1 商 工 省 「 製 造 原 価 計 算 準 則
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戦後、黒揮清は、「陸軍軍需品工場事業場原価計算要綱
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や「海軍軍需品工場事 業場原価計算準則」も、元を洗えば、商工省「製造原価計算準則」の模倣の産物 であると述べている(黒津 1990、416頁)。1930年(昭和5年) 6月に商工省に臨時産業合理局が新設され、その指導の下 に産業合理化が図られた。その主要活動は、企業統制、経営管理改善、規格統一、
国産愛用等であった。臨時産業合理局長官には、商工大臣俵孫ーが就任し、専任 職員は、 13名、その他、商工省各局長および関係課長が合理局の兼任となった。
臨時産業合理局の常設委員会として、生産管理委員会、財務管理委員会、販売 管理委員会、消費経済委員会、国産品愛用委員会、統制委員会が設けられた。科 学的管理法として、動作研究、時間研究等とともに、原価計算等の財務関係のた めに設置されたのが、財務管理委員会であり、当委員会が企業経理の合理化を担 当した。
商工省臨時産業合理局の財務管理委員会の審議項目は以下のものであった(財 務管理委員会 1930、161頁)。
1 事業会社の財産目録、貸借対照表、損益計算書及損益金処分書の内容を統一、
明確又は精細にすること。
2 各種業別の標準的簿記を定むること。
3 中小商工業の簡便なる標準簿記を定むること。
4 適正なる損益金算出の基準方式を定むること。
5 財産評価に関する一般的原則を定むること。
6 固定資産の減価償却の合理的方法を定むること。
7 原価計画に関する一般的原則を定むること。
8 各種事業別に標準的原価計算方法を設定すること。
9 事業会社の財務及予算に関する研究。
10 帳簿、伝票、書類を標準化すること。
「原価計算基本準則」は、 1933年に上記の審議事項のうち r8 各種事業別に 標準的原価計算方法を設定すること
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に応えるべく未定稿として公表きれた。そ の「序言」では、その目的が以下のように述べられていた。「産業を合理化し、これが経済性を発揮せしむるには、其の会計を整理すべき は勿論、進んでこれと並立して原価計算の制度を樹て、原価の算定に正確を期 するは最も肝要とする所なり。かくて、一方経営の内部過程に於ける費用を査 閲管理し、以て能率を促進せしむると共に、他方適正なる販売価格の決定に資 するを得べし。而も此の制度の樹立は、単に一個経営を利するに止まらずして、
これを広く国民経済より見るも無謀なる競争を避け、産業統制に基調を与うる ものと云うべし。これここに原価計算基本準則を制定する所以なり。(傍点筆 者)J
「原価計算基本準則
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の構成は以下の通りであった。序言 第 一 総 論 第 二 物 品 費 第 三 労 働 費 第 四 費 用
第 五 製 造 間 接 費 配 賦 手 続 第六販売費、総係費配賦手続
「第六
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で、販売費と総係費(今日の一般管理費に相当する)の配賦手続が取 り上げられているのは、原価計算の目的が、価格決定にあることに対応している。すなわち、製造原価に販売費及び一般管理費を配賦して、総原価を算定する必要 カfあるカミらで、あった。
「第一 総論」では、原価及び原価計算について以下のように定義きれていた。
第2章 「会社経理統制令」前史としての陸軍の経理統制 37
「原価とは製品の製造販売に消費せらるる経済的価値を意味し、製品のー単位 又は同種単位の一群に関する原価要素を集合算定することを原価計算と云う。」
原価計算の種類については、「前計算と後計算」と「個別計算と綜合計算
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との 2つが挙げられていた。しかし、後者の「個別計算と綜合計算」については、個 別原価計算を中心として記述きれているが、その具体的適用に不可欠な製造指図 書の問題には触れられていなかった。原価要素については、「物品費j、「労働費」、「費用」の3つが挙げられていた。
「労働費
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と「費用」は、それぞれ後述の確定稿「製造原価計算準則」では、「労 務費J
と「経費」という今日と共通の用語に変えられるが、「物品費J
だけは、確 定稿でもそのままであった。この「物品費」という用語の採用については、当時も次のような批判があった。
「抑々物品は管理上の概念であって、計管上の概念としては不適当であると思 う。物品管理又は物品会計上の物品なる概念は、原料、部分品半製品等を含む と共に工具、什器等をも包括する。而して消耗品、薬品等は上記の物品とは管 理上の性質を異にするが故に、物品の観念から除去せられるのを常とする。本 準則に於ける『物品』なる概念の用法は、全く従来の原価計算文献及び物品会 計上の用語例と合致せず、実益に乏しいように思われるのである。
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(黒津1938 (其の二)、 114‑115頁)
「序言」では、当準則の性格について「本準則は、これを以て原価計算制度の 基本を示したるに止まり、各業種と業態とに適応する個々の具体的準則の制定は、
これを当業者との協力にまって完成せんことを希望する次第なり。」と述べてられ ていた。この「各業種と業態とに適応する個々の具体的準則の制定
