第3章までの検討で、農作物工場をはじめとする機械化、情報化による農業は、中山間地域活 性化に資するバイオマス利活用事業として期待され、担い手として異業種(主に建設業)からの 参入も期待できることが分かった。本章では、中山間地域活性化に関する機械・情報化シーズの 状況を示す。
4.1 農業機械化の動向
ここでは、農業機械化を取り巻く動向として、国の施策動向、農業機械の研究開発動向を示す とともに、農業機械化と中山間地域活性化方策との関係について整理した。図 4.1-1 に概況を示 すが、それぞれの項目についての詳細を以下に示す。
【農業機械の開発戦略】
○ 農業機械開発改良研究・技術開発戦略
平成 13 年、農林水産技術会議において、農林水産研究・技術開発戦略がとりまとめら れた。この戦略は、4つの戦略から構成されており、そのうちの1つに、農業機械開発改 良研究・技術開発戦略がある。この中で、今後の重点課題が以下のように示されている。
<重点課題>
(1)生産性向上のための機械の開発
・農作業の省力化、新生産システム確立のための機械の開発
・低コスト生産技術対応機械の開発
(2)農畜産物の高品質化・高付加価値化のための機械の開発
・農畜産物の高品質化・高付加価値化のための機械の開発
・農畜産物の品質評価のための機械の開発
(3)農業の自然循環機能の維持増進のための機械の開発
・肥料、農薬等の投下量の節減等に資する機械の開発
→栽培管理技術(プレシジョンファーミング、精密農業)の確立など
・農業資源リサイクルのための機械の開発
・地球温暖化抑制のための機械の開発
(4)中山間地域等に適応した機械の開発
・小区画ほ場・傾斜地等に適応した機械の開発
・地域特産農作物用機械の開発
(5)農業機械の安全性及び農作業の快適性向上のための技術開発 ・安全性向上のための技術開発
・農作業の快適性向上・軽労化のための技術開発
(6)農業機械の開発のための基礎・基盤技術の研究開発
・機械の自動制御技術や認識機能等によって自律的に行動できる技術等の研究開発
→農業ロボットの開発など
・生育環境及び生体情報の検出技術の機械への応用に関する研究開発
・農業機械の低コスト化、リサイクル化のための研究開発
・農業機械開発のための支援技術研究開発
【農業機械化に関する研究動向】
農業・生物系特定産業技術研究機構中期目標に沿って行われた機械化研究のうち、成果情報として報告された主な研究について以下にまとめ た。ITや GIS を用いた機械制御・作業体系の改善等に関する研究や、環境に配慮した研究等が多くみられる。下記に一例を示し、中でも情報 関連技術が密接に関係する研究成果について水色で示す。
分類 研究成果例
原動機・耕うん・整地・圃場整備 ・グリセリンを副生しないバイオディーゼル製造法 移植・施肥・播種・追肥・挿し木 ・田植え機の苗供給補助装置
・動力ポンプを用いない排液再利用型の傾斜地用養液栽培装置
・セルトレイ苗挿し木装置 etc.
管理(防除、水管理、草生管理等) 特になし
収穫・運搬 ・稲麦用収量コンバイン
・自動追従運搬車を利用したキャベツの選択収穫・省力運搬技術
・コンテナ式乗用型摘採機用収量モニタ etc.
乾燥・調製・加工 特になし
畜産 ・搾乳ユニット自動搬送装置 etc.
精密農業 ・デジタルカメラを利用した無人ヘリ搭載式水稲生育情報測定装置
・精密農業用作業ナビゲータ etc
システム化 ・水田作の生産管理システム
・フィールドサーバーを活用した農作業緊急情報通報システム etc.
その他 ・IC タグと二次元コードを利用した農産物の生産履歴開示システム etc.
【農林水産省の機械化推進関連施策について】
平成17年度は、強い農業づくり交付金(予算額 470 億円)という枠組みの中で、
機械化推進に関連して以下のメニューが実施されている。
・ 農業生産資材費低減
(農業資材の生産及び流通の合理化促進、農業資材の効率的利用等の推進)
・ 生産体制保安
(農作業安全確保の推進)
【食料・農業・農村の動向】
・食料・農業・農村基本法の4つの理念
○ 食料の安定供給の確保
○ 多面的機能の発揮
○ 農業の持続的発展
○ 農村の振興
【農業機械業界の動向】
・農業機械の生産実績は漸減傾向
(1995 年 649,874 百万円⇒2003 年 472,171 百万円)
・ 市場の国際化が進展
(輸出総額:1998 年 143,843 百万円⇒2003 年 160,735 百万円)
【農業機械化の現況】
・昭和 28 年に農業機械化促進法が制定されて以来、農業機械化の取組みは継続的に実施されてきた。
・稲、麦、大豆等の土地利用型作物については、ほぼ機械化一貫体系が確立している。
・野菜や果樹の園芸分野における機械化は遅れており、機械化一貫体系が確立していない。
・国産農畜産物の消費拡大に向けて農畜産物の高品質化・高付加価値化に資する機械や、中山間地域の生 産振興に資する機械の開発が求められている。
【機械開発状況】
農林水産省による、農業機械開発施策と、その開発機械の目標、そして開発成果の例を以下の表に示す。農林水産研究・技術開発 戦略が施策に反映されていることが分かる。
施策 対象・目的 成果例
農業機械等緊急開発事業
(平成 5〜9 年度)
機械化一貫体制の確立 21 世紀型農業機械等緊急開発事業
(平成 10〜14 年度)
上記に加え、
環境保全型農業、中山間地域対 応型農機
【成果】
大型汎用コンバイン、農業副産物コンポスト化装置、
野菜用栽培管理ビークル、米品質測定評価装置、作物 生育情報測定装置、傾斜地果樹用多目的モノレール
etc.
