債券市場の発展は三十年を経て比較的市場経済にふさわしい構成へと展開を遂げてき た。政府主導の発展と政府管理の市場ではあるが、そこには銀行の発展に支えられた市場 展開の特徴がみられる。この観点から、市場機能、市場参加者、商品構成を中心に債券市 場の課題を探ることにしたい。
第一節 中国債券市場の組織
債券市場は発行市場(一級市場)取引市場(二級市場)で構成される。債券の発行は アンダーライティングを通じて行われ、取引市場は、債券二級市場あるいは取引流通市 場の組織とよばれる。
すでにみてきたように、中国で1988年に、国債の流通、譲渡の試行が行われたことで、
債券取引市場は本格的に発展してきた。そして次第に現在のインターバンク債券市場、
取引所債券市場と商業銀行店頭取引市場が共存することが形成されてきたのである。中
56広瀬 健「第5章債券市場」『図説中国の証券市場 2011年版』日本証券経済研究所、2011年3月。
国債券市場の組織形態は図表5のように表示できる。
図表5 中国債券市場の組織形態
中国債券市場
取引所市場 OTC市場
インターバンク市場 商業銀行店頭取引市場
中国債券市場は取引所市場とOTC市場に区分されるが、OTC市場の中に、インター バンク債券市場と商業銀行店頭取引市場が含まれる。
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111取引所債券市場
取引所債券市場というのは、投資家が取引所でしか債券取引できない市場であった。現 在、中国証券登記決算有限責任会社が取引所債券市場の登録、信託、決算業務を展開し ている。
1990年代前半期、上海証券取引所と深圳取引所が設立されてから、取引所で債券取引 が開始された。取引所は中国の主要な債券取引の場所になったのである。1997年から、
取引所市場債券レポの制度欠陥のため57取引リスクは増加した。そのため、インターバン ク債券市場が設立されて、債券取引の主な場所はインターバンク市場に移行された。2003 年-2004年、取引所債券レポのリスク事件が発覚し、多くの機関投資家58が取引市場から 撤退したので、取引市場で、主な参加者は個人と中小投資家になった。証券会社、保険 会社、信託投資会社、証券投資基金などの機関投資家による取引所での取引量比率は大
57 1997年、銀行はレポ取引を通じて、資金を集めて、株式市場に投入して、株式市場が過熱された。
58 機関投資家の定義は多様であるが、ここでは一般的に比較的長期の資金を受け入れて、これを資本市場 や貸付市場で運用する金融機関を総称して呼ぶことにしたい。
幅に減少した。
2004年以前、取引所債券市場で取引している債券種類は国債と社債しかなかった。取 引方法も現物交易とレポしかなかった。2005年9月、企業証券化商品の“連通収益計画”
が提出され、2007年7月、取引所の固定収益電子システムが設立された。取引所は顧客 を保有するために、さまざまな改革を試みたが、取引量の減少をおし止めることはでき なかった。1997年取引所取引量は債券市場の98.1%を占めた。2012年末になって、取引 所の預託残高は1.00兆元となり、預託総額の3.8%を占めるにとどまった。債券取引量 は3649億元で、取引量総額の0.57%になった、1997年の99%と比べて、大幅に下げる ことになったのである(図表6)。
図表6 中国取引所市場の取引量
1 取引所債券市場の取引方式
取引所債券市場の伝統的な取引方式はオーダー·ドリブンである、時間優先、価格優先 の原則で、取引システムを通じて投資家の購買指令をマッチングして、取引を行ってい る。上海、深圳証券取引が伝統的なオーダー·ドリブン59方式を運用している。取引所の 固定収益電子取引システムが機関投資家者向けに、金額が多い取引にサービスを提供し ている。
2 取引所債券市場の信託決済
59オーダー•ドリブンとは証券市場は「価格優先の原則」と「時間優先の原則」によって売買契約が締結さ れています。
中国証券登録決済会社は取引所債券市場の債券登録、信託と決済のサービスを提供し ている。上海証券取引所で取引している債券が中国証券登録決済会社上海支店によって、
登録、決済されている。深圳証券取引所で取引している債券が中国証券登録決済会社深 圳支店によって、登録、決済されている。
中国証券登録決済会社が集中登録、二級預託と集中グロス決済制度を採用している。
取引の双方の共同的な取引相手として、中国証券登録決済会社は債券の受け渡しに対し て担保責任を持っている。
2222インターバンク債券市場
インターバンク債券市場の参加者はすべての機関投資家である、インターバンク債券市 場の発行量、信託量、取引量は債券市場の97%以上占めている。
