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中東・北アフリカ(MENA)地域に おける鉄道プロジェクト

序 論

中東地域の鉄道事業はここ何年間も停滞していたが,現在は鉄道建設ブームが同地域で沸 き起こっている。モロッコからオマーンに至る地域において,数多くの新規鉄道建設プロジ ェクトが計画中または実施されている。少なくとも2,500億ドルの投資を伴うこれらのプロジ ェクトによって,鉄道網の総延長距離は現在のほぼ倍に相当する6万7,000キロ以上に達する 見込みであり,これは鉄道分野における過去最大規模の設備投資プロジェクトの一つである。

鉄道の登場はこの地域では新しい現象ではない。中東初の鉄道が敷かれたのは1850年のこ とであり,エジプトのカイロ・アレキサンドリア間に敷設された。列強支配の植民地がレヴ ァント地方と北アフリカにまで伸展した結果,鉄道網はアラビア半島の人跡未踏の砂漠地帯 を除く地域全域において建設され,1920年代までには,中東地域のほとんどの国がヨーロッ パの鉄道網に匹敵する,先進的で近代的な鉄道システムを保有していたのである。

しかし,その後数十年間にわたり,鉄道事業は衰退を続け,地域における交通手段の首位 の座から降りた。というのは,石油の発見とそれに伴う廉価なガソリンの出現により,自動 車が速くて安い交通手段となったからである。幅の広い新たな道路の建設が自動車の利用増 に拍車をかけ,自動車による移動時間が延び,自動車はより実用的な交通手段となったので ある。

気候と文化面の問題も自動車が台頭してきた要因であった。保守的な中東地域において自 動車は,プライバシーを大いに保護してくれる乗り物であり,特に女性は何の気苦労もなく 旅行することができるようになった。また,中東地域の気候は高温であり,そして多くの場 合,鉄道の駅は辺鄙なところにあったため,人々は炎天下で列車が来るのを待たなければな らなかった。この高温気候がエアコン付きの自動車を列車より快適な交通手段にしたのであ る。

こうして,第二次世界大戦以降,交通手段としての列車の役割は減少し,列車の利用者減 とメインテナンス費用の増加に直面した多くの国々は鉄道網を廃棄した。例えば,マッカ(メ ッカ)とダマスカスを結ぶ有名なヒジャーズ鉄道は使用されなくなり,また,リビアは実際 に国内の鉄道網を閉鎖した。

エジプトやイラン,イラク,モロッコ,アルジェリアなど,多くの人口を抱える国々は旅 客・貨物輸送の鉄道の営業を続けていたが,ほとんどの国で,鉄道は人気を失っていた。

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鉄道再興の要因

今日,すべての状況は変化しており,中東地域は鉄道の革命時代を迎えている。この鉄道 復活にはいくつかの相関する理由がある。

第1の理由は,そして多分,最も重要な点であるが,それは2003年以降に生じた石油価格 の高騰である。中東の国々はこの価格高騰によって,輸送分野に投資できる財力を得ること ができたため,莫大な資金を新たな空港や港湾,地下鉄建設などの主要輸送プロジェクトに投 資した。

中東諸国政府は,1970年代と1980年代初期の石油ブームの時代に,国内のインフラ整備へ の投資機会を逸し,そして1990年代には景気の谷を経験していた。このため,これら各国政 府はこの石油価格の急騰による経済的好況を利用しようと決意し,設備投資プロジェクトに 資金を注ぎ込むのは今しかない,と認識したのである。

第2の理由は,中東地域の著しい経済成長が急激な人口増をもたらした点である。世界銀 行の統計によれば,中東・北アフリカ(MENA)地域全体の人口は1980年の2億人から今日の 約4億1,500万人へと増加しており,また,都市部の人口が全人口に占める比率は45%から約 60%に伸びている。GCC(湾岸協力会議)諸国では,この比率はさらに高くなっている;ク

ウェート98%,カタール96%そしてバーレーンが89%である。

中東の諸都市は増え続ける交通量に明らかに対処できなくなっており,新たな道路の建設 はもはや解決策とはなりえないのである。したがって,今後の交通渋滞を回避するためには,

鉄道が長期的な交通網整備計画において明確に考慮されるべき交通手段となった。また同時 に,環境問題が中東諸国に圧力をかけており,各国は汚染物質の排出削減を迫られている。

この問題とリンクしているのは,道路を使わない貨物輸送への取り組みである。経済発展 と人口増に伴い,貨物の輸送量も増大している。今や鉄道は,道路の交通量を減らし,一つ の都市または地域から他の都市・地域へ物資を迅速かつ容易に輸送できる,効果的で経済的 な輸送手段とみなされている。さらに,鉄道は,サウジアラビアやアルジェリアなど国土の 広い中東諸国において今まで開発が無視されてきた遠隔地の経済を活性化させる手段とも見 られているのである。

