39 盤事業部等とのコーディネートを行う。
3 具体的な研究等の内容
幅広い領域やアプローチで、感染症に係る研究を推進するべきであるが、他の研 究事業との役割分担と連携にも留意の上、研究領域などを設定することが重要であ る。本検討会では、新規プログラムにおいて、今後推進すべき研究等の例示として、
次のような7つの研究領域と、2つの人材育成プログラムを提案する。その上で、
各研究領域において対象となりうる研究課題を例示する。なお、以下に取り上げた 研究課題の中で、特定の病原体名を明記している場合があるが、これらは例示であ り、本プログラムでは、公募の段階で対象を制限せず、ウイルス、細菌、真菌、原 虫、寄生虫など各種病原微生物を対象とすることが適当である。
【研究】
(1)創薬の標的探索のための病原体-宿主因子の相互作用及び感染制御機構等の 研究
(2)薬剤耐性(AMR)に対する診断法・治療法の探索研究
(3)ワクチンの開発に係る研究
(4)感染症創薬研究等の基盤となる新規技術の開発のための研究
(5)BSL4ウイルス感染症を対象とした診断法・治療法・予防法の探索研究
(6)宿主の防御機構を回避する感染症成立の分子機構に関する研究
(7)ワンヘルスの概念に基づいた感染症対策に資するための研究
【人材育成】
(8)BSL4病原体を扱う研究者等の人材育成
(9)医師資格を有し感染症研究を志す若手の人材育成
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(1)創薬の標的探索のための病原体-宿主因子の相互作用及び感染制御機構等の 研究
① 感染成立過程の解明を通じた創薬標的の探索研究
病原体の体内侵入から標的組織への到達、細胞内オルガネラとの相互作用、
細胞内での増殖等の感染成立過程の各ステップに着目した探索研究及び創薬 の標的となりうる機序の解明を行う。
② 感染制御に関する新規治療コンセプトの確立のための探索研究
病原体増殖におけるエピジェネティクス制御の解明、常在菌・真菌・ウイル ス叢(マイクロバイオーム)の役割、感受性や宿主域を決定する因子など、宿 主感染制御機構の解明を通じた新たな治療戦略を模索する。
③ 病原体の病原性発現機序を標的とした新規抗菌薬の探索研究
細菌の毒素分泌システムやクオラムセンシング転写因子の制御などによる 病原体の病原性発現機序を標的とした新規抗菌薬開発に向けた探索研究を行 う。
(2)薬剤耐性(AMR)に対する診断法・治療法の探索研究
① 薬剤耐性機構の解明及び当該耐性機構を阻害または解除する薬剤開発に向け た探索研究
βラクタマーゼ阻害剤、エフラックスポンプ阻害剤などの探索研究に加え、
新たな概念で耐性機構を阻害または解除できる薬剤の探索研究を行う。また、
抗菌薬のカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)等のグラム陰性菌の外膜透 過性を高める方法及び薬剤の探索研究を行う。
② 新規天然物化合物を中心とした探索研究や代替療法となる新規治療法の開発 のための探索研究
iChip等の新規手法により培養が可能となった土壌細菌や、海洋微生物等から 分離された天然物化合物によるAMR新規治療薬の探索研究を行う。また、ファー ジ治療、抗体療法、免疫刺激、酵素阻害、マイクロバイオームによる治療等の これまでの抗菌薬治療によらないAMRを防ぐ代替治療の開発を目指す。
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③ AMRに対する迅速診断法の開発のための探索研究
今後抗菌薬の適正使用を推進していくため、迅速化された薬剤感受性検査、
薬剤耐性遺伝子(ARG)に対するRT-PCR、ARG産物の免疫クロマトグラフィー検 査などを中心とする新たな診断法の研究法の開発を行う。
(3)ワクチンの開発に係る探索研究
通常の微生物学、免疫学に加え、有機化学合成、イメージング、バイオインフ ォマティックス、構造生物学など様々な分野の先端的研究の融合により、ワクチ ンの開発に係る探索研究を推進する。(図9参照)
① 新規ワクチンの探索研究
現在有効なワクチンが存在しない、または有効性の改善が求められている病 原体を対象とし、革新的な防御抗原検索を通じた新規ワクチンの探索研究を行 う。
図9 ワクチンの開発に係る研究のイメージ
