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代数的微分作用素環と解析的微分作用素環

ドキュメント内 改訂版PDF (ページ 97-102)

第 4 章 微分作用素環のグレブナ基底 75

4.3 代数的微分作用素環と解析的微分作用素環

と定義すると, q1σ(P~1) +· · ·+qsσ(P~s) = 0 である. 以下では定理4.2.15の証明中の記号 を用いよう. 定理2.2.11 を C{x, ξ}に適用すれば(そこでは形式巾級数環に対してしか証 明していないが, 収束巾級数環についても定理2.2.11は正しいことが証明できる(cf. 7.1 節)),適当な wij C{x, ξ} によって

(q1, . . . , qs) =

i<j

wij~vij

が成立する. 例によって wijξ について斉次としてよい. σ(Wij) =wij なる Wij ∈ D0

をとって,

(Q01, . . . , Q0s) := (Q1, . . . , Qs)

i<j

WijV~ij

とおけば, (Q01, . . . , Q0s)∈S(P~1, . . . , ~Ps)かつord(Q0kP~k)< `となる. また(Q1, . . . , Qs)6∈ L より(Q01, . . . , Q0s)6∈ L でなければならないが, これは ` のとり方に反する. 2

以下では N2n の項順序 W であって,

(α, β)W0, β0) =⇒ |β| ≤ |β0|

を満たすものを一つ固定する. このとき更にN2n× {1, . . . , r} の全順序 W を (α, β, i)W0, β0, j) ⇐⇒ (|β|<|β0|)

or (|β|=0|, i < j)

or (|β|=0|, i=j, (α, β)W0, β0)) で定義して W-順序と呼ぶことにする. P~ =α,β,iaαβixαβ~ei (An)r に対して,

lexpW(P~) = maxW{(α, β, i)|aαβi 6= 0}P~ の leading exponent を定義し, (α, β, i) := lexp(P~)とするとき

lp(P~) :=i, lcoefW(P~) :=aαβi

によって P~ の leading point と leading coefficientを定義する. また(An)r の部分集合 S に対して

EW(S) := {lexpW(P~)|P~ ∈S\ {0}}

とおく. 以上の定義によって4.1節の議論が An に対して適用できる. 特に, (An)r の左部 分 An-加群 N の有限部分集合G が, 順序 W に関するグレブナ基底(W-グレブナ基底) とは, EW(N) = mono(EW(G))が成り立つことである.

定理 4.3.3. Gを (An)r の左部分An-加群 N のW-グレブナ基底とする. NG の生成 する(D0)r の左部分 D0-加群とすると,GN の involutive basis である.

証明: G={P~1, . . . , ~Ps}とおいて lexpW(P~k) = (α(k), β(k), ik)とおこう. すべてのk につ いてlcoefW(P~) = 1 としても一般性を失わない. 異なる i, j ∈ {1, . . . , s} に対して

α(ij) :=α(i)∨α(j)−α(i), β(ij) :=β(i)∨β(j)−β(i) とおいて

Sij :=

{ xα(ij)β(ij) if lp(P~i) = lp(P~j)

0 otherwise

と定義すると, 定理4.1.20によってlp(P~i) = lp(P~j) のとき SijP~i−SjiP~j =

s k=1

QijkP~k, lexpW(QijkP~k)W lexpW(P~i)lexpW(P~j) を満たす Qijk∈An をとれる.

qijk :=

{ σ(Qijk) if lp(P~i) = lp(P~j) and ord(QijkP~k) = (i)∨α(j)|

0 otherwise

92

とおくと,

σ(Sij)σ(P~i)−σ(Sji)σ(P~j) =

s k=1

qijkσ(P~k),

lexpW(qijkσ(P~k))W lexpW(P~i)lexpW(P~j) = lexpW(σ(P~i))lexpW(σ(P~j)) が成り立つので定理1.2.16によってσ(G) :={σ(P~)|P~ G}は(C[x, ξ])r の部分C[x, ξ]-加群

N :=C[x, ξ]σ(P~1) +· · ·+C[x, ξ]σ(P~s)

の順序W に関するグレブナ基底である. 更に定理1.2.26によってシジジー加群 S(σ(P~1), . . . , σ(P~s)) :=

{

(f1, . . . , fs)(C[x, ξ])s

s k=1

fkσ(P~k) = 0

}

C[x, ξ]{~vij |1≤i < j≤s}で生成される; ただし

~ vij :=

(0, . . . ,

(i)

σ(Sij), . . . ,

−σ(S(i) ji), . . . ,0)(qij1, . . . , qijs) if lp(P~i) = lp(P~j)

0 otherwise

とおいた. このことから C[x, ξ]-加群の完全系列

0−→(C[x, ξ])s(s1)/2 −→ψ (C[x, ξ])s−→ϕ (C[x, ξ])r (3.1) を得る. ここで準同型 ϕψfk, fij C[x, ξ]に対して

ϕ((f1, . . . , fs)) =

s k=1

fkσ(P~k), ψ((fij)i<j) =

i<j

fij~vij

で定義される. ここで C{x}C[x] 上平坦であること(定理3.2.17,命題7.1.4)と, C{x} ⊗C[x]C[x, ξ] =C{x}[ξ]

であることに注意すれば(3.1) から C{x}[ξ]-加群の完全系列

0−→(C{x}[ξ])s(s1)/2 −→ψ˜ (C{x}[ξ])s−→ϕ˜ (C{x}[ξ])r (3.2) を得る. ここで準同型 ϕ˜ と ψ˜は fk, fij C{x}[ξ]に対して

˜

ϕ((f1, . . . , fs)) =

s k=1

fkσ(P~k), ψ((f˜ ij)i<j) =

i<j

fij~vij で定義される.

さてP~N の任意の元としよう. 我々の目標は

P~ =Q1P~1+· · ·+QsP~s (3.3) と

ord(QkP~k)ord(P~) (k= 1, . . . , s)

を満たす Q1, . . . , Qs ∈ D0 が存在することを示すことである. そのために (3.3) をみたす Q1, . . . , Qs ∈ D0 のうちで

m:= max{ord(QkP~k)|k = 1, . . . , s}.

を最小にするものをとってm >ord(P~) と仮定しよう. すると(3.3) の両辺の主シンボル をとって

s k=1

σm0

k(Qkmk(P~k) = 0

を得る. ただし mk := ord(P~k), m0k :=m−mk とおいた. mij :=(ij)| とおくと, 完全系 列 (3.2) から

m0

1(Q1), . . . , σm0

s(Qs)) =

i<j

fij~vij.

をみたす fij C{x}[ξ] で ξ について m−mij 次斉次なものがとれる.

V~ij := (0, . . . ,

z}|{(i)

Sij, . . . ,

z }| {(j)

−Sji, . . . ,0)(Qij1, . . . , Qijs)(An)s. とおいて,σ(Fij) = fij なるFij ∈ D0 をとって, Q01, . . . , Q0s (D0)r

(Q01, . . . .Q0s) = (Q1, . . . , Qs)

i<j

FijV~ij. で定義する. すると

P~ =

s k=1

Q0kP~k+

i<j

FijV~ijmat(P~1, . . . , ~Ps) =

s k=1

Q0kP~k

が成立する. ただし mat(P~1, . . . , ~Ps) は横ベクトル P~1, . . . , ~Ps を縦に並べてできる s×r 行列を表わす. ところが ord(Q0kP~k) < m であるから, これは m の取り方に反する. 従っ て m= ord(P~)とできることが示された. このとき,

σ(P~)C{x}[ξ]σ(P~1) +· · ·+C{x}[ξ]σ(P~s) となるから定理の主張が示された. 2

次に有理関数(または有理形関数)係数の微分作用素環のグレブナ基底を考察しよう. 以 下ではK を有理関数体C(x),あるいはC{x}の商体K0 として, K-係数の微分作用素環 R:=Kh∂i を考察する. Nn の全順序 R

β Rβ0 ⇐⇒ |β|<|β0| or (|β|=0|, β Lβ0) で定義し,Nn× {1, . . . , r} の全順序 R

(β, i)R0, j) ⇐⇒ |β|<|β0|

or (|β|=0|, i < j)

or (|β|=0|, i=j, β Rβ0) 94

で定義して R-順序と呼ぼう. この順序によって, R = C(x)h∂iR = K0h∂i に対して 4.1 節の議論が適用できる. 特にこの順序に関する P~ ∈ Rr の leading exponent, leading coefficient, leading term をそれぞれ lexpR(P~), lcoefR(P~), ltermR(P~) と書こう. また S ⊂ Rr に対して ER(S) も通常通り定義される.

我々の目的は, An,D0,C(x)h∂i,K0h∂i のグレブナ基底の間の関係を考察することであ る. これらの微分作用素環の包含関係は次のようになっている:

An D0

C(x)h∂i ⊂ K0h∂i

写像$:N2n× {1, . . . , r} −→Nn× {1, . . . , r}$(α, β, i) = (β, i) で定義しておく. 命題 4.3.4. (高山) N2n× {1, . . . , r} の順序W

(α, β, i)W0, β0, j) ⇐⇒ |β|<|β0|

or (|β|=0|, i < j)

or (|β|=0|, i=j, β L β0) or (β =β0, i=j, |α|<|α0|)

or (β =β0, i=j, |α|=0|, α≺L0 α0)

で定義する(L, L0 は成分を適当に置換したときの辞書式順序). これはこの節の始めに 定義した W-順序の特別な場合である. N を (An)r の有限部分集合 G の生成する (An)r の左部分An-加群とする. ˆNGの生成する (C(x)h∂i)r の左部分 C(x)h∂i-加群とする. GN のW-順序に関するグレブナ基底ならば, GNˆ のR-順序に関するグレブナ基 底でもある.

証明:

ER( ˆN) := {lexpR(P~)|P~ ∈Nˆ \ {0}}= mono(ER(G))

を示せばよい. P~ ∈Nˆ \ {0} とする. 適当な多項式a C[x] によって a ~P ∈N とできる. このとき定義から

lexpR(P~) = lexpR(a ~P) =$(lexpW(a ~P))∈$(mono(EW(G))) = mono(ER(G)) を得る. 2

命題 4.3.5. Nˆ を(C(x)h∂i)rの有限部分集合Gの生成する(C(x)h∂i)rの左部分C(x)h∂i -加群とする. ˆNG の生成する(K0h∂i)r の左部分 K0h∂i-加群とする. GNˆ のR-順 序に関するグレブナ基底ならば, GNˆ のR-順序に関するグレブナ基底でもある. 証明: G={P~1, . . . , ~Ps} とおく. GNˆ のグレブナ基底だから, lp(P~i) = lp(P~j)のとき

sp(P~i, ~Pj) =

s k=1

QijkP~k, lexpR(Qijk)RlexpR(P~i)lexp(P~j)

をみたす Qijk An が存在する. これを (K0h∂i)r における関係式とみなせるから, GNˆ のグレブナ基底である. 2

P~ (D0)r のとき, P~ (K0h∂i)r とみなせて, coefR(P~)∈ O0 =C{x} となることに注 意しておく.

命題 4.3.6. N を (D0)r の有限部分集合 G の生成する (D0)r の左部分 D0-加群とする. Nˆ を Gの生成する(K0h∂i)r の左部分K0h∂i-加群とする. GNˆ のR-順序に関するグ レブナ基底であって, かつすべての P~ G に対して lcoefR(P~)(0) 6= 0 ならば, GN のD-順序に関するグレブナ基底でもある.

証明: G={P~1, . . . , ~Ps} とおく. GNˆ のグレブナ基底だから, β(k):= lexpR(P~k) とお いて, lp(P~i) = lp(P~j)のとき,

Sij := ltermR(P~j)∂β(i)β(j)β(j)ltermR(P~i)∂β(i)β(j)β(i)

とおくと, (K0h∂i)r におけるGによる簡約操作(アルゴリズム4.1.12)においてlcoefR(P~k) による割算のみが用いられ, 仮定から lcoefR(P~k) は C{x} の可逆元であることに注意す れば,

SijP~i−SjiP~j =

s k=1

QijkP~k, lexpD(Qijk)D lexpD(P~i)lexp(P~j)

をみたすQijk ∈ D0 が存在することがわかる. 故に GN のグレブナ基底でもある. 2

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