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ドキュメント内 地方制度を介した (ページ 174-198)

給与単価は、地方公務員法 24 条に基づき国家公務員や民間の給与水準等を参考に決定す ることになっているが、実際には国家公務員の給与水準で決定されてきた。これは国家公 務員の給与が民間企業の給与水準を考慮しているから、国家公務員の給与水準で調整すれ ば、地方公務員の給与水準が民間企業と国家公務員の給与に準じることになるからである。

これは既に長期に亘って利用されてきた運用ルールとなっているが、法律の規定を援用し た基準と言えるだろう。

一方で職員数では省庁別シェアが維持されてきた。これは、従来必ずしも明確になって こなかった基準であり、省庁間の合意によって拘束力のあるルールとして維持されてきた ものと考えられる。省庁別シェアというルールは全体の膨張を抑制する一方で、厚生省所 管職員の増加が抑制できなければ、これに誘発されるように職員数が拡大していく仕組み

である。90-2000年度に厚生省の所管職員数が5%程度拡大しているが、この影響もあり、

80-2000年度で見ると、標準団体全体の職員数は3%とわずかではあるが増加している。

省庁別シェアが維持され、厚生省所管の職員数が増加したことで、標準団体全体の職員 数も削減が進まなかった可能性がある。この結果、給与単価の上昇がそのまま給与費等需 要額の膨張に転嫁されている。需要額の上昇には測定単位や補正係数の影響も反映するが、

給与費等需要額の指数変化が給与単価の上昇と連動していることから、この単価が 80-2000年度の需要額を押し上げてきた。つまり、給与費等需要額は給与単価のルールによっ て拡大してきたのであり、職員数は長期的に維持されてきたことで、この需要額を下支え してきたものと結論付けることができる。

第5節 運用ルールに基づく給与費等を除く厚生労働費の増加

厚生労働費(除給与費等)は、80年度の0.6兆円が2000年度には3.8兆円と、実に5.9倍 に急膨張している。これはこの間の需要額増加額の20%を占める規模であり、政府同様社 会保障関係費の膨張が市町村でも深刻化していたことを示唆している。このような膨張を 惹起した原因の1つはこの分野で制度の新設、変更が行われてきたことにある。こうした 実態を踏まえ、需要額の拡大に影響を与えたルールを特定していく。

5.1 厚生労働費における主要な「地域政策」の新設と変更

この費目における新たな「地域政策」の導入と既存政策の変更を『制度解説』から簡単 に整理する。需要額では82年度の老人保健法に基づく事業費や、88年度の国民健康保険 制度の見直しに伴って追加された経費、98年度に経費算入が始まった介護保険の影響が大 きい。これらは主に高齢化社会に対応した社会保障制度の充実と捉えることができる。厚 生労働費(除給与費等)には生活保護など国庫支出金を伴う「地域政策」が多く、これらの新 設、変更によって国庫負担金の地方負担分や特別会計への繰出金が増加している。

80年代で需要額の拡大に影響を与えた「地域政策」の変更に補助率の引き下げもある。

これは国の財政再建と地方分権の推進等を実現するため、暫定的な措置として実施された。

これにより 50%を超える補助率を設定していた事務でその引き下げが85年度と 86年度

に実施されている10)。これらも需要額の地方負担分を拡大する要因となっていた。

これらは、高齢化社会の到来や地方分権に向けた事務配分の見直しに伴う地方交付税制 度の修正であるが、この結果厚生労働費(除給与費等)は膨張している。以下ではこのこと を具体的に見ていこう。

5.2 国庫支出金が規定する運用ルール

厚生労働費(除給与費等)に多く見られる国庫支出金には需要額を膨張させる法律による 規定がある。1つは地方財政法 10 条である。この条文は国との利害関係からその円滑な 運営を期するために国が進んで経費を負担する必要がある「地域政策」を特定している。

これらの国庫支出金は一般に国庫負担金と呼ばれ、国が義務的に負担すべき経費となって いる11)。厚生労働費(除給与費等)にはこの対象が多く、2000年時点で市町村の「地域政策」

として示されているものを整理すると表4-9のようになる。

表4-9 地方財政法第10条に規定された厚生労働費の「地域政策」(市町村)12)

号 対象となる「地域政策」

2 生活保護に要する経費

3 保健所の施設及び設備に要する経費 4 結核及び感染症の予防に要する経費 7 身体障害者の更生援護に要する経費 7の2 婦人相談所及び婦人相談員に要する経費 7の3 知的障害者の援護に要する経費

