い。

そこで、船員育成に関する事業者の経済的な支援を行うために、環境に優しい船舶の建 造を行い船員育成のための居住区確保を行った事業者に対して、建造時の税金の免除を行 うなどの方法が有効と考えられる。

また、このような船舶建造を行うためには、ある程度の事業の規模が必要であり、資本 も必要となり、グループ化された事業者又は事業者同士の共同出資によって当該船舶の建 造を行う事業者に対して、更なる手厚い支援を行えば、グループ化の促進に繋がるものと

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