上記に加え、
地域条件に即した農業の構造改 革に資する機械
【開発課題】
野菜接ぎ木ロボット用自動給苗装置 etc.
安全で安心な農畜産物の供給に 資する機械
生体情報測定コンバイン etc.
次世代農業機械等緊急開発事業
(平成 15〜19 年度)
持続的農業生産、循環型社会に 資する機械
環境保全型汎用薬液撒布装置 etc.
情報関連技術を用い た研究成果
4.1.1 施策動向
本項では、農業機械の開発・実用化に関する国の施策動向を整理した。
(1)農業機械化促進法
農業機械化促進法(昭和 28 年施行)は、農業機械化の促進によって農業生産力の増進と農業経 営の改善に寄与することを目的としており、国または都道府県が、農業機械化の促進に有効な事 項について積極的に実施するよう義務付けている。
また同法では、農林水産大臣に対して高性能農業機械等の試験研究、実用化の促進、および導 入に関する基本方針(以下、4.1節内では基本方針と表記)を定めることを義務付けている。
基本方針は、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構が行う高性能農業機械等の試験研 究および実用化の対象、目標について定めており、おおむね 5 年毎に定めるように農業機械化促 進法施行令によって規定されている。なお、現在の基本方針は平成 15 年に定められたものである。
(2)農業機械等緊急開発事業等
高性能農業機械の政策的な緊急開発を官民一体で推進することを目的として、平成 5 年より、
農業機械等緊急開発事業等が実施されている。この事業では、生物系特定産業技術研究支援セン ター(元特殊法人農業機械化研究所、以下生研センターと表記)が主体となり、民間事業者や研 究機関等と連携しながら、基本方針に定められた高性能農業機械等の研究・開発を実施している。
事業の推移および事業目的について、表 4.1-1 に示した。
表 4.1-1 農業機械等緊急開発事業等および事業目的
施策 事業目的
農業機械等緊急開発事業
(平成 5〜9 年度)
機械化一貫体系の確立
21 世紀型農業機械等緊急開発事業
(平成 10〜14 年度)
環境保全型農業
中山間地域対応農機の開発 次世代農業機械等緊急開発事業
(平成 15〜19 年度)
地域条件に即した農業の構造改革 安全で安心な農畜産物の供給 持続的農業生産、循環型社会の形成
(出典:農業機械年鑑 2005 新農林社刊、新農業機械実用促進株式会社ウェブサイトより作成)
農業機械等緊急開発事業等は、基本方針の策定に従って、5 年毎に事業が計画、実施されてお
する機械が重点的に開発されていたが、21 世紀型農業機械等緊急開発事業では、多くの作物にお いて機械化一貫体系が確立されてきた状況を踏まえ、農業における環境負荷の低減に資する機械 や、中山間地域に対応した機械も事業目的として加えられた。
現在は、次世代農業機械等緊急開発事業によって農業機械の開発が推進されており、地域条件 に即した農業の構造改革、安全で安心な農畜産物の供給、持続的農業生産・循環型社会の実現が 事業目的として示されている。
(3)農林水産研究・技術開発戦略
平成 12 年3月に定められた食料・農業・農村基本計画では、食料の安定供給の確保、多面的機 能の発揮、農業の持続的な発展、農村の振興という4つの基本的な方針に従った施策の展開が謳 われている。同時に、研究開発については、目標を明確化し具体的な技術の確立に向けた戦略を 定めることにより、効果的・効率的に推進することとしている。
これを受けて、平成 13 年に農林水産省は農業機械開発改良研究・技術開発戦略をとりまとめた。
この戦略の中で記載された、今後の農業機械の研究・技術開発の方向性および重点課題を、表 4.1-2 に示し。
表 4.1-2 農業機械開発改良研究・技術開発戦略に示された研究・技術開発の方向性および重点課題
研究・技術開発の方向性 重点課題
①生産性向上のための機械の開発 ・農作業の省力化、新生産システム確立のための機械の開発
・低コスト生産技術対応機械の開発
②農畜産物の高品質化・高付加価 値化のための機械の開発
・農畜産物の高品質化・高付加価値化のための機械の開発
・農畜産物の品質評価のための機械の開発
③農業の自然循環機能の維持増進 のための機械の開発
・肥料、農薬等の投下量の節減等に資する機械の開発
・農業資源リサイクルのための機械の開発
・地球温暖化抑制のための機械の開発
④中山間地域等に適応した機械の 開発
・小区画ほ場・傾斜地等に適応した機械の開発
・地域特産農作物用機械の開発
⑤農業機械の安全性及び農作業の 快適性向上のための技術開発
・安全性向上のための技術開発
・農作業の快適性向上・軽労化のための技術開発
⑥農業機械の開発のための基礎・
基盤技術の研究開発
・機械の自動制御技術や認識機能等によって自律的に行動で きる技術等の研究開発
・生育環境及び生体情報の検出技術の機械への応用に関する 研究開発