実際,GCCにおける画期的な2大鉄道建設計画 サウジ・ランドブリッジ(Saudi Landbridge)

プロジェクトとアラブ首長国連邦(UAE)のユニオン・レールウェイ(Union Railway)イニ シアチブ は旅客輸送よりはむしろ貨物輸送に重点を置いたプロジェクトなのである。

最後の理由は,中東の国々は,ある国の一つの定型的なプロジェクトを他の国も追随して 実施するという傾向にある,ということであり,これは注目すべき重要な点である。ある特 別な構想に基づき始められたプロジェクトが軌道に乗ると,それは瞬く間に近隣諸国に採用

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される傾向にあるということは,最近の歴史が証明しているところである。例えば,ドバイ が2005年にGCC初の地下鉄網を建設したが,それ以降,他の多くの国々がこれに追随したの である。

鉄道システムの種類

中東の鉄道建設ブームは,次の主要3分野に焦点が当てられている;! 長距離陸上鉄道

網," 都市部の地下鉄,路面電車およびライトレールの開発,# モノレール・システム。

! 長距離陸上鉄道網

長距離陸上鉄道網の建設プロジェクトは,国内の主要都市と遠隔地との連結を強化する手 段として,広大な国土を有する国々に集中している。例えば,サウジ・ランドブリッジ・プ ロジェクトは,同国の2大都市,ジェッダとリヤドを結び,ジェッダ港と東部州間の物資の 輸送手段を提供することを目的としている。

アルジェリアやリビアなどの国における長距離陸上鉄道網の拡張プロジェクトは,より遠 方の地域の経済活性化のために,同地域向けの交通網を改善する手段である,とみなすこと ができる。鉄道網がすでに整備されているモロッコなどの国では,鉄道網の電化と高速シス テムへの改良に重点が置かれている。

長距離陸上鉄道網の大規模建設プロジェクトは,アラビア半島北部のクウェートと南部の オマーンを連結する,建設費数十億ドルのGCC鉄道計画である。2020年に完了予定のこのプ ロジェクトは,GCC加盟6ヵ国間において一貫した交通を可能にし,地域に交通革命をもた らすことになるだろう。

" 都市部の地下鉄,路面電車およびライトレールの開発

地下鉄,路面電車およびライトレールの新交通網は,長距離陸上鉄道網と同様の影響を地 域の都市に与えるだろう。ドバイの地下鉄プロジェクトが成功した後,他の諸都市において も地下鉄計画が推進されている。なかでも,ドーハ,クウェート市,リヤド,アブダビの各 都市は,地下鉄またはライトレールの交通網建設を計画している。運転手のいない自動運転 で,地表または地上を走る計画が主流になっている。

# モノレール・システム

モノレールも人気があり,ドバイのパーム・ジュメイラで小規模なモノレール路線が建設 された以降,特に人気が高まっている。サウジアラビアのマッカとマディーナ(メディーナ)

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の両都市はモノレールの建設を計画しており,また,バーレーンのマナーマもこれに追随す る可能性がある。モノレールは特に小規模交通網の選択肢として好まれており,例えば,推 定額100億ドルを要したリヤドのプリンセス・ヌーラ・ビント・アブドルラハマーン女子大 学において,モノレール・システムが建設中である。

チャレンジ

中東地域における鉄道網の建設は着実に進められているが,各国にとってそれはまさしく チャレンジである。技術面から言えば,砂漠の奥深く鉄道網を建設することは,北アフリカ 諸国のみならず,中東全域の国々が取り組まなければならないチャレンジの一つである。建 設業者は,線路上を横切る砂や砂丘を防ぐための手段 例えばフェンスやサンドトラップな

主要オペレーター/開発事業体

線(km)

アルジェリア Societe Nationale des Transports Ferroviaires(SNTF) 3, 3,

バーレーン Works Ministry

エジプト Egyptian National Railways 5,

イラン Iran Railways 8, 2,

イラク Iraqi Republic Railways Company 2, 1,

ヨルダン Aqaba Railway Corporation

クウェート Partnerships Technical Bureau

レバノン Transport & Public Works Ministry

リビア Libyan Railways 2,

モーリタニア Societe Nationale Industrielle et Miniere(SNIM)

モロッコ Office National des Chemins de Fer(ONCF) 2, 1,

オマーン Supreme Committee for Town Planning 1,

カタール Qatar Railways Development Company

サウジアラビア Saudi Railways Organization 1, 6,

スーダン Sudan Railways Corporation 4, 3,

シリア Chemins de Fer Syriens 2, 1,

チュニジア Societe Nationale des Chemins de Fer Tunisiens(SNCFT) 2,

UAE Union Railway Company 1,

西岸&ガザ Transportation Ministry

西サハラ ONCF(Morocco)

イエメン Transport Ministry 2,

3, 0,

中東地域の幹線鉄道建設プロジェクト

出典:MEED Projects

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