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人生最良のパートナー

その 2

OD 錠の基礎について学ぶ

したいと思っています。ですから錠剤を温湯 で懸濁して経管チューブで服薬することには 慎重な配慮が必要で, 患者さんのモチベー ションを下げてしまうことに注意しなければ なりません。また錠剤は,徐放性,腸溶性,

安定性,刺激性,苦味などのために理由が あって錠剤となっている薬剤もあるため,薬 剤師が薬物動態も含めた専門的視野から判断 し,粉砕,溶解は最後の手段として,できる だけ避けるべきだと思います。

そこで嚥下困難な患者さんに錠剤をできる だけ楽に服薬してもらうためには,何らかの 工夫を施した製剤,バリアフリー製剤が必要 となります。バリアフリー製剤とは,患者さ んと薬剤との間にある障害,すなわち錠剤で あるならば嚥下困難という厄介な障害を取り 除いた製剤との意味で,口の中でラムネ菓子 のようにスッと溶けて楽に服用できる OD 錠 はその代表例といえるでしょう。OD 錠は嚥 下困難な患者さんやコンプライアンスが不良 で病状が知らずと進行している患者さんに とっては, 少量の飲水で楽に飲み込める錠 剤,あるいは気軽にどこでも服薬できる画期 的な製剤です。しかし OD 錠が臨床に投入さ れた当時は認知度が思いのほか低く,医師は もとより薬剤師に至ってもその真価を理解し ている者が少なかったため,嚥下困難な患者 さんに処方された OD 錠をわざわざ粉砕して 調剤する,あるいは温湯で溶解して懸濁液と するといったことが日常茶飯事に行われてい ました。OD 錠のなかには微粒子が含有され 苦味マスキングや徐放化によって薬効がコン トロールされている製剤もあるため,粉砕や 温湯での懸濁は望ましくありません。しかし OD 錠は懸濁しやすい錠剤 , 経管投与に 適した錠剤 と誤った認識があったことも否 定できません。最近になって製薬会社の情報 活動やメディアによる宣伝が効を奏し,口腔 OD 錠の臨床での認知度は急速に高まってき

ており,OD 錠の適正な服薬方法も浸透して きました。これにともない患者さんサイドか ら医師,薬剤師に同じ成分の薬剤であるなら ば,楽に気軽に服用できる OD 錠を,ブラン ド(BR), ジェネリック医薬品(GE) を問 わずに処方して欲しいと希望してくるケース も見受けられるようになってきました。OD 錠は臨床での市民権を確実に獲得し, 飲み やすさを追及した製剤 ,そして 人生最良 のパートナー として薬物治療にしっかりと 根付きつつあると実感しています。

3.OD 錠の呼称

口の中ですぐに溶解する錠剤を一般に速崩 壊錠と呼び,本シリーズで称している OD 錠 は厳密にはこの速崩壊錠の一部に分類されま す。すなわち速崩壊錠には 口腔内崩壊錠 ,

速崩錠 などがあり, 口腔内崩壊錠 (あ るいは 口腔内速溶錠 )は一般的には水な しで服用できるもの(唾液で崩壊させて服用 できるもの)をさし, 速崩錠 は水ととも に服用するものをさし区別されていますが,

臨床では 楽に服薬できる錠剤 とまった く同じ認識にあります。OD 錠の他にも様々 な略称(呼称) がありますので,図 1にそ の代表的なものを示しました。 この呼称に は厳密な定義はなく統一性はありませんが,

速崩壊錠は PLCM 対策(Product  Life  Cycle  Management)や VAG 対策(Value-Added  Generics)の一貫として通常錠の剤形追加と して市販するケースが多いため,速崩壊錠と

図 1  速崩壊錠の呼称

通常錠とを区別するために各メーカーが独自 の呼称をつけたわけです。少し前になります が,持続性製剤が流行して臨床に数多く投入 された時期があり,製品名の後に R,L,SR といった各製品特有の様々の呼称が付けられ 医療現場が混乱したことが記憶にあります。

この様々な呼称は処方せんを記載する医師を 混乱させ,誤った呼称が記載された処方せん を薬剤師が疑義照会しなくてはならないケー スが激増して,業務がたいへん煩雑となりま した。今では PC による処方せん発行が一般 的ですので,このような疑義照会は少なくな りましたが,保険調剤薬局での調剤業務を円 滑,安全に行う意味でも,やはり速崩壊錠の 呼称も OD 錠,あるいは D 錠などに統一して いただけるとありがたいと思っています。

