伝統仏教教団における僧侶養成の現状と課題
一︑天台宗の僧侶養成
制 度 l 現 状
︻僧籍登録︼
師僧を決定し︑座主から法名を授与され︑得度受戒を受
け僧籍登録された者を僧侶という︒得度受戒は︑十歳以
会じ 円 じ
ま 住
井
康
上であれば国籍にかかわらず︑本山における集団得度
(毎
年
一回八月)又は各寺院で任意に受けることができ
ヲ令
︒
叡山学寮(僧侶公募)入寮者は︑経過を見ながら在寮中
に得度︑登録を行う︒
{四度加行}
教師資格取得のためには︑必ず四度加行を履修しなけれ
ばならない︒ { 比
叡山行院︼
加行を中心に二カ月ずつ年三回行われる︒加行期間は三
十五日以上とされている
︒
律師以上の僧階取得には行院 履修が必要である
︒
{入壇湛項・登壇受戒
︼
大律師以上の僧階取得に必要である
︒
{資格取得機関
}
修了学歴︑履修単住及び資格取得機関により補任される
資格が異なる︒
①
地方教師検
定
加行修了者であれば受験できる
︒各教区で行われ権律
師の補任資格を得る
︒
②
中央教師検定 叡山学院及ぴ大正大学で年一回行われ︑修了学歴︑資 格取得機関及び加行履修条件により律師乃至少僧都の
補任資格を得る︒
③宗立学校
叡山
学院及び大正大学で所定単位を履修した者は大律
師乃至少僧都の補任資格を得る
︒
④指定学校
比叡山高校及び駒込高校で所定単位を履修した者は律
師の補任資格を得る︒
⑤叡山学寮
僧侶公募者のための学寮(定員三名)
で︑遂業した者
は中律師の補任資格を得る
︒
⑥
地方
学寮
‑152‑
初等部卒業者は権律師︑高等部卒業者は律師の補任資
格を得る︒
2 課 題 天台宗では十二階級の寺格が定められ︑僧階によって 住職資格にある程度制限がある
︒
僧都以上であればほと んどの寺院に住職することが可能であるが︑もし後継者 が相当僧階を補任されていない場合は法類が兼務又は代 務住職となり︑後継者が速やかに住職できるよう努力す
るこ
とと
なる
︒
僧階補任には単位取得が優先される傾向があるため
現在は年齢制限を設け若年者が高位の僧階に補任されな
いようにしている︒単住云々に関する問題は出ていない
が︑学歴が優遇される面は若干ある︒
僧侶公募は世襲化に刺激を与え︑広く求道者を募るた
めに設けられた制度である︒従来から得度者は少なくな
かっ
たが
さらに僧侶としての道を歩みたいとの希望も
あったため︑平成七年から始められた︒ 二︑真言宗智山派の僧侶養成制度
l 現 状
真言宗智山派における現行の僧侶養成制度は︑大学在
学又は卒業者に対する課程とそれ以外の者に対する課程
に分けられる︒大学生は一期から四期までの研修︑加行︑
入壇港項等により教師資格を取得しそれ以外の場合は
専修学院︑成田山勧学院等の研修機関により取得する︒ {得度︼
六歳以上であれば得度することができる︒得度式は智山 派寺院において行う︒
{一期研修︼
常用経典の読諦・法要に必要な声明・基礎的な知識を修
得する︒大正大学生は二十四日間一般大学生は三十
日間の研修を行う︒
{加行︼
五十六日間の加行を行う︒
‑153‑
︻二期研修︼
大正大学生は十五日間一般大
学生
は三十一日間の研修
を行
︑っ
︒
{三期研修・報恩講︼
教相法要の研修で︑処依の経典である﹃大日経﹄をもと にした論議が中心となる︒大正大学生一般大学生とも 五日間の研修を行う︒
︻入壇濯項︼
総本山智積院において︑毎年三月上旬に行う︒所用日数
は人数により異る
︒
{四期研修
︼
諸作法を修得するため︑大正大学生︑
一般大学生とも五
日間の研修を行う
︒
一期から四期までの研修はいずれも智山教
学
研修所にお
いて研修する︒
︻専修学院・
成田山勧
学院}
一年間在院し︑教相
事
相を修得する
︒
{教区講習会
}
各教区ごとに講習会を開催し︑教師を養成することがで
主3 h
v ︒
2 課 題 各機関にそれぞれ問題点がある
︒大正大学の場合は道
心寮閉鎖により
一︑二
期研修を延長したが十分ではな く︑加行日数も取りに
く
くなり︑講義内容が徐々に減少
している︒
一般大学生の場合は事相教相を修得するには
三十一
日間
二回では短
すぎ︑専修
学院・
成 田 山 勧
学院 (一年間)等
の場合は年齢層が広範囲にわたること︑教 育者の少ないことが問題である
︒
教区講習会の場合は開 催する教区自体が少なく︑講習内容も十分ではないため
﹂の講習会を経て教師になる者はほとんどいないのが現
状である︒
現代のさまざまな社会問題(福祉
・生
命倫理・環境
等)に宗
教者として対応できない︑僧侶としての本分が
理解されていない等
︑僧侶の資質に関する問題点に対し
て︑知日山伝法院は僧侶の
理想像を﹁
智
山派の教えを
信仰
‑154‑ する人
L
﹁教えを自身の問題として理解する人
又は理 解しようと努力する人﹂﹁教
︑えを自身の問題として
実践
する人
又は実践しよ
うと努力する人﹂﹁檀信徒か
ら信 頼される人
﹂
と考えている
︒
現行システムのさまざまな問題を見据え
理想とする
僧侶を養成するため
の具
体策として︑教理を
学ぶ︑教理
を実践するという
こ商から
の養成システムの検討が必要
である︒
三︑真言宗豊山派の僧侶養成制度 l 現 状
求道心をもって悟りを聞くことが出家の道である︒出
家の根本には菩提心がなければならない︒菩提心には能
求(菩提心を求める)の心と所求(自己の菩提心を確認
する)の心があり︑前者は教相
(弘
法大
師
の著作研究を
中心とする教学)︑後者は事相(修行を中心とする実践)
にあたる︒両者が相侠った者が長谷観音の慈悲の伝達者
としての真言
行者
であ
る︒
{得度
︼
得度は満六歳に達した者が受けることができる︒僧名を
名乗り僧籍簿に登録され度牒を授与された者は僧侶と呼
ばれ
る︒
︻四度加行]
実践面の作法を学ぶ豊山派僧侶としての基本的な修行で
総本山長谷寺及び全国の加行道場で行われる︒期間はお およそ三十日で道場により異る︒{伝法濯項︼
僧侶としての資格を授かる二
日程
度の
儀式
で︑
四度加行
成満者が入壇資格をもっ︒総本山長谷寺及び宗派の承認
を得た寺院で行われる︒
︻研修機関︼
①大正大学及び種智院大学
得度
︑
四度加行及び伝法濯項を受けていない者は在学
中に履修し︑総本山長谷寺における宗派指定研修を履
‑155‑
修する︒
②宗立専修学院
得度した高校卒業者の僧侶養成機関で︑総本山長谷寺
に二
年間
入寮
し︑
二年目に四度加行及び伝法濯項を受
ける︒
③教師試験検定
高校及び短大卒業者又は大学卒業者で︑教養講習所︑
宗立事相講習所︑特別指定研修第一期及ぴ第二期を受
講したものが受験できる︒修了学歴により階級が異な
る
④特別専修所
得度
︑ 四度加行及び伝法濯項を履修した者が試験検定 を受けるための研修機関
︒
毎夏十五日間長谷寺又は宗 務所に開設され︑二年間で全課程を修了する︒
⑤総本
山参篭所 宗派寺院寺族を対象とした短期教師養成機関︒例年六 月一日から三十日間開設される
︒
2 課 題 短期間の教師養成制度は必要に迫られて存在している が︑実践が少ない等のマイナス面が多く決して好ましい ものではない
︒
教師資格取得後の研修機関として︑総本山研修所︑教 化センター養成所が
設置されている︒総本山研修所は総 本山長谷寺における
二
年間の入寮生活︑教化センター養 成所は基礎課程
二年︑専
門課程二年の研修を行
って
いる
︒
四︑高野山真
言
宗 の 僧 侶 養 成 制 度 l 現 状
︻得度
︼
高野
山真言宗僧侶は︑教相と事相を修得しなければなら
ない︒事相は師資相承であるから
まず師僧につき︑事 相の基礎を身につけた後(
学
齢に達した者)︑総本山金 剛峰寺︑高野山大学︑高野山専修学院
・尼僧学院等の専
156‑
門機
関︑
師僧寺院のいずれかで得度を受ける
︒得度
した
旨を宗務所へ申請し受理されると度牒が授与され︑この 時点で高野山真言宗の僧侶と認定される
︒
︻受戒
︼
受戒は毎年
一回総本山
主催または専門機関で三日間開催 される
︒
四度加行を受けるには必ず受戒を受けなければ 介 晶 ︑
rり 介
品 い
︒
︻四度加行︼
百日間の加行で①専門機関②高野山大
学③高
野山事相講
伝所または④師僧寺院等のいずれかで受ける︒①は僧侶 養成の専門機関による加行︑②は高野山大学在学生対象 の加行であり︑成満すると伝法濯項後の教師検定は免除
され
る︒
︻伝法溜項︼
四度加行を成満すると︑伝法濯項を受けることができ
﹂れにより法を伝えること
のできる阿閑梨の資格を授与
される︒
四度加行①②成満者及び高野山大学の所定単位 取得者以外は︑濯項の後教師検定を受ける︒
︻権教師}
教師ではないが︑得度を受けた後十一日間の講習を終了 すると住職の補助的役割を担うことができる制度があり
﹂れを権教師という
︒
2 課 題 専修学院の定員は八十名であるが
在家出身の僧侶希
望者が多く︑数年前には百二十名の応募があり寺院徒弟
が入れないという時期があっ
た ︒
五︑日蓮宗の僧侶養成制度
1 現 状
十教区・七十
二宗
務所・寺院数五千・教師数九千(内
尼僧一千・住職資格を持つ尼僧三百五
十)
︑毎
年
二百名
程度が度牒授与を受け
百二十名程の教師が補任されて
い ? 匂 ︒
︻得度︼
‑157‑
師僧をたてて得度し︑宗務院に得度屈を提出して度牒を 受ける︒度牒交付は日蓮聖人が初めて題目を唱えた大本
山清澄寺で年四回行われる︒
{教師養成機関︼
立正大学・
身延山大学等で僧階単位を取得するか︑検定
試験
を受
ける
︒
︻入場考査}
信行道場入場資格を得るために毎年各教区ごとで実施さ れる考査で︑これに合格するためには一通りの読経・所