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② アジュバントの探索研究及び作用機序に関する研究
疾患に合わせたきめ細かいアジュバントデザインのため、細胞性免疫を誘導 するアジュバントや副反応が低いアジュバント、混合アジュバントの開発のた めの探索研究とその作用機序の解明を行う。
③ 感染病原体を用いた生体内デリバリー(ベクター)の研究
ありとあらゆる病原体が、遺伝子治療やワクチンのベクターとなりうるなど、
感染病原体は新たな遺伝子操作技術のツールとなりうるものであり、その基礎 的研究を推進する。
④ 粘膜ワクチン、皮内ワクチンなど新たなワクチン接種法に関する研究
ワクチンによる副反応に対して、粘膜投与や皮内投与の等の接種方法の改良 による皮下組織や末梢神経に対する影響や皮内の免疫担当細胞の動態などの 研究を行い、ワクチンの安全性や有効性へ寄与する研究を行う。
(4)感染症創薬研究等の基盤となる新規技術の開発のための研究
感染症の基礎研究及び治療薬、ワクチン等の開発のためのブレークスルーとな りうるイノベーションを伴う基盤技術の開発を推進する。
① 感染症モデル動物の開発
様々モデル系が成果をあげてきたが、人や家畜とモデル系や生物学的に大き な隔たりがある。霊長類の実験がますます厳しくなる状況の中で、「ヒト型」
をポイントとした実験系の構築が求められている。ヒト化マウス、キメラ、iPS 組織由来ヒト組織などの領域の研究者の参画が期待される。
② 新規微生物培養系の確立
従来培養できなかった微生物からの新規抗菌薬を探索するために新たな培 養法を確立する。また、新規抗菌薬を海洋微生物、海洋生物からも探索するア プローチを確立する。
③ インシリコによる新規抗菌薬探索の新たなスクリーニング法の開発
標的タンパク質に関するX線解析データなどを用いインシリコによるバー チャルスクリーニング法を開発し、新規抗菌薬の探索や優れた性質を有する 化合物設計方法の確立を図る。
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④ 新規In situモデル系の確立
本邦でカイコ幼虫を用いる新規のスクリーニング法が開発され、ユニーク な新規抗菌化合物の探索に当たって有用性が確認されているが、同様に、線 虫その他の生物を用いた新たなIn situモデル系の確立を目指す。
⑤ 病原体の体内動態や免疫応答を解析する革新的手法の開発
患者や動物検体に含まれる病原体の高感度検出、感染個体内での動態の追跡、
準種や変異体の包括的なゲノム解析、病原体高分子の構造と機能及び変異によ る修飾の解析、免疫系分子との結合解析、トランスクリプトーム解析などで得 られるビックデータの解析など、感染症の理解に直接結びつく革新的な解析技 術の開発を図る。
(5)BSL4ウイルス感染症を対象とした診断法・治療法・予防法の探索研究 BSL4ウイルスは、標的探索や治療法、ワクチン等の開発において、その特殊性
から他のウイルスとは異なる手法を用いる必要が生じることがあることから、
BSL4ウイルス感染症について独立した領域として研究を推進する。
なお、現時点で我が国にはBSL4ウイルスを直接扱う感染実験を実施できる施設 が存在しないことから、当面は、国内ではBSL2実験室やBSL3実験室を利用して実 施できる研究を行い、BSL4施設を使用する必要がある実験については、本プログ ラムによる研究費を活用し、海外のBSL4施設を利用して研究を行うこととする。
① BSL4ウイルスの治療法開発のための探索研究
エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、南米 出血熱等のウイルス性出血熱やヘニパウイルス感染症はいずれも動物由来感 染症であり、その原因ウイルスはすべて一本鎖マイナス鎖RNAウイルスである という特徴がある。これらのBSL4ウイルスについて、有効な治療薬の開発のた めの探索研究を行う。
② BSL4ウイルスに対するワクチン開発研究
弱毒性の水疱性口炎ウイルス(VSV)の表面糖蛋白質Gをエボラウイルスの表 面蛋白質GPと入れ替えた組み換え弱毒生ワクチン、ワクチニアや麻疹ウイルス にニパウイルスのGを組み込んだ組換え弱毒生ワクチン、アデノウイルスの弱毒 株にBSL4ウイルスのGPを組み込んだ複製欠損型ウイルスワクチン等の研究開発 が世界的に行われているが、これらに限らず新たな機序による新規ワクチンの 開発研究を行う。