この市場の特質は銀行との関係で生み出されてきた。その特徴点を以下四点あげるこ とにしよう。
1 機関投資家向け債券市場
インターバンク債券市場で、投資家はすべての機関投資家で、2009年末、インターバ ンク債券市場の投資家は8000に上り、この中で、銀行は100行、証券会社60社、保険 会社は91社、非銀行金融機関は121社である60。残りの機関は商工企業と非法人機関で ある。このように機関投資家は金融革新と市場の発展によって幅広く多様化してきてい る。
2 債券種類の多様化
機関投資家のリスクテイク能力が高いので、格付にかかわらず、すべての債券種類はイ ンターバンク市場で取引できる。インターバンク債券市場で取引している債券は国債、中 央銀行手形、金融債(政策金融債、普通金融債、劣後債、混合資本債)、社債(企業債、
会社債券、短期融資債、中期手形)、資産担保証券、国際機関債券である。この債券の種
60数字は中国債券情報ネットより作成。
類の多様性が大きな投資への誘因力となっている。
3 取引参加者の機能区分
インターバンク債券市場で取引している参加者は三種類に分けられる。第一種類はマ ーケット・メーカーで、債券のフロアー・ブローカー、債券のアンダーライティングと 決済代理業務を行うことができる。第二種類は、第三種類の金融機関による代理決済を 通じて、債券取引をする中小金融機関と非金融機関である。第一種類と第二種類の金融 機関はインターバンク市場で、値決め能力とリスク選別能力が強い。第三種類の金融機 関と非金融機関の役割は、インターバンク債券市場資金と社会資金の交換をすること、
そしてそれを通じてインターバンク債券市場を拡大させることである。
④OTC市場の特徴。
債券取引の買い手と売り手は固定収益システムに通じて、取引を指図できるし、ファ ックスと電話を通じて、価格を問い合わせ、取引を決めることもできる。債券価格の変 動はあまり大きくなく、投機性も低いので、売買頻度は株式市場のようには高くない。
そして、債券取引の収益率は低いので、取引費用に対して、敏感である。そして大量売 買取引を通じて、一口の取引費用率を減少できる。以上の原因で、今の債券取引はほと んどOTC市場で取引価額の問い合わせを行い、取引所で「集中競価」の方式によって小 額、標準化の商品取引を行っている。世界でも多数の債券取引はOTC市場で行なわれ、
それは債券市場取引量の90%以上を示している。
世界の市場経験から見ると、OTC債券市場の取引システムは分散化している。ディー ラーはブローカーより提供された電子システムを使用して取引している。だが中国イン ターバンク債券市場の取引システムは相当に集中化している。それは市場が形成された 際に、中国為替取引センターの電子システムを利用し、全国的な統一の取引システムが 作られたからである。現在、インターバンク債券市場の1400くらいの参加者は為替取引 センター取引システムの会員で、非会員はほとんど代理決済でインターバンク市場での 取引をしている。
このインターバンク債券市場には以下の三つの取引方式がある
①為替取引センターの取引
取引市場参加者は為替取引センターの取引システムを通じて、他の参加者に向けて、
オファーして、参加者はオファーされた価格を見て、電話とMSNで価格を協議して、一 致すれば、取引情報をシステムに登録して、成約がされる61。これがインターバンク債券 市場の主要な取引である。
②貨幣ブローカーの匿名取引
この取引方法では、市場参加者は要求情報を貨幣ブローカーに転送し、貨幣ブローカーは 市場参加者の代理として、理想な価格を探し、成約すると、ブローカーは取引両方に成 約通知書を転送して、取引情報を交換する。
③マーケット・メーカーのクリック成約
マーケット・メーカーは為替取引センターの電子取引システムで価格を公表して、市場参 加者は価格を受け取ると、この価格をクリックして、成約することができる。
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333商業銀行店頭取引
商業銀行の店頭取引も債券市場の場外市場である。中小投資家と個人投資家に向け、国 債の取引、決済、信託を行っている。
図表7 店頭取引の銀行の営業の場所数
店頭取引業務を営んでいる銀行 営業の場所数 中国工商銀行 10259102591025910259
中国農業銀行 11027110271102711027 中国銀行 840840840840 中国建設銀行 12572125721257212572
招商銀行 624624624624 北京銀行 133133133133
61沈 炳熙、 曹 媛媛 『中国債券市場:30年改革と発展』 北京大学出版社、2010、209ページ。