イ 骨粗鬆症検診の充実
現在、市町村や事業所での超音波を用いた骨粗鬆症検診は、県民が自分の骨の状態を 簡単に把握できるほとんど唯一の手段であり、その質的・量的な充実が望まれます。検 診受診が骨粗鬆症の早期発見につながり、若年のうちからの生活習慣の改善等適切な対 応によって骨の強度の維持・回復を図ることが必要です。しかし、現在、職域でこの検 診を導入している事業所は非常に少ないと推定されるので、特に働く若い女性の生涯の ためこの検診の充実が必要です。
なお、検査方法がMD法、DXA法、超音波法など多様なので、成人病管理指導協議 会で検査方法ごとに診断基準を定め、精度管理を図る必要があります。
ウ 転倒の危険因子についての調査研究の充実
現在は転倒を防止する方法の調査研究は進んでいませんが、モデル地区の設定等によ り、疫学的に転倒の危険因子を横断的・縦断的に検討し、その防止に関連する要因を明 らかにする必要があります。
エ 転倒の防止を目的とした保健事業を行う市町村の増加と事業内容の充実
現在、転倒を防止するための「転倒防止教室」のような事業を実施している市町村は 少数で、内容も充実しているとはいえないため、転倒防止事業と調査研究を相互に反映 させていく体制をつくることが必要です。これまでの研究結果で転倒の危険因子のひと つに、「過去1年間に転倒経験がある」ことがあります。種々の保健事業のアンケート 調査の項目にこれを加えて、転倒のハイリスク者を明らかにし、対応につなげることも 可能です。
また、このような事業の推進には、企画・運営・評価できる人材の養成・配置が不可 欠で、保健所、市町村等職員の資質向上に努めるとともに、理学療法士や作業療法士等 転倒防止事業に専門的に関わる職員の配置を進めることも重要です。
オ 機能訓練事業の充実
身体虚弱や脳卒中の既往等なんらかの基礎疾患を持つ住民に対象とした老人保健事 業の機能訓練事業を転倒防止に配慮した内容にするとともに、要介護認定者を対象とし た介護予防事業とも適切に連携する必要があります。両事業の充実は要介護高齢者の減 少、日常活動能力の回復や転倒防止にもつながります。
カ 転倒防止の環境づくり
転倒防止には屋内・外の環境要因が大きく関与しています。公共の場所では徐々に高 齢者にやさしい環境づくりが進められていますが、段差や歩行の障害物等の減少、滑り 止めや手すり等の設置など転倒防止に配慮したバリアフリーの環境整備を一層進める 必要があります。
12 健康チェック・各種健康診断
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1 はじめに
(1)セルフチェック
健康でより価値ある生涯を送るためには、一人ひとりが健康についての考えをしっかり もって、自分の健康は自分でつくる姿勢が必要です。健康をつくるには、自らのからだか ら発せられる様々なシグナルを意識し、体調をコントロールすることが重要です。
シグナルとは、「脈拍」、「呼吸」、「体温」、「血圧」、「発汗」、「排尿・排便」、「体重」、「睡 眠」などが挙げられますが、これらは日常生活において自分自身で把握・観察することが 可能なので、自らのからだ・健康状況を定期的にチェックし、変化に気付くことが大切で す。
(2)各種健康診断
我が国では、極めて多様な健康診断や検診、さらには人間ドックが行われています。こ れらは、健康状態を把握し、生活習慣病やその他の疾病に関連する検査項目の値の位置付 けや推移から生活上の対応を考える「一次予防」を目的とした健康診断(健診)と、ある 特定の疾病の早期発見・早期治療を目的とする「二次予防」を中心とした検診の二つに大 別できます。これらの健(検)診の総数は、全国で年間1億数千万件にのぼるとされ、国 民1人が年1回以上何らかの検査を受けていることになりますが、今後はより精度が高く、
事後措置を含むトータルな健康チェックの体制を確立することが求められます。
2 基本方針
(1)セルフチェックの習慣化
健康づくりの第一歩は、自分の健康状況を知ることです。各自の日常生活の中でセルフ チェックを習慣的に実行できるよう、方法の周知と意識改革を進めます。
(2)健(検)診の事後措置の拡充
健(検)診は、受けること自体が重要であるばかりではなく、「健診」においては栄養・
生活指導、「検診」においては精密検査という「事後措置」か極めて大切で、これらが確実 に実施できる医療、保健及び関係機関のネットワーク化が必要です。
特に、内臓脂肪型肥満に着目した生活習慣病については、その要因となっている生活習
慣を改善するための保健指導を行い、糖尿病等の有病者とその予備群の減少を目指します。
3 現状と課題
(1)自分の健康状況を知っている人の割合
平成 11 年松山市民健康意識調査では、体重をほとんど毎日測ると答えた人が男性13. 2%、女性25.4%でした。
平成 12 年度の健康づくりに関する県民意識調査では、過去 1 年間に血圧を測定した人
は、男性84.8%、女性82.7%で、そのうち自分の血圧値を知っていた人は、男性68.2%、
女性73.6%で、年代が上がるにつれ高くなる傾向でした。
また、過去1年間にコレステロールを測定した人は、男性50.4%、女性44.8%で、その
1 はじめに
(1) セルフチェック
健康でより価値ある生涯を送るためには、一人ひとりが健康についての考えをしっかり もって、自分の健康は自分でつくる姿勢が必要です。健康をつくるには、自らのからだか ら発せられる様々なシグナルを意識し、体調をコントロールすることが重要です。
シグナルとは、「脈拍」、「呼吸」、「体温」、「血圧」、「発汗」、「排尿・排便」、「体重」、「睡 眠」などが挙げられますが、これらは日常生活において自分自身で把握・観察することが 可能なので、自らのからだ・健康状況を定期的にチェックし、変化に気付くことが大切で す。
(2)各種健康診断
我が国では、極めて多様な健康診断や検診、さらには人間ドックが行われています。こ れらは、健康状態を把握し、生活習慣病やその他の疾病に関連する検査項目の値の位置付 けや推移から生活上の対応を考える「一次予防」を目的とした健康診断(健診)と、ある 特定の疾病の早期発見・早期治療を目的とする「二次予防」を中心とした検診の二つに大 別できます。これらの健(検)診の総数は、全国で年間1億数千万件にのぼるとされ、国 民1人が年1回以上何らかの検査を受けていることになりますが、今後はより精度が高く、
事後措置を含むトータルな健康チェックの体制を確立することが求められます。
2 基本方針
(1)セルフチェックの習慣化
健康づくりの第一歩は、自分の健康状況を知ることです。各自の日常生活の中でセルフ チェックを習慣的に実行できるよう、方法の周知と意識改革を進めます。
(2)健(検)診の事後措置の拡充
健(検)診は、受けること自体が重要であるばかりではなく、「健診」においては栄養・
生活指導、「検診」においては精密検査という「事後措置」か極めて大切で、これらが確 実に実施できる医療、保健及び関係機関のネットワーク化が必要です。
3 現状と課題
(1)自分の健康状況を知っている人の割合
平成11 年松山市民健康意識調査では、体重をほとんど毎日測ると答えた人が男性13. 2%、女性25.4%でした。
平成12 年度の健康づくりに関する県民意識調査では、過去 1 年間に血圧を測定した人
は、男性84.8%、女性82.7%で、そのうち自分の血圧値を知っていた人は、男性68.2%、
女性73.6%で、年代が上がるにつれ高くなる傾向でした。
また、過去1年間にコレステロールを測定した人は、男性50.4%、女性44.8%で、その
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うち自分のコレステロール値を知っていた人は、男性55.4%、女性66.7%でした。同じく 過去1年間に血糖値を測定した人は、男性52.5%、女性39.6%で、そのうち自分の血糖値 を知っていた人は、男性47.1%、女性53.4%で、いずれも血圧に比べ、測定値を知ってい る人が少なくなっています。
個人の健康チェックは、日常的に健康状況を知るための習慣付けが重要であり、「毎日体 重を測ること」など簡単なことから取り組む意識を喚起する必要があります。また、血圧 などについては自分の測定値と推移及び自らの適正値を知っておくことに意味がありま す。
(2)事後措置が確実かつ円滑にできる環境づくり
ア がん検診の要精密検査者における未把握者の減少
平成 10 年度における全市町村のがん検診要精密検査者結果別人員の精密検査受診結 果未把握の割合は、胃がん25.7%、肺がん17.6%、大腸がん35.4%、子宮がん19.8%、
乳がん14.2%という状況であり、受診者に対する指導が十分とはいえません。
このため、各市町が地元の中核病院及び医師会から、要精密検査者の受診についての 情報を得られる体制をつくり、精密検査未受診者に対して、各市町が積極的な受診推奨 を行うことが必要です。
イ 地域保健と産業保健との連携・協力
近年、勤労者で生活習慣病を有する人が増加し、労働者調査による平成9年健康診断 結果報告の健康診断有所見率は平均 39.5%と高く、しかも 50 人以下の小規模事業所で
は43.8%とさらに高くなっています。
一方、昭和63年の労働安全衛生法の改正によって始まったトータル・ヘルス・プロモ ーション(THP)は働く人の心と身体の両面からの総合的な健康づくりを目指すプラ ンですが、大規模事業所では相当の効果をあげてきたものの、50人以下の総規模事業所 では2〜3%程度の普及率にとどまっています。
勤労者は地域住民でもあるので、地域に密着した小規模事業所の健康確保(特に健康 診断から始まる事後指導)を推進することも必要で、地域保健及び産業保健活動に関わ る機関の「協議の場」の設置が必要です。特に、食品衛生、環境衛生及び産業廃棄物処 理指導などで各事業所と関わりのある保健所の連絡・調整が必要です。
ウ 地域保健と学校保健との連携・協力
最近、食生活が乱れた児童が増加しており、情緒不安定、無気力などの精神発達障害 の発生が増えているほか、成人期になってから生活習慣病の発症につながる可能性が懸 念されています。
各小中学校では、小児生活習慣病予防健診を行ってはいますが、学校医及び養護教員 だけで事後指導を行うことが難しいため、地域保健と学校保健との連携・協力による事 後指導体制を確立し、児童生徒及び保護者に対して、望ましい生活習慣に関する知識の 普及を図ることが必要です。
うち自分のコレステロール値を知っていた人は、男性55.4%、女性66.7%でした。同じく 過去1年間に血糖値を測定した人は、男性52.5%、女性39.6%で、そのうち自分の血糖値 を知っていた人は、男性47.1%、女性53.4%で、いずれも血圧に比べ、測定値を知ってい る人が少なくなっています。
個人の健康チェックは、日常的に健康状況を知るための習慣付けが重要であり、「毎日 体重を測ること」など簡単なことから取り組む意識を喚起する必要があります。また、血 圧などについては自分の測定値と推移及び自らの適正値を知っておくことに意味があり ます。
(2)事後措置が確実かつ円滑にできる環境づくり
ア がん検診の要精密検査者における未把握者の減少
平成 10 年度における全市町村のがん検診要精密検査者結果別人員の精密検査受診結 果未把握の割合は、胃がん25.7%、肺がん17.6%、大腸がん35.4%、子宮がん19.8%、
乳がん14.2%という状況であり、受診者に対する指導が十分とはいえません。
このため、各市町村が地元の中核病院及び医師会から、要精密検査者の受診について の情報を得られる体制をつくり、精密検査未受診者に対して、各市町村が積極的な受診 推奨を行うことが必要です。
イ 地域保健と産業保健との連携・協力
近年、勤労者で生活習慣病を有する人が増加し、労働者調査による平成9年健康診断 結果報告の健康診断有所見率は平均 39.5%と高く、しかも 50 人以下の小規模事業所で
は43.8%とさらに高くなっています。
一方、昭和 63 年の労働安全衛生法の改正によって始まったトータル・ヘルス・プロ モーション(THP)は働く人の心と身体の両面からの総合的な健康づくりを目指すプ ランですが、大規模事業所では相当の効果をあげてきたものの、50人以下の総規模事業 所では2〜3%程度の普及率にとどまっています。
勤労者は地域住民でもあるので、地域に密着した小規模事業所の健康確保(特に健康 診断から始まる事後指導)を推進することも必要で、地域保健及び産業保健活動に関わ る機関の「協議の場」の設置が必要です。特に、食品衛生、環境衛生及び産業廃棄物処 理指導などで各事業所と関わりのある保健所の連絡・調整が必要です。
ウ 地域保健と学校保健との連携・協力
最近、食生活が乱れた児童が増加しており、情緒不安定、無気力などの精神発達障害 の発生が増えているほか、成人期になってから生活習慣病の発症につながる可能性が懸 念されています。
各小中学校では、小児生活習慣病予防健診を行ってはいますが、学校医及び養護教員 だけで事後指導を行うことが難しいため、地域保健と学校保健との連携・協力による事 後指導体制を確立し、児童生徒及び保護者に対して、望ましい生活習慣に関する知識の 普及を図ることが必要です。