7の4 老人保健事業、老人の養護委託及び葬祭並びに養護老人ホーム及び特別養護老人 ホームに要する経費

7の5 介護保険の介護給付及び予防給付並びに財政安定化基金への繰入れに要する経費 8

妊産婦及び乳幼児の健康診査、児童相談所、児童一時保護所、未熟児、身体障害 児及び骨関節結核その他の結核にかかっている児童の保護、児童福祉施設並びに 里親に要する経費

8の2 児童手当に要する経費 8の3

国民健康保険の事務のうち介護納付金の納付に関する事務の執行並びに国民健康 保険の療養の給付並びに入院時食事療養費、特定療養費、療養費、訪問看護療養 費、特別療養費、移送費及び高額療養費の支給並びに老人保健医療拠出金及び介 護納付金の納付に要する経費

8の5 重度障害児に対する障害児福祉手当及び特別障害者に対する特別障害者手当の支 給に要する経費

注:政令市のみが対象となっている規定は3号、4号である。

資料:石原・二橋(2000)

これらの「地域政策」では地方財政法 11 条が算定基準と国庫負担金の補助率を法律ま

10) 暫定措置は88年度で終了し、89年度以降、補助率は固定されているが、このとき、生活保 護費など一部の経費では再修正によってこの比率が上昇している。つまり、需要額に対する 負荷は、この年以降、やや緩和されている。

11) この規定の対象となっている事務には補助金を名称としている場合もある。

12) 石原・二橋(2000)130~132頁参照。

たは政令で定めなければならないとしている。この規定は、表4-9に掲載した「地域政策」

に関して法律に則して経費算定を実施することを求めている。そして、これに従って算出 された事業費に補助率を乗じて得られる国庫負担金は国が負担する義務を負うことになる。

さらに地方財政法では 11 条の2においてこれらの経費の地方負担分を財政需要額に算 入することを義務付けている。この財政需要額には特別交付税の算定に用いる特別財政需 要額も含んでいるから必ずしも需要額とは限らない。しかし、少なくとも地方交付税がそ の地方負担分を担うことになっている。これらの規定によって表の「地域政策」について は国庫負担金と財政需要額で財源措置を実施することになっている。

加えて、厚生労働費(除給与費等)では、介護保険や老人保健医療など特別会計への繰出 金も多く存在している13)。特別会計に対して国から直接補助金が入っている場合、需要額 の国庫負担金と同様の市町村負担分が存在し、これを料金収入等で負担している。しかし ながら、料金のみで負担させることが適切ではないため、税金等を充てることが望ましい 特別会計に対して、国がその負担を普通会計に求めたものである。従って、特別会計への 繰出金は普通会計における国庫負担金の市町村負担分と実質的には同じ意味である。この 場合、これらは制度化された運用ルールであり、本節ではこの費用を国庫負担金の市町村 負担分に加えて厚生労働費(除給与費等)の拡大に与えた影響を検証する。

5.3 ルールによる需要額の増加

『制度解説』には定率の国庫負担金の市町村負担分や、介護保険、老人保健医療などの 特別会計への繰出金が掲載されている。これを利用し、国、都道府県を問わず、国庫負担 金や都道府県支出金に伴う市町村負担分と、繰出金をそれぞれ把握し、次にこれらの費用 が単位費用に占める割合を算出した。給与費等需要額の算定方法と同様に、この比率を単 位費用別需要額に乗じることで「市町村負担分」と「繰出金」に対応する需要額を求め、

これらを表4-10に整理した。また、表では「その他経費」として厚生労働費(除給与費等) からこれら2つの費用を控除した値も掲載している。

市町村負担分は80-90年度の増加が大きく、90-2000年度にはその影響が3分の1程度 に低下している。このため、80-2000 年度の厚生労働費(除給与費等)の 23.6%、需要額増 加額全体の4.7%を占めるに留まっている。

これに対し、繰出金は80-90年度が市町村負担分とほぼ同じ規模で増加したが、90-2000 年度に急増している。この額は厚生労働費(除給与費等)の 55.4%、需要額増加額全体で見

ても15.5%になっている。

この結果、厚生労働費(除給与費等)の増加額に占めるこれらの「地域政策」の経費の割合

は、90-2000年度で71.0%、80-2000年度で72.0%となっており、これらの経費が占める

割合が極めて高いことが分かる。需要額増加額全体で見ても14.3%を占めており、これら

13) 特別会計の設置は、職員を特別会計で確保できるために特定省庁の普通会計における職員 数が膨張するときには、これを抑制する効果もある。

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