4.OD 錠の分類

OD 錠は口のなかで直ぐに溶ける 飲みや すさを追求した製剤 ですが,図 2に示し たように製造技術の相違によって,OD 錠は

大きく鋳型錠製剤,湿製錠製剤,一般錠型製 剤の 3 つに分類されます(この分類は上記の 呼称の相違とは相関していませんので,ご注 意ください)。

鋳型錠製剤は5-HT3受容体拮抗型制吐剤 のゾフランザイディスやナゼア OD 錠に代 表される比較的初期に発売された OD 錠で,

PTP シールのポケットに薬剤を流し込み凍 結乾燥,あるいは通風乾燥して固化した製剤 です。 アステラス製薬ではこの製造技術を WOWTAB-WET (WOWTAB = WithOut  Water  TABlet)として確立し,H2受容体拮 抗薬のガスターOD 錠に投入して OD 錠が臨 床で普及する発端となりました1 ,2 )。しかし ながら鋳型錠製剤は錠剤強度が脆弱であるた め臨床でのハンドリングや PTP からの押し 出しに支障をきたすこと,また全自動錠剤分 包機でワンドースパッケージ調剤ができない こと,さらに WOWTAB-WET では PTP シールのポケットに充填し脱水した後にメニ スカスのために錠剤表面が若干陥没して錠剤

図 2  OD 錠(速崩壊錠)の製造技術による分類 くすり

30都薬雑誌 Vol 31 No.3(2009)

良き製剤は人生最良のパートナー

としての審美性が損なわれてしまうといった 欠点が指摘されていました。 ゾフランザイ ディスやナゼア OD 錠のように化学療法を施 行する際に単剤で頓服的に服薬する薬剤であ れば錠剤強度の弱さもある程度許容できます が,ガスターOD 錠は処方頻度や他剤との併 用頻度も高く全自動錠剤分包機への適応は調 剤上の必須条件となるため, 後の製造技術 WOWTAB-DRY によりガスターD 錠が誕 生する契機となりました。

湿製錠製剤はエルメッドエーザイの EMP 速崩錠に代表される OD 錠で,湿潤した薬剤 をエーザイが独自に開発した専用のハイテク 機器を用いて低圧で成型した後,同じく専用 のベルトコンベアー式乾燥機で錠剤中の水分 を蒸発させて製造します3 )。EMP 速崩錠は 錠剤強度が高いためハンドリングに支障な く,また M 錠との呼称があるものは全自動 錠剤分包機での調剤にも適応可能な利点があ ります。錠剤内部は 3 次元多孔質のブリッジ 構造になっていて,水分(唾液など)が錠剤 内部へ侵入すると一気に崩壊するメカニズム になっています。また 3 次元多孔質構造が錠 剤の軽量化にも寄与していて,このことが全 自動錠剤分包機での落下強度,および他剤と の衝突強度を高めることにつながっていると 思われます4 )。 またエルメッドエーザイは GE の製造を手掛けるメーカーであ

るため EMP 速崩錠も大半は GE で あり,BR が通常錠しかなくても GE が EMP 速崩錠となって 飲みやす さを追求した製剤 となっている製 剤も散見します。このことは薬剤師 が 人生最良のパートナー を患者 さんに見つけて差し上げるときの見 逃せないポイントになると推察さ れ,歓迎すべき VAG 対策として評 価できると思います。

一般錠型製剤は,崩壊剤添加,崩

壊機構工夫, 多孔質成形体型製剤のさらに 3 つに細分類されます。 崩壊剤添加型製剤 は結晶セルロースなどの成形性に優れる添 加剤を加え, 錠剤強度と崩壊性を両立させ た OD 錠で,プロトンポンプインヒビターの タケプロン OD 錠,経口糖尿病治療薬のベイ スン OD 錠がこれに該当します。崩壊機構工 夫型製剤は,滑沢剤で錠剤表面を覆い錠剤強 度を上げるとともに超崩壊剤によって崩壊性 を高めた OD 錠で,抗アレルギー剤のエバス テル OD 錠が代表例として挙げられます。多 孔質成形体型製剤は上記したガスターD 錠の WOWTAB-DRY 技術によって製造された OD 錠で, 2 種類の糖アルコールを混合造粒 し低圧成形した後,加湿,加熱,焼結処理し て錠剤強度を高めた製剤です。

以上,製剤技術の相違から OD 錠を分類し ましたが, 製剤学の講義のようで臨床では 若干馴染みにくいかもしれません。 そこで OD 錠をもう少し身近に理解してもらえるよ うに, 臨床に登場した順を追って簡単に分 類してみました(図 3)。第一世代は初期の OD 錠で,液乾燥法により薬物と添加剤の分 散溶液を PTP ポケットなどの鋳型に流し込 み乾燥して製造したタイプで,ザイディスや WOWTAB-WET のガスターOD 錠がこれ に分類されます。第二世代は,湿式圧縮法に

図 3  臨床における OD 錠の分類

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