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は、第3章 で扱う、「原価計算規則」別冊として法定される「製造工業原価計算要綱」の施行 の際に、原価計算運動として実現きれることになる。「製造原価計算準則
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(以下では商工省「準則」と略称する。)は、 1937年に確定稿として公表された。商工省「準則」の構成は以下の通りであった。
第 一 総 論 第 二 原 価 要 素 第 三 物 品 費 第 四 労 務 費 第 五 経 費
第 六 総 合 原 価 計 算 第 七 個 別 原 価 計 算 第 八 部 門 費 計 算 第 九 標 準 原 価 計 算
第十 原価計算と工業会計の勘定体系
「製造原価計算準則
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の作成に当たっては、 1920年に初版が公表された、 ドイ ツ産業合理化局の「原価計算基礎案J
(Grundplan der Selbstkostenrechnung)の1930年版 (11eierl¥Toss1930)が参照されたという(黒津 1990、273頁、及び 黒津 1980、p.xxiv参照)。
その経緯について太田は次のように述べている。
「昭和6、7年の頃、財管ではいよいよ原価計算を研究することになった。そ のとき吉田さんが独逸の合理化協会で出した(基礎案)を持って来て、これを 抄訳して資料とすることを提案した。それでその仕事を、当時まだ東京商大の 研究生だった岩田巌君に依頼したのであった。
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(太田 1968、102頁)なお、当基礎案は、 1933年に東京商工会議所によって翻訳が刊行されている(東 京商工会議所 1933)。
商工省の「原価計算基本準則
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(未定稿)と「製造原価計算準則J
(確定稿)との主要な相違点として以下のものがあった。
(a)
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原価計算基本準則j では、原価計算の目的が明確に規定きれていなかった のに対し、「製造原価計算準則」では独立した項目の下に次の3つが規定きれ、第2章 「会社経理統制令」前史としての陸軍の経理統制 39
「損益計算の明瞭正確化」という目的が追加されている。
(イ) 原価要素の消費量及価格を管理統制すること。
(ロ) 製品の売価決定の基礎たらしむこと。
村会計の補助手段として損益計算を明瞭正確ならしむこと。
(b) 資本利子に関しては、「原価計算基本準則」では、特に規定はなかったが、「製 造原価計算準則」では「運転資本に対する利子は次に列挙する如き特殊の場合 を除きでは之を原価に加えざるものとす (24 特殊の経費種目)oJとしている。
(1) 原料又は製品が長期間の貯蔵を必要とする場合。
(2) 設備又は方法を異にする同種作業聞の原価を比較する場合。
(3) 原料、部分品、動力等を外部より買入るると、自己生産を行うと何れが有 利なるかを比較判定する場合。
(4) 製品の売価を決定する場合。
(5) 製造に長期間を要する事業に於いて、之に要する放資金額と、前受金との 各利子を比較して見積価格を決定せんとする場合。
(6) 価格協定、統一原価計算制度設定等客観原価を計算する場合。
(c)
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原価計算基本準則」では、個別原価計算の説明が中心で、総合原価計算の 説明は不十分で、あったが、「製造原価計算準則」では、「第六」において独立し て、以下のタイトルの規定があった。26 総合原価計算概念 27 総合原価計算の種別
(イ) 単純総合計算 (ロ) 等級別総合計算 付 車且別総合計算 付 工 程 別 総 合 計 算 28 単純総合計算 29 等級別総合計算 30 工程別総合計算 31 組別総合計算 32 副産物
33 連産品原価計算
(d)
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製造原価計算準則」では「部門費計算」が新設きれた。そこでは、部門に ついて次のように説明きれていた。「部門とは各種原価要素を其の目的又は発生の場所により集計し、之に基きて 費用の統制を行うと共に、間接費を合理的に配賦する為め設くる原価計算上の 区分を謂う。
部門は各工業に於いて其の実情により之を設定すべきものとす。生産技術上 の部門は同時に原価計算上の部門たらしむを普通とするも、原価計算の必要上 更に之を細分する事あるべし。
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(41)部門の種類については、「部門は其の製造作業に対する関係により次の知〈之を 分つ刷。」としていた。
(イ) 製造部門。直接製造作業の行わるる部門にして、其の成果は製品又は中間 製品となるものとす。例えば機械製作工業に於ける鋳物、機械、仕上、組立 等の各部門の如し。
製造部門に於いても、他の部門の為に修繕其の他の作業を為し、或いは工 場設備の建設を為すことあり。
(ロ)補助部門。製造部門に対し補助的関係に在る部門にして、結局製造部門の 作業の智助を為すものとす。例えば動力部、修繕部、工具製作部、倉庫部、
労務部、研究部、計画部、管理部、検査部の知し。動力部、修繕部、工具製 作部が相当の規模となり、独立の経営単位を為すときは之を補助経営とも称 す。
上掲の部門の説明は、その後、「陸軍工場事業場原価計算要綱
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(1939年)や企 画院「製造工業原価計算要綱草案J
(1941年)においても踏襲されており、機械製 作工業の例示は、戦後の「原価計算基準J
(1962年)にも引き継